私の散歩論

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2016年8月20日土曜日

上谷遺跡 墨書土器集中出土域と掘立柱建物群との関係

上谷遺跡墨書土器出土ヒートマップを集落ゾーン推定図とオーバーレイ表示してみました。

上谷遺跡集落ゾーン推定図と墨書土器出土ヒートマップのオーバーレイ図

ヒートマップの赤色域(墨書土器集中出土域)が掘立柱建物集中域のa、b、c、dと1対1の関係で対応するように観察できます。

明瞭な特徴を発見することができました。

墨書土器集中出土域は竪穴住居や土坑と関係するのではなく、掘立柱建物と強く関係することが判りました。

この観察に基づいて、より具体的にデータをみてみます。

次の図は掘立柱建物分布と墨書土器出土ヒートマップをオーバーレイさせたものです。

上谷遺跡掘立柱建物分布と墨書土器出土ヒートマップのオーバーレイ図

4個所の墨書土器集中出土域は4個所の掘立柱建物群の縁辺に存在しますが、もっと精細に観察すると、縁辺というよりも掘立柱建物が墨書土器集中出土域を囲んでいるように観察できます。

墨書土器が多数出土する遺構は全て竪穴住居跡ですから、掘立柱建物群近くの廃絶して穴となった竪穴住居跡に多数の墨書土器が捨てられた(埋められた)という事象が想定できます。

この想定から掘立柱建物群で行われる活動と墨書土器活動(墨書土器を打ち欠き、穴に捨てる(埋める)活動)が密接に関係していることが判ります。

掘立柱建物は養蚕施設およびその関連施設(製糸、機織り、縫製、製品貯蔵)や漆器作成作業施設など付加価値の高い製品をつくる作業場、生産工場が主なものとして含まれると仮説しています。

この仮説が正しければ養蚕や乾漆などの生業集団による集団祈願行為(酒宴)が、労働の場である掘立柱建物近くの広場で行われたと考えます。

このような想定や仮説を検証すべく、墨書土器の文字や文字と遺物の共伴出土関係を引き続いて分析します。

なお、墨書土器10点以上出土遺構(全て竪穴住居跡)を円グラフにして掘立柱建物分布とオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡掘立柱建物分布と墨書土器10点以上出土遺構円グラフのオーバーレイ図

この図から遺構ポイントレベルで掘立柱建物群と墨書土器集中出土域の関係をイメージすることができます。

なおこの図で西端(左端)2個所の墨書土器10点以上出土遺構だけが掘立柱建物の近くにはないことが判ります。

おそらく、この2個所は発掘区域の端であるため見かけ上このように観察できてしまうのだと思います。

発掘区域外西側にも掘立柱建物群があったのではないかと想像します。



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