大膳野南貝塚前期後葉集落の竪穴住居に関して発掘調査報告書では4つのグループについてその位置近接性からその関連性を指摘し、「これらの住居には時期的な前後関係があるものと推定される。」と記述しています。
2017.04.18記事「複数竪穴住居の関連性検討」参照
この記事ではそのうちのDグループ(J83、J89、J97、J98)について検討します。
J83、J89、J97、J98の位置関係
1 出土物等による検討
次の2つの表に示す通り、優勢土器が諸磯式であるものが3つあること、建物の面積が狭いことなどから4つの住居に共通性があります。
同時にJ97では獣骨出土量が特段に多く(中テン箱6箱)、またこの住居にはテラスが付いていて他の近接住居と異なる様相が観察できます。
大膳野南貝塚 前期後葉集落 獣骨出土量
大膳野南貝塚 前期後葉集落 竪穴住居
2 竪穴住居柱穴分析による検討
J83、J89、J97、J98について発掘調査報告書の記述に基づいて柱穴分類を図化しました。
J83柱穴分類
J89柱穴分類
J97柱穴分類
J98柱穴分類
J83、J89、J98は構造を読み解くことが困難であるような柱穴分布が似ているので、同じ血族の住居と考えても合理性を欠かないという印象を受けます。
一方J97はテラスを有していて明瞭な壁柱を有しているのでJ83、J89、J98と並列な建て替えの一環であるとは考えづらいと考えます。
4つの住居が諸磯式土器一族のものであると考えられますが、J97だけは通常の建て替え行為の中でうまれたのではなく、特別な意義のある建物として建てられたと想像します。
諸磯式土器一族のシャーマンとかリーダーの居住を意識して建てられたと想像します。
4軒の竪穴住居の関連性はJ83・J89・J98グループとJ97の2つに分解できそうです。
3 J56とJ97と非構造柱穴配列の相似性
J97の説明の無い柱穴、つまり構造に関係しない柱穴は祭祀用柱(祭壇用柱)であると想定されます。それを図化すると次のようになります。
J97の説明の無い柱穴の分布
この分布はJ56の同じ分布図とパターンが酷似しています。
J56 説明のない柱穴、意味が不明の柱穴の分布
2017.04.22記事「建物構造と関係しない竪穴住居柱穴の配列様式」
ここでJ97もJ56もAは建物入口付近の建物内テラス下に建物の一部として常備されていた祭壇であると想定します。
Bは建物廃絶時の故人送りに際して建てられた送り用臨時祭壇であり、そのそばで土器送り、動物送り(獣骨堆積)などが営まれたと考えます。
J97は諸磯式土器優勢、J56は浮島式土器優勢で血族が異なりますが、その血族のシャーマン(リーダー)送りの祭壇の設置の仕方がテラスや獣骨堆積場所との関係から同じであることが判明しました。
祭壇の配置の仕方が同じであるとういことは、祭祀の営み方も同じであったことを表現していると考えます。
浮島式土器一族と諸磯式土器一族は集落内で明瞭な社会的優劣が観察でき、生業の分担も異なるようですが、送り祭祀に関する心性は同じであったことが判りました。
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