1 入手「杭」写真
入手「杭」写真はつぎの5枚です。
入手「杭」写真 写真は千葉県教育委員会所蔵
発掘調査報告書に掲載されていない裏面の写真があるので大変貴重です。
2 観察のためのA面、B面設定
現物を閲覧した際に次のようにA面とB面を設定しましたので、今回も踏襲します。
A面、B面設定
発掘調査報告書に掲載されている写真はA面だけです。
3 観察結果
観察に使った写真と観察結果を示します。
西根遺跡出土縄文時代後期「杭」
西根遺跡出土縄文時代後期「杭」石器による加工跡
【観察結果】
1 石器による頭部削平、脚部削出
2 削りかけ跡多数
A面に削りかけ跡を多数観察することができました。すべて斜め方向であり、元来は材を削った翅(カールした薄皮)が付いて、地層に埋没する前後に無くなったと考えます。
材を薄く多数回削ったので、その部分の材表面が凸凹になっていて、他の部分がつるつるになっているのと対照的です。
3 刻印3箇所
制限の強い現物閲覧では刻印を2箇所確認したのですが、今回の判読で3箇所の刻印を観察することができました。
4 縛り跡2巻分
縄などで強く縛って附いたと考えられる凹み跡を2巻分観察できました。イナウに何かの「モノ」をつるしている姿を連想させます。
今回の写真判読で初めて発見したものです。
5 その他
現在は図示していませんが、削りかけや縛り跡とは異なる圧迫線がいくつかあります。方向は削りかけとは直交するものが含まれます。イナウに紐をタスキのようにかけている姿を連想させます。今後さらに詳しく観察・検討する予定です。それとは別に発掘時あるいは発掘後に付いたと考えられるような圧迫線もあります。
観察結果から「杭」が石器で作られた原始イナウであると結論付けることができる可能性がますます高まりますが、その考察は次以降の記事で行います。
4 参考 写真判読の様子
削りかけ跡判読の様子
刻印判読の様子
5 参考 発掘調査報告書掲載写真と今回利用写真の画像比較
報告書掲載写真と原本の比較
発掘調査報告書掲載写真を拡大するとアミが斜めに入り、その方向と削りかけ跡の方向が偶然ですが一致してしまい判読に苦労しました。しかし今回入手した原本により正確な判読が可能となりました。
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