1 面取り部の追加発見と刻み部位の認識
A面に新たに面取り部を発見しました。
同時にB面のこれまで認識していた上の部分も面取り部であることが判りました。ここは刻みの影響で壊れて凸凹になっていますが、表面は面取りされています。
A面の1本だけ孤立した削りかけ跡が刻みであり、その下に半球状に薄くはがれている部分を発見しました。刻みは面取り部を刻んでいます。
B面の刻みは面取り部が壊れるほどの強さで刻まれていて、削ったものではないことが判りました。これまで刻印として考えてきていますが、刻印のように凹部をつくりだすために削られたものではなく、石器刃部で強く引き掻いたものです。
この結果を示すと次のようになります。
面取り部の確認作業1
この結果に基づいて2017.10.02記事「西根遺跡出土「杭」はイナウ 面取り部存在の確認」は訂正しました。
2 小孔の確認作業
小孔の確認作業を行いました。
小孔(白丸)の確認作業1
小孔(白丸)の確認作業2
A面14、B面23の小孔を抽出しました。枝より上のものの多くは人工の小孔であると考えます。工具の跡が確認できるものもあります。しかし写真では判断しずらいものもあり、自然の小孔(丸い溝)が含まれている可能性もあります。
枝より下の小孔は自然のものの割合が高いかもしれないと推測します。
A面の小孔の様子がぼんやりしてよくわかりません。ぼんやりしている理由はこの面が出土写真では上になっていることから、地面に倒れてから風雨にさらされて風化した時間があり、表面の凹凸が失われたからであると考えます。写真撮影条件はB面と同様であったと考えます。
B面の小孔の様子は子細に観察でき、同じ工具(石器)が使われたことが確認できる小孔がありますので、その結果は次の記事で報告します。
また小孔の意味についても別記事で検討します。
この記事では上記「小孔(白丸)の確認作業1」からわかる意匠セットについてメモします。
3 A面B面に共通する意匠セット
「小孔(白丸)の確認作業1」図からA面B面ともに「杭」頂部付近に次のような共通意匠セットが存在します。
西根遺跡出土「杭」(縄文時代後期)A面B面に共通する意匠セット
面取り部、斜め刻み、小孔群のそれぞれの意味は現時点で不明ですが、それらの位置関係が共通する意匠セットが存在することは確実です。
従ってこの共通意匠セットはこの製品を縄文人が使う上で重要な意味を有していたと考えることができます。
また面取り部の大きさ、斜め刻みの深さ、小孔群の一つ一つの小孔の大きさがすべてB面が勝っています。このことから、B面が表でA面が裏であることが判明しました。
A面とB面の区別は、枝の位置を左にしたとき正面が表になるようになっているということです。
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