私の散歩論

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2018年3月13日火曜日

貝層・漆喰を含む土坑の時期別分布

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 8

大膳野南貝塚後期集落の土坑について指標別に時期別分布の検討しています。これまでに指標「体積類型」、「平面形型」、「フラスコ状、円筒状」について検討しました。
この記事では指標「貝層、漆喰」について時期別分布を検討します。
貝層、漆喰を含む土坑は、その土坑の最後の機能が貝殻を含む魚介類飲食残滓の送り場であったと考えます。あるいは土坑本来機能(例 堅果類貯蔵)を廃絶する時の廃絶祭祀跡とみることも可能であると考えます。

1 貝層・漆喰を含む土坑の時期別分布
1-1 加曽利E4~称名寺古式期

加曽利E4~称名寺古式期
加曽利B1~B2式期の竪穴住居はすべて漆喰貝層無竪穴住居ですが、この期の土坑に貝層を含むものがあることは特記事項になります。
竪穴住居廃絶祭祀で貝殻を使わないことからこの期の住民は非漁民と考えますが、漁撈を完全に行わなかったわけではないことが判りました。
貝層を含む土坑は北貝層の内部に位置します。

1-2 称名寺~堀之内1古式期

称名寺~堀之内1古式期
貝層を含む土坑が南貝層の北西側に一列に並ぶように等間隔に分布します。この時期の魚介類残滓の送り場がこのような位置に配置されていたと考えます。偶然にこのような場所に配置されたのではなく、竪穴住居及び南貝層の北西縁が魚介類残滓送り場として意識され配置されたと考えます。
台地西端付近の貝層を含む土坑も同じくその場所を意識して、集落から離れているにも関わらず魚介類残滓送り場として設定したものと考えます。

1-3 堀之内1式期

堀之内1式期
北貝層付近に多数の貝層を含む土坑が分布するとともに貝層・漆喰を含む土坑、漆喰を含む土坑が分布します。北貝層付近は屋外漆喰炉が集中することから、この時期の魚介類調理の拠点であったと想定でき、その関係で魚介類送り場が多数分布するのだと考えます。
南貝層付近では称名寺~堀之内1古式期にひきつづき竪穴住居及び南貝層の北西縁とその延長に貝層を含む土坑が分布します。

1-4 堀之内2式期

堀之内2式期
北貝層付近の2基の貝層を含む土坑を除くと、竪穴住居から離れた場所に貝層を含む土坑が分布します。
この分布はこの時期の住人によって意図的に設置された魚介類送り場であり、集落最初期から引き継がれてきている貝殻を使った(貝層、混貝土層による)集落円環構造構築の一環であると想定します。

1-5 堀之内2~加曽利B1式期

堀之内2~加曽利B1式期
この時期の竪穴住居はすべて漆喰貝層無竪穴住居ですが、この期の土坑に貝層を含むものがあることは特記事項になります。
竪穴住居廃絶祭祀で貝殻を使わないことからこの期の住民は非漁民と考えますが、漁撈を完全に行わなかったわけではないことが判りました。
竪穴住居と貝層を含む土坑が離れていて、単純な飲食残滓の送り場ではない、特別の送り場であったと推測します。

1-6 加曽利B1~B2式期

加曽利B1~B2式期
この時期の竪穴住居もすべて漆喰貝層無竪穴住居ですが、この期の土坑に貝層を含むものがあることは特記事項になります。
竪穴住居廃絶祭祀で貝殻を使わないことからこの期の住民は非漁民と考えますが、漁撈を完全に行わなかったわけではないことが判りました。

1-7 参考 後期全期

参考 後期全期

2 考察
2-1 漁撈活動時期
・竪穴住居の検討から集落の漁撈活動時期は称名寺~堀之内1古式期から堀之内2式期まであると考えます。発掘調査報告書でもおなじように考えています。しかし、土坑の検討から細々とした漁撈活動が集落最初期の加曽利E4~称名寺古式期と集落消滅期の堀之内2~加曽利B1式期と加曽利B1~B2式期もおこなわれていたことが判りました。

2-2 貝層を含む土坑が意識して配置された可能性
・貝層を含む土坑は全て台地平面であり斜面に建設された土坑にはありません。
・また全期を通した分布をみると漆喰貝層有竪穴住居および貝層(北、南、西貝層)の内側縁に分布するものが多くなっています。
・集落中央部の台地には貝層を含む土坑はありません。
・これらの特徴から貝層を含む土坑つまり魚介類飲食残滓の送り場は意識してこれらの場所に配置されたと想定します。

2-3 屋外漆喰炉との関係
北貝層には屋外漆喰炉が5基集中して検出されています。屋外漆喰炉では集落全体に関わる魚介類調理(保存や交易のための調理を含む)が行われていたと考えられますから、その付近に調理残滓を送る(廃棄する)ための土坑が必要だったと考えることもできます。
つまり北貝層付近の貝層を含む土坑は集落生業に関わるもので、日常家庭生活の送り場とは性格が異なる可能性があります。
貝層・漆喰を含む土坑、漆喰を含む土坑が北貝層付近に集中する理由も集落生業との関わりで説明できると考えます。

参考 後期全期 漆喰屋外炉追記








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