私の散歩論

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2019年1月29日火曜日

亀田泥炭遺跡出土木製品はイナウ似木製品

縄文木製品学習 3

2019.01.28記事「匝瑳市亀田泥炭遺跡出土木製品」でブレーンストーミングを行い、出土棒状木製品の用途を次のように思考しました。
○は可能性あり、△は可能性少ないと考えます。
1 浮子 △
2 ナイフの柄 ○
3 アワビおこし(のような牡蠣などを採る道具) ○
4 木製石棒 △
5 弦楽器 ○
6 ガラガラ(楽器) △
7 縄の編具 △
8 イナウ ○

この記事では出土棒状木製品を詳しく観察し、ブレーンストーミング結果を踏まえてその用途を絞り込みましたので、その思考プロセスを記録します。

1 棒状木製品の詳細観察
発掘調査報告書掲載写真を拡大して観察して、その特徴を次に書き出しました。

棒状木製品2の意匠

棒状木製品4の意匠
棒状木製品の大きな特徴は次のようなまとめることができます。
1 全周を刻む波打つ切込み
この切込みにより木製品は2つの部分に分割される構造を持ちます。端部が相対的に平坦な方を頭部、相対的に尖っている方を脚部と仮称することにします。写真は頭部を右側に表示しています。
2 端部(頭部、脚部)の切り口が極めて新鮮
端部切り口が極めて新鮮であり、摩滅していませんから生活道具等として使われた形跡はゼロに近いと考えられます。
3 えぐり出しが全周切込み付近と頭部に見られる
4 面取りが見られる
5 多数の削り掛け跡や切溝が見られる
削り掛け跡はカールした削り皮(鉋屑のような形状のそぎだした皮)が元来はついていた可能性がある。
6 圧迫痕跡、縛り跡が残っている。
7 先端四角形の錐(石器)によりモノが木製品にはめ込まれたと考えられる跡が多数存在する。

錐状石器によりモノが木製品にはめ込まれた跡と考えられる痕跡

2 考察
2-1 用途
日常道具等として使われた形跡がないので次の用途は消せると考えます。
1 浮子
2 ナイフの柄
3 アワビおこし(のような牡蠣などを採る道具)
5 弦楽器
6 ガラガラ
7 縄の編具

「4 木製石棒」は石棒一般のデザインとこの木製品のデザインが大きく異なるので、消せると考えます。(石棒の多くは亀頭部が根本より大きく見えるように、また亀頭部の形状がリアルなそれではなく抽象的な球体になっていますが、この木製品を石棒としてみると、亀頭部と根本の大きさが同じで、亀頭部と根本の境がリアルな斜め線になっています。)

こうした消去法によりこの木製品の用途の第一候補はイナウであると考えます。

2-2 印西市西根遺跡出土イナウ似木製品との比較
上記特徴のうち1を除いて全ての特徴が印西市西根遺跡出土イナウ似木製品と同じです。

参考 印西市西根遺跡出土縄文後期イナウ似木製品石器による加工跡等
意匠面から見る限り亀田泥炭遺跡出土木製品と西根遺跡出土木製品は類似製品と考えて間違いないようです。
特に錐(石器)によるモノ(葉、花、鳥や昆虫の羽根など)の貼り付け跡が存在するという微細点一致は双方木製品の基本用途が同じであることを物語っていると考えます。

西根遺跡出土イナウ似木製品は土器破壊行為をメインイベントとする収穫祭で使われた祭具(イナウ)であると考えましたが、亀田泥炭遺跡出土イナウ似木製品も何らかの祭祀で使われてこの場所にあるいは河川上流から水面に投げ込まれた(流された)ものと想定します。
西根遺跡出土イナウ似木製品は焼骨の近くで出土しましたが、亀田泥炭遺跡出土イナウ似木製品の一つは焦げているので、それらが使われた祭祀ではともに火が使われたことは確実です。
今後亀田泥炭遺跡出土棒状木製品もイナウ似木製品と呼ぶことにします。

2-3 感想
・「イナウ似木製品」と仮称する木製祭具が縄文時代後期に存在していたという仮説の材料が2つとなりました。さらに探すことにします。
・西根遺跡のイナウ似木製品は鳥をイメージしていると考えましたが、亀田泥炭遺跡のイナウ似木製品は波打つ全周切込みの印象が強く、西根遺跡イメージを直接投影するに至っていません。コケシとか木偶などのイメージが湧いてしまいます。
・亀田泥炭遺跡出土イナウ似木製品は材質がカヤであることと、長い棒から切り取って作られたと考えられることから、丸木舟櫂の柄の部分の再利用であると想像します。西根遺跡イナウ似木製品は自然木から作られています。
・西根遺跡では飾り弓が出土していて、それとイナウ似木製品を合わせて総合的に遺跡の状況を考察しましたが、亀田泥炭遺跡では至近に丸木舟、弓が出土しているのですから、それらとイナウ似木製品を総合して検討することが大切であると考えます。(後日検討することにします。)


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