2019年1月28日月曜日

匝瑳市亀田泥炭遺跡出土木製品

縄文木製品学習 2

縄文木製品の学習を始めています。趣旨は西根遺跡出土イナウ似木製品と同様の縄文木製品が千葉県遺跡から出土しているかどうか調べることにあります。
縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈」参照
学習方法は私家版千葉県遺跡DB(原典はふさの国文化財ナビゲーションダウンロードデータ)から木製品出土遺跡を検索して、その遺跡の発掘調査報告書記載データを調査する方法です。
なおイナウ似木製品の類似製品を見つけ出す学習ですから丸木舟、弓など利用目的が明白な木製品は扱いません。
この記事では匝瑳市亀田泥炭遺跡出土木製品を学習します。

1 亀田泥炭遺跡の概要

亀田泥炭遺跡の位置

亀田泥炭遺跡の位置
亀田泥炭遺跡は幅約600mの開析谷中央を流れる借当川の河川敷に位置します。道路建設に伴う橋梁架け替え工事部分の河床掘削域が発掘調査区域です。

発掘前の遺跡の状況
「千葉県八日市場市亀田泥炭遺跡-道路改良(市道7151号線)工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-」(1994、千葉県八日市場市建設課・財団法人東総文化財センター)から引用
発掘に伴い加曽利E式土器から晩期後半までの縄文土器29点、丸木舟先端部分、丸木弓、棒状木製品等が出土しました。この記事では棒状木製品のみを検討します。

2 棒状木製品

棒状木製品
「千葉県八日市場市亀田泥炭遺跡-道路改良(市道7151号線)工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-」(1994、千葉県八日市場市建設課・財団法人東総文化財センター)から引用

棒状木製品
「千葉県八日市場市亀田泥炭遺跡-道路改良(市道7151号線)工事に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-」(1994、千葉県八日市場市建設課・財団法人東総文化財センター)から引用

全周を取り巻いた刻みがあるという大変特徴的な棒状木製品が5点と表面をつるつるに磨いて少し湾曲した製品1点が出土しています。
発掘調査報告書では次のように記述しています。
●刻みのある棒状木製品
「用途は定かでないがこれら全ては同一製品と思われ、所々の削り出した箇所がみとめられ、また一つは焼け焦げた痕跡がある。」「樹種:カヤ」(参考 出土丸木舟の樹種もカヤ)
●湾曲した製品
「全長40.4㎝、最大長径3.6㎝、最大短径2.8㎝を測る。先端部を前方向から加工を施し、表面全体を念入りに枝払いを施し、全面に磨きをほどこしている。」

3 メモ
出土棒状木製品の用途を(一人)ブレーンストーミングをしながら推察してみました。
ブレーンストーミングですから「出た考えに頭から批判はしない」、「考えをとにかく沢山出す」ことが大切です。
●刻みのある棒状木製品
○は可能性あり、△は可能性少ないと考えます。
1 浮子 △
刻みに紐を結わえて網漁の浮子としたと考えることができます。それにしては凝ったつくりです。
2 ナイフの柄 ○
いずれの製品ともに両端が面取りがある端と鉤状になった端に分かれています。面取りになった部分に石器の刃を付け、紐で棒に巻き付け、刻みで紐を喰い込ませてしっかり縛ったと考えることができます。反対側の鉤状部はモノを引掻く機能を持っていたと考えると現代多機能ナイフの原型になります。
3 アワビおこし(のような牡蠣などを採る道具) ○
道具形状は2と同じですが、丸木舟にのって漁場へでかけ、アワビ、牡蠣などの貝を獲る道具であったと用途を特定して考えることも可能です。
4 木製石棒 △
全周刻みと尖った方の先端が亀頭をイメージする木製の石棒であったと考えることもできます。ただし具象性にはなはだ欠けます。
5 弦楽器 ○
刻みの部分に尖った小石を立てて、鉤の部分を使って弦を張った弦楽器であったと考えることもできます。

弦楽器イメージ

6 ガラガラ(楽器) △
紐でしばったこれら木片を一緒に揺すってガラガラ音を出す楽器とも考えられます。それにしては形状が凝りすぎています。
7 縄の編具 △
紐の先端をこれら木片に縛って、木片を交互に入れ替えて多数紐による複雑な(強度の強い)縄を編む道具であったと考えることができます。あるいは目の粗い網の編具であったとも考えられるかもしれません。
8 イナウ ○
各所に面取り、刻印、小孔(石器先端の四角い形状を示すような穴)があり実用生活道具にしては凝りすぎています。大きさは近世以降アイヌのイナウと異なり小ぶりですが、類似祭具可能性があります。貼り付けた鳥の羽や脱落した削り掛けを復元すれば立派な祭具になる可能性があると想像します。

●湾曲した製品
刻みがないのでイナウとは考えられません。
先端がとがっていて滑らかなしあげですから、山芋などの根茎掘り具かもしれません。
あるいは鮭叩き棒(魚叩き棒)かもしれません。縄文時代に借当川に鮭はのぼっていたと考えて間違いないと思います。(現代でものぼっているかもしれません。未確認)
あるいは特大土器で食物を煮る時の撹拌棒などかもしれません。

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