私の散歩論

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2020年1月30日木曜日

加曽利EⅡ式土器の観察 その3

縄文土器学習 329

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(平成30年度)と「同(印旛地域編)」(令和元年度 開催中)の展示土器(深鉢等)74点を全部同じ視点で観察しています。
この記事は加曽利EⅡ式土器23点観察の3回目観察です。

20 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.18加曽利EⅡ式1段構成区画文土器(有吉北貝塚)

No.18加曽利EⅡ式1段構成区画文土器(有吉北貝塚)

実測図
発掘調査報告書から引用

器形観察
・全体の概形はラッパ形に見えます。専門家が口唇部が直立になっている様子を勘案してこの器形をキャリパー形というのかどうか、自分は知りません。キャリパー形という定義があるのかどうかいつか知りたいと思います。
・胴部中央部にふくらみがあり、それによりくびれが生まれています。
・口唇部は平です。口唇部はその下の沈線により独立的にしつらえられています。
段構成観察
・全体を1段であると観察できます。
・本来あるべき口縁部文様帯(矩形区画文や渦巻文など)が欠落しています。
文様観察
・土器全体を立て割る区画文で覆われています。
・区画文の間は懸垂する沈線3本・2列磨消部からなっています。
感想
・懸垂磨消帯があるので加曽利EⅡ式土器に判別されているのだと思います。
・この土器が連弧文土器のなれのはてなのか、通常加曽利EⅡ式土器の零落形なのか、その出自検討を深めたいという興味が湧きだす対象物です。

21 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.19加曽利EⅡ式縦方向沈線文土器(芋ノ谷東遺跡)

No.19加曽利EⅡ式縦方向沈線文土器(芋ノ谷東遺跡)

器形観察
・キャリパー形です。
・胴部下方にふくらみがあり、わずかなくびれが生まれています。
・口縁部は平で、独立感はほとんどありません。
・口縁部の器厚変化が大きく粗雑につくられた様子が観察できます。
段構成観察
・全体が1つで構成されています。
・口縁部文様帯はありません。
文様観察
・直線状あるいは蛇行する2本一組の沈線が垂下します。土器途中で消えて下部まで続かない沈線もあります。
・磨消部はありません。
感想
・加曽利EⅡ式土器の決め手となる磨消縄文がない土器です。
・粗雑につくられた土器であり、この土器出土遺跡の状況とどのように対応するのか、興味が湧く土器です。

22 H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.38加曽利EⅡ式円文楕円形区画文土器(有吉北貝塚北斜面貝層)

No.38加曽利EⅡ式円文楕円形区画文土器(有吉北貝塚北斜面貝層)

実測図
発掘調査報告書から引用
(注 発掘調査報告書における写真処理に誤りがあり、この実測図は縦方向に伸びて歪んでいます。)

器形観察
・キャリパー形です。(キャリパー度?は低いです。)
・土器中央部がふくらみくびれています。(くびれ度?は低いです。)
・深い沈線により口縁部から口唇部が明瞭に独立しています。
・口唇部は平です。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成となっています。
文様観察
・口縁部円文は渦巻文の退化形であると考えられます。
・懸垂磨消帯が配置されていて、わずかにくびれたなめらかな器形形状のみばえをよくしています。
・口縁部と胴部の縄文の向きが異なり、口縁部の文様上の意義が強調されています。
感想
・キャリパー形、口縁部文様帯と渦巻文退化形円文、懸垂磨消帯などにより加曽利EⅡ式土器として判別されていると考えます。
・この土器個体の出自や利用については過去に検討し、多数の記事を書きました。
2019.03.08記事「加曽利EⅡ式円文楕円形区画文土器の観察
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参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり

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