縄文土器学習 592
有吉北貝塚出土加曽利EⅡ式土器の学習をしています。竪穴住居出土土器につづき、この記事では土坑出土土器を紙上観察します。
1 キャリパー形土器
1-1 第9群土器の例
sk446-468
sk534-577
sk811-1
いずれも口縁部と胴部の2段構成でsk446-468とsk534-577の胴部垂下文には磨消がありません。sk811-1の胴部垂下文には狭い胴部磨消が付いていて、発掘調査報告書ではこれを「磨消文の萌芽期」として捉え、10群に近い9群土器としています。
1-2 第10群土器の例
sk340-1
sk340-2
sk483-3
sk512-5
sk340-1、sk340-2、sk483-3は口縁部がよく巻いた渦巻文と区画文から構成され、胴部垂下文に磨消が付いている例です。sk512-5は口縁部が三角区画文で構成され、胴部垂下文に磨消が付いている例です。
1-3 第11群土器の例
sk77-1
sk238b-3
sk239a-189
sk239a-191
sk270-1
sk270-2
sk238b-3、sk239a-189、sk270-1、sk270-2は口縁部文様帯が退化した渦巻文と区画文から構成され、胴部に磨消懸垂文が付いています。
sk77-1、sk239a-191は口縁部文様帯が渦巻文から変化した円文と楕円区画文から構成され、胴部に磨消懸垂文が付いています。
2 口縁部文様帯のない土器
2-1 第10群土器の例
sk327-7
sk548-1
2-2 第11群土器の例
sk421-460
sk450-2
sk327-7とsk548-1が第10群土器であり、sk421-460とsk450-2が第11群土器とした決め手が何であるか、判るようでありながら判然としません。
3 連弧文土器
sk185-8
第11群土器とされる連弧文土器で連弧文が水平になっています。脚部が3足になっています。
4 感想
過去の加曽利貝塚博物館企画展「あれもE…」で展示された土器もいくつかあり、自分にとって土器分類が比較的わかりやすくなっています。
竪穴住居出土加曽利EⅡ式土器は典型例を揃えるのが困難でしたが、土坑出土加曽利EⅡ式土器は典型事例を揃えるのが容易です。その理由として、土坑では完形やそれに近い大型土器片が意図的に埋納された事例があるからだと想像します。特に第10群と第11群でその傾向が顕著ですから、集落最終段階で土坑がより積極的に祭祀を伴う用途で使われ、その時に完形やそれに近い大型土器片が埋納あるい残存したのかもしれません。今後で行う土坑学習の項で学習を深めることにします。
0 件のコメント:
コメントを投稿