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2021年7月3日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層基底の大形土器片層

 縄文時代社会消長分析学習 108

2021.07.02記事「有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構」で 有吉北貝塚北斜面貝層の谷頭部付近がガリー浸食地形を埋めて台地浸食破壊を食い止める防災工事跡である、防災工事遺構であるという見立てを述べました。この見立てでは貝層基底部に存在する大形土器片層を現代でいえば床固工であると考えました。この記事ではこの大形土器片層を観察してみます。

1 再掲 有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)


有吉北貝塚北斜面貝層谷頭部は縄文時代災害防止工事遺構(見立て)

2 第3断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真


第3断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真

土器出土状況図と写真を対照することができましたので、写真、平面図、断面図を総合的に観察できます。普段は枯れている流路にそって大形土器片が分布しています。その場で破壊されたと考えられます。流水の影響は特段に感じられません。廃用大型土器をこの谷底まで持ち込みそこで破壊して、ほぼそのまま残存したのだとおもいます。仮に頻度の低い出水で土器片が流されても、再びこの場に廃用土器を持ち込み破壊して、結局流路沿いに大形土器片層を残存させたのだと思います。

3 第4断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真


第4断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真

ここでも土器出土状況図と写真を対照することができました。第3断面と状況はほとんど同じです。しかし、この付近では平面図でインブリケーション(覆瓦状構造)が観察できます。


参考 土器出土状況の様子


参考 覆瓦状構造

土器片が流水の影響を受けたことがあることはこの覆瓦状構造の存在から明らかです。しかし、全体の様子は流水の影響をあまり感じさせない堆積状況を示すといっていいと思います。このような様子は、土器片が流路固定のために設置された床固工類似施設であると考えると、よく理解できます。つまり、土器片層は通常レベルの流水発生では流路を固定していた(下方浸食を防いでいた)ということです。縄文人は通常レベルの流水発生では運搬されることがなく下方浸食されないであろうと考えた土器片をその場に設置したのだと思います。

4 第5断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真


第5断面付近の土器出土層 平面図、断面図、土器出土状況写真

ここでも土器出土状況図と写真を対照することができました。

この付近より下流では土器片の分布が散漫になりかつ拡大します。また土器片が小さくなります。この付近から下流では上流から運搬されてきた土器片が多くなるのかもしれません。

5 メモ

一人では到底運べない廃用大型土器を谷底まで運び込み、その場で破壊するというきわめて特異で意識的な活動が認められます。

この記事では扱いませんが、イノシシ頭骨、下顎骨が土器片とともに出土していて、イノシシ頭骨を使った祭祀が土器片層形成に関連して存在したと推定します。

大型土器破壊による大形土器片層は北斜面貝層でこの場所だけです。短い期間の1回きりの活動です。

出土土器は11群土器がメインですが、12群土器も含まれます。12群土器は集落最後の土器群です。つまり北斜面貝層谷頭部付近の貝層は基底面から最上部まですべて集落最終期に急いで形成された可能性が生まれます。貝層形成のメカニズムを解き明かさなければなりません。


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