私の散歩論

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2024年7月14日日曜日

土偶(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル

 3D model of the observation record of the clay figurine (Bibi 4 site, Chitose City)


I created a 3D model of the observation record of the clay figurine (Bibi 4 site, Chitose City) exhibited at the Chiba Prefectural Museum's special exhibition “Excavated Japanese Archipelago 2024”. The clay figurine's face is a prayer face that looks up to the sky and has a non-stylized facial expression. I imagined that this clay figurine was a tool to pray for the repose of family members in heaven (the afterlife).


千葉県立中央博物館特別展「発掘された日本列島2024」に展示されている土偶(千歳市美々4遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。土偶の顔は天空を見つめ、顔つきも様式化されていない祈りの顔です。この土偶は天界(あの世)にいる家族の冥福を祈る道具であると想像しました。

1 土偶(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル

土偶(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル

高さ20㎝

撮影場所:千葉県立中央博物館特別展「発掘された日本列島2024」

撮影月日:2024.06.27


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.531 processing 112 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 土偶(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル テクスチャ画像調整

この3DモデルはテクスチャのレベルをPhotoshopで調整して(白くして)、テクスチャを見やすくしたものです。

土偶(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル テクスチャ画像調整

高さ20㎝

撮影場所:千葉県立中央博物館特別展「発掘された日本列島2024」

撮影月日:2024.06.27


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.531 processing 112 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

3 展示説明


展示説明

土偶は土坑墓床面からベンガラ(酸化鉄)に覆われてうつ伏せの状態で出土しました。副葬品と考えられます。墓の中から完全な形で土偶が出土することは大変珍しく貴重な事例です。

4 観察メモ

この土偶を観察して生まれた感想を後日のためにメモしておきます。

4-1 顔が天空を見つめている

この土偶は顔が天空を見つめています。顔が上向く土偶は数少ないです。この土偶の最大の特徴が上向く顔にあると直観します。


天空を見つめる土偶

4-2 祈っている顔であり、様式化していない

この土偶の顔の様子は様式化していません。ミミヅク土偶とか、山形土偶とか一目でわかるキャラクターではありません。現実の縄文人の顔を造形したような印象を受けます。また祈っているような印象を受けます。

4-3 乳首が表現されている

この土偶の乳房の先端に竹管文が刻印されていて、乳首が表現されています。これまで私が見たことのある土偶で乳房が強調表現されているものは沢山ありましたが、乳首が表現されたものは一度も見たことがありません。祈りに使う土偶に乳首という授乳器官細部が強調表現されていることに違和感を感じます。

4-4 竹管文文様の意味が直観しづらい

竹管文(丸い輪)文様が肩-首下付近1列と膨らんだ腹付近に横5列ほどあります。衣服表現であると想像しますが、どのような衣服であるのか直観しづらいです。(肩-首ラインがポンチョ風衣服の上端線を、腹部文様が下履きを表現しているのかもしれません。)

4-5 手足表現、妊娠腹、耳輪、髪結などは一般的表現

簡略な手足表現、膨らんだ妊娠腹、耳輪、髪結などは土偶一般の表現であるように感じます。

4-6 土坑墓床面からうつ伏せの状態で出土

この土偶が土坑墓床面からうつ伏せの状態で出土している状況は、この土偶の意義を考える上で重要です。

5 考察(想像)

・土偶の顔が天空を見つめ、顔つきが祈っているような印象を受けるので、この土偶は天界(あの世)に向かって祈っている様子を造形した土偶であると考えます。

・乳首が表現されている様子から授乳経験があり、かつその授乳活動が全うできなかった(愛する子どもが死亡してしまった)女性がこの土偶をつくったと考えます。

・土偶が墓床面からうつ伏せ状態で出土した様子から、この土偶は遺体に抱かれて埋葬されたと考えます。遺体は消失し、抱かれた土偶がそのまま埋葬面に残ったと考えます。

以下は想像に想像を重ねた超想像です。

・ある女性が子どもを産んで授乳して育てたが、途中で子どもは死亡した。女性はとても悲しみ、子どもの冥福を祈る道具としてこの土偶をつくった。この土偶は天界(あの世)にいる子どもの冥福を祈る女神の姿をしている。この土偶をそばに置いて、女性は子どもの冥福を祈っていた。

・その女性が死亡した。家族は女性の胸にこの土偶を抱かせて埋葬した。

6 参考 天空を見つめる土偶


群馬県郷原出土「ハート形土偶」を図案にした切手


仮面の女神 https://skfb.ly/oorzv

7 参考 鳥が飛ぶ空を見ている弥生時代の顔


人頭土製品 (西川津遺跡出土、島根県教育庁埋蔵文化財調査センター所蔵)

設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)から引用

2021.09.15記事「鳥が飛ぶ空を見ている弥生時代の顔」ブログ「芋づる式読書のメモ」


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