私の散歩論

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2024年9月22日日曜日

土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)観察記録3Dモデル

 Observation record 3D model of clay figurine upper body (Jorin-ji site, Ina City, Nagano Prefecture)


The upper body of the clay figurine (Jorin-ji site, Ina City, Nagano Prefecture) was observed at the Ina City Creative Center and a 3D model was created. Numerous bean impressions and bean remains can be observed on this clay figurine. It is thought that this clay figurine was made to pray for a good bean harvest.

This clay figurine is valuable when considering the significance of mid-period clay figurines.


伊那市創造館で土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)を観察し、3Dモデルを作成しました。この土偶はマメ圧痕とマメ遺体が多数観察できます。マメ栽培の豊作を祈願してこの土偶を製作したと考えられます。

この土偶は中期土偶の意義を考える上で、物質的証明要素を含んでいる点で、とても貴重な土偶です。

1 土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)観察記録3Dモデル

土偶上半身(長野県伊那市常輪寺遺跡)観察記録3Dモデル

縄文時代中期

マメ圧痕とマメ遺体が多数観察できる

撮影場所:伊那市創造館

撮影月日:2024.07.15


展示の様子

ガラス面越し撮影

3DF Zephyr v7.531 processing 73 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 マメ圧痕とマメ遺体

この土偶はマメ圧痕とマメ遺体が多数観察できる特別なものです。


マメ圧痕


主なマメ圧痕とマメ遺体


主なマメ遺体

土偶の内外に多数のマメを埋め込んでいることが直接観察できます。圧痕は主なものだけ図示しましたが、小さいものもさらに多数あります。

圧痕だけでなく、マメ遺体も胴部断面で多数観察できることに驚きます。

これだけ多数のマメを土偶に埋め込んだ意味は、マメの豊作を祈願する対象としてこの土偶を製作したと考えることが一番自然です。マメは栽培していたからこそ、その豊作を祈願したのです。

マメの栽培-マメの豊作祈願-豊作祈願ツールとしての土偶という項目がしっかりと繋がったと考えます。

土偶は女性の祈願道具であることから、マメ栽培は女性が担っていたと考えます。

なお、中山誠二著「マメと縄文人」(2020、同成社)には縄文時代のマメ科種子の出土状況という詳しい表がありますが、この表には常輪寺遺跡の記述はありません。

この土偶は、「土偶の出現年代の古さからみても、人間生活にとってより基本的な祈りに関係したシンボル、とりわけ生命と生活を維持していくうえで欠かせない生産や食に関連した祈りの対象と考えるのが、やはりもっとも妥当であろう。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)という思考の正確さを証明するような土偶です。

この土偶は中期土偶の意義を考える上で物質的証明要素を含んでいるとても貴重な土偶であると考えます。

【追記 2024.09.23】
全国遺跡報告総覧から発掘調査報告書(「東方A・村岡北・村岡南・常輪寺下・北条遺跡」(1975、伊那市教育委員会)をダウンロードして確認したところ、この土偶は加曽利EⅠ式土器が出土する第18号竪穴住居内の穴の側面から倒立して出土したことがわかりました。土偶は出土写真が掲載されていますが、観察や記述は一切ありません。

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