私の散歩論

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2025年10月7日火曜日

貝層3D空間における土器分布復元(遺物データベース試用)

 Reconstructing the Distribution of Pottery in 3D Space in Shell Layers (Artifact Database Trial)


I have created a prototype reconstruction of the distribution of pottery in 3D space in the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound. This is the result (provisional) of my efforts to familiarize myself with the operation of the artifact database. Interesting phenomena can be observed. This 3D spatial distribution data of various artifact classifications in shell layers is unprecedented in Japan.


有吉北貝塚北斜面貝層3D空間における土器分布復元資料を試作しました。遺物データベースの操作習熟作業の結果産物(仮成果)です。興味ある事象が観察できます。貝層における、遺物の各種分類別3D空間分布資料は、本邦では類例をみたことがありません。

1 土器分類

遺物台帳の情報から、データベースでは土器・土製品について次の分類をしています。

●土器・土製品分類1

1…土器

2…土製品

●土器・土製品分類2

1…(土器)土器

2…(土器)口縁部

3…(土器)底部

4…(土器)把手

11…(土製品)土錘

12…(土製品)円盤

13…(土製品)耳飾

14…(土製品)11、12、13以外の土製品

●土器・土製品分類3

1…朱塗

2…非朱塗

この情報にから次の項目の3D分布図を作成しました。

参考 全遺物の3D分布

1 土器・土製品の3D分布

2 土器口縁部の3D分布

3 土器底部の3D分布

4 土器把手の3D分布

5 朱塗土器の3D分布

2 土器3D分布図


参考 全遺物分布

3D座標が揃った全遺物55892件の分布図です。背景グリッドの大きさは1m×1mです。


土器分布

3D座標が揃った土器・土製品17481件の分布図です。


土器口縁部分布

3D座標が揃った土器口縁部3482件の分布図です。


土器底部分布

3D座標が揃った土器底部1073件の分布図です。


土器把手分布

3D座標が揃った土器把手173件の分布図です。


朱塗土器分布

3D座標が揃った朱塗土器529件の分布図です。


土器分布(任意視点から)


朱塗土器分布(任意視点から)

3 メモ

・全遺物分布図と土器分布図を比較すると分布傾向が明瞭に異なります。全遺物は貝層の中に満遍なく分布している様子が読み取れ、おもに骨・歯の分布を表現しているようです。土器はガリー流路に沿って密に分布していて、斜面での分布が少なくなっています。詳しい検討は後日行いますが、土器はガリー流路に好んで投棄され、斜面に投棄されたものは少なかったようです。

・土器口縁部、土器底部、土器把手の分布も大局的には土器分布と同様の傾向にあるように見えます。土器部位別に分布特性が本当に同じなのか、統計的検証を後日行うことにします。

・朱塗土器の分布特性は土器分布、部位別土器分布と異なり、ガリー流路沿いの集中が見られません。重要な検討課題発見です。朱塗土器が日常的な調理用途ではなく、儀礼的調理に関わる特別な用途であったとすると、その廃棄(投棄)の仕方も特別なものであった可能性を感じさせる分布事象です。

・土器分布及び部位別分布の濃密の様子が発掘作業単位別に異なります。遺物個体として取り上げる大きさ基準や、接合する土器片を分けるか一緒にするかの基準、土器部位別情報記録の可否などが現場(担当者)によって微妙に異なっていたことが想定できます。


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