小グリッド(2m×2m)を単位とした土器1破片あたり重量の分布を調べると、土器密集度と逆相関することがわかりました。
つまり土器が密集すればするほど、土器片は小さくなるのです。
この現象は、土器密集場所とは祭祀が熱心に行われた場所であり、その祭祀では持ち込まれた土器が破壊されたからと解釈しました。
祭祀場所中心部付近には沢山の土器が持ち込まれ、熱心な祭祀が行われ、その熱心さに比例して土器がより細かく壊されたと考えました。
西根遺跡にもちこまれた土器は機能喪失土器、あるいは持ち主がいなくなったものであることが想定できますが、持ち込まれたときはある程度完形を忍ばせる姿をしていて、その後この場所で細かく破壊された姿が浮かびあがりつつあります。
この記事では1破片当たり重量データをQGIS分析機能を利用してさらに検討します。
1 土器重量の大小別に1破片当たり重量データを観察する
1-1 土器重量最大分位グリッドと最小分位グリッドを対象とした1破片あたり重量データ
土器重量最大分位グリッドと最小分位グリッドを対象とした1破片あたり重量データ(第1集中地点、第2集中地点)
土器重量最大分位グリッドと最小分位グリッドを対象とした1破片あたり重量データ(第3集中地点、第4集中地点、第5集中地点)
この図から次の特徴を読み取ることができます。
a 土器重量最大分位グリッド(土器が沢山密集しているグリッド)は1破片あたり重量が小さくなるのですが、第1、2密集地と第3~5密集地ではその値が異なります。第1、2密集地より第3~5密集地のほうが1破片当たり重量の値がより小さくなっています。
b 土器重量最大分位グリッド(土器が沢山密集しているグリッド)でも1破片あたり重量が最大分位(赤)になっている特異場所があります。
c 土器重量最小分位グリッド(土器が最も少ないグリッド)における1破片あたり重量の分布をみると、土器密集域から離れた場所ほどその値が大きくなるように見えます。
次にこのデータとほぼ同じ情報となりますが、参考として土器重量大分位(123)グリッドと小分位(45)グリッドを対象とした1破片あたり重量データを示します。
1-2 土器重量大分位(123)グリッドと小分位(45)グリッドを対象とした1破片あたり重量データ
土器重量大分位(123)グリッドと小分位(45)グリッドを対象とした1破片あたり重量データ(第1集中地点、第2集中地点)
1-1と同じことが観察できます。
2 考察
2-1 第1、2集中地点と第3~5集中地点の土器高密集域における1破片当たり重量の違いについて
1破片当たり重量の違いから、第1、2集中地点より第3~5集中地点の方が祭祀がより熱心に行われるようになったと考えました。
2-2 土器高密集域における1破片当たり重量値の特異グリッドについて
土器重量最大分位グリッドでみる特異グリッド(赤)は全て流路が含まれるグリッドです。
既に特大加曽利B式土器検討でも明らかになったことですが、丸木舟で運ばれてきた土器を、それ以上舟を遡上させることができない場所(廃絶ミナトの近く)で陸に揚げる作業をして、その場に置いたあるいは落ちた土器がかなりあり、それがこの特異グリッドの素性であると考えます。
土器を水路から揚陸する時に水面に落ちてしまえばそれを壊すことは無理です。また意識的に水路内に置いたとしても、水面に土器を投げたとき、既に土器片が堆積している場所の衝突より水面衝突の破壊程度は少なくなってしまいます。
なお、第1密集地、第3密集地、第4と第5密集地近くにこの特異点があること自体が土器が丸木舟で運ばれてきたこをと物語っていると考えます。
陸域から流路沿いに分布する集中地点に土器を運び込むことは考えずらいので、西根遺跡における土器は全て丸木舟で運ばれてきたと考えます。
丸木舟でわざわざ運ぶような場所に土器送り場を設けた意味は、土器そのものの送りに意義があるのではなく、廃絶ミナトの送り(施設空間の送り)の手段として土器送りがあったからだと思います。
2-3 密集域から離れるほど破壊程度の小さい土器が分布する
祭祀場所の区画や祭祀に必要な祭壇(ヌササンのようなもの)に対応して土器を配置する場合もあったのではないかと想像します。この場合土器を細かく壊さなかったと考えます。
また集団によらない個人レベルの祭祀では土器壊しの熱心さは少なかったのかもしれません。
なお、発掘調査において出土量が小さいデータを「グリッド一括」「河川一括」としてくくってしまった影響はあまりないと考えます。
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