私の散歩論

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2019年3月5日火曜日

加曽利E式土器の「口径/底径」値の考察

縄文土器学習 59 加曽利貝塚博物館企画展展示土器の観察 34

加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(終了)の展示土器38点の個別観察をメモしています。この記事では加曽利E式土器の「口径/底径」値を考察します。

加曽利EⅣ式土器の底径(接地面大きさ)がそれ以前よりかなり小さくなっているように感じますので予備的な考察をします。2019.03.05記事「加曽利EⅣ式4単位波状口縁深鉢の観察」参照

1 「口径/底径」値
土器底径(接地面直径)を1としたときの土器口径(土器外形の最大幅)の値を「口径/底径」値とします。
以下その概略値を撮影写真から求めます。

2 加曽利EⅠ式土器の「口径/底径」値

加曽利EⅠ式土器の「口径/底径」値
企画展パンフレットに掲載されているNo.4土器の「口径/底径」値は2.9です。

3 加曽利EⅡ式土器の「口径/底径」値

加曽利EⅡ式土器の「口径/底径」値
企画展パンフレットに掲載されているNo.9土器の「口径/底径」値は4.6です。

4 加曽利EⅢ式土器の「口径/底径」値

加曽利EⅢ式土器の「口径/底径」値
企画展展示土器のうち土器上部が異様に大きいと感じたNo.28土器の「口径/底径」値は6.6です。

5 加曽利EⅣ式土器の「口径/底径」値

加曽利EⅣ式土器の「口径/底径」値
企画展パンフレットに掲載されているNo.30土器の「口径/底径」値は5.7です。

6 考察
6-1 「口径/底径」値は時間とともに大きくなる
・企画展パンフレット及び企画展展示土器全体を見渡して、「口径/底径」値は次のように変化するという印象を受けます。
加曽利EⅠ式→加曽利EⅡ式で「口径/底径」値が大きくなる。
加曽利EⅡ式→加曽利EⅣ式で「口径/底径」値がさらに大きくなる。
・加曽利EⅢ式には「口径/底径」値が大きなものも展示されていて、それを踏まえると加曽利E式器全体を通じて「口径/底径」値が大きくなるような傾向を感じます。

・「口径/底径」値が時間とともに大きくなる傾向が本当にあるとすれば、その理由について次のような考察が成り立つかもしれません。

6-2 調理活動効率の改善
「口径/底径」値が大きくなるということは、土器最下部付近の容量が減ることを意味します。土器最下部付近は熱をあまり受けない場所です。熱をあまり受けない場所の容量が減ることは調理液体撹拌行動の減少など調理活動効率を高めることになります。
加曽利E式時代縄文人は土器底部を狭めることによって調理活動がより効率的に実施できることを体験的に学んでいたと推測します。
なお、調理活動効率の改善を加曽利E式時代縄文人が望んでいたとすれば、それはその時代の森林破壊…薪の入手困難性増大などと関係していたかもしれないと空想します。(2018.09.07記事「事例学習 有吉北貝塚」参照)

6-3 炉における土器設置技術の向上
「口径/底径」値が大きくなることは土器を平地に置いた時に不安定になることを意味します。その不安定をなくすための、炉における土器設置技術向上が伴っていたと想像します。
EⅢ式No.28土器の下部には横走する激しい擦過痕がありますが、廃土器利用の固定具普及などがあったのかもしれません。

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