長野県立歴史館で予期しない展示物として顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカを観察しました。最近千葉市埋蔵文化財調査センターで人面付土版を見たばかりであり、その比較に興味が湧きましたので土器からずれた土版の寄り道学習を楽しんでみます。
2020.02.05記事「人面付土版 観察記録3Dモデル」
1 顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカ 観察記録3Dモデル
顔の付いた土版(松本市エリ穴遺跡)レプリカ 観察記録3Dモデル
縄文時代晩期、松本市立考古博物館蔵(複製)
撮影場所:長野県立歴史館
撮影月日:2020.02.14
ガラス面越し撮影
寸法:約14.9㎝×約7.8㎝×約1.2㎝(3Dモデルから簡易計測)
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 64 images
展示の様子 素3Dモデル画面
2 観察と考察
眉、目、耳、口が付いています。鼻もあるように見えます。乳房と女性器、足が表現されています。腰にフリルのついた下着様の着衣があり、その間から性器を露出させるというパターンになっています。このパターンは尖石縄文考古博物館で観察した仮面の女神と同じです。胴部脇の縄文は着衣を、頭の縄文は頭髪(結髪)を表現しているのかもしれません。
このように観察するとこの土版の表現要素は土偶とほとんど同じであると感じました。
千葉市埋蔵文化財調査センターで観察した人面付土版は男であり、土偶は女であるから土版と土偶は根本的に異なると考えた思考が浅はかであったことが浮かび上がりました。
図書「特別企画土偶展」(長野県立歴史館)ではこの顔のついた土版について次の実測図付きで「なんと松本市エリ穴遺跡例には、方形の土版そのものに、顔そして乳房や性器などの表現もあり、もはや土偶と土版の同化とさえ取れる。」と記述して、縄文土偶のおわりについて詳しい説明をしています。
エリ穴遺跡出土土版
図書「特別企画土偶展」(長野県立歴史館)から引用
性器を強調する土偶やこの土版は生殖にかかわる祭祀ツールであったと想像します。そして、そもそもそれを作ったのは女か男か、祭祀を主導したのは女か男か、自分にはまだ確信をもったイメージができていません。
土偶は女の道具で、石棒は男の道具であるという説も一度疑ってみることも学習思考を熟成させるためには必要のようです。
もっと言えば、清瀬市郷土資料館の内田裕治先生がおっしゃっていたように女と男という単純区分ではすまない全体を包み込む太母、両性具有、ウロボロスのような概念がないと理解できないのかもしれません。
土偶のイメージが明瞭になれば土偶と土版の違いもおのずと理解できるに違いありません。
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