私の散歩論

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2024年7月28日日曜日

直接観察できない縄文人行動を解釈する研究ツールとしての類推法

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 13


Analogy as a research tool for interpreting Jomon behavior that cannot be directly observed


Study 13 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


At the end of the prologue to “DOGU & SEKIBOU” by Yasuhiro Taniguchi, I learned about analogy, a research tool for interpreting Jomon behavior. In conclusion, the book emphasizes the importance of interpretation methods that involve “comparison” and “contrast” of structures and contexts, rather than “analogy” from similar cases.


谷口康浩著「土偶と石棒」の序章最後として、縄文人行動解釈のための研究ツールである類推法について学習しました。結論として、類似事例からの「類推」ではなく、構造やコンテクストの「比較」「対照」の解釈法の大切さが書かれています。

序章 儀礼考古学の現代的意義

3 前提的問題

(2)解釈とアナロジー

・序章の最後に考古学研究における民族誌や歴史民俗によるアナロジー(類推法)の有効性と援用の問題を論じています。とても参考になる記述です。

・方法論的規準として、渡辺仁(1996)の考古学上の「解釈」に対する研究者の方法論的な態度の三つのモードを紹介しています。

「モード1とは、遺物の人類学的意味の理解には無関心で、資料(遺物)の記載が研究目標であるために、客観的に扱える形態的属性の論議から外にほとんど出ようとせず、遺物をめぐる主体の行動の実態と意味を解釈することに消極的ないし否定的で、民族誌的情報による類推にも懐疑的である。

モード2は、遺物の用途や機能に興味をもつが、科学的・人類学的な解釈の方法論をもたずに形態的パターンの類似した個別事例の民族誌情報を直載に持ち込むので、独断的・主観的解釈に陥り、解答の論理性あるいは根拠の客観性が欠ける。

これに対してモード3は、科学的アプローチによる解釈を得るために民族誌的情報を援用する方法を研究し、土俗考古学(ethnoarchaeology)をその方法的規準とする。

モード2が考古・民族の個別事例の形態的パターンの類似を直接解釈の根拠にしてしまうのに対し、モード3はそのような個別要素の比較ではなく、要素群の機能的相互関係の類似すなわち構造の類似に基づいて機能を類推する方法を取る(渡辺1993)。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・著者は「行為」と「コンテクスト」の分析から要素群の構造的な関係態を抽出できるか否かを検討する必要があるとして、行為やコンテクストの「反復性」「再現性」が考古学的な方法で確認できるかどうかが必要条件になると強調しています。

・最後に類似した事例からの「類推」ではなく、構造やコンテクストの「比較」「対照」をおこなえる解釈法の構築が課題となると述べています。

【メモ】

・出土した遺物・遺構などから縄文人の行動を直接観察することはできません。そこで、直接観察された民族誌情報を縄文人に適用して、観察できない縄文人行動を解釈する研究ツールが類推法(アナロジー)です。

・しかし、過去の類推法は個別事例の形態的パターンの類似を直接解釈の根拠にしてしまい、それでは弊害が大きいことが述べられています。

・結論として類似した事例からの「類推」ではなく、構造やコンテクストの「比較」「対照」をおこなえる解釈法の構築が課題となると述べています。この方法は、直接観察した人の行動(民族誌情報)と直接観察できない縄文人行動を、構造やコンテクストで「比較」「対照」して検討して、最終的には縄文人行動を可能な範囲で想定することになるのです。単純な類推と比べると格段に進歩した研究ツールであると考えます。

・このような方法論的問題意識で書かれた本書本論の学習をこれから始めます。とても楽しみです。

【感想】

・考古学の方法論としての類推法の問題点と、それを克服する新たな方法については理解しました。

・自分は考古学を学んでいるのではなく、考古事象を観察して楽しむことを趣味として生活しています。・考古学を知ることは趣味活動をより深く楽しむために必要ですから、本書のような考古学専門書の学習にも興味が湧きます。

・遺物を観察していて、その遺物の使い方など、決して観察できない縄文人行動とか心理に大いに興味が向かいます。

・その際、本書では戒められている「個別事例の形態的パターンの類似を直接解釈の根拠にする」検討も大いに行い、その結果をSNSで情報発信することにします。そうすることによって考古趣味活動を楽しむことにします。

・一方、構造やコンテクストの「比較」「対照」解釈法についても頭の片隅に置き、そうしたことを考えることができる情報に直面した時は、その解釈法についての検討も楽しむことにします。


土偶

この画像は本文と関係ありません。


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