Thoughts on animal-shaped clay products rumored to have been excavated from the Kasori shell mound
I have written down my thoughts on the animal-shaped clay products rumored to have been excavated from the Kasori shell mound. I think of the products as clay whistles. I imagine the animals as fantasy creatures that carry the souls of the dead to the afterlife. I think of them as tools used to play music in funeral rites.
伝加曽利貝塚出土動物形土製品に関する感想をメモしました。製品としては土笛と考えます。動物は死人の魂をあの世に運ぶ空想動物と想像します。葬送儀礼で音楽を奏でる道具と考えます。
1 トリ形動物土製品の例
伝加曽利貝塚出土動物形土製品
2024.08.27記事「伝加曽利貝塚出土動物形土製品 観察記録3Dモデル」
各地遺跡のトリ形土製品
山田康弘・国立歴史民俗博物館編「縄文時代 その枠組み・文化・社会をどう捉えるか?」(2017、吉川弘文館)収録「8 縄文社会の複雑化と民族誌 高橋龍三郎」から引用
2021.10.06記事「縄文後晩期の鳥人間土偶」
動物形土製品レプリカ(千歳市美々4遺跡)
2024.07.16記事「動物形土製品レプリカ(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル」
トリ形動物土製品は稀に出土する土製品ですが、少なくとも関東から北海道まで分布しています。
形状はズングリムックリしていて、中が空洞で、表面に大きなまん丸の穴が1~3箇所空いています。
トリ形といっても嘴があるはずの頭部は全体に対して小さく、省略的な造形である印象を受けます。
伝加曽利貝塚出土動物形土製品の頭部
伝加曽利貝塚出土動物形土製品の頭部が、欠けているようには観察できません。観察できる出土物の頭部が完成品の頭部そのものである可能性を感じています。(目や嘴を認識できません。)あるいは一部欠けた跡が使用による磨耗で欠け跡が見えなくなったのでしょうか。
もしトリ形というならば、翼(手)は肝心かなめの部位になりますが、とても翼とは言えない小突起になっています。そして指が造形されています。伝加曽利貝塚出土動物形土製品は翼(手)が片側2つありますから、理解に苦しみます。
足があり、どれも引っ込んだ様子が表現されていて、その様子からトリが飛翔している様子を感じることができます。
2 トリ形動物土製品の例 その2
人間と動物の折衷的形態(ヒトと動物の共通の母)
山田康弘・国立歴史民俗博物館編「縄文時代 その枠組み・文化・社会をどう捉えるか?」(2017、吉川弘文館)収録「8 縄文社会の複雑化と民族誌 高橋龍三郎」から引用
2021.10.06記事「縄文後晩期の鳥人間土偶」
トリ形動物土製品には乳房が造形されているので、半人半獣像とされるものが存在するようです。
現物あるいは詳しい写真や実測図をみて、できれば展示物の3Dモデルを作成して、確かに半人半獣像だという印象を自分自身で持ちたいものです。(今は資料を鵜呑みにするしかありません。)
3 トリ形動物土製品の機能に関する感想
全体の形状が中空でズングリしていることと大きく開いた丸い穴から、この土製品の本質的機能は土笛であると考えます。装飾を除くと土笛出土例と似ています。現物のレプリカをつくり、吹いてみれば、土笛であることを証明できると考えます。
土笛(伝加曽利貝塚出土動物形土製品)を吹いている想像図
片手で土笛を持ち、上の穴から息を吹き込み、下の穴を小指で押さえて音程を調節していたと考えます。
参考 土笛(縄文時代中期、箕輪町御射山遺跡)
(この例では吹く穴1つとスリットがあります。スリットを押さえて音程を調整していたと考えます。なおこの例はよく観察すると獣面が描かれています。)
2021.11.12記事「完形で出土した縄文中期土笛の観察」
4 トリ形動物土製品の意味
4-1 造形
頭、胴体、手(羽)、足が観察できるので動物が造形されていることは間違いないところです。千歳市美々4遺跡出土物(レプリカ)を参考にするならば、頭はトリ(ガンカモ)で、足も水かきのあるトリで、足の様子から飛翔しています。しかし、羽のかわりに指のある短い手が付いています。このような動物は実在しません。従って、この動物はトリをモデルとした想像上の動物であると考えます。
中国新石器時代に想像上の動物(龍)が考古遺跡で貝殻絵画で出土しているので、原始時代に想像上の動物(実在しない動物)が人々の共通観念として存在していたことは否定できません。
貝殻モザイクの龍虎 仰韶文化(前5000~前3000年)後期の河南省西水坡四五号墓(和田晴吾著「古墳と埴輪」(岩波新書)から引用)
トリをモデルとしたこの想像上の動物は特定の名前を持ち、特定の神話の中で語られていたと想像します。半人半獣神話と関わるのかもしれません。
4-2 儀礼上の意義(想像)
トリをモデルとした想像上の動物が死者の魂をあの世に運ぶ神話があったと想像します。死者の魂が肉体から抜け出した後、この想像動物に運ばれて(導かれて)あの世に到達するという観念(神話)があったと想像します。
千歳市美々4遺跡出土動物形土製品と土偶を同時に観覧した時に描いた想像図
2024.07.16記事「動物形土製品レプリカ(千歳市美々4遺跡)観察記録3Dモデル」
4-3 儀礼道具
神話を題材にした造形で土笛をつくり、葬送儀礼でその土笛で音楽を奏で、死者の魂をあの世に送ったのだと考えます。トリ形動物土製品は葬送儀礼道具(楽器)です。
5 伝加曽利貝塚出土動物形土製品に手(翼)が2つある意味
伝加曽利貝塚出土動物形土製品には手(翼)が片側2つあります。両側で4つありますから、解剖学的に非合理的です。この非合理は次のように考えます。
この土笛を持ちやすくするために手(翼)をわざと片側2つにしたのだと考えます。2つの手(翼)の間に親指と中指を入れると、とても持ちやすくなり、小指で下の孔を半分塞いだり離したりしてメロディーを奏でることがとても容易になります。
想像上の動物であるから、解剖学的不合理はあまり気にならないのだと思います。現代人がキューピッドや天馬に目くじらをたてないようなノリで、手(羽)を増やして、土笛を持ちやすく、演奏しやすくしたのだと思います。
6 さらなる情報収集
伝加曽利貝塚出土動物形土製品が唐突に加曽利貝塚博物館企画展「縄文時代の土偶の顔」に展示された意味(背景)を知りたくなります。それも展示は会期途中からです。いつもはこのような時は加曽利貝塚博物館にメールで情報を求めたりします。しかし、web情報で、2024年8月31日開催博物館連携講座「造形の考古学-土偶と埴輪-」で、「縄文時代の動物形土製品」(飯島 史尊(千葉市教育委員会))という講演があります。まずはこの講演を聞いて、情報収集に務めることにします。台風10号で中止にならなければよいのですが。
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