私の散歩論

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2022年1月31日月曜日

アワビ殻の入手

 Obtaining abalone shells


I decided to do a small experiment to deepen the learning of the modified abalone excavated from Daizenno Minami Shell Mound. For that, I got abalone shells via a flea market site.


大膳野南貝塚出土アワビ加工品の学習を深めるために、ささやかな実験をすることにしました。そのためにアワビ貝殻をフリマサイト経由で入手しました。


入手したアワビ貝殻


アワビ貝殻の干渉色


参考 大膳野南貝塚出土アワビ加工品(千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で撮影(2021.12.22)

大膳野南貝塚出土アワビ加工品は西野雅人先生(千葉市埋蔵文化財調査センター所長)により、縄文時代にあたかも古代鏡のように「太陽との交信」に使われたかもしれないマジカルな祭具として説明されています。とても興味深い道具です。

この道具の学習を深めるために、アワビ貝殻を入手して、ささやかな実験をすることにしました。

次のような実験を予定します。(アワビ貝殻は3個入手)

1 内面を磨いて(削って)いくと大膳野南貝塚出土加工品内面のようになるのか。

2 太陽光をアワビ内面を凹面鏡のように使って反射させるとどのようになるのか。

3 貝刃のようにアワビを利器として使うと、どのようになるのか。

4 内面の干渉色を最大限楽しむにはどのように光を当てたらよいか。

5 仏像の堆画(うずめがき)(※)をするとどのようになるのか

などです。

なお予察的に、アワビを凹面鏡のように使って、太陽直射光を日陰に反射させたところ、中心部がピンクで周辺がグリーンに輝く干渉色の丸い光が浮かび上がりました。いままで知らなかった感動的光景が出現しました。西野雅人先生「太陽との交信」仮説ががぜん鮮やかな色を帯びてきて、その確からしさが高まります。

※ 仏像の堆画(うずめがき)

「和漢三才図絵」鮑の項(7-67)の次の記述を実験してみます。仏像は無理ですから、何か単純な図像を書きます。縄文学習とは直接関わりませんが、鮑と信仰との関わりのヒントが得られるかもしれません。

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「鮑殻の裏に仏像を堆画(うずめがき)したものがあり、人は奇異(めずらしい)とする。多くは売僧(まいす)(つまらぬ僧)の所為(しわざ)である。その造法は、濃い墨を用いて物を画き、これを乾かしてそこへ醋を盛る。久しく経ってのち墨を拭い去れば、墨のあとは堆(うずたか)く盛り上がり、画いた物象が鮮明に浮き上がる。」

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2022年1月30日日曜日

縄文晩期の弭(ゆはず)の3Dモデル観察

 3D model observation of a Bow-end attachment in the Final Jomon period


I observed a 3D model of a Bow-end attachment made of antler (Kotehashi Shell Mound, Chiba City) that was exhibited at the Chiba City Folk Museum "Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition". This bow-end attachment has a side hole, which may have had a sound-generating function, which is a very interesting relic.


千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で展示されていた弭形角製品(千葉市犢橋貝塚)を3Dモデルで観察しました。この弭には側面孔が開いていて、それによりこの弭は音響発生機能を有していた可能性があり、とても興味深い遺物です。

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「千葉市出土考古資料優品展」は2022年2月3日~3月10日の期間、千葉市埋蔵文化財調査センターで開催されます。

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1 弭形角製品(千葉市犢橋貝塚) 観察記録3Dモデル Bow-end attachment made of antler

弭形角製品(千葉市犢橋貝塚) 観察記録3Dモデル Bow-end attachment made of antler

撮影場所:千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」

撮影月日:2021.12.24


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 92 images

Bow-end attachment made of antler (Kotehashi Shell Mound, Chiba city) Observation record 3D model

Location: Chiba City Folk Museum “Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition”

Shooting date: 2021.12.24

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 92 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 展示説明

「弭形角製品(ゆはずがたつのせいひん) 犢橋(こてはし)貝塚(花見川区さつきが丘)

縄文時代晩期に製作された角製品。鹿角(ろっかく)先端全面を成形し、下部はソケット状に作る。形状から、弥生~飛鳥時代の弭の系譜につながると目される縄文時代の優品である。」

2-2 西野雅人先生の説明

千葉市内出土考古資料優品展関連講座「千葉市の名宝(縄文時代)」(2022.01.22開催)で講師の西野雅人先生(千葉市埋蔵文化財調査センター所長)からこの弭について要旨次のような説明がありました。

・形状からこの弭に代表される縄文晩期弭は弥生時代弭、古墳時代弭、飛鳥時代弭の祖形であると考えられる。縄文時代ツールが直接古代ツールにつながる珍しい例であると考えられる。

・古代弭は飛鳥時代天皇の歌にあるように音がでる仕組みを有していたと考えられ、「なりはず」と呼ばれた。

・この弭も側面孔があいていて、そこに弦を通した痕跡はなく、音を出す機能であった可能性がある。側面孔に共鳴する何かを差し込んでいたかもしれない。


実測図

西野雅人先生講演資料から引用


説明図

西野雅人先生講演資料から引用

2-3 感想

縄文晩期弭がそのまま継続して弥生時代から飛鳥時代まで使われていったという仮説に強い興味をおぼえます。土器や石器など縄文文化の多くのものは弥生時代にすたれましたが、弭だけは伝わったとすれば、その理由を知りたくなります。

同時にこの弭や古代弭が音を出す機能を有していたらしいことにも強い興味を持ちます。弭を付けた弓は楽器のような機能がある道具で、祭祀などで使われるいわゆる第二の道具だったのかもしれません。

この弭展示観覧と西野雅人先生講演を契機に、弭についての興味が生まれましたので、今後学習をスタートさせることにします。


2022年1月28日金曜日

神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)と局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル

 Mikoshiba type stone axe (Godai site, Chiba city) and Edge-ground axe (Mikoshiba site, Minowa Village) Observation record 3D model


By arranging the observation record 3D models of the Mikoshiba type stone axe (Godai site, Chiba city) and the Edge-ground axe (Mikoshiba site, Minowa Village) at the same scale, we made it possible to make a realistic comparison. You can feel the difference between the stone axe in Nagano prefecture, where the stone is produced, and the stone axe of the same period in Chiba prefecture, where there is no stone material that can be used to make the stone axe.


神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)と局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡)の観察記録3Dモデルを同一縮尺にして並べてみることにより、実感的に比較できるようにしました。

1 神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)と局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Mikoshiba type stone axe and Edge-ground axe

神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)と局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル  Mikoshiba type stone axe and Edge-ground axe

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神子柴型石斧(千葉市後台遺跡) 観察記録3Dモデル Mikoshiba type stone axe

撮影場所:千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」

撮影月日:2021.12.22


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 113 images

Mikoshiba type stone axe (Ushirodai site, Chiba city) Observation record 3D model

Location: Chiba City Folk Museum “Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition”

Shooting date: 2021.12.22

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 113 images

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局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Edge-ground axe

黒雲母粘板岩 6

国指定重要文化財

長さ20.80㎝、幅7.60㎝、厚さ4.75㎝、重さ860.5g

撮影場所:伊那市創造館常設展

撮影月日:2020.12.11


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 58 images

Edge-ground axe  (Mikoshiba site, Minowa Village)  Observation record 3D model 

Biotite slate

6

Nationally designated important cultural property

Length 20.80 cm, width 7.60 cm, thickness 4.75 cm, weight 860.5 g

Location: Ina City Sozokan Permanent Exhibition

Shooting date: 2020.12.11

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 58 images

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3Dモデルの動画

2 メモ


オルソ投影上から


オルソ投影右から


オルソ投影前から

神子柴型石斧と標識遺跡出土石斧を同一縮尺で比較できる3Dモデルを作成しました。石材産地長野県における石斧と石斧作成のために使える石材が存在しない千葉県における同時代石斧の違いを実感できます。


参考 神子柴石器群の分布

堤隆「狩猟採集民のコスモロジー 神子柴遺跡」(新泉社)から引用

2022年1月27日木曜日

アワビ加工品干渉色画像の干渉色変換画像

Interference color conversion image of abalone interference color image


I experimented to keep the basic data on what happens when the shining interference color image of the modified abalone is converted to the interference color. The abalone's green and pink interference colors change in color but remain after conversion. Abalone interference colors have a metaphysical effect.


1 実験

アワビ加工品(千葉市大膳野南貝塚出土、縄文時代後期)の照り輝く干渉色画像を干渉色変換するとどのようになるのか、1回は試してその資料を手元に持っておきたいので、実験してみました。


アワビ加工品 展示写真の干渉色変換画像(位相はいずれも0%)

比較参考のために、干渉色をもたないアリソガイ磨貝観察写真も干渉色変換画像にしてみました。


アリソガイ磨貝観察写真の干渉色変換画像(繰返し回数1回、位相0%)
アリソガイ磨貝は有吉北貝塚出土(縄文中期)、千葉県文化財課森宮分室で閲覧。

干渉色変換は地図アート研究所「干渉色変換ツール」を使いました。

「干渉色変換ツール」を公開されている地図アート研究所やまだこーじさんに感謝します。

2 実験結果メモ

2-1 画像変換に関するメモ

アワビ加工品の微妙な干渉色の輝きは、干渉色変換すると色味は少し違ってきますが、淡い干渉色っぽく表現されているように感じます。個人の好みが入ると思いますが、繰返し回数0.9、1.0、1.1あたりの変換画像が干渉色らしさをより表現しているような感じを受けます。

一方、もともと干渉色のないアリソガイ観察写真は劇的な干渉色変換となります。モノクロ画像が原色干渉色に変わったような感じになります。アート的には激変という意味で、アリソガイの方が面白いのかもしれません。

アワビ加工品で、現実の微妙な干渉色分布変化の様子が、干渉色変換してもその特性がある程度残ることを確認できたことは今回実験の一つの成果です。

2-2 アワビ干渉色の色合い成分とやまだこーじさん発案干渉色セットの対比

アワビ加工品現物を観察すると、その干渉色はグリーンとピンクの2色が交互に分布して照り輝く仕組みになっています。宝飾品として利用される真珠の多くもグリーンとピンクの色合いによる干渉色のものが多いようです。世の中には色々な色合いの干渉色が存在していると考えられますが、人に愛されてきた干渉色の重要なものとしてグリーンとピンク2色セットがあると考えます。

一方、やまだこーじさんが発案された干渉色セットでもグリーンとピンクが重要な場所に配置されています。より訴求力のある干渉色変換を求めるなかで、人々が惹きつけられるグリーンとピンクを基調とした色合いのセットに到達したのではないだろうかと想像します。

「アワビ加工品写真→干渉色変換ツール→干渉色変換画像」というプロセスで生まれた画像について、今直ちにその意義をつまびらかにすることは出来ません。しかし、アワビ現物に干渉色があり、それが縄文人を魅了したという事象があります。一方、今、訴求力を伴う干渉色セットによる写真の干渉色化が私を含め多くの人を魅了しているという事象が存在しています。この2つの「干渉色」に関する事象はどこかでつながっている可能性があります。従って、将来、アワビ加工品写真の干渉色変換画像から、なにか有用な意味とか意義を汲み取ることが出来るようになるかもしれません。今後注意深く検討していくことにします。

2-3 アワビ加工品干渉色のメタフィジカルな効果

アワビ加工品を凹面鏡のように使って太陽光に当て、干渉色で輝く光が産み出す事象を使って呪術が執り行われたかもしれないという「太陽との交信」仮説が現代日本貝塚研究の最先端科学者である西野雅人先生(千葉市埋蔵文化財調査センター所長)によって最近市民に披瀝されました。

2022.01.22記事「千葉市内出土考古資料優品展関連講座「千葉市の名宝(縄文時代)」のzoom聴講」参照

2022.01.26記事「大膳野南貝塚出土アワビ加工品について

アワビ加工品内面が発する干渉色は単に美しいというレベルではなく、縄文人が驚き、感動し、陶酔するようなメタフィジカルな効果をもたらすものです。

鏡は大陸から弥生時代に伝えられたものですから、アワビ加工品はそれとのつながりはありません。しかし、アワビ加工品が古代鏡と類似した呪術具であった可能性があるという仮説から、干渉色の魅力やその意義の大きさについての重要な示唆を受けることができます。

2022年1月26日水曜日

大膳野南貝塚出土アワビ加工品について

 About modified abalone excavated from Daizenno Minami Shell Mound


Professor Masato Nishino, Director of the Chiba City Buried Cultural Property Research Center, taught me the reason why the modified abalone exhibited at the Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition was not a shell knife, but a magical tool like an ancient mirror. Thank you.


千葉市内出土考古資料優品展(※)で展示されているアワビについて、千葉市内出土考古資料優品展関連講座「千葉市の名宝(縄文時代)」(講師 西野雅人先生[千葉市埋蔵文化財調査センター所長])で、それが貝刃ではないという発掘調査報告書とは異なる説明がありました。なぜ貝刃ではないのか、自分にはその理由がよく判らなかったので、講座事務局にメールで質問しました。その質問に対して講師の西野雅人先生から詳しい説明と関連情報を教えていただきましたので、メモします。

西野雅人先生の詳しいご回答ご教示に感謝申し上げます。

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※ 千葉市内出土考古資料優品展の開催期間・場所

2021年11月17日~2022年1月22日 千葉市立郷土博物館

2022年2月3日~3月10日 千葉市埋蔵文化財調査センター

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アワビ加工品

1 アワビが貝刃ではない理由

アワビの腹縁部には磨耗があり、大膳野南貝塚発掘調査報告書ではこの磨耗を根拠にこのアワビが貝刃であると記載しています。これに対して西野雅人先生から、このアワビは海岸で傷み、水摩を受けたものと考えられ、磨耗は少なくとも人為的な変形・加工と判断できる所見はないとの回答がありました。西野先生は、より詳しくは、刃部が劣化している場合、規則的な剥離が3個以上連続していれば自然の可能性は低い=貝刃とする基準に照らして判断されているとのことです。


腹縁部磨耗の様子

また、使用痕がないことから、中・近世などでその可能性を報告することがある容器・柄杓等として使われたこともその見分けはつかないとのことです。

一方、このアワビは全面が入念にクリーニングされ、埋納されたことも含めて、実用品の可能性をあえて言う必要はないと考えるとの説明もありました。

2 このアワビの分類上の名称 「アワビ加工品」

このアワビをなんと呼ぶのか質問したところ、「アワビ加工品」がよいとのことでした。同時に「お土産貝」という通称も教えていただきました。

「縄文人が海岸や化石層から持ってきた貝はたくさんあります。

それをなんと報告するかはいつも悩みます。

通称としては「お土産貝」と呼んでいます。」

「お土産貝」という通称は縄文人の趣味心による貝殻採集活動を表現していて、とても興味深い概念であると関心しました。

3 「太陽と交信する」ツール

古代の鏡はただ光を反射するものではない呪術具であったということを市民の皆さんに伝えるために用いた表現で、アワビにそんなことも考えられるかもしれないとの説明です。鏡は大陸由来であることがはっきりしているので、直接はつながらないけれども、そうしたものが縄文時代にあったかもしれないということで、そのような資料の重要性を伝えるための思い切った表現であるとの説明です。

4 感想

4-1 腹縁部磨耗の人工由来判断基準

このアワビ腹縁部磨耗が人工由来であるのか(貝刃である)、それとも自然由来であるのか(実用品ではない)といった判断に一つに「刃部が劣化している場合、規則的な剥離が3個以上連続していれば自然の可能性は低い=貝刃とする基準」を設けて観察している西野先生の専門性に、そのような専門性があること自体を含めて、驚き、感心しました。

4-2 お土産貝

貝塚研究専門家の間で「お土産貝」という通称が使われていることは、縄文人が趣味的心から貝殻採集活動をしていることに対応していて、とても面白く、かつ重要であると考えました。生産とか祭祀とかの考古学概念では捉え尽くせない活動が縄文人にあったということです。

4-3 呪術具としてのアワビ加工品

西野雅人先生はこのアワビ加工品を古代鏡のような呪術具として考えていらっしゃいます。古代鏡は大陸由来で、縄文時代アワビ加工品と結びつくものではありません。しかし縄文時代アワビ加工品が、弥生時代以降列島にもたらされた鏡と同様の機能を果たしていたかもしれないという西野先生の仮説はまことにロマン溢れるものです。

鏡の歴史を改訂新版世界大百科辞典(平凡社)で調べてみると、列島に最初にもたらされた鏡は多鈕細文鏡で、鏡面は凹面鏡で「垂下し光を反射させて当時の人々を驚かせる祭器として用いたとする説が正しい。」と記述されています。なにやら西野先生のアワビ加工品の呪術具利用イメージ(太陽と交信するツール)と重なるようで、興味がドンドン深まります。

4-4 千葉市埋蔵文化財調査センター展示における観察実験

ア 物を写す機能があるか

展示されているアワビ加工品に顔を近づけて、それがアワビ内面(鏡面)に写るか(写る可能性があるか)、展示ショーケースが千葉市立郷土博物館と同じものならば、試してみます。

イ 直射光反射の様子観察実験

展示管理者の許可が得られれば、直射光ライトを持参し、その光を当てて、どのように反射するかその様子を観察してみます。


2022年1月23日日曜日

局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡)の3Dモデル観察

 3D model observation of the Edge-ground axe  (Mikoshiba site, Minowa Village)


Based on the photographs taken at the Ina City Sozokan Permanent Exhibition a year ago, I made an observation record 3D model of the Edge-ground axe (biotite slate, 6) excavated from the Mikoshiba site and carefully observed it.


1年前に伊那市創造館常設展で撮影した写真に基づいて、神子柴遺跡出土の局部磨製石斧(黒雲母粘板岩、6)の観察記録3Dモデルをつくり、じっくりと観察しました。

1 局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Edge-ground axe

局部磨製石斧(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Edge-ground axe

黒雲母粘板岩 6

国指定重要文化財

長さ20.80㎝、幅7.60㎝、厚さ4.75㎝、重さ860.5g

撮影場所:伊那市創造館常設展

撮影月日:2020.12.11


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 58 images

Edge-ground axe  (Mikoshiba site, Minowa Village)  Observation record 3D model 

Biotite slate

6

Nationally designated important cultural property

Length 20.80 cm, width 7.60 cm, thickness 4.75 cm, weight 860.5 g

Location: Ina City Sozokan Permanent Exhibition

Shooting date: 2020.12.11

State of exhibition

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 58 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 結像の不十分さ

展示石斧の後端部にカメラ視線が完全に届かないため、石斧後端部結像が完全になっていません。

2-2 「上から」の形状、「横から」の形状

局部磨製石斧をオルソ投影してその「上から」画像と「横から(左から)」画像について高さを色分級してみました。石斧の形状を総観的に、あるいは等高線的に把握する資料です。


高さによる色分級(「上から」)


高さによる色分級(「横から」)


2022年1月22日土曜日

千葉市内出土考古資料優品展関連講座「千葉市の名宝(縄文時代)」のzoom聴講

 Zoom attendance of "Chiba City's Famous Treasure (Jomon Period)" related to the exhibition of archaeological materials excavated in Chiba City


Today (2022.01.22), I attended a lecture on "Chiba City's Famous Treasure (Jomon Period)" related to the exhibition of archaeological materials excavated in Chiba City. The lecturer is Masato Nishino [Director, Chiba City Buried Cultural Property Research Center]. I've written a lot of this relic on display in my blog post, but there were many things I didn't understand. However, this lecture answered many questions. This is a very useful course.


千葉市内出土考古資料優品展関連講座「千葉市の名宝(縄文時代)」(講師 西野雅人先生[千葉市埋蔵文化財調査センター所長])を本日(2022.01.22)zoomで聴講しました。ブログ記事に書いた遺物について、知りたいけれども調べられなかった情報も数多く聞くことができました。大変有益な講座を聞くことができました。講師西野雅人先生の千葉縄文に関する広く深い知識と、同時に夢のある遺物見立てに感動しました。以下に、自分の興味に照らして、特に有益と感じた情報をメモします。

なお、この講座は会場の聴衆とzoom参加者が同時に聴講するハイブリッド型講座です。


講座表紙スライド

1 石棒


石棒出土状況スライド


石棒出土状況スライド


石棒展示状況

巨大石棒の出土状況写真を提示する中で、緑泥片岩の石棒が風化して「グズグズ」になって出土し、展示品はそれを薬剤で処理して固めたものであることの説明がありました。長い間地表に露出していたらしいのとのことでした。

また巨大な石棒を埼玉などの山地から千葉まで運ぶ運搬手間は膨大なものであり、縄文交換経済の中でそれを考える必要の大切さが指摘されました。

2 アワビ象嵌耳飾


アワビ象嵌耳飾スライド


アワビ象嵌耳飾展示状況

昭和26年出土資料で詳しい出土状況は伝わってきていないものであるが、アワビが土製耳飾にくっついて出土したと考えられるとのことでした。またアワビ片と言われるものが真にアワビ片であるか再確認する必要があるとのことでした。

3 アワビ


アワビスライド


アワビ出土状況


アワビ展示状況

内面及び外面を丁寧に磨いていることの詳しい説明がありました。また、発掘調査報告書では貝刃と書いてあるが、これは貝刃ではないという説明でした。貝の縁が磨耗していますが、貝刃でないとすると、この磨耗はどうして出来たのでしょうか。この製品の説明で「太陽と交信していたかもしれない」旨の発言がありました。西野先生の頭の中には具体的イメージがあるように感じました。どのような道具だったのでしょうか。疑問がますます深まる製品です。この製品の素性について質問しそびれましたので、メールで千葉市埋蔵文化財調査センターに質問してみることにします。

4 箆状腰飾


箆状腰飾文様の解釈スライド


箆状腰飾展示状況

箆状腰飾がヘビを表象している説明図が提示されました。これまでなぜこれがヘビなのか判らなかったのですが、その理由(縄文土器ヘビ文様との対応)を知ることができました。「そうだったのか」という言葉がzoom画面の前で半分でました。今回講座における自分の最大収穫はこの説明です。

5 イモガイ製腰飾


イモガイ製腰飾説明スライド


イモガイ製腰飾展示状況

イモガイ製腰飾の紐の結び方がよくわかる説明がスライドでありました。

6 弭(ゆはず)形角製品


弭形角製品6面写真


弭形角製品展示状況

犢橋貝塚出土弭形角製品が全国的にみても高度な意匠になっている説明がありました。そして、次の飛鳥時代天皇の歌の紹介や古代弭製品の説明をとおして、興味深い仮説が述べられました。


飛鳥時代天皇の歌


古代弭製品

その仮説---縄文時代弭が弥生・古墳と継続発展し飛鳥・奈良まで連綿と伝わった。そして飛鳥・奈良の弭が一種の楽器であったことから、その楽器始原は縄文弭から備わっていた可能性がある。この弭には孔が開いていて、その孔にモノを差し込んで古代弭と同じように音を出していたのかもしれない。

まことにロマン溢れる弭の意義の見立てです。「弭に開いている孔に弦を通したのか」とチャットで質問したところ、「孔には弦を通していない。弦は製品最上部にかけていたことが使用痕で判っている。」との説明でした。西野先生の頭のなかでは、弭に開いている孔には振動を増幅する何かが挟まっていて、弓で矢を射ると弭の孔から「ビュン」という「唸り音」が聞こえる仕組みになっていると考えているように推察しました。弭は儀式用とかリーダー用とかの特別な弓についていたのかもしれません。そしてこの縄文弭が弥生・古墳・飛鳥と継承発展し、飛鳥時代に弭の音が天皇によって詠まれたのかもしれません。

7 感想

優品展の遺物について昨年末から観察記録3Dモデルを作成してその観察結果をブログに書いてきたので、西野先生の話は大いに参考になりました。また、まだ3Dモデルを作製していない弭について特段に興味のあるお話をきくことができ、弭3Dモデルを早くつくりたくてウズウズしてきています。


2022年1月21日金曜日

神子柴型石斧の3Dモデル観察

 3D model observation of Mikoshiba type stone axe


I observed the Mikoshiba type stone axe (Usirodai site, Chiba City) from the end of the Paleolithic period to the early days of the Jomon period, which is exhibited at the Chiba City Folk Museum "Exhibition of Excavated Archaeological Materials in Chiba City".


千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で展示されている、旧石器時代終末~縄文時代草創期の神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)を3Dモデルで観察しました。

1 神子柴型石斧(千葉市後台遺跡) 観察記録3Dモデル Mikoshiba type stone axe

神子柴型石斧(千葉市後台遺跡) 観察記録3Dモデル Mikoshiba type stone axe

撮影場所:千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」

撮影月日:2021.12.22


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 113 images

Mikoshiba type stone axe (Ushirodai site, Chiba city) Observation record 3D model

Location: Chiba City Folk Museum “Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition”

Shooting date: 2021.12.22

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 113 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 展示説明

「神子柴型石斧 後台(うしろだい)遺跡 (緑区あすみが丘)

旧石器時代終末~縄文時代草創期に発達する石斧。長野県の神子柴遺跡出土の石器群を標識とする。

大型で重量感のある石斧が多く、植物資源の開発・活用に用いられたと思われる。このような石器群が出現する背景には、シベリアなどの北方アジアから大きな影響を受けたという考えがある。」

2-2 干渉色表現

地図アート研究所「干渉色変換ツール」で3Dモデルを干渉色で表現してみました。


神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)の干渉色表現

干渉色表現することにより遺物の特徴を総観的にあるいは等高線的に把握することができます。

2-3 神子柴遺跡出土石斧との比較


長野県箕輪村神子柴遺跡出土石斧(伊那市創造館展示)

長野県箕輪村神子柴遺跡出土石斧と神子柴型石斧(千葉市後台遺跡)をくらべると、前者(長野県箕輪村)が局部磨製石斧であるのにたいして、後者(千葉市)は打製石斧であることが最大の差異です。また大きさは前者とくらべ後者は小さくなっています。また形状も後者は石斧といっても「ノミ(鑿)」のような印象を受けます。

幸なことに以前神子柴遺跡出土石斧の3Dモデル作成用撮影をしています。そこで追って参考までに、長野県箕輪村神子柴遺跡出土石斧3Dモデルを作成して千葉市のものと比較してみることにします。


2022年1月18日火曜日

尖頭器(箕輪村神子柴遺跡)の3Dモデル観察

 3D model observation of Point (Mikoshiba site, Minowamura)


I created a 3D model of the Point (Mikoshiba site, Minowamura) taken at the Ina City Sozokan in November last year. Furthermore, using the "interference color conversion tool" created by Mr. Koji Yamada, the 3D shape of the Point was expressed and observed in contour lines.


昨年11月に伊那市創造館で撮影した尖頭器(箕輪村神子柴遺跡)の観察記録3Dモデルを作成して、観察しました。

1 尖頭器(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Point

尖頭器(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Point

旧石器時代最終末から縄文時代草創期

下呂石 Geroishi(Yugamine rhyolite)

国指定重要文化財

撮影場所:伊那市創造館常設展示

撮影月日:2021.11.08


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 82 images

Point (Mikoshiba site, Minowamura) Observation record 3D model

From the end of the Paleolithic period to the beginning of the Jomon period

Geroishi (Yugamine rhyolite)

Nationally designated important cultural property

Location: Ina City Sozokan Permanent Exhibition

Shooting date: 2021.11.08

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 82 images


3Dモデルの動画

2 干渉色による3D形状詳細の把握

2-1 干渉色繰返しによる3D形状の等高線的表現

この尖頭器は平べったい形状をしていますが、3Dモデルで観察すると意外と複雑な形状となっています。先端部分を含む半分は特に薄い形状となっています。こうした特徴を可視化するために干渉色繰返しによる等高線的表現にチャレンジし、成功することができました。


尖頭器(箕輪村神子柴遺跡) 干渉色繰返しによる3D形状の等高線的表現

左は3Dモデル通常テクスチャ画像です。真ん中は3DF Zephyr Liteの機能で作成した高さを色セットのグラデーションで表示した画像です。この画像で3D形状の概要を知ることができます。右が干渉色繰返し(5回)による3D形状の等高線的表現です。3Dモデルの精細等高線的表現に成功していると考えます。

2-1 3D形状の干渉色表現方法


尖頭器3D形状の干渉色表現

フォトグラメトリーソフト3DF Zephyr Liteには3Dモデルを高さによって色分けする(色セットグラデーションで表現する)機能があります。この機能を使って、尖頭器をGREYSで表現し、その画像を取得します。そのGREYS画像を地図アート研究所「干渉色変換ツール」に投入して干渉色化します。今回は干渉色繰返し1回~5回を試しました。

地図アート研究所「干渉色変換ツール」は干渉色の繰返しが可能であり、まことに有用なツールです。このツールを一般公開している地図アート研究所所長やまだこーじさんに感謝します。

2022年1月17日月曜日

後期旧石器時代ナイフ形石器(千葉市坂ノ越遺跡)の3Dモデル観察

 3D model observation of Upper Paleolithic backed blade (Sakanokoshi site, Chiba city)


I observed the Upper Paleolithic backed blade (Sakanokoshi site, Chiba City) exhibited in the Chiba City Folk Museum "Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition" with a 3D model.

This backed blade has a single blade and the blade is about 1/3.


千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で展示されている、後期旧石器時代ナイフ形石器(千葉市坂ノ越遺跡)を3Dモデルで観察しました。

1 後期旧石器時代ナイフ形石器(千葉市坂ノ越遺跡) 観察記録3Dモデル Upper Paleolithic backed blade

後期旧石器時代ナイフ形石器(千葉市坂ノ越遺跡) 観察記録3Dモデル Upper Paleolithic backed blade

撮影場所:千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」

撮影月日:2021.12.22


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 66 images

Upper Paleolithic backed blade (Sakanokoshi site, Chiba city) Observation record 3D model

Location: Chiba City Folk Museum “Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition”

Shooting date: 2021.12.22

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 66 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 展示説明

「ナイフ形石器 坂ノ越遺跡(緑区あすみが丘)

後期旧石器時代のナイフ形石器。剥片の鋭い縁辺を一部に残し、側縁に急斜度な加工を施す石器。突き刺す、切るといった用途と考えられる。」

2-2 刃部

刃部は次の場所に位置します。


刃部の位置

刃部は片刃の1/3程度だけです。

2-3 3Dモデル

133枚撮影写真の内半数の66枚しかフォトグラメトリーソフトに採用されませんでした。そのため期待にそぐわない不十分な3Dモデルになってしまいました。小さく細長いモノは写真の連続性が途切れるため3Dモデル作成難易度が高くなります。


トンガ火山爆発衛星画像の干渉色観察

 Observe satellite images of a volcanic eruption in Tonga in interference colors


A large-scale volcanic eruption occurred in Tonga around 13:00 on January 15, 2022. The tsunami caused by air vibration also brought disaster to Japan. When I converted the satellite image of the eruption into an interference color with the "interference color conversion tool" created by the Map Art Research and observed it, I could clearly see the state of the shock wave.


2022年1月15日13時頃トンガ諸島付近のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山で大規模な噴火がありました。噴火による空振で津波が発生し日本にも被害をもたらしました。この噴火について気象衛星ひまわりの赤外画像が気象庁発表資料の掲載されていましたので、またトンガ国気象庁Facebookにも画像が掲載されていましたので、それらを干渉色化して観察してみました。

1 気象庁発表資料掲載衛星赤外画像


気象庁発表資料の衛星画像ページ


衛星赤外画像の干渉色変換

資料では赤丸がついていて爆発噴煙と考えられる白色部に視線が誘導されます。しかし、写真をよくみると白色部の外側にうっすらと白い部分がドーナツ状の分布しています。この薄い白い部分は干渉色変換画像(変換1回画像)では青色で明瞭に浮かび上がっています。


ドーナツ状の青色分布

ドーナツ状の青色部分は衝撃波に関連した事象のように想像します。

2 トンガ国気象庁Facebook掲載衛星画像


トンガ国気象庁Facebook掲載衛星画像

画像の特徴からおそらく気象衛星ひまわりのトゥルーカラー再現画像がトンガ国に提供されて、それがこの画像の元データであると推察します。


トンガ火山噴火衛星画像の干渉色変換


トンガ火山噴火衛星画像干渉色変換の連続表示

画像には噴煙部分と衝撃波部分が写っていると理解します。衝撃波部分にはうっすらと同心円状の模様が見えます。この同心円状模様は干渉色画像で明瞭に確認することができます。


衝撃波における同心円状模様の明瞭化

3 感想

3-1 大規模空振の映像

2つの画像ともに衝撃波を記録していて、大規模空振事象が可視化されています。

3-2 干渉色変換の有用性

衛星画像を地図アート研究所(所長やまだこーじ)作成公開「干渉色変換ツール」で干渉色に変換すると、衝撃波の様子を詳しく観察することができます。干渉色変換ツールがアート分野にとどまらず、画像解析分野でも有用なツールであることを体感することができました。