私の散歩論

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2023年10月28日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層遺物台帳のデータベース化の第1歩 その3

 The first step in creating a database of the artifact register related to the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound   Part 3


The density of artifacts excavated from the shell layer (number of artifacts/㎥) was calculated for each 2m x 2m mesh at an altitude of 0.5m and displayed in 3D space. This material is significant in that it allows us to confirm the uneven distribution of artifact density in 3D space.


貝層から出土した遺物の密度(遺物数/㎥)を2m×2mメッシュ毎に標高0.5m刻みで算出して、3D空間に表示しました。この資料は遺物密度の3D空間偏在性を確認できるという意味で意義があります。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 第1ステップ区域のメッシュ別遺物密度分布 3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 第1ステップ区域のメッシュ別遺物密度分布 3Dモデル


説明図

棒グラフ(CUBE)は2m×2mメッシュ別に遺物出土最高標高と最低標高に置かれています。標高を0.5m刻みで区切り、その区間の遺物密度を5段階に分級して赤~白のグラデーションで表示しています。

貝層平面図は標高20mの位置に置いています。3Dスケールの原点もZ軸に関して標高20mに置いています。


動画

2 メモ

遺物台帳の極一部(全14冊ある遺物台帳の最初の1冊)をデータベース化して、試しに分析しています。

遺物密度を3D空間で表示する入口まで到達できました。

貝層の中で遺物が均一に分布するのではなく、偏在的に分布している様子を捉えただけでも画期的であると自画自賛します。

遺物密度3D分布を貝層断面や地山地形と関連させて分析することによって貝層形成と遺物投棄の関連を分析できると期待しています。

なお、メッシュ(CUBE)を多数表示するとメッシュが重なって密度表示のグラデーションが見えなくなることが想定されますので、より一層の表現上の工夫が必要であると考えます。

遺物台帳電子化作業の中で、遺物種類別(例 土器片と骨)に密度3D分布の特徴が異なる印象を受けています。将来詳しく分析することにします。


●遺物台帳のデータベース作成により北斜面貝層構造の見える化のための分析が可能であることがわかりました。第1ステップ区域データベースによる試し分析はとりあえずこれで終了し、今後遺物台帳データベース作成作業を第2~第6ステップ区域に順次進めることにします。


2023年10月22日日曜日

標高0.5m刻みでの遺物密度カラーグラデーション表示

 Artifact density color gradation display in 0.5m altitude increments


I devised a method to display the density of artifacts in 0.5m increments using a color gradation in the 3D model of artifact elevation range by mesh.

It is expected that this technique will reveal that the density of artifacts is not uniform within the shell layer.


メッシュ別遺物標高範囲3Dモデルに標高0.5m刻みで遺物密度をカラーグラデーションで表示する方法を工夫しました。

貝層の中で、遺物密度が均一でないことが、この技術であからさまになると期待できます。

1 Ⅰ-59メッシュの標高0.5m刻みでの遺物密度と分級


Ⅰ-59メッシュ 標高0.5m刻み遺物密度(遺物数/㎥)


遺物密度分級と表示色

上記のように遺物台帳データベースから、Ⅰ-59メッシュについて標高0.5m刻みに遺物密度(遺物数/㎥)をもとめました。遺物密度については5段階に分級して、その対応色を赤色-白色グラデーションで設定しました。

2 Ⅰ-59メッシュ 標高0.5m刻みでの遺物密度カラーグラデーション表示


Ⅰ-59メッシュ 標高0.5m刻みでの遺物密度カラーグラデーション表示(Blender画面)

3 遺物密度カラーグラデーション表示方法

ア UV配置をエクスポート


UV配置をエクスポート

BlenderでⅠ-59メッシュオブジェクト(CUBE)について「UV配置をエクスポート」します。UV配置が描かれたPNGファイルが生成します。

イ UV配置と立体画像の対応確認


UV配置と立体画像の対応確認

UV配置と立体画像の対応を確認するために、UV配置PNGファイルに番号を書き込んだファイルをIllustratorで作成して、その画像をBlenderで、Ⅰ-59メッシュオブジェクトにテクスチャ画像として貼り付けました。これでUV配置と立体画像の対応関係を把握することができました。

ウ 標高0.5m刻み遺物密度カラーグラデーション画像の作成と貼り付け


標高0.5m刻み遺物密度カラーグラデーション画像の作成と貼り付け

標高0.5m刻みで遺物密度に対応する表示色を並べてカラーグラデーション画像を作成し、それをUV配置に合わせて嵌め込みした画像をつくり(Illustrator作業)、Blenderでその画像をⅠ-59メッシュオブジェクトにテクスチャ画像として貼り付けました。

4 メモ

手間はかかりますが、遺物密度を標高0.5m刻みでカラーグラデーション表示する方法を確認できました。

貝層の中で、遺物密度が均一でないことが、この技術であからさまになると期待できます。

土器片、骨などの種別にその密度分布が異なることが想定されますので、この標高で刻む密度表示技術は今後役立つと考えます。


2023年10月21日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層遺物台帳のデータベース化の第1歩 その2

 The first step in creating a database of the artifact register related to the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound   Part 2


The altitude range of relics by mesh in the first step area where the relic ledger has been digitized is displayed as a bar graph in 3D space. I secretly think that it is significant that elevation values have been used and visualized for the first time, even though they are statistical, and even if only for a certain area.


遺物台帳電子化が済んだ第1ステップ区域のメッシュ別遺物標高範囲を3D空間に棒グラフで表示しました。標高値を統計的とはいえ、一部区域だけであるとはいえ、はじめて利用し可視化したことは意義のあることであると秘かに思考します。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 第1ステップ区域のメッシュ別遺物標高範囲 3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層 第1ステップ区域のメッシュ別遺物標高範囲 3Dモデル


説明図

棒グラフはメッシュ別に遺物最大標高と遺物最低標高を表現しています。

貝層平面図は標高20mの位置に置いています。3Dスケールの原点もZ軸に関して標高20mに置いています。


動画

2 メモ

遺物台帳の全遺物には原則として標高値が記載されています。その標高値を統計的とはいえ、一部区域だけであるとはいえ、はじめて利用し可視化したことは意義のあることであると秘かに思考します。

「メッシュ別遺物標高範囲 3Dモデル」を貝層断面情報、地形情報(地山地形図=ガリー侵食地形図)と関連させることにより貝層発達の詳細データを得ることができると考えます。


2023年10月20日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層遺物台帳のデータベース化の第1歩

 The first step in creating a database of the artifact register related to the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound


I have taken the first step in creating a database of artifacts related to the north slope shellfish layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound. A simple analysis of the 3391 artifacts revealed that 65% of the total was bones (animal bones and human bones not classified) and 29% were pottery fragments.


有吉北貝塚北斜面貝層遺物台帳のデータベース化作業の第1歩を踏み出しました。3391遺物について簡易分析したところ、骨(獣骨・人骨未区分)が全体の65%、土器片が29%という結果になりました。

1 学習計画の中における遺物台帳データベース作成の位置


有吉北貝塚北斜面貝層の学習計画の中における遺物台帳データベース作成の位置

有吉北貝塚北斜面貝層の学習計画は次の記事でまとめています。3ヵ年をかける壮大な学習計画となっています。遺物台帳データベース作成はその最初の取り組みです。

2023.09.30記事「有吉北貝塚北斜面貝層の学習計画 発掘原票に基づくデータベース作成と分析

2 遺物台帳データベース化作業のステップ区域

遺物台帳データベース化作業は次のように6ステップ区域に分けて考えています。各ステップ区域の作業が終わった段階で、簡易なまとめ分析を行い、全体分析を有効に進めるための方法等の情報を得ることにします。


有吉北貝塚北斜面貝層遺物台帳データベース化作業の6ステップ区域

3 第1ステップ区域作業結果

第1ステップ区域の遺物総数は3391で、全体の約5.5%になります。簡易的に種別遺物数を集計すると次のようになります。


メッシュ別種別遺物数 表


種別遺物数 グラフ

ここでの遺物種別分けは次の通りです。

土器片…土器片、朱塗土器、土器片一括、土錘等(土器片2次加工物も含んでいます)

石器…石斧、黒曜石、石鏃、石錘、フレーク、フレーク一括、石、礫等(加工品以外も含んでいます)

骨…骨、顎骨、鹿骨、骨一括、歯等(獣骨と人骨の分類は遺物台帳では行われていません)

貝…貝刃、すり貝、貝製品、貝サンプル等(貝サンプルが遺物として含まれています)

その他…灰、スミ、木、フン石等

種別にみると骨が約65%、土器片が約29%、石器が約5%、貝製品が約1%、その他約0.2%という結果になりました。骨の数が遺物総数の中で占める割合が大きいことを知ることができました。なお、遺物台帳ではその区分が行われていませんが、骨には獣骨と人骨が含まれています。

4 第1ステップ区域メッシュ別簡易分析

メッシュ別種別遺物数の分布を立体棒グラフにして並べて観察してみました。


メッシュ別種別遺物数分布図(立体棒グラフ)

分布図を詳しく観察すると、骨の分布には顕著なピークがありますが、土器片にはそれがなく、骨分布パターンと土器片分布パターンは異なることがわかります。


骨と土器片分布パターンが異なる様子

骨と土器片分布パターン相違の検討は現在はできませんが、投棄方法の違い、比重や大きさに起因する地層内移動分級作用の違いなどがかかわっているものと想定します。

4 感想

・遺物台帳画像を見て、それを手入力で電子化するという作業はこれ以上は無いといえるような単調で苦痛を伴う作業です。この単調作業を効率的に行う方法をいつか見つけたいと希望しています。

・一方、約40年まえの発掘原票をはじめて電子化(データベース化)する意義はとても大きなものがある考えますので、それが作業推進の大きな原動力となっています。

・遺物台帳を最初の1ページから全部読む作業をしていることになりますが、単調な電子化作業の中で、40年前発掘担当者の思考の一端が理解できるように感じることができ、とても不思議な感覚を味わっています。

・貝層や地形との関係分析はもっと電子化作業を進めてから行うことにします。

・遺物分類も今後データが増えた段階で再検討することにします。


次の記事で遺物の標高分布について簡易検討します。


2023年10月15日日曜日

深度合成撮影

 Depth composition shooting


When you zoom in on a small object and take a close-up shot, the area that is in focus becomes narrower (the depth of field becomes shallower), making it difficult to capture the entire image. The OM-1 camera has a depth composite shooting function that solves this problem, so I tried it out and confirmed its usefulness.


小さいモノを拡大して接写で撮影すると、ピントが合う部分が狭くなり(被写界深度が浅くなり)、全体像撮影が困難な場合があります。この不都合を解決する深度合成撮影機能がOM-1カメラにありますので、それを試して、有用性を確認しました。

1 深度合成撮影の結果

OM SYSTEMのカメラOM-1に12-40㎜F2.8PROⅡレンズを装着して、深度合成撮影機能をデフォルト設定にして、手持ちで植物を撮影してみました。通常撮影と比較すると被写界深度が深くなっています。


通常撮影と深度合成撮影の比較 事例1


通常撮影と深度合成撮影の比較 事例2

2 深度合成用に撮影された素材写真

デフォルト設定では深度合成に使うピントの場所が異なる素材写真は8枚撮影されます。


深度合成用素材写真 事例1


深度合成用素材写真 事例2


深度合成用素材写真 動画

OM-1カメラでは、深度合成は撮影枚数3~15、フォーカスステップ(コマ毎のピント位置の移動量)は1~10の間で設定できます。

3 感想

これまで小さなモノを拡大して(焦点距離を長くして)、接写で(短い撮影距離で)撮影すると、ピントが合う部分が局限されて、全体像を捉えることが出来ないことが多く、不都合を感じていました。野外撮影のみならず、博物館展示物の縄文土器や装飾品などでも頻繁に感じてきています。

このような不都合に直面した場合、OM-1使用により深度合成撮影に切り替えることができますから、便利になると感じます。

深度合成撮影の設定はカスタムモードの特定ダイヤルに登録しておいて、必要な場面で、即座に使うことができます。

手持ち撮影でも通常用途写真ならば十分に満足できる画像ができますので実用的です。

なお、今後次のような過去に体験した失敗場面は無くなると思います。

首を中に突っ込めない巨大縄文土器内面の破片毎に書かれた出土メッシュ番号と遺物番号文字(いずれも超微細文字)を記録として望遠機能を使って撮影しました。撮影時にも肉眼では文字は確認しずらいものでした。後日写真で文字を見ると、被写界深度が浅く、ピントが合う文字と合わない文字があり、文字判読が困難なものもありました。結局最後はその土器について再度手続き閲覧して、写真では判読できなかった番号や文字を確認しました。

また、カメラを固定して小さなモノ(例 イボキサゴ)を回転させながら多数の深度合成写真を撮影すれば、小さなモノの高品質な3Dモデル作成ができます。試してみたいと思います。


2023年10月9日月曜日

発掘調査報告書読み取り誤差は10㎝

 Excavation report reading error is 10cm


Regarding the 3D distribution model of the fragments of pottery No. 294 excavated from the shell layer on the north slope of Ariyoshi Kita Shell Mound, it was found that the reading error in the excavation report was approximately 10 cm. By using excavation records, this error regarding pottery is eliminated.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294番土器の破片3D分布モデルについて、発掘調査報告書読み取り誤差が約10㎝であることがわかりました。発掘原票を使うことにより、土器に関するこの誤差はなくなります。

1 発掘原票から計測した294番土器の座標と発掘調査報告書読み取り座標との差分距離


発掘原票から計測した294番土器の座標と発掘調査報告書読み取り座標との差分距離

294番土器の破片は現物閲覧でメッシュ番号と遺物番号を調査し、全部で22の遺物番号から構成されていることが判明しています。22の遺物番号のうち19の遺物番号は遺物台帳と遺物分布図から3D座標が判明しています。このうち、発掘調査報告書読み取り座標と対応しているものは15あります。この15破片について、発掘原票による3D座標と発掘調査報告書読み取りによる3D座標を比較してみました。2つの座標値の平均距離は約0.1mとなります。

この事実により、発掘調査報告書読み取りによる誤差は約10㎝であることが判りました。今後の作業は全て発掘原票を使うことを予定しますから、この誤差約10㎝は無くなります。


発掘原票による3D座標と発掘調査報告書読み取りによる3D座標の比較

2 感想

発掘調査報告書掲載グラフから座標を読み取るという間接的な情報入手がなくなり、間接的であるがゆえに生まれる誤差が無くなることはうれしいことです。

なお、読み取り誤差10㎝とは、発掘調査報告書グラフ作成表現における誤差と純粋な読み取り誤差の合計になります。10㎝という誤差の値はとても小さく、手作業で精細グラフを作成した35年程前の発掘調査報告書作成当事者の方々に敬意を表します。



2023年10月8日日曜日

楽しい思い付き

 fun idea


I had a lot of fun creating the following anime ideas that crossed my mind. I really want to make this happen.

The 3D model of pottery No. 294 is disassembled into fragment-specific models → The disassembled fragment models move and fit into the excavated position of the north slope shell layer spatial model. →The fragment model moves again and is assembled into a 294 pottery 3D model.


次のようなアニメ作成の思い付きが頭をよぎり、超楽しくなりました。ぜひとも実現したいです。

294番土器3Dモデルが破片別モデルに分解していく→分解した破片モデルが北斜面貝層空間モデルの出土位置に移動して収まる。→再び破片モデルが動いて294土器3Dモデルにまとまる。


294番土器3Dモデルの分解と出土場所移動と再統合アニメ イメージ

なんとかかんとか技術的にはできそうなので、近いうちに作成チャレンジしてみることにします。


発掘原票から土器破片3D分布モデルを作成する方法

 How to create a 3D distribution model of pottery fragments from excavation records


I wrote down a practical and technical method for creating a 3D distribution model of pottery fragments from the excavation records of the shell layer on the north slope of Ariyoshi Kita Shell Mound. Now that I've just started working on it, the practicalities and techniques are all self-explanatory. However, there is a strong possibility that I won't be able to remember most of the practical work and techniques immediately after six months, so I just take notes.

有吉北貝塚北斜面貝層の発掘原票から土器破片3D分布モデルを作成する実務的技術的方法をメモしました。作業したばかりの今は、実務と技術は全て自明です。しかし、半年後には実務や技術の大半は即座に思い出せない可能性濃厚ですからメモする次第です。

以下294番土器の例です。

1 現物から土器破片のメッシュ番号と遺物番号を取得する

復元された294番土器の破片にはすべて出土メッシュ番号と遺物番号が白ペイントで記載されています。この情報を全て読み取ります。

294番土器のような巨大土器の場合、破片数も多く、また内面下部は暗く、個別破片同定と微細文字としてのメッシュ番号・遺物番号読み取りは難渋を極めます。今回は内面を含めた3Dモデルを作成して、内面をGigaMesh Software Frameworkで展開して、その平面破片分布図をたよりに情報を読み取りました。将来全土器についてメッシュ番号と遺物番号を読み取る際には、条件に耐えるだけの高性能カメラを用意するなど、事前の工夫が必要となると考えます。


294番土器観察記録3Dモデル画像

2 メッシュ別遺物台帳画像をフォルダーに整理する

メッシュ別フォルダーに遺物台帳画像を収納し、遺物番号の標高を読み取れるようにします。

3 遺物番号から標高値を読み取る

メッシュ別遺物台帳画像から当該遺物番号を探し、その標高を読み取ります。

メッシュ別遺物台帳画像は多数にのぼりますが、遺物台帳は遺物番号順になっていますから、当該遺物番号を探すのは楽です。

4 メッシュ別遺物分布図画像をフォルダーに整理する

メッシュ別フォルダーに遺物分布図画像を収納し、遺物番号のメッシュ内平面座標を読み取れるようにします。

メッシュ別遺物分布図画像は数枚になり、その数は不定です。全図面のなかから、メッシュ別に遺物分布図を整理すること自体がかなり煩雑な作業となります。図面名称が必ずしも遺物分布図となっていないことや全図面配列の中で遺物分布図が必ずしもかたまっていないためです。

5 遺物分布図画像から当該遺物番号を探す

数枚ある遺物分布図の中から当該遺物番号を探し出します。

メッシュによっては数枚ある遺物分布図に掲載される遺物番号数は2000を越えます。このなかから当該遺物番号を探すのは苦行に近い活動です。現状では、1枚1枚の画像をパソコンで大伸ばしして、端から悉皆的に探します。これ以上の原始的方法はないといえるほどの非効率的方法になります。

数枚ある遺物分布図はそれぞれが発掘現場活動のあるまとまりに対応しているようです。同じ遺物番号が別の遺物分布図に重複掲載されることはありません。

「土器一括」などとして遺物台帳に記載されている遺物番号は遺物分布図に掲載されていません。

なお、過去の体験(早期土器・前期土器の座標取得活動)では半日かけて数回しらべても1つの遺物番号を遺物分布図から見つけられないことがありました。(おそらく現場における記入もれだと推測します。)

6 遺物分布図画像から遺物番号のメッシュ内平面座標を読み取る

遺物分布図画像の中に見つけた遺物番号位置のメッシュ内平面座標(x、y)をPythonで計測します。(メッシュの大きさは2m×2m、原点は左上隅)

7 当該遺物番号のBlender空間における3D座標を取得する

3と6の情報からBlender空間における3D座標を取得します。次のような実務ステップを踏みます。

7-1 当該遺物番号のBlender3D空間におけるz座標取得

設定してあるBlender3D空間におけるz座標を次式から取得します。

Blender3D空間z座標=標高-20m

7-2 当該遺物番号のBlender3D空間におけるx、y座標取得

設定してあるBlender3D空間におけるx、y座標を次式から取得します。

Blender3D空間x座標=Blender空間における当該メッシュ左上隅x座標+メッシュ内y座標

Blender3D空間y座標=Blender空間における当該メッシュ左上隅y座標+メッシュ内x座標

(6におけるPython計測のx軸y軸とBlender3D空間におけるx軸y軸は逆転します。)

なおBlender空間における当該メッシュ左上隅x、y座標は次の2つのデータファイル(Excelファイル)aとbをFileMakerに読み込み、メッシュ番号でリレーションしてbファイルのx、y座標をaファイルにコピーして取得します。

aファイル(294土器破片出土メッシュ) メッシュ番号 Blender空間におけるメッシュ番号の左上隅x座標(空欄)、y座標(空欄)

bファイル(全メッシュ) メッシュ番号 Blender空間におけるメッシュ番号の左上隅x座標、y座標

8 3D座標のBlender空間へのプロット

294番土器破片情報をテキストファイルに「名称(メッシュ番号 遺物番号),x座標,y座標,z座標」の型式でまとめます。このテキストファイルを元にBlenderPythonスクリプトで土器破片をCUBEでBlender3D空間にプロットします。


294番土器破片3D分布モデル画像

9 感想

9-1 土器閲覧の必要性

土器以外の全遺物は発掘調査報告書に個別のメッシュ番号と遺物番号が掲載されています。従って、土器以外遺物は現物を閲覧しなくても、発掘調査報告書情報だけから、遺物台帳と遺物分布図から3D座標を取得することができます。

土器は全土器の閲覧を行い、破片のメッシュ番号と遺物番号を取得する必要があります。この作業は土器数が398ありますから膨大なエネルギーを必要とします。しかし、土器情報から時間の前後関係を計ることができますから、作業がいくら膨大なものでも、必須な作業となります。

9-2 遺物分布図内容のデータベース化

遺物分布図画像の中で当該遺物番号を探す行為があまりにも原始的で非効率です。これを改善するために、遺物分布図内の遺物番号のメッシュ内平面座標取得を最初に悉皆的におこなうことを予定します。それが出来れば遺物番号とメッシュ内平面座標のデータベースができます。従って遺物分布図から当該遺物番号を原始的に探す行為は必要なくなり、Excel検索で一発で検索できます。

9-3 Pythonによる作業の効率化とさらなる改善

遺物台帳画像と遺物分布図画像をメッシュ別にフォルダーに整理する作業にPythonを使い、作業の効率化を図ることができました。

遺物分布図からメッシュ内座標を取得する自作Pythonプログラムをより使い勝手が良いものに改善します。

9-4 FileMakerの活用

294番土器破片出土メッシュリスト(a)と全メッシュBlender座標リスト(b)をFileMakerに読み込みメッシュ番号でリレーションしてbファイルからaファイルへ座標値を移植できました。このFileMakerのリレーション機能に習熟して、ファイル間のデータの受け渡しを円滑に行えるようにします。

ゆくゆくは北斜面貝層遺物に関する情報をFileMakerでデータベース化することを検討します。


2023年10月6日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 294番土器破片3D分布モデル

Northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

3D distribution model of pottery fragment No. 294


I created a 3D distribution model of the fragments of pottery No. 294 (Kasori EII type middle to new stage) excavated from the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound from the excavation record information.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294番土器(加曽利EⅡ式中~新段階)の破片3D分布モデルを発掘原票情報から作成しました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 294番土器破片3D分布モデル

有吉北貝塚北斜面貝層 294番土器破片3D分布モデル

このモデルは294番土器破片に書かれた遺物番号の3D分布モデルです。1つの遺物番号を30㎝×30㎝×30㎝のCUBEで表現しています。

同じ土器の複数破片が塊状に出土する場合、全て同じ遺物番号となるため、遺物番号数は実際の破片数よりかなり小さい数値となりす。


294番土器

294番土器は加曽利EⅡ式中~新段階に分類されます。


294番土器の破片構成

全破片にメッシュ番号と遺物番号が白ペイントで記載されています。この情報により遺物台帳と遺物分布図から破片別のx座標、y座標、z座標を求めました。

ガリー侵食地形の崖頂線とガリー主流線は発掘調査報告書掲載貝層断面図から作成しました。


有吉北貝塚北斜面貝層 294番土器破片3D分布モデル画像


有吉北貝塚北斜面貝層 294番土器破片3D分布モデル動画

2 メモ

3Dモデルにガリー侵食地形崖頂線と主流線(想定)を入れるだけで、様になることに気が付きました。また、表題や注記文字を入れることで表現に厚みが出ることにも気が付きました。


2023年10月4日水曜日

発掘原票に由来する土器破片3D分布と報告書に由来する土器破片3D分布の比較 294番土器の例

 Comparison of the 3D distribution of pottery fragments derived from the excavation record and the 3D distribution of pottery fragments derived from the report Example of pottery No. 294


I created and compared a 3D distribution model derived from the original excavation record and a 3D distribution model derived from the graph published in the excavation survey report for pottery fragment No. 294 in the shell layer on the north slope of Ariyoshi Kita Shell Mound. This is an activity to get used to excavation slip manipulation techniques.


有吉北貝塚北斜面貝層の土器破片について、294番土器を例に、発掘原票由来3D分布モデルと発掘調査報告書掲載グラフ由来3D分布モデルを作成して比較しました。発掘原票操作技術に慣れるための活動です。

1 294番土器

有吉北貝塚出土土器で最大級の土器。加曽利EⅡ式中~新段階土器。


294番土器の大きさ。


294番土器の様子

2 発掘原票由来3D分布モデルと発掘調査報告書掲載グラフ由来3D分布モデル


294番土器 発掘原票由来の土器破片3D分布モデル画像


294番土器 発掘調査報告書掲載グラフ由来の土器破片3D分布モデル画像


294番土器 2つの土器破片3D分布モデルの重合モデル画像

本来2つのモデルはほとんど一致すべきものですが、かなりの差異があります。この差異を手がかりにして、原票操作する際の問題点の認識を深めることにします。

3 メモ

次以降の記事で、2つのモデル作成方法のメモ、2つのモデルの比較から得られる情報、感想などについてまとめます。



2023年10月2日月曜日

2023年9月ブログ記事のふりかえり

 September 2023 blog article retrospective


I looked back on the September 2023 activities of my blog 'Walking along the Hanami River Basin'.

I mainly enjoyed the following two things during my blogging activities in September.

1 Arrangement of excavation record of shell layer on north slope of Ariyoshi Kita Shell Mound and study of database creation plan

2 3D model creation and painting of Kasori Shell Mound Museum summer exhibition pottery


ブログ「花見川流域を歩く」の2023年9月活動をふりかえりました。

9月のブログ活動では主に次の2点を楽しみました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層発掘原票の整理とデータベース作成計画検討

2 加曽利貝塚博物館夏季展示土器の3Dモデル作成と塗色

1 ブログ「花見川流域を歩く」

・2023年9月の記事数は21です。

・有吉北貝塚北斜面貝層の発掘原票全部を8月に複写して画像ファイルとして取得しました。9月にこの画像ファイルをメッシュ別に整理してパソコンフォルダーに格納しました。ChatGPT支援Pythonによりその作業は想定をはるかに超えて短時間で実現しました。

・発掘原票から全遺物63000の3Dデータベース作成計画を立案イメージしました。

・加曽利貝塚博物館夏季展示土器をショーケース越しに撮影して、2つの土器について3Dモデルを作成しました。さらにそれぞれ塗色して楽しみました。

・世界の考古学切手の記事2編を書きました。

2 ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」

・早朝散歩記事6編を書きました。

3 2023年9月活動の特徴

・発掘原票全部から63000遺物の3Dデータベースを作成する決断をしました。3Dデータベースを作成することにより、あらゆる切り口で遺物の3D分布を可視化することが可能となります。

・発掘原票複写をしていたころは、その画像を見て利用するだけであり、データベース作成までは考えていませんでした。しかし、学習欲が高まり、データベース作成企画にたどり着きました。いったんデータベース作成をイメージすると、発掘原票の価値を引き出すにはデータベース作成が不可欠であることに気が付きました。

・3Dデータベース作成とその分析に要する時間を3ヵ年と見積りました。趣味生活において「3ヵ年は食うに困らない」のですから、うれしいことです。

4 2023年10月学習活動の展望

・遺物3Dデータベース作成作業を軌道に乗せることに尽力することにします。また、作業効率を高める技術の工夫を進めることにします。

・発掘調査報告書由来土器破片分布3Dモデルと事例的に作成する発掘原票由来土器破片分布3Dモデルを比較して、発掘調査報告書掲載グラフの精度について把握することにします。

・今後3Dデータベース作成が進むと順次、メッシュ分析(平面分析)が可能となりますので、BlenderとPythonを活用したメッシュ分析・表現技術を獲得していくことにします。

・フォトグラメトリーで作成した3Dモデルの中でテクスチャ画像が複数に設定されるものがあります。このような3Dモデルに色塗りする技術を検討します。(ベイクを利用して複数テクスチャ画像を1枚にまとめて、そのテクスチャ画像を人が理解できる画像に変換することが可能かどうか確かめます。)

参考

ブログ「花見川流域を歩く」2023年9月記事 〇は特に閲覧の多いもの

ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」2023年9月記事


2023年9月にSketchfabに投稿した全3Dモデル21点


2023年9月にYouTubeに投稿した全動画16点


2023年9月にブログ「花見川流域を歩く」投稿記事に掲載した全画像117点