私の散歩論

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2025年5月31日土曜日

イランルート砂漠のヤルダン地形と花見川地形の比較

 Comparison of the Yardang topography in the Lut Desert of Iran and the Hanami River topography


The Yardang topography (wind erosion topography) in the Lut Desert of Iran is the largest in the world. To get a sense of its scale, I compared it with the Hanami River topography using a 3D model under the same conditions. It's amazing that such a topography can be created by wind alone.


イランルート砂漠のヤルダン地形(風食地形)は世界最大規模です。その規模を実感するために花見川地形と同条件3Dモデルで比較してみました。風だけでこれだけの地形ができるのですから、感動します。

1 イランルート砂漠のヤルダン地形と花見川地形

イランルート砂漠のヤルダン地形と花見川地形

面積はどちらも約10000ha

垂直比率:×5

Attributions(どちらも)

Generator: DEM Net Elevation API - https://elevationapi.com

Digital Elevation Model: AW3D30 OpenTopography - https://opentopography.org/

Imagery: Esri World Imagery - https://services.arcgisonline.com/ArcGIS/rest/services/World_Imagery/MapServer

3DF Zephyr v8.011でアップロード 


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


3Dモデルの画像


画像の位置

2 メモ

イランルート砂漠のヤルダン地形(風食地形)は世界最大規模です。その規模を実感するために花見川地形と同条件3Dモデルで比較してみました。風だけでこれだけの地形ができるのですから、感動します。

ヤルダン地形の谷底と山頂の比高は100m前後のようです。花見川付近の谷底と台地面の比高は20~30mです。

なお、ヤルダン地形のテクスチャ画像をよく見ると谷底に水が貯まっている状況の写真になっています。砂漠で大雨が降った後の珍しい状況での撮影画像のようです。

ヤルダン地形の広大な領域は空から眺めるばかりで、その大部分は過去も現在も人跡未踏の地であると理解します。

DEM-Net Elevation API by Xavier Fischerが提供する素晴らしいサービスに感謝します。


イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土

 Close-by excavation of a boar jawbone and three hunting tools


In 3D space, we found a place where a boar jawbone and three hunting tools were found close together. The place is surrounded by a dense area of ​​bones and teeth. There is a possibility that a meaningful event will be discovered using the boar jawbone as a key. However, this one example may be a coincidence, so we will wait for the discovery of similar examples in the future.


3D空間の中で、イノシシ顎骨と狩猟道具3点が接近出土する場所を見つけました。その場所が骨・歯密集域に囲まれています。イノシシ顎骨をキーとする意味のある事象発見の可能性があります。しかしこの1例では偶然かもしれないので、今後の類例発見を待ちます。

1 イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土

イノシシ顎骨


イノシシ顎骨に接近して出土する遺物

イノシシ顎骨、石鏃、骨角歯牙製品、貝製品(装飾品)、人骨を集成した3D分布モデルを作成して子細に観察していたところ、イノシシ顎骨、刺突具(鹿骨)、釣針(海獣骨)、石鏃が接近出土する場所を発見しました。

2 イノシシ顎骨等4遺物と骨・歯3D分布との関連


イノシシ顎骨等4点内包球の作成


イノシシ顎骨等4点内包球の空間関係

イノシシ顎骨等4遺物接近出土の場所が骨・歯3D分布との関連で気になるので、4遺物を内包する球を3D空間に設定して、その球と骨・歯3D分布との関係を観察しました。結果、内包球が骨・歯3D分布における密集域の空白部にすっぽりと入ることを確認しました。骨・歯密集域の空白部は11断面のS3層の褐色部に対応します。

イノシシ顎骨は他の遺物と比べてその大きさが特段に大きく、象徴性があるので、それと狩猟道具等の接近出土は何らかの意味があるかもしれないと考えます。またそれらと骨・歯密集性との関係に何らかの意味があるかもしれないと考えます。しかし、今回例は単なる偶然の産物である可能性もあり、この1例だけでは結論が出ません。北斜面貝層全体のデータベースによる調査が進めば、イノシシ顎骨出土数が多い(99)ことから、イノシシ顎骨に関して何らかの有用情報を獲得できるかもしれないと期待しています。

3 イノシシ顎骨の利用について

出土したイノシシ顎骨はいずれも「美しく」噛み跡や分解がほとんどありません。このことから、イヌの餌になった様子は皆無です。棒の上にイノシシ顎骨を刺して空中に展示して、トーテムなどとして利用した可能性が濃厚です。




骨・歯3D分布の特徴

 Characteristics of 3D distribution of bones and teeth


Looking at the 3D distribution of bones and teeth in the shell layer study space on the northern slope, the dense area is on the middle slope. In the 3D distribution of pottery, the dense area is on the lower slope. In other words, the 3D distribution characteristics of bones and teeth are different from those of pottery. This is the first example of identifying differences in distribution characteristics of different artifacts.


有吉北貝塚北斜面貝層検討空間における骨・歯3D分布をみると、その密集域が斜面中腹にあります。土器3D分布では密集域は斜面下方にあります。つまり骨・歯と土器では3D分布特性が異なります。遺物別分布特性が異なる様子を突きとめた最初例となります。

1 骨・歯の3D分布


斜面性貝層細区分別骨・歯件数


骨・歯3D分布


骨・歯3D分布 上からオルソ投影

骨・歯の3D分布をみると、密集域(※)が白色貝層でいずれも貝層形成時の斜面中腹の場所に該当します。分布域が土器分布と明らかに異なります。骨・歯は獣肉を食べた残滓が残されたものと捉え、斜面の中腹で野外飲食により投棄された跡であると想定します。骨・歯3D分布モデルを上からオルソ投影すると、斜面中腹部の11断面側に骨・歯密集域の空白部を観察できます。

※ 骨・歯の密集域:3D空間における骨・歯データ個々について、半径20㎝球空間に別の骨・歯が存在する数をカウントして、その数で分級して、密集度を算出し色分けしました。ここでは半径20㎝球空間に10個以上の他の骨・歯が存在する場合を赤表示し、「密集域」としました。

2 メモ

土器の3D分布特性と骨・歯の3D分布特性が異なることが判明しました。この事象把握は本研究における主要成果の一つです。

骨・歯密集域の空白部は次の検討項目「イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土」で意味が生まれます。


2025年5月30日金曜日

栄光の歴史 イラン

 Glorious History Iran


I have started studying the April 2025 issue of the magazine "Geography". This time, the editorial is "Glorious History and...". It summarizes the activities of the Silk Road Travelers Group, the relationship between travel in Iran and the magazine's special issue, and provides a comprehensive understanding of Iranian history. It also touches on the history of exchanges between ancient Japan and Iran.


雑誌「地理」2025.04号の学習を開始しています。今回は巻頭論説「栄光の歴史と・・・」です。シルクロード旅行家集団の皆さんのこれまでの活動総括と、イラン旅行と、雑誌特集号の関係と、イラン歴史の総括的理解が述べられています。古代日本とイランとの交流の歴史などにもふれられています。

1 巻頭論文「栄光の歴史と・・・」の要旨

今村遼平・高安克己「栄光の歴史と独自のイスラム国家建設」(雑誌「地理」2025.04)では、シルクロード旅行家集団の皆さんのこれまでの活動総括と、イラン旅行と、雑誌特集号の関係と、イラン歴史の総括的理解が述べられています。その具体的内容をこの記事で復唱しても余り意味がないので略します。

2 感想

この論説を読んで、自分が刺激を受けて、感想・思考が巻きあがった事項をメモします。

2-1 古代日本とイランとの交流の歴史

奈良正倉院にササン朝ペルシャのガラス製「白瑠璃椀」が収蔵されていますが、それと同時代の古代ガラス器をたくさん、イランのアゼルバイジャン博物館で私たちも見た、とのことです。

大いに興味が巻きあがります。

2-2 千夜一夜物語

ペルシャ文化の記述のなかで「千夜一夜物語」(アラビアンナイト)に言及しています。私は大学生の時に岩波文庫版「千夜一夜物語」(全13冊)を「読破」して自己満足したおぼえがあります。また日本とは異なる砂漠異世界を興味津々で読書体験したおぼえがあります。

「そうだったのか、千夜一夜物語の世界がイランの歴史なんだ。」

2-3 ゾロアスター教の聖地

ゾロアスターが創始した拝火教はとても興味を持っています。その聖地がイラン高原東北部にあるとのことです。シルクルード旅行家集団の皆様が持ち帰った情報を引き金にして、学習を深めることができるよにしたいです。

2-4 ローマや西欧諸国がイラン高原を越えることは一度もなかった

東西交易の財を一人占めしようとするローマや西欧諸国がイラン高原を越えることは一度もなかったとのことです。このような「地政学的観点」から中東歴史を俯瞰したことがなかったので、これからの雑誌「地理」2025.04号学習が楽しみです。

2-5 素晴らしい付図

記事に掲載されている2つの地図「イランの地勢」と「イランの主な都市と交通路」はとても秀逸です。これから学習の主要ツールにしていきたいと思います。


地図「イランの地勢」


地図「イランの主な都市と交通路」

2025年5月29日木曜日

大洞B-C式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Observation record 3D model of Obora B-C type pottery (Kasori shell mound, Chiba city)


I created a 3D model of the observation record of Obora B-C type pottery, which is a different type of pottery from the Kasori shell mound. The pottery is in a brittle state due to secondary heating. Since the pattern is difficult to see at a glance, I made some adjustments to the observation, such as adding color gradations to a textureless 3D model.


加曽利貝塚にとっては異系統土器にあたる大洞B-C式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。二次被熱で脆い状態の土器です。一瞥の観察では文様の様子がよくわからないので、テクスチャなし3Dモデルに色グラデーションを加えるなどの工夫をして観察しました。

1 大洞B-C式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

大洞B-C式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 133 images


3Dモデルの動画(通常バージョン)


3Dモデルの画像(通常バージョン)

2 文様観察をしやすくする工夫

大洞B-C式土器(千葉市加曽利貝塚)テクスチャ無しグラデーション付加3Dモデル


3Dモデルの動画(テクスチャ無し3Dモデルに色グラデーション付加)


3Dモデルの画像(テクスチャ無し3Dモデルに色グラデーション付加)


3Dモデルの画像(テクスチャ無し3Dモデル)


3Dモデルの画像(テクスチャ無し3Dモデル)

「羊歯状文を作出する196~198…は、大洞B-C式土器に対比できると考える。」(特別史跡加曽利貝塚 第14次調査報告書から引用」


196~198実測図(発掘調査報告書から引用)

196~198は口縁部が外傾する皿形の土器で、接合しないが同一個体である。二次被熱のため脆い状態で、197・198を含めて口縁部約1/2強、上げ底の底部は3/4程が遺存する。(発掘調査報告書から引用)


2025年5月28日水曜日

土器3D分布の特徴

 Characteristics of pottery 3D distribution


Looking at the 3D distribution of pottery, we were able to observe a notable feature that the dense area exists at or near the lower tip of the white shell layer. This can be observed in the actual cross section of the peeled pottery. Why this is the case is an interesting topic for future investigation.


土器の3D分布をみると、密集域が白色貝層の下方先端あるいは先端付近に存在するという際立った特徴が観察できました。その様子は剥ぎ取り断面で実物観察できます。なぜそうなのか、今後の興味ある検討課題です。

1 土器3D分布の特徴

斜面性貝層細区分別土器・土製品件数

斜面性貝層細区分別土器・土製品件数をみると、同じ白色貝層でもS2層の土器・土製品件数がS1層、S3層より多くなっています。

土器3D分布の特徴

土器の3D分布をみると、密集域(※)が白色貝層の下方先端あるいは先端付近に存在するという際立った特徴が観察できます。その様子は剥ぎ取り断面のS1層下方先端、S2層下方先端で実物観察できます。

※ 土器の密集域:3D 空間における土器(ここでは土製品を除いている)データ個々について、半径20㎝空間に別の土器が存在する数をカウントして、その数で分級して、密集度を算出し色分けしました。ここでは半径20㎝空間に3個以上の他の土器が存在する場合を赤表示し、「密集域」としました。

土器密集域が白色貝層下方先端付近に形成されている様子の検討・解釈は、北斜面貝層全体の観察データ蓄積を踏まえ行うことにします。


剥ぎ取り断面の土器片

2 斜面性貝層における貝殻・遺物の挙動


斜面性貝層における貝殻・遺物の挙動

斜面性貝層では、土器や貝殻は投棄された当初、重力や浸透水、霜柱、踏圧などの影響で下方に移動していると考えられます。しかし、その移動量は現状では不明です。本研究では遺物3D分布の諸状況から、平均的下方移動量はさほど大きなものではないとイメージし、分析では考慮していません。


斜面性貝層細区分別の遺物3D分布分析

 3D distribution analysis of artifacts by slope shell layer subdivision


When counting the number of artifacts by slope shell layer subdivision, the number of artifacts is greater in the white shell layer than in the brown shell layer. It is worth further consideration as to how this phenomenon should be interpreted in relation to the rise and fall of settlement activity and environmental changes (changes in sedimentary environment).


斜面性貝層細区分で遺物件数を集計すると、白色貝層の方が褐色貝層より件数が多くなっています。この事象を集落活動消長や環境変化(堆積環境変化)との関わりでどのように解釈すべきか、今後検討を深める価値があります。

1 斜面性貝層細区分別の遺物件数


斜面性貝層細区分と遺物分布


斜面性貝層細区分別遺物件数 表


斜面性貝層細区分別遺物件数 グラフ

6層に分層された斜面性貝層の細区分3Dモデルに内包される遺物のリストをBlenderPythonで取得し、統計処理して遺物件数表とグラフを作成しました。遺物件数トータルでみても、後述する土器・土製品でみても白色貝層(S1層、S2層、S3層)の方が褐色貝層(R1層、R2層、R3層)より値が大きく、密度(単位貝層量当り遺物件数)で見ても同じ傾向です。この様子から検討空間では白色貝層の時期の方が褐色貝層の時期より遺物投棄活動が活発であったといえます。このデータを集落活動や堆積環境変化との関わりでどのように解釈することができるのか、今後検討を深める価値があると考えます。

2 遺物3D分布の移動


斜面性貝層6分層別遺物分布

6分層別に遺物分布を正面から、左から、上からそれぞれオルソ投影して見てみると、遺物分布自体が当初斜面に対して移動している様子を観察できます。当初斜面の利用がR1層やS1層では上から始まり、S3層では下に移動したように観察できます。また、遺物分布の当初斜面全長に占める割合が小→大→小と変化していることも観察できます。貝殻投棄と遺物投棄活動のあり方が時期によって変化している様子が投影されている可能性があります。今後検討を深める価値のある事象です。


すばらしい最新イラン体験記(雑誌「地理」2025年4月号特集)の学習を始める

 Start studying the wonderful latest Iran experience (feature in the April 2025 issue of the magazine "Geography")


Iran is an interesting country, but I have not been there yet. The author sent me a magazine in which a group of geography experts traveled to Iran and summarized their experiences in numerous articles. Although I am two months late, I will start studying Iran and enjoy it.


イランは興味深い国ですが、自分はまだ行ったことがありません。そのイランを地理専門家集団が旅行して、その体験を多数の論説にまとめた雑誌を著者から贈っていただきました。2ヵ月遅れとなってしまいましたが、イラン学習を開始し、楽しむことにします。

1 雑誌「地理」2025年4月号特集ペルシャからイランへ


雑誌「地理」2025年4月号特集ペルシャからイランへの表紙


雑誌の裏表紙(イラン地図と旅行ルート図になっている)


雑誌の目次(特集部分)

シルクロード旅行家の中家惠二さんから雑誌を3月末に贈っていただきました。4月5月と貝塚研究に熱中していたため、学習開始が2ヵ月遅れとなってしまいましたが、これから期間限定で大いにイラン学習を楽しむことにします。

中家惠二さんとは50年以上前に、日本最初の応用地理を主要技術とする建設コンサルタント会社で一緒でした。これまでも中国西方辺境域旅行記である図書「シルクロード1万5000キロを往く」(上下)やウズベキスタン旅行記(地理別刷り多数)をいただき、自分の学習材料にさせていただいています。

ウズベキスタンは自分も旅行したことがあるので、ブログ記事を8編書いて、楽しみました。

この度贈っていただいた雑誌には中家さんはじめとする旅行団の論説が全部で13編掲載されています。

イランは自分にとって興味深い国であるので、全部の論説について学習を深め、それぞれの感想を独立記事に書き楽しむことにします。この活動は熱中している貝塚研究とは異質なので、頭の硬直性を揉みほぐるような効果も秘かに期待することにします。

この記事ではイラン地形3Dモデルをつくり、イランの地理地形を頭に叩き込み、その過程を楽しむことにします。同時に、自分が過去にイランの地形について興味をもったことがあるので、それを思い出すことにします。読書感想は次の記事から始めることにします。

2 イラン地形3Dモデル

イラン地形3Dモデル

地理院地図3D機能で作成

垂直比率:×30

国境線はGADMからKMLファイルとして取得して表示


地理院地図作業画面


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

3 イランのヤルダン地形

2018.07.09ブログ世界の風景を楽しむ「イランにある地球最大規模のヤルダン地形

ヤルダン地形とは乾燥地帯の風食地形です。イランのルト砂漠のヤルダン地形は世界最大規模です。


Geomorphology from spaceの画像


ヤルダン地形の様子

4 イランの砂海

2018.07.13ブログ世界の風景を楽しむ「イランの砂海


Geomorphology from spaceの画像


イランの砂海の様子


ヤルダン地形と砂海の位置

5 感想

イラン地形3Dモデルを作成して、また過去の自分のイラン興味から、イランに対する自分の印象は複雑な地形をなす山岳地域と乾燥地形など過酷な自然環境を強く意識します。

このような自然環境と人々がどのように関わって生活しているのか、これから雑誌地理4月号を紐解いて読んで、頭に浮かぶ感想や思考を楽しむことにします。



2025年5月27日火曜日

石剣5点(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Five stone swords (Kasori shell mound, Chiba city) Observation record 3D model


I created a 3D model of the observation record of five stone swords excavated from the late Jomon period remains at the Kasori shell mound in Chiba city. The three stone swords excavated from the remains of dwelling No. 85 were excavated in a heated state from the burnt soil layer directly above the floor.


千葉市加曽利貝塚の縄文晩期遺構から出土した石剣5点の観察記録3Dモデルを作成しました。85号住居跡から出土した石剣3点は床面直上の焼土層から被熱した状態で出土しています。

1 石剣5点(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

石剣5点(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

上3点:第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

下左:第14次調査遺構外出土

下右:第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 66 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 メモ

85号住居跡から、「床面直上の焼土層から被熱した完形に近い頁岩製石剣1本と緑色片岩製石剣2本がスコリア粒と共に出土し、廃屋時の儀礼の可能性が考えられた」(松田光太郎「千葉県特別史跡加曽利貝塚における縄文時代晩期の調査」(考古ジャーナル、2024)から引用)


85号住居跡石剣出土状況(発掘調査報告書掲載写真をトリミングして引用)


貝層大区分別遺物3D分布分析

 3D distribution analysis of artifacts by major shell layer division


A 3D distribution analysis of artifacts by major shell layer division was performed. Approximately 80% of the artifacts were excavated from slope shell layers, and approximately 10% from channel shell layers. Extraction of artifacts by major shell layer division was performed using BlenderPython, and aggregation analysis was performed in relation to the database.


貝層大区分別遺物3D分布分析を行いました。遺物の約8割が斜面性貝層から、約1割が流路性貝層から出土しています。貝層大区分別の遺物抽出はBlenderPythonで行い、集計分析はデータベースとリレーションして行います。

1 貝層大区分別遺物3D分布分析


検討空間 貝層大区分別遺物件数 表


検討空間 貝層大区分別遺物件数 グラフ


貝層大区分別遺物出土の特徴

貝層大区分の各区分別3Dモデル空間に含まれる遺物をカウントして件数と密度を整理するとともに、3D空間における遺物分布状況を観察しました。

遺物は圧倒的に斜面性貝層で多く出土しています。密度でみると斜面性貝層に次いで流路性貝層が大きくなっています。

遺物種別件数では骨・歯が全体の70%、土器・土製品が24%で、石器・石、貝製品が続きます。骨角歯牙製品、人骨も出土しています。

崩落層の基底層、崩落層の端に遺物が出土していることから、ガリー浸食による崩落活動の最初期に遺物を含む前代貝層が崩落し、その後付近の台地構成層が崩落した可能性があります。

2 貝層大区分別遺物数のカウント方法、分析方法

Blender3Dビューポートに遺物3D分布モデル(3721CUBEの分布、CUBEは遺物コードを所持している)と貝層大区分別3Dモデル(6曲面オブジェクト分布)が配置されています。この画面で、貝層大区分のそれぞれについて、その3Dモデルに内包されるCUBEをBlenderPythonスクリプトで抽出します。抽出結果(csvファイル)をデータベースに遺物コードをキーにリレーションして、データベースで集計・分析を行います。


貝層発達史(貝層区分と土器型式)

 Shell layer development history (shell layer division and pottery type)


A 3D spatial analysis of the slope shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound revealed that the shell layer development period was from the Nakabyo to Kasori EⅡ new stage. This is a groundbreaking achievement in that it established a method to link shell layer division and pottery type.


有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層について、土器型式との対応を3D空間で分析し、貝層発達時期が中峠式~加曽利EⅡ式新段階であることを明らかにしました。貝層区分と土器型式のリンク方法を確立した点で画期的成果です。

1 貝層区分と土器型式の対応

土器型式情報付土器3D分布モデルと貝層区分を3D空間の中で対応させる

土器3D分布モデルと貝層区分(貝層大区分及び斜面性貝層細区分)を3D空間の中で対応させて、貝層区分別土器型式データ数をカウントして整理しました。カウント範囲は検討空間から1m離れた領域まで含めました。

カウント方法は、検討空間内(10断面と11断面の間、幅2m)は貝層区分3Dモデルに内包されるデータをカウントしました。検討空間外(10断面と11断面からそれぞれ1mまで離れた領域)のデータはそれぞれの断面にオルソ投影して、その場所の貝層区分でカウントしました。

おおよそ、次の対応が観察できました。


貝層と土器型式との関係 表


貝層と土器型式との関係 断面表示

二次堆積層、斜面性貝層R1層、S1層:中峠式

斜面性貝層R2層:加曽利EⅠ式

斜面性貝層S2層:加曽利EⅡ式古段階

斜面性貝層S3層:加曽利EⅡ式新段階

データ(土器3D分布モデル)が流路性貝層に偏っていることと、座標精度がもともと良くないというハンデはあるものの貴重な情報が得られました。斜面性貝層発達の時期的枠のイメージを持つことができました。


R3層と流路性貝層の急激な堆積が対応する

なお、流路性貝層で加曽利EⅡ式中段階が9、加曽利EⅡ式中~新段階が12とデータ数が多くなっています。このデータの空間的層位は流路性貝層の堆積が急激に進行した部分(画像の緑色の部分)であることから、斜面性貝層R3層(褐色貝層)の時期に対応することになります。この対応(R3層と加曽利EⅡ式中段階、中~新段階の対応)はR3層下位のS2層が加曽利EⅡ式古段階に対応し、R3層上位のS3層が加曽利EⅡ式新段階と対応する結果と整合的です。

このことから、R3層の土器型式対応を間接的ながら、次のように考えることができます。

斜面性貝層R3層:加曽利EⅡ式中段階、中~新段階

11断面付近で急激な堆積があり、上流で激しい浸食作用があった時期に上流で大量の加曽利EⅡ式中段階、中~新段階土器が投棄されたことが、結果的に判明しました。

2 貝層と土器型式の対応の考え方


貝層と土器型式の対応の考え方

ポンチ絵に示すように、出土した土器の型式を指標とする場合、斜面性貝層では大雑把ですが、地層累重の法則が成立し、流路性貝層は見かけ上成立しないと考えます。斜面性貝層でも、斜面上部における浸食の影響がありうるので、出土した土器型式の最新のものがその貝層に対応することになります。

3 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層について、土器型式との対応を3D空間で分析し、貝層発達時期が中峠式~加曽利EⅡ式新段階であることが、今回分析で新たに明らかになりました。この結果のみならず、貝層区分と土器型式のリンク方法を確立した点でも今回研究成果は画期的です。今回の3D空間分析方法は本邦貝塚研究で初出であると考えます。本邦考古学一般でも、地層と土器型式関係の3D空間分析方法という点で初出かもしれません。


2025年5月26日月曜日

縄文晩期土器(5類A種)(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Late Jomon pottery (Type 5, A) (Kasori shell mound, Chiba city) Observation record 3D model


A 3D model of the observation record of Late Jomon pottery Type 5, A, excavated from the Kasori shell mound, Chiba city, was created. The arc-shaped sunken lines are applied horizontally from the rim to the maximum diameter of the body, and diagonally below the maximum diameter, and then string line patterns are applied. The impression is made by pressing the fingers horizontally against the clay string, resulting in a flat cross-sectional shape.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の5類A種土器の観察記録3Dモデルを作成しました。弧状沈線を口縁部から体部最大径付近にかけては横に、最大径以下は斜めに施文した後に紐線文を貼付しています。押捺は指を横にして粘土紐に押し付けるように加えるので、扁平な断面形状です。

1 縄文晩期土器(5類A種)(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

縄文晩期土器(5類A種)(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 103 images


3Dモデル動画


3Dモデル画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(部分拡大)

3 メモ

「弧状沈線を口縁部から体部最大径付近にかけては横に、最大径以下は斜めに施文した後に紐線文を貼付する。押捺は指を横にして粘土紐に押し付けるように加えるので、扁平な断面形状である。」(発掘調査報告書から引用)

分類5類A種は発掘調査報告書による。