2015年のブログ「花見川流域を歩く」をふりかえってみます。
1 房総古代道研究会における発表
1月に房総古代道研究会において、私の「花見川東海道水運支路仮説」を「忘れられた古代交通施設 -千葉市花見川区に所在した水運路を結ぶ古代道路施設 船越-」と題して発表させていただきました。
学術的な裏付けのある活動をしているわけではありませんが、私の仮説を聞いていただき、また有益な多数のアドバイスをしていただいた房総古代道研究会の皆様に感謝いたします。
この発表は、この研究会メンバーでもある千葉市埋蔵文化財調査センターの研究者西野雅人様のご紹介によるものです。
以前「千葉県の歴史 通史編 原始・古代1」の縄文時代貝塚に関する記述内容について疑問があり、西野雅人様にいろいろと教えていただいたことがありました。
発表に使ったパワーポイント資料は次の通りです。
「忘れられた古代交通施設 -千葉市花見川区に所在した水運路を結ぶ古代道路施設 船越-」(パワーポイント)
「忘れられた古代交通施設 -千葉市花見川区に所在した水運路を結ぶ古代道路施設 船越-」(pdf)
この仮説「花見川東海道水運支路仮説」(花見川と平戸川(新川)を結ぶ陸路があり、花見川と平戸川が東京湾から香取の海に抜ける東海道水運支路であった。)を実証することにつながる活動をこの1年行ってきました。
ただし、この仮説を直接実証するような活動を行うにしては、自分にあまりにも知識がないので、迂遠な活動であると判っていますが、まず、基礎知識増大を目指しました。その活動が花見川・平戸川筋の関連遺跡の文献悉皆閲覧学習です。
2 花見川・平戸川筋の遺跡文献悉皆閲覧学習
とにかく、花見川・平戸川筋の遺跡文献を悉皆的に閲覧して学習し始めました
これまで閲覧学習してきた主な遺跡とその感想は次の通りです。
ア 上ノ台遺跡(古墳時代)
祭祀に使ったと考えられる牛骨が竪穴住居から出土し、浮島牛牧の原型が古墳時代に存在していたという印象をもちました。
遺構分布図をIllustratorに取り込み、Illustratorをつかって遺跡内の詳細分布図を作成して検討しました。
2月頃記事多数。
イ 検見川台地の遺跡(主に奈良時代)
直道遺跡、居寒台遺跡などについて学習しました。
銙帯出土に興味を持ち、直道遺跡から出土した銙帯現物を千葉市埋蔵文化財調査センターで閲覧させていただき、大変参考になりました。
銙帯は官人がつけるものですから、銙帯出土は律令国家の活動を表現していると考えました。
その後、「千葉県の歴史 資料編 考古4 (遺跡・遺構・遺物)」に千葉県出土銙帯リストと分布図があり、自分でもそれをGISに取り込みました。
3月頃記事多数
ウ 萱田遺跡群(奈良時代)
白幡前遺跡、井戸向遺跡、北海道遺跡、権現後遺跡について、ゾーン別に遺構・遺物の分布図を作成して、遺跡の特色について自分なりの分析を行い、検討しました。
最初はあまり興味のなかった墨書土器について、途中からその重要意義に気がつき、墨書文字についてその意味を検討しました。
八千代市立郷土博物館で出土墨書土器現物の閲覧もさせていただき、大変参考になりました。
また墨書土器専門家からデータベースが公表されていること教えていただき、墨書土器データベースも活用するようになりました。(おかげでFile Makerというデータベースソフトも使えるようになりました。)
萱田遺跡群の検討で、蝦夷戦争と集落開発が切っても切れない関係にあることを感じました。
また、多量のハマグリ出土などから萱田遺跡群が東京湾岸と強く結びついていることも確認できました。
4月~8月記事多数。
エ 鳴神山遺跡(奈良時代)
鳴神山遺跡は千葉県で墨書土器出土数が第1位の遺跡であり、強い興味を持って検討に入りました。
しかし、肝心かなめの発掘調査報告書の必要部分をコピーして利用できるまでに多大のエネルギーを費やしました。
一般市民が発掘調査報告書のデータをGISにプロットするためには、法律違反(著作権法)を覚悟しなければならないような社会状況が存在することに強い感情を持ちました。(法律違反は時間と多大な経費を投入して、結局回避できました。)
当初は墨書土器データベースを遺構にプロットして遺跡の性格を検討しました。
9月~10月頃記事多数。
発掘調査報告書コピーを入手して、遺物分布検討が現在進行形です。
12月記事多数。
なお、鳴神山遺跡学習では、遺構をGISにプロットして、GIS上で遺物分布等を検討してます。自分としては初めての遺跡内分布図作成にGISを利用するようになりました。遺構や遺物に関する情報はcsvファイルにして、GIS上に単純プロットしたり、出現頻度グラフ表示します。
Illustratorを使っていた時は、分布図作成という作図作業が存在したのですが、GISを使うと、データベース(csvファイル、つまりExcelファイル)を作成すれば作図作業はGISソフトが自動で行いますので、段違いに作業効率化になります。
鳴神山遺跡の発掘調査報告書学習の中で、直線道路状遺構と記載されていた遺構を野馬堀とに違いないと考えたのですが、結果は発掘調査報告書の通り、道路遺構であることを自分なりに確認しました。
この道路遺構の存在は、その道路の意義検討と道路と鳴神山遺跡との関係という2点で、自分に多大の興味をもたらしました。
現在進行形の興味ですが、東海道水運支路仮説という水運交通に関する自分の興味をこの陸路の存在が大いに補強してくれるような気がしています。
また、この直線道路は途中で廃棄され埋め立てられたということのようですから、蝦夷戦争の時代とその後の時代の様子を知る手がかりになりそうです。
3 千葉県小字データベース作成
以前から興味を持っていた小字について角川千葉県地名大辞典付録小字一覧の電子化を開始し、その結果をFile Makerを使ってデータベース化しています。
現在34市町(面積は千葉県の半分)まで作業が進んでいます。
千葉県小字データベースは存在しないので、データベースを試用したところ、自分としては新情報続出で興味がふくらみました。
千葉県全域の小字データベース作成は射程圏内に入りました。
また、墨書土器の文字と小字との直接関係がみられると考えられる場合(鳴神山遺跡出土墨書土器文字「大」と小字大野)も見つかり、小字データベースの活用効果が大であるように感じています。
11月に記事多数。
なお、国勢調査の境界データを入手し、それが大字単位のデータであることから、小字データを大字単位にGISにプロットすることを検討中です。
4 感想
花見川・平戸川筋が東海道水運支路であったという仮説を実証するような方向に向かって、まずは地域古代史に関する基礎知識を入手するという大変迂遠な道を歩んでいますが、趣味活動としては学習が進み、技術も向上し、仮説を確かだと感じる機会も増え、確信が深まっています。
しばらくは発掘調査報告書悉皆閲覧学習活動を継続して、基礎知識を泥縄方式で少しでも多く獲得したいと思います。
また、地名データベースの作業も早々に終わらせたいと考えます。
皆様のおかげで、2015年を趣味活動において充実した年として過ごすことができました。
2015.12.31 花見川風景
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