2011年4月8日金曜日

房総・水の回廊構想

「運河再興の計画 房総・水の回廊構想」(三浦裕二他編著、彰国社)

 既報のように兄弟ブログ「ジオパークを学ぶ」をはじめました。この中で、哲学者・思想家・歴史文化学者などの図書の学習に取り組もうと思っています。
 手始めに参考になりそうな図書を我が家の書庫で探していました。その時、偶然「運河再興の計画 房総・水の回廊構想」(三浦裕二・高橋裕・伊澤岬、1996、彰国社)を見つけました。「ジオパークを学ぶ」ブログ活動の最初の副産物のように感じましたので、せっかくですから、記事にしてみます。

 房総・水の回廊構想は知っていました。しかし、私の活動は花見川流域を散歩して、受身的観察をして、それを頼りにして流域の魅力を発見しようとしています。現場での発想に直接関係する図書しか関心がありませんでしたから、この本の存在はほとんど忘れていました。今回偶然にこの本を手に取って、ぱらぱらめくってみると、「続保定記」の引用などもあり、参考になる情報が多いので、興味が湧きました。そこで、この本の概要を報告します。

 まえがきでこの構想を次のようにうたいあげています。
 「東京湾岸の新都市幕張、その南端に注ぐ花見川を遡り、印旛沼を経て利根川を下り、太平洋の銚子、鹿島に至る延長約120kmを水の道でつなぎ水運文化を復興させ、沿川19市町村の新たなる連係と活性化を図ると共に、印旛沼を浚渫することで水環境の改善を図り、同時に水資源を確保し、日本の原風景たる田園の景観を保全しようとするものである。」

 花見川の改修については、次のように述べています。
 「水運を可能とさせるためには、まず花見川の改修が必要となる。大和田の排水機場で花見川の河床は新川のそれより4.6m高い。自然流下させるためには河床の底下げが必要となる。しかしながら天保の開削の面影を残す区間については歴史的な視点からも現状を維持することが大切であり、その他の区間でも極力自然的工法を採用することが前提となる。」(アンダーラインは引用者)

 堀割区間の歴史的意義を認め、その維持を述べています。専門家による、このような活字文章を、私ははじめて読み、大変こころ強く思いました。

 本の構成は次のようになっています。
第1章房総水の回廊構想
第2章印旛沼の成り立ちと環境創造
第3章運河のアメニティとデザイン
第4章房総水の回廊構想シンポジウム
第5章印旛沼湖上座談会

 第1章房総水の回廊構想では、花見川改修と印旛沼浚渫によりこの構想実現を図ることが詳しく述べられています。次ようなメインとなる2つの仕掛を説明しています。
・印旛沼を浚渫するとともに、被圧湧水に期待して新たな水源を確保し、沼の貯水容量を現在の4倍にする。
・大和田と花島にロックを設け、沼の水位・水量をコントロールし、船の通行が可能となるよう花見川を改修する。

 第2章では地史的視点からの構想の意義が、第3章では海外事例を引用して、運河がアメニティの源泉であることが詳しく述べられています。

 第4章、第5章はシンポジウムの記録です。実は、第4章のシンポジウム(1994年3月)に私も聴衆の1人として参加したことを憶えています。

 まことにロマン溢れる、雄大な構想です。

 この本を手にとってみて、その後この構想がどうなったのか気になりました。WEBで検索してみると、「房総水の回廊構想 社会実験」と銘打って2010年8月6日に大和田機場から花見川河口までボートで下ったことを連想させる画面が見つかりました。教育・研究の場ではこの構想が生きているようです。
 今後アンテナを張り、この構想がどうなっているのか、知りたいと思います。

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