2023年2月28日火曜日

諸磯b式浅鉢(No.6)(東京都七社神社前遺跡) 観察記録3Dモデル

 Moroiso b-style shallow bowl(No.6)(Nanashajinjamae site,Tokyo)Observation record 3D model


I created a 3D model of the Moriso b-style shallow bowl, which is currently being exhibited at the Chiba City Buried Cultural Property Research Center. I am impressed with the innovative design.


千葉市埋蔵文化財調査センターで開催中特別展「遺物から見える…」に展示されている諸磯b式浅鉢の3Dモデルを作成しました。斬新なデザインに感動します。

1 諸磯b式浅鉢(No.6)(東京都七社神社前遺跡) 観察記録3Dモデル

諸磯b式浅鉢(No.6)(東京都七社神社前遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.16、2023.02.27


展示の様子


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v6.513で生成 processing 219 images

Moroiso b-style shallow bowl(No.6)(Nanashajinjamae site,Tokyo)Observation record 3D model

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.16 & 2023.02.27

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 219 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

「諸磯b式

北区指定文化財

北区飛鳥山博物館所蔵

七社神社前遺跡

(東京都北区西ヶ原)

東京低地を望む台地上に位置する。縄文時代前期に特徴的な土壙墓が密集し、その周囲に環状に集落が展開することが部分的な発掘調査の蓄積により判明している。土壙墓からはこの時期を特徴づける浅鉢が多数出土した。」

4 技術メモ

この土器は周回撮影可能なガラスショーケースに展示されています。胴部底付近はカメラの死角となるため、当初撮影写真145枚で作成した3Dモデルでは結像状況が許容出来るレベルに到達できませんでした。そこで、後日追加撮影した写真74枚を加えて3Dモデルを作成しました。写真の全てにガラス面の反射光が写っているのですが、結果として反射光の悪影響は最小限に抑えた3Dモデルを作成することができました。

5 感想

この土器のデザインの斬新さに感動します。現代最先端デザインと言われても十分に納得できます。豪華なオードブル容器とか花器になります。縄文前期には埋葬に係る祭祀でお供え物を入れた容器として使われたのでしょうか。


2023年2月27日月曜日

千葉市と茅野市出土の十三菩提式深鉢の3Dモデル作成

 Creating a 3D model of the Jusanbodhi-style deep bowl excavated from Chiba City and Chino City


A Jusannbodai-style deep bowl excavated from Chiba City and a Jusannbodai-style deep bowl excavated from Chino City, Nagano Prefecture, which was far away, were displayed side by side, so I created a 3D model of them. The basket-like pattern woven from bamboo is very similar.


千葉市と遠く離れた長野県茅野市出土の十三菩提式深鉢が並んで展示されましたので、その3Dモデルを作成しました。竹で編んだ籠のような文様が酷似しています。

1 十三菩提式深鉢(千葉市文六第2遺跡)及び同(茅野市高風呂遺跡) 観察記録3Dモデル

十三菩提式深鉢(千葉市文六第2遺跡)及び同(茅野市高風呂遺跡) 観察記録3Dモデル

左…千葉市文六第2遺跡、右…茅野市高風呂遺跡

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.16


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v6.513で生成 processing 136 images

Jusanbodai-style deep bowl (Bunrokudaini site,Chiba City) and (Takahuro site,Chino City)Observation record 3D model

left…Bunrokudaini site,Chiba City right…Takahuro site,Chino City

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.16

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 136 images


3Dモデルの動画

2 展示説明

●文六第2遺跡

千葉県千葉市緑区あすみが丘

千葉市教育委員会所蔵

●高風呂遺跡

長野県茅野市北山

霧ヶ峰山塊の南東部分を占めるカシガリ(標高1616.4m)山の南斜面部に位置する。遠く離れた長野県茅野市出土の十三菩提式だが、千葉市出土の十三菩提式と文様の構成や創りがとても良く似ている。

茅野市尖石縄文考古館

3 関連展示 土器の製作技術を復元する

千葉市埋蔵文化財調査センター研究員戸村正巳氏が復元製作した十三菩提式土器と復元技術設計図等が展示されています。

「実際に復元をしてみると、文様を付ける順番などを熟知していないと、同じように製作することは大変難しいことが見えてきました。

このようなことから、房総半島で見つかる十三菩提式は他地域から直接持ち込まれたか、製作技術を熟知した人が移動して来て作った可能性が考えられます。」と説明されています。


展示復元土器


展示設計図


2023年2月25日土曜日

土偶(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

 Clay figurine (Hachigaya Site, Togane City) Observation record 3D model


I created a 3D model of a clay figurine excavated from the Hachigaya site in Togane City, which has features similar to the national treasure Jomon Venus. I was lucky enough to see the back. What is the donut shape on the back?


国宝縄文のビーナスに似た特徴をもつ東金市鉢ヶ谷遺跡出土の土偶の3Dモデルを作成しました。運よく背面も観察できました。背面ドーナツ状形状は何でしょうか。

1 土偶(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

土偶(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.16


展示の様子


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v6.513で生成 processing 201 images

Clay figurine (Hachigaya site,Togane City) Observation record 3D model

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.16

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 201 images


3Dモデルの動画

3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

展示では次の説明が掲示されています。

「土偶・深鉢・鉢

県指定文化財

東金市教育委員会所蔵

出土遺跡 鉢ヶ谷(はちがや)遺跡

(千葉県東金市小野)

現在の東金インターチェンジ近くにある遺跡。縄文時代中期の土坑(どこう)から出土した。土坑の底面付近から土偶(どぐう)が1点、ミニチュアの深鉢(ふかばち)1点(五領ヶ台Ⅱ式)、鉢が2点まとまった状態で出土。土偶のお腹付近は何かで突いたとおもわれ、器面が荒れている。一緒に出土した鉢の中には白色の塗膜(とまく)が残っており、同色の液体が入っていたと考えられる。このことから、鉢で土偶のお腹を突く行為がおこなわれたと想定される。これほど雄弁(ゆうべん)に土偶を用いた儀式の内容をしることができる資料は大変貴重である。出土した土偶の形は国宝縄文のビーナスに代表される長野方面の土偶とよく似ており、胎土も地元のものとは異なるので、交流により持ち込まれた可能性もある。」

・観察検討メモは次の記事に掲載します。

4 参考 撮影ポイント


撮影ポイント

3Dモデルは運よく背面も結像しました。


2023年2月24日金曜日

淡水クラゲが描かれているタッシリ・ナジェール(アルジェリア)の壁画切手

 考古学切手趣味 4


Mural stamp of Tassili  n'Ajjer (Algeria) depicting a freshwater medusa


Tassili  n'Ajjer Mural Algerian Stamp 1981

A freshwater medusa is drawn near Mouflon's painting. It is said to be an indicator of the Neolithic climate of the Sahara.



タッシリ・ナジェール壁画 アルジェリア切手 1981

ムフロンの絵の近くに淡水クラゲが描かれています。サハラの新石器時代気候を指標するといわれています。


淡水クラゲの指摘

淡水クラゲ壁画を検討した論文

A freshwater medusa (Limnocnida) pictured in the Neolithic rock art of the Central Sahara (Tan Zoumaitek, Tamrit, Algeria)


タッシリ・ナジェール壁画 アルジェリア切手 1981


タッシリ・ナジェール壁画 アルジェリア切手 1981


タッシリ・ナジェール壁画 アルジェリア切手 1981


タッシリ・ナジェールの場所


2023年2月22日水曜日

人頭形土製品(レプリカ)(成田市南羽鳥中岫第1遺跡) 観察記録3Dモデル

 Human head-shaped earthenware (replica) (Minamihadorinakagokidaiichi site,Narita City) Observation record 3D model


I created an observation record 3D model of a human head-shaped earthenware (replica) (Minamihadorinakagokidaiichi site,Narita City) exhibited at the Reiwa4 special exhibition of the Chiba City Archaeological Research Center. I think it's a death mask imitating the face of the burial person. A good 3D model that can be shot around.


千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展に展示されている人頭形土製品(レプリカ)(成田市南羽鳥中岫第1遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。埋葬者の顔を模したデスマスクであると考えます。周回撮影可能で良好な3Dモデル。

1 人頭形土製品(レプリカ)(成田市南羽鳥中岫第1遺跡) 観察記録3Dモデル

人頭形土製品(レプリカ)(成田市南羽鳥中岫第1遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.16


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v6.513で生成 processing 145 images

Human-shaped soil product (replica) (Minamihadorinakagokidaiichi site,Narita City) Observation record 3D model

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.16

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 145 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 メモ

2-1 展示説明

展示説明では次のように記述されています。

「人頭形土製品(レプリカ) 重要文化財 成田市教育委員会所蔵

出土遺跡 南羽鳥中岫第1遺跡(みなみはとりなかのごきだい)(千葉市成田市南羽鳥)

成田市中央を流れる根木名川の支流である十日川に面する台地上に位置しています。平成3~6年にかけて断続的に調査されました。

各時代の遺構・遺物が出土していますが、特に縄文時代前期後葉の土壙墓群が注目されます。推定250基と考えられ、中でも2号土坑からはとてもインパクトのある人頭形土製品が出土しています。

装身具や浅鉢も含め、これらの資料は縄文時代の人々の死に対する世界観を考えるうえで重要なものとして、重要文化財に指定されています。」

2-2 「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」の説明

「人頭形土製品は南端の土壙から出土している。人頭形土製品とは人間の頭部を写実的にかたどった土製品をさす。これが出土した土壙の形状は、1.14×0.83m、深さ30cmの楕円形を呈しており、その規模から、被葬者は屈葬の姿勢で葬られたと考えられよう。本遺物は土壙中央の壁際に横たえられており、出土した位置や高さから、遺骸の隙間に置かれた可能性が高い。人頭形土製品は、器高15.1cm・最大幅13.5cm・開口部8.0cm、器厚は頭頂部で最大15cmである。製作技法は土器と同様、輪積み技法を用いているため、中空であり、頭頂部は土器の底部を丸く削って作り出している。また顔面表現のほとんどは、粘土を貼り付けて表現されており、隆帯の貼り付けによる眉表現と膨らませた眼によって落ち窪んだ眼窩を表現し、横位の沈線で閉じた眼を描いている。鼻は立体的で高く、ヘラを用いて鼻孔を深くあけている。口の部分もほかと同様に、粘土の貼り付け後に沈線による表現が行われる。このように各部は精巧に作られるが、頭髪や耳の表現は省略されている。また、唇の下および縁に沿っては穿孔が計4か所にあり、人頭形土製品の使用方法を解明する手がかりとなるものと思われる。例えば、これに紐を通すなどして、蓋を被せる、固定させるなどの機能が考えられるが、慎重に検討する必要がある。人頭形土製品は土器製作技法を応用して作成されているため、逆さにすると容器としても使用でき、土製品と土器の二面性を兼ね備えている。しかし。土器として直立させた場合、底部を丸く削っているために非常に不安定であり、顔面表現も逆になること、また内部の調整が粗いことなど、容器としての機能は二次的なものと判断されるが、副葬品としての性格上、内部に供物を入れて埋葬者に供献した可能性は否定できない。この土壙からは、人頭形土製品のほかは明らかに副葬された遺物はない。また、土製品自体にも時期を明示できる特徴的な文様が皆無であることから使用された時期については不明である。しかし、前期土壙群の範囲内のひとつの土壙から出土していること、土壙形態が前期のそれに類似すること、遺物を共伴する前期土壙の特色に似ていることなどから考え、前期の所産ととらえたい。」


人頭形土製品の写真と出土状況

「印旛の原始・古代-縄文時代編-」(2007、財団法人印旛郡市文化財センター)から引用

3 感想

2019年10月18日記事「縄文前期人頭形土製品(デスマスク)3Dモデル」で、この人頭形土製品を観察した感想を次のように書きました。

「埋葬者の顔を模したデスマスクであると考えます。

眼窩のへこみや鼻のとがり方、唇が出ていることなどの特徴から、長い殯期間を終えて遺体がミイラ化した時点でこのデスマスクがつくられたと考えられます。

殯期間の最後をデスマスク作成で区切り、遺体をデスマスクとともに土坑に埋葬したと考えます。」

参考 2019年に作成した人頭形土製品の3Dモデル https://skfb.ly/6ZnBp


2023年2月21日火曜日

加曽利EⅡ式深鉢(No.19)(市原市草刈六之台遺跡) 観察記録3Dモデル

 Kasori EII type deep bowl (No.19) (Kusakarirokunodai Site,Ichihara City) Observation record 3D model


I created a 3D model of the Kasori EII type deep bowl (No.19) (Kusakarirokunodai site,Ichihara City) and observed it.


加曽利EⅡ式深鉢(No.19)(市原市草刈六之台遺跡)の観察記録3Dモデルを作成して観察しました。

1 加曽利EⅡ式深鉢(No.19)(市原市草刈六之台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(No.19)(市原市草刈六之台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和4年度企画展「あれもEこれもE 加曽利E式土器」(内房地域編)

撮影月日:2023.02.09


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v6.513で生成 processing 85 images

Kasori EII-type  deep bowl (No.19) (Kusakarirokunodai site,Ichihara City) Observation record 3D model

Location: Kasori Shell Mound Museum 2022 Special Exhibition “That’s also E…” (Uchibo area edition)

Shooting date: 2023.02.09

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 85 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

キャリパー形の加曽利EⅡ式土器の典型的といわれる土器は口縁部が平縁であることが多いです。この土器は中空部分がある把手とそれとは別の波状口縁を具えている派手な加曽利EⅡ式土器です。

加曽利E式土器の型式変化において把手や波状口縁が果たす役割について、学習を深めたいと思います。

また、なぜ把手や波状口縁を使うのか、縄文人の心性を推察したいと思います。


花見川(ハナミガワ)は検見川(ケミガワ)

 花見川よもやま話 第12話

この記事は2022.12.27記事「河川名「花見川」(はなみがわ)が明治以前資料で確認できないことに気が付く」の全面改訂記事です。


Hanami River is Kemi River


Based on the materials, I hypothesized that the name Hanami River was a lucky name for Kemi River.


花見川(ハナミガワ)という名称が検見川(ケミガワ)の吉祥名称であることを資料から仮説しました。

1 河川名称「花見川」に関する資料の時系列整理

自分の手持ち資料で河川名称「花見川」が出ている資料を時系列的に整理してみました。

1-1 「花見川」の初出

「「千葉実録」に治承4年頼朝通過の折り、東六郎大夫が在名にちなんだ「花見川」の和歌をよみ、川上の桜は吉野の勝るとし、「花見川村」とも書いている。」(「角川日本地名大辞典 12千葉県」(昭和59年発行)から引用)

→千葉実録は鎌倉期書籍「千葉盛衰記」を元に江戸時代中期頃編集された書籍とされています。従って鎌倉期頃には「花見川」という言葉が書かれてた事実を把握できます。ただし、この「花見川」は在名にちなんでいますから、ケミガワと読み、その表現したいところは桜のきれいな土地であるという趣旨で理解すべきものと考えます。

検見川(ケミガワ)を漢字では「花見川」と書き、読みはあくまでケミガワであるのですが、その場所が風流な場所であることを知的遊戯として表現したのだと考えます。

→漢字「花」は「け」とも読みます。

→この「千葉実録」の「花見川」という言葉以外に、江戸時代までの古文書、古地図で「花見川」という言葉を見つけることはできませんでした。

●「花見川」を検索した資料

・絵にみる図でよむ千葉市図誌(千葉市発行)

・千葉市史

・千葉市史資料編1、2、8、9

・千葉県地名変遷総覧(千葉県立中央図書館)

・天保期の印旛沼堀割普請(千葉市)

1-2 江戸時代後期に使われる河川名

江戸期古文書、古地図では現花見川に関する河川名は次のような名称で表記されています。

「利根川分水路印旛沼堀割筋」

「利根川分水路」

「印旛沼堀割」

「印旛沼堀割筋」

「印旛沼古堀筋」

「堀割筋」

「検見川古川筋」

「検見川堀割」

「検見川筋」

●現「花見川」の河川名称を検索した資料

・絵にみる図でよむ千葉市図誌(千葉市発行)

・千葉市史

・千葉市史資料編1、2、8、9 など

・天保期の印旛沼堀割普請(千葉市発行)


「印旛沼堀割筋」が使われている古地図

絵にみる図でよむ千葉市図誌(千葉市発行)から引用


「検見川筋」が使われている古文書

天保期の印旛沼堀割普請(千葉市発行)から引用

1-3 明治期に初出となる地図記載「花見川」

地図に「花見川」が記載される初出資料は「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図」であると考えられます。


「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図 千葉県下総国千葉郡馬加村」に登場する花見川

ただし、地図記載「花見川」の読みは「ハナミガワ」である可能性が高いと考えますが、その確認はとれません。地図作成兵士が「花見川」と書いて「ケミガワ」と読んでいた可能性は残されていると考えます。

この地図以降に発行される国の地図には全て「花見川」が記載されます。


大正6年測図地図「1/1万三角原」


大正10年測図地図「1/2.5万千葉西部」

1-4 花見(ハナミ)川確認初出資料

花見川の読みが(ハナミガワ)であることが確認できる初出資料は明治40年発行吉田東伍著「大日本地名辞書 坂東」であると考えられます。


吉田東伍著「大日本地名辞書 坂東」の花見(ハナミ)川の項

1-5 明治期印旛沼開発や利根川治水で使われる河川名称

明治期印旛沼開発資料の総集編とも言える織田寛之著「印旛沼経緯記」(明治26年)では「花見川」は一切つかわれていません。現花見川のことを検見川筋あるいは古堀筋などと表現しています。吉田東伍著「利根治水論考」(明治43年)では検見川が地図に書き込まれています。


吉田東伍著「利根治水論考」(明治43年)の地図に表記される検見川

2 河川名称「花見川」に関する資料の時系列整理のまとめ

ア ケミガワ(検見川)の漢字表記を「花見川」とする語法の発生

鎌倉期頃から江戸期にかけて、河川名称「検見川」の読みであるケミガワだけを取り出し、漢字表記は「花見川」とする風流な語法が存在しました。

イ 江戸期までの公式文書や地図には「花見川」表記は存在しない

江戸期までの古文書、古地図には「花見川」表記はありません。

ウ 明治期以降地図表記に「花見川」が採用される

「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図」を最初として、国が発行する地図にはすべて「花見川」が表記されています。

エ 明治期に「花見川」がハナミガワと発音されたことが確認できる

明治40年発行吉田東伍著「大日本地名辞書 坂東」で「花見川」がハナミガワと発音していたことが確認できます。

オ 明治期印旛沼開発や利根治水で使われる河川名称は主に検見川だった

明治期印旛沼開発や利根川治水で使われる河川名称は主に検見川であり、花見川は全く使われていません。

3 河川名称「花見川(ハナミガワ)」の発生仮説

2の事実から河川名称「花見川(ハナミガワ)」の発生を次のように仮説します。

・江戸期まで現「花見川」の河川名称は「検見川」あるいは「印旛沼堀割」等であり、「ハナミガワ」という呼称は公的には一切使われていません。

・風流の世界でケミガワの漢字表記を「花見川」とする流行があり、さらに、その漢字表記をハナミガワと読み替える住民レベルの流行が存在しました。

・「明治前期測量2万分の1フランス式彩色地図」作成に際して、測量兵士は河川名称を行政文書から収集するのではなく、現場で住民から聞き取り収集しました。そのため現「花見川」の名称は公的な「検見川」あるいは「印旛沼堀割」ではなく、地元で流行していた「書き換え、読み替え」名称である「花見川」(ハナミガワ)が採用されました。以後、公的地図表記は「花見川」(ハナミガワ)が踏襲されました。

・一方、地域開発や河川行政における河川呼称は正式名称である「検見川」や「印旛沼堀割」が使われました。

・令和の現在でも現「花見川」の河川法上の名称は「印旛放水路(下流部)」であり「印旛沼堀割」を引き継いだ名称となっています。

4 河川名称「花見川(ハナミガワ)」の発生意義

風流の世界でケミガワの漢字表記を「花見川」とする流行があり、さらに、その漢字表記をハナミガワと読み替える住民レベルの流行が存在したと仮説しました。

この流行の背後に、河川名称や地名を吉祥語にしたいという一般社会心理が働いていたと考えます。

検見川という河川名称は「俘囚の検見(尋問)に由来する」という重く苦しい名称です。ですから、住民はできればその名称を払拭して明るく楽しい名称(吉祥名称)に変更したいという社会心理の下にあったことが推察できます。

参考 2021.07.13記事「編集再掲 地名「検見川」は俘囚の検見(尋問)に由来する



2023年2月20日月曜日

柏北部東地区の遺跡展「地中からの目覚め」講演会聴講と展示観覧

 Attending a lecture and viewing an exhibition of ruins in the northeast area of Kashiwa, “Awakening from the Underground”


On February 19, 2023, I attended a lecture on the ruins exhibition "Awakening from the Underground" in the northeast area of Kashiwa at the Chiba Prefectural Central Museum, and also watched the ruins exhibition. I was able to hear interesting talks from 4 professors who are experts in the field, and received a strong intellectual stimulation.


2023年2月19日に千葉県立中央博物館で柏北部東地区の遺跡展「地中からの目覚め」講演会が開催されましたので聴講し、合わせて遺跡展を観覧しました。その分野の専門家4先生から興味深い話しを聞くことが出来、強い知的刺激を受けました。

1 講演会


講演要旨パンフレット 29ページの立派なカラー刷り論文集です。

1-1 柏北部東地区の旧石器時代 -前半期の二つの様相- 島立桂先生((公財)千葉県教育振興財団)

立川ローム層Ⅸ層の時期と立川ローム層Ⅶ~Ⅵ層の時期の石器群の様相比較を軸に話しがありました。前者では北関東などから石材が下総台地に持ち込まれ、遺跡内で利器の製作まで行われ、後者では遠方の東北地方産頁岩を多様し、利器製作は石材産地で行われたと推定されます。こうした状況から前者では気候温暖期の生活が、後者では寒冷期で広域に移動しなければ生活がなりたたない様子がわかるとのことです。大変興味深い話しです。

なお、環状ブロックの成立は多家族が一時的に集結した状況をイメージするのは間違いで、小家族の移動生活の中で、毎年同じ場所でキャンプするのでできるとの説明がありました。知識のない自分にとっては、それならなぜ「環状」になるのか?もう一歩踏み込んだ説明がほしいところでした。


環状ブロック

講演要旨パンフレットから引用

1-2 柏北部東地区の古墳時代 -カマドと土玉と石製模造品- 當眞嗣史先生((公財)千葉県教育振興財団)

特に、古墳時代の炉からカマド成立にいたる話しは興味深いものでした。その変化を戦前囲炉裏台所生活から高度成長時代団地の台所生活に変化する様子と対比して比喩的に説明され、よく理解できました。


炉からカマドへの変遷

講演要旨パンフレットから引用

1-3 小山台遺跡・大松遺跡の縄紋中期土器 -多様で華麗な縄紋を楽しもう- 西川博孝先生(東金市文化財審議会委員)

専門家による縄文土器の話しは。フツーは〇〇式という土器型式名称が多出し、知識虚弱の自分は付いていけないことが多いです。しかし西川先生の話しはそれがほぼゼロであり、文様に対する純粋無垢な興味だけで構成されていました。このような縄文土器の話しをいつか聞きたいと思っていたのですが、それが自分にとってはあまりに突然だったので、メンクライました。

次の渦巻文様は左利き縄文人がつくったという話しは、その解明プロセスの思考レベルの緻密さがハンパナイのでとても楽しかったです。


土器文様

講演要旨パンフレットから引用

1-4 貝塚のあるムラ・ないムラ -海鮮食材利用からみえる縄文社会- 西野雅人先生(千葉市埋蔵文化財調査センター)

面白い話題満載の話しでしたが、アナグマの話しと調味食材の話しに特に興味を持ちました。

アナグマ捕獲用と考えられるトンネル状遺構があるとのことですが、これはつまりは、「アナグマ養殖」みたいなことなのでしょうか。アナグマが生活しやすいようなトンネルを掘っておいて、アナグマが繁殖して増えるまでアナグマを捕獲しないでジットマッテイテ、アナグマの子どもが大きくなったことを見計らって、煙でイブリだしたのでしょうか。


トンネル状遺構

講演要旨パンフレットから引用

調味食材としてのイボキサゴが、貝塚のないムラにどのように運ばれたのか、スープなのか、スープを煮詰めた固形スープなのか、干し貝なのかという設問はとても興味深いものです。

2 遺跡展観覧


遺跡展図録


展示石器


展示人面把手


展示土器


展示土器

3 感想

遺跡展を講演前後や昼休みなどに観覧し、同時に展示に関する講演を聞けたのでとても良かったと思います。

講演では質問の時間があれば、例え1講演につき1~2名だけの質問でもあった方が良かったと思いました。質問を受けない講演はブッキラボーです。


2023年2月18日土曜日

現存する印旛沼堀割普請の捨土土手地形

 花見川よもやま話 第11話


Existing landform of the embankment of Inbanuma moat construction


Abandoned embankment topography of Inbanuma moat construction in the Tenpo period still exists. In Yokotodai, Hanamigawa Ward, abandoned embankments are used as green spaces. Abandoned embankments are considered to have cultural value.


天保期印旛沼堀割普請の捨土土手地形が現存しています。花見川区横戸台では捨土土手が緑地として利用されています。捨土土手は文化財的価値があると考えられます。

1 現存する印旛沼堀割普請捨土土手地形(高さ着色版)

現存する印旛沼堀割普請捨土土手地形(高さ着色版)

千葉市花見川横戸台付近の花見川両岸台地に天保期印旛沼堀割普請の捨土土手地形が現存している。

地理院地図3Dモデル機能で作成(垂直倍率×9.9)、着色は3DF Zephyr Liteによる。

(水面標高は正しい値となっていない。)

Existing Inba-numa moat division construction dumped embankment topography (height coloring version)

On both sides of the Hanami River plateau near Hanamigawa Yokotodai in Chiba City, there are existing embankments of the Tenpo period, which were constructed by dividing the Inba-numa moat.

Created with the Geospatial Information Authority of Japan map 3D model function (vertical magnification x 9.9), coloring by 3DF Zephyr Lite.

(The water surface elevation is not the correct value.)


3Dモデルの動画

参考 現存する印旛沼堀割普請捨土土手地形(地図版) https://skfb.ly/oEn9T


3Dモデルの画像

2 捨土土手地形の現状


捨土土手の様子(横戸緑地)


捨土土手の様子(横戸緑地)


地形断面の例

3 参考 天保期印旛沼堀割普請作業の様子


江戸働黒鍬之者、大もっこうにて堀捨土かつく図

但し、土の重サ三、四十貫目ゟ、水つき候土ハ七十貫目位迄もかつき候由

久松宗作著続保定記掲載絵図

「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市発行、平成10年3月)より絵図と文章転載

(ゟは「より」)


黒鍬者かつき替之所

鬼つきい云て、申サハ六丁有之所を三丁行、先ノ者江渡こと也

久松宗作著続保定記掲載絵図

「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市発行、平成10年3月)より絵図と文章転載


土方雇之者

是ハ古堀近郷又江戸辺之者にても、其土地之頭ニ随ひやとわれ出たるを云、重キをかつぐこと不叶、乍去無怠慢、図のことき両かつきかこに入、入レ候よりかつきあるくこと少しも弛ることなき故、思ひ之外果敢取候者也

久松宗作著続保定記掲載絵図

「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市発行、平成10年3月)より絵図と文章転載


続保定記掲載イラスト「百川雇丁場堀割之所」

人海戦術による素掘の情景を描いている

(イラストは「天保期の印旛沼堀割普請」〔千葉市発行〕より引用)

4 メモ

堀割の素掘の地形が捨土土手として物として残っています。この物として残っている素掘堀割の文化遺産、土木遺産としての価値について社会が気づき、地域づくりに活用するとともに、後世に伝えていくことが大切であると思います。


2023年2月17日金曜日

「遺物から見える地域文化の発達」特別展の観覧

 Viewing the exhibition "Development of Local Culture as Seen through Relics"


I visited the 2023 special exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" held at the Chiba Buried Cultural Property Research Center until March 5, 2023. I was able to take a closer look at precious pottery and other relics that I usually don't see systematically, and it gave me a sense of happiness.


2023年3月5日まで千葉市埋蔵文化財調査センターで開催されている令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」を観覧しました。普段体系的に見ることができない貴重な土器等遺物をじっくり観覧でき幸福感が生まれました。


会場風景

むやみやたらに展示物を詰め込むことなく、空白スペースを適切にとっていて、とても観覧しやすい展示となっています。またショーケースの置き方が工夫されていて、周回的、半周回的に写真撮影できる遺物が多くなっています。全遺物撮影可です。


諸磯a式古深鉢


諸磯b式浅鉢

展示は全体として関東西の諸磯式文化圏と東の浮島・興津式文化圏の対比を軸に時代変遷を説明しています。


人頭土製品(レプリカ)

とても気になる遺物で、だいぶ以前に成田市下総歴史民俗資料館で撮影して3Dモデルを作成したことがあります。今回展示では周回的撮影が可能でしたので、新3Dモデル作成用の撮影をしました。


鉢ヶ谷遺跡出土土偶

この土偶もとても気に生る遺物で、千葉県立中央博物館に展示されたとき3Dモデルを作成しましたが、今回展示で近接撮影が可能でしたので、新3Dモデル作成用撮影をしました。


十三菩提式土器

長野県(あるいは山梨県)から運ばれてきた可能性が濃厚な土器です。


十三菩提式土器拡大

この土器のレプリカとレプリカ作成の復元設計図も詳しく展示されています。

なお、会場には26ページに及ぶカラー図録&解説書が無料で用意されています。


特別展配布パンフレット

このパンフレットは千葉市埋蔵文化財調査センターサイトからダウンロード可能です。