Activation and problem awareness of Kasori E-type pottery learning for understanding the Ariyoshikita shell mound
I am trying to analyze the 3D spatial correlation between shell layers and pottery/relics on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound. During this time, I became keenly aware of the necessity of activating Kasori E-style pottery learning, and my awareness of the problem deepened.
有吉北貝塚北斜面貝層について貝層と土器・遺物の3D空間相関分析にチャレンジしています。この中で加曽利E式土器学習の能動化必要性を痛感するとともに、問題意識が深まって来ました。
1 有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間相関分析の方法
有吉北貝塚北斜面貝層におけるこれまでの3D空間相関分析の方法は次の通りです。
発掘調査報告書土器分類による土器破片の3D空間へのプロット
プロットされた土器破片と貝層断面図との対応分析の様子
プロットされた土器破片と貝層断面図との対応分析の様子
層位別貝層の時期特定 例
2 発掘調査報告書土器分類の抜本改訂情報
発掘調査報告書土器分類の抜本改訂情報
昨年末、発掘調査報告書土器分類の抜本改訂情報を千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんから入手しました。これにより、土器破片の3D空間へのプロットを全部やり直し、貝層断面図との対応分析についていも新規に行うことになりました。
3 加曽利E式土器分類学習の能動化の必要性
これまで、発掘調査報告書の土器分類は「正解」として認識し、それを前提に作業してきました。しかし、その分類が根本的に改訂され、自分に提示されました。それにより自分の学習姿勢がかなり虚弱であったことに気がつきました。つまり、発掘調査報告書の土器分類は何ら疑うべきものではなく、金科玉条として、考えることなく使ってきたのです。十分に理解して、確かにそうだと納得して使ってきたものでないことに、否が応でも気が付かさせられました。
これから、土器分類抜本改訂情報を基にかなり膨大な作業を楽しむことになりますが、もう以前と同じようにこの新情報を無邪気に所与の前提条件とする愚は避けたいと思います。この新情報を自分なりに十分咀嚼して納得することが、膨大作業を支える気力の一部を構成することは確実です。
当面は次のような土器分類学習を行いたいと思います。
4 有吉北貝塚北斜面貝層に関連する土器分類学習の方法
・北斜面貝層土器分類改訂情報の整理(改訂分類に基づく図版集作成)
・北斜面貝層における阿玉台式土器、中峠式式土器、加曽利EⅠ式土器、加曽利EⅡ式土器(古、中、中~新、新)の特徴記述
→分類基準を納得的に知る(類推する)…知識Aの獲得
→知識Aから任意の土器破片図版について、その分類を高確率で判定できるようにする
知識Aの獲得には有吉北貝塚の情報だけでなく、これまで5年間にわたって開催された加曽利貝塚博物館企画展「あれもE…」観覧で得た情報と作成した200近くの加曽利E式土器3Dモデル資産を最大限有効活用することにします。
有効活用が期待できる加曽利E式土器関連の3Dモデルコレクション(
arakiminoruのSketchfab画面)
→中峠式土器と加曽利EⅠ式土器の時間的関係の検討
発掘調査報告書では中峠式土器→加曽利EⅠ式土器という時間的関係になっています。しかし、中峠式が土器型式ではなく「類型」として捉えられるようになり、また加曽利EⅠ式土器出土数が少ないことも含めて、北斜面貝層出土土器という具体個別事例について、中峠式土器→加曽利EⅠ式土器という時間的関係認識が妥当であるのかどうか検討することにします。
(余談:有吉北貝塚では竪穴住居軒数でいうと加曽利EⅠ式期が最大です。しかし北斜面貝層では加曽利E式Ⅰ土器が異常に少なくなっています。通常の解釈なら、加曽利EⅠ式期には別の斜面貝層に土器を捨てたからという推定になるのだと思います。しかし、もし中峠式土器と加曽利EⅠ式土器に時間差がない…同時期に一緒に使われていたことが判明すれば、北斜面貝層に対する土器投棄は選択的に、つまり中峠式土器を選んで投棄していたという仮説も登場し、面白いことになります。)
5 有吉北貝塚北斜面貝層における土器分布問題意識
土器分類改訂情報を納得的に咀嚼して行う土器3D空間プロットと貝層との相関分析における問題意識は、現状では次のとおりです。
問題意識1 土器の投棄時期
・早期土器、前期土器、阿玉台式土器、中峠式式土器、加曽利EⅠ式土器の投棄時期がどの時期であるか証拠をみつける。
・早期土器、前期土器、阿玉台式土器、中峠式式土器、加曽利EⅠ式土器がそれぞれその時期に投棄されたものであり、加曽利EⅡ式期の土器大量投棄に伴って混入的にもたらされたものではないという「作業仮説」を設定して、その作業仮説を検証するスタイルで、実際の投棄時期を検討することにします。
・竪穴住居跡の覆土層には多様な時期の遺物が混入していて、遺物が「流れ込んだ」と把握されることが一般的です。北斜面貝層で同じようなことがいえるのか、いえないのか一つの論点になります。私は貝層の立地条件から「流れ込んだ」「混入した」という状況はほとんどないと想定しますが、データでそれを言えるようにしたいと思います。ただし、早期土器、前期土器は3D情報がないので、どこまで検討できるかは不明です。
問題意識2 貝層の形成時期
問題意識1ともかかわりますが、早期土器、前期土器、阿玉台式土器、中峠式式土器、加曽利EⅠ式土器の投棄と連動する貝層があるかどうか、つまり早期、前期、阿玉台式、中峠式、加曽利EⅠ式の貝層が存在しているのかどうか、データ証明的にどのようなことがいえるのか、検討することにします。ただし、早期、前期は情報量が少ないので検討が進まない可能性があります。
問題意識3 貝層移動・土器移動の実態
問題意識1・2ともかかわりますが、投棄された土器・貝が投棄時点以降どの程度移動したか(流されたか)、そのイメージをできるだけ定量的に推定する必要があります。
貝や土器が移動している(流されている)ベクトルを貝層断面図から読み取ることは出来ます。しかし、貝層断面図と土器3D分布を詳細に観察する限り、その移動は限定的であるように感得できます。移動ではなく、配置されたと推定できる状況もいろいろと見つかっています。そのため移動のイメージをできるだけ定量的に把握することが大切です。「かなり移動した。」とか「ある程度移動した。」とか「移動は限定的である。」とかの言葉によるコミュニケーションでは問題意識1・2を解明できません。