Setting up a shell layer classification system and creating a shell layer classification database
In order to proceed with the shell layer classification study of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, I set up a shell layer classification system and created items for the shell layer classification database. I am laying the foundations for understanding the relationship between shell layers and artifacts in three-dimensional space.
有吉北貝塚北斜面貝層の貝層区分検討を進めるうえで、貝層区分体系を設定し、貝層区分データベースの項目を設定しました。立体空間における貝層と遺物の関係把握の基礎固めを進めています。
1 貝層区分体系
北斜面貝層について次の3段階の区分を設定して把握することにします。
大区分…貝層成因による区分
中区分…貝と土(砂)の混合割合による区分
小区分…発掘現場における分層区分
1-1 大区分試案
大区分試案
貝層をその成因から次の5つのアイテムに区分します。
斜面貝層・・・・・・・・斜面上部から投棄された貝層や層状堆積層
二次堆積貝層・・・・・・水流で上流から運ばれ堆積した貝層・堆積層
崩落層・・・・・・・・・ガリー侵食で崩落した台地構成地層
二次堆積崩落層A・・・・・崩落層前面に形成された二次堆積崩落層(左岸側)
二次堆積崩落層B・・・・・水流で上流から運ばれ堆積した崩落層(右岸側)
1-2 中区分試案
中区分試案
貝層を貝と土(砂)の混合割合で区分します。
純貝層・・・・・・・・混土率0%
混土貝層・・・・・・・混土率50%未満、混土貝層・混砂貝層を含む
混貝土層・・・・・・・混土率50%以上、混貝土層・混貝砂層を含む
土層(貝微量含)・・・貝微量を含む土層・砂層
土層・・・・・・・・・貝に関する記述のない土層・砂層
1-3 小区分
小区分
発掘現場における分層区分を小区分とします。
2 貝層区分データベース
貝層区分データベース画面(Excel画面)
87枚セクション図を集成して作成して貝層断面図(32断面)から読み取れる貝層区分とその記述を、次の項目で構成されるデータベース(postgreSQL)にします。
断面番号
関係グリッド
対応セクション図
貝層表記
別表記
記述
中区分
大区分
記述の出典
3 メモ
貝層断面図(32断面)について、Illustratorを使って大区分図、中区分図を作成し、同時にその情報を貝層区分データベースに収録します。
貝層区分データベースが完成すると、遺物台帳データベース(6万4千遺物収録)の項目「貝層」(出土貝層)とリレーションさせて、各遺物出土貝層の記述・区分を知ることができます。統計や分布の把握も可能となります。
大区分については3Dモデルを作成することにします。
4 11断面に関する問題意識
11断面に関する問題意識をメモします。
11断面に関する検討テーマ
1 ガリー侵食基底面の様子
ガリー侵食基底面から貝と土器が出土しています。その様子を3D空間で詳しく分析することが既に可能となりました。この貝層から出土した土器が現存していて、その土器型式を判定できれば、アクティブなガリー侵食最盛最後期の時期を特定できます。
2 崩落層の途中に発達する混貝土層の様子
セクション図では、崩落層の途中に発達する混貝土層E3に「ブロックとして認定しない」という注記が書いてあります。つまりオリジナルな混貝土層であることが観察されています。ガリー侵食が活発に進行している深い谷(溝)に上部から貝が投棄され、貝層が形成されたと考えられます。ガリー侵食最盛期最後期に同時に貝投棄活動があったことが確認できます。この貝層からどのような遺物が出土しているのか、遺物台帳データベースですぐにでも調べることができます。土器が出土していて、その現物が保存されていれば、その土器型式を観察して、貝層形成時期を推定することも可能になります。
3 崩落層前面のK層の成因と意義
崩落層前面に大区分二次堆積崩落層Aとして、K層が分布しています。このK層だけ詳細な分層線が書かれていないので、つまり成層を伴わない堆積であるので、特別な成因による二次堆積と考えることができます。その成因について詳しく検討する価値ががあると考えます。
同時に、K層上部から犬埋葬が出土しています。K層堆積面が縄文人の活動空間であった可能性が想定できそうです。詳しく検討する価値があります。
2023.07.26記事「有吉北貝塚北斜面貝層 犬埋葬」
4 斜面貝層形成の様子
斜面貝層を構成するF4層(B2層)の記述には「混土貝層、混貝率95%、破砕率10%、純貝層に近い、小型ハマグリ主体、シオフキ多、アサリ小、ツメタガイ微、大型ハマグリを散発的に混入させる、高い方の部分には混土率が高く、下方になるに従い純貝層に近い」と書いてあります。この記述から貝投棄が斜面上方から行われ、重力と斜面を流れる雨水などにより貝殻が移動した様子を推察できます。
この推察が正しいかどうか、今すぐにでも確かめることができます。
遺物台帳データベースと遺物分布図(現状では未電子化)と貝層断面図を組合わせて、貝層小区分ごとに斜面上部から下部までの遺物分布状況を精細に把握し、土器片などの分布が上部で粗で下部で密であるのかどうか、確かめるための情報が既に揃っています。
5 流路堆積物の貝層と土層の分離
流路堆積物の貝層(左岸側)と土層(右岸側)が綺麗に分離しています。年に数回程度の水流で流れてきた貝層(左岸側)と土層(右岸側)がなぜこのように綺麗に分離するのか、そのメカニズムを詳しく検討してみることにします。氷河の合流とほぼ同じようなメカニズムかもしれません。
6 斜面貝層が最後の堆積物であることの確認
斜面貝層の純貝層が流路堆積物の後に堆積した最終堆積物であるように観察できます。この断面より下流に流路で運ばれた加曽利EⅡ式土器が出土していますから、純貝層は加曽利EⅡ式土器の時期と同じかそれより後になります。その確認をとりたいと考えています。純貝層の投棄から貝層形成最後の姿が浮かび上がるかもしれないと考えます。