3D model of observation record of clay figurine with missing limbs, breasts, face, and head (Chiba City, Kasori Shell Mounds)
A 3D model of the observation record of a clay figurine (late Jomon period) exhibited at the Kasori Shell Mounds Museum's 2023 excavation survey report exhibition has been created. The limbs, breasts, face, and head are missing. Judging from the characteristics of the facial marks, it appears to be an owl clay figurine. It appears that the limbs, breasts, and face were torn off using intentionally created weak points as a clue.
加曽利貝塚博物館の令和5年度発掘調査速報展に展示されている土偶(縄文後期)の観察記録3Dモデルを作成しました。手足乳房顔面頭頂部が欠損してます。顔面跡の特徴からミミズク土偶のようです。意図的につくられた弱部を手がかりに手足乳房顔面がもぎ取られたようです。
1 手足乳房顔面頭頂部が欠損した土偶(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル
手足乳房顔面頭頂部が欠損した土偶(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル縄文時代後期
撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度発掘調査速報展
撮影月日:2024.05.28
展示の様子
ガラス面越し撮影
3DF Zephyr v7.529 processing 89 images
3Dモデルの画像
3Dモデルの動画
2 観察
2-1 顔面
顔面が剥ぎ取られた跡に、顔面の一部が円弧状に残り、その場所にかすかに細溝が並んでいるのが観察できます。
顔面が剥ぎ取られた跡
この様子から、この土偶はミミズク土偶の一種であると考えました。
ミミズク土偶の例
縄文晩期安行3a式 ミミズク土偶(千葉市内野第1遺跡) 観察記録3Dモデル
顔面が貼付された土台(胴部+頭部)には顔面が十分に接着していなかった部分が観察できます。
2-2 手足
手足がもぎ取られた接続部付近の土台には顕著な凹部が見られ、その凹部には手足の粘土が接着していなかったように観察できます。つまり、手足と土台の間には中空空間が存在していたようです。
右手がもぎ取られた跡
左手がもぎ取られた跡
足接続部
2-3 乳房
乳房が剥がされた跡にも乳房粘土が土台に接着していなかった場所が拡がります。
乳房が剥がされた跡
2-4 観察まとめ
この土偶はミミズク土偶の一種であると考えます。
土偶は土台(胴部+頭部)と頭頂部、顔面、手足4本から構成され、土台と各部位との間には中空部あるいは未接着部が存在していて、最終的に中空部や未接着部の弱部を手がかりにバラバラに解体されたと推定します。
つまり、この土偶は体部部位毎にバラバラに破壊しやすくするように設計制作された事例であると考えます。
2-5 メモ
頭頂部の様子は視覚からはずれ、観察できませんでした。
パネルにはこの土偶の背面の写真が掲載されていて、背面には沈線による文様があります。
パネル写真
土偶正面の右肩付近にも同じ沈線が見えますが、光線の具合で明瞭に観察できません。
足接続部の臀部付近にも中空部分があるように観察できます。
2-6 観察記録3Dモデル作成の意義
この土偶について観察記録3Dモデルを作成してはじめて、詳細に観察することが可能となりました。その結果、この土偶がバラバラに破壊しやすく設計制作されたことがわかりました。展示会場では対象物が小さく、光線も望むレベルよりは弱いため、詳細観察が十分にできません。また近寄って長時間観察する姿勢を維持する肉体条件は高齢者の自分には弱いです。この土偶観察で、観察記録3Dモデル作成の意義が大きいことを実感しました。
2-7 なぜ土偶はバラバラにされたか?
なぜ土偶はバラバラにされたのか、縄文学習におけるもっとも魅力的なテーマの一つです。谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」(雄山閣)の中にその研究史と著者の見解が詳しく述べられています。早速その章「第4章土偶破棄行為の再検討」の学習に踏み込み、学習を芋づる式に拡大して楽しむことにします。近々別記事で学習の様子をレポートします。