大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 33
2018.02.27記事「新発見 貝塚における異なる生業2集団の共存 大膳野南貝塚後期集落」で生業が異なる2集団共存の根拠事象の1つに竪穴住居重複の様子をあげました。
これまで竪穴住居重複の詳しい検討はしてこなかったので、この記事でデータを分析します。
1 竪穴住居重複の様子
重複の様子 1
竪穴住居93軒のうち1軒と重複するものが22、2軒と重複するものが20、3軒4軒と重複するものがそれぞれ3となり、合計48軒(52%)が重複します。
他遺跡の同じようなデータを知りませんのでこの数値の専門的な評価はできませんが、大変混みあった集落であったことは確実です。祖先が廃絶祭祀を行った竪穴住居の存在を知りながら、かつ廃屋墓であることも知りながら、出来るだけそれらを避けながら、しかしかなり大胆にそれらを切って(重複させて)新たな竪穴住居を建設しています。
重複の様子 2
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居ではそれぞれだけで重複するものが18、13と多く、混在するものは17となります。漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居が混在する重複竪穴住居は重複竪穴住居の35%にすぎません。
この事実は漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族が別集団であり、異集団の廃絶竪穴住居は侵さないという不文律があったに違いありません。両者の緊張をはらんだ関係が存在していたを物語っていると考えます。
2 竪穴住居重複の分布
竪穴住居重複の分布
漆喰貝層有竪穴住居どうしの重複および漆喰貝層無竪穴住居どうしの重複がそれぞれ特定域に固まっていて、漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族がそれぞれ異なる別集団に属していたと想定することを支持する分布図となっています。
一方、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居が混在して重複する域の存在は両者の関係が敵対に至るような排他性ではなかったことを示していて、両者の間に一定の交流(婚姻等)があったことを物語っていると考えます。
2018年2月28日水曜日
2018年2月27日火曜日
新発見 貝塚における異なる生業2集団の共存 大膳野南貝塚後期集落
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 32
大膳野南貝塚後期集落学習の総決算として、異なる生業2集団が貝塚に共存していたという事実の発見にたどり着けました。
異なる生業2集団の存在とその共存という見立て(観察、記載)は発掘調査報告書ではまったくありませんから、この発見は大きな意義を有していると考えます。
1 生業が異なる2集団が共存していたと考える根拠事象
生業が異なる2集団が共存していたと考える根拠事象
漆喰貝層有竪穴住居は漁撈を行った家族の住居であることは自明であると考えます。一方漆喰貝層無竪穴住居からは漁撈に関わる痕跡は一切出土していません。貝製品も出土していません。この2つの竪穴住居群の分布形状は全く異なっていて、異なる意思のもとに竪穴住居が広がっているように観察できます。また廃屋墓の葬送様式が異なっていて、2つ竪穴住居群の間には異なる出自・文化が存在すると考えることができます。これらの事象から2つの竪穴住居群の混在は生業や出自の異なる2つの縄文人集団が同じ貝塚集落内で共存したことを示していると考えます。
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居はブルー、漆喰貝層無竪穴住居はベージュ表示。
大膳野南貝塚後期集落学習の総決算として、異なる生業2集団が貝塚に共存していたという事実の発見にたどり着けました。
異なる生業2集団の存在とその共存という見立て(観察、記載)は発掘調査報告書ではまったくありませんから、この発見は大きな意義を有していると考えます。
1 生業が異なる2集団が共存していたと考える根拠事象
生業が異なる2集団が共存していたと考える根拠事象
漆喰貝層有竪穴住居は漁撈を行った家族の住居であることは自明であると考えます。一方漆喰貝層無竪穴住居からは漁撈に関わる痕跡は一切出土していません。貝製品も出土していません。この2つの竪穴住居群の分布形状は全く異なっていて、異なる意思のもとに竪穴住居が広がっているように観察できます。また廃屋墓の葬送様式が異なっていて、2つ竪穴住居群の間には異なる出自・文化が存在すると考えることができます。これらの事象から2つの竪穴住居群の混在は生業や出自の異なる2つの縄文人集団が同じ貝塚集落内で共存したことを示していると考えます。
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居はブルー、漆喰貝層無竪穴住居はベージュ表示。
2 2集団の関係性を示す事象
2集団の関係性を示す事象
当初想定した漆喰貝層有竪穴住居優位、漆喰貝層無竪穴住居劣位という関係は無いようです。
3 2集団の特性を示す事象
2集団の特性を示す事象
当初想定した漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の生業面における分業の証拠は見つかりません。
4 参考 要注意事象(見かけの事象)
参考 要注意事象(見かけの事象)
土器・石器・獣骨の出土数は漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の関係性考察に直接使えません。
5 メモ
・「異なる生業2集団の共存」という発見(新仮説樹立)の根拠について精査するとともに、さらに根拠情報を集めることができるか、もう少し大膳野南貝塚の検討を続けることにします。
・「異なる生業2集団の共存」という事象は大膳野南貝塚だけの特殊事例であるとは到底考えることができませんから、近隣貝塚の発掘調査報告書の学習も行い、類似事例を確かめ、集めたいと考えます。
・大膳野南貝塚の前期集落では発掘調査報告書でものべられているように浮島式土器優勢竪穴住居と諸磯式土器優勢竪穴住居の2つの竪穴住居群が存在し、出自や文化が異なる2集団の共存が明らかになっています。同じ場所で前期も後期も出自等が異なる2集団が共存して集落を営んだということも単なる偶然として片づけることはできません。縄文集落社会で出自等の異なる集団が共存したという事例が特殊であるのか、あるいは一般的でありふれた普通のことであるのか、自分自身がイメージを持てるようにしたいと思います。
・これまでの学習は発掘調査報告書のGIS分析作業であり、一部の視点(興味)だけとはいえ発掘調査報告書のデータを隅々まで徹底して空間的に把握分析しています。そのGIS空間分析作業が無く紙の報告書を見て紙と鉛筆と電卓だけで学習するでは「異なる生業2集団の共存」という発見は無かったと考えます。
2018年2月26日月曜日
貝製品の出土状況 大膳野南貝塚後期集落
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 31
貝製品の出土状況を発掘調査報告書記載から集計してみました。
1 貝製品出土状況
竪穴住居別貝製品出土状況
貝製品のイメージ(J63号竪穴住居の例) 発掘調査報告書から引用・加筆
貝製品内訳
10竪穴住居から66点の貝製品が出土します。そのうち82%が魚の鱗落としや包丁機能としての調理道具として使われた貝刃・へら状製品です。それ以外は装身具等となります。
2 漆喰貝層有無別集計
貝製品出土状況を漆喰貝層有無別に集計すると、貝製品出土竪穴住居はすべて漆喰貝層有竪穴住居になります。
漆喰貝層有無竪穴住居別貝製品出土数
この分布を立体的にみると次のようになります。
貝製品出土数の分布 1
貝製品出土数の分布 2
3 考察
貝製品が出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居に限定されることが判りました。
自分にとっては大変貴重なデータです。
漆喰貝層無竪穴住居の家族は魚の調理をしていないと判断できます。
貝塚集落の中の半分以上の竪穴住居が漁撈・魚介類食・貝殻利用を完全にしていないことが明らかになりつつあると考えます。
それは発掘調査報告書では触れられていない(認識されていない)事象であり、新たな発見(文献解読における発見)であると直観します。
次の記事で大膳野南貝塚後期貝塚集落が生業の異なる2集団から構成されていたという発見について検討します。
貝製品の出土状況を発掘調査報告書記載から集計してみました。
1 貝製品出土状況
竪穴住居別貝製品出土状況
貝製品のイメージ(J63号竪穴住居の例) 発掘調査報告書から引用・加筆
貝製品内訳
10竪穴住居から66点の貝製品が出土します。そのうち82%が魚の鱗落としや包丁機能としての調理道具として使われた貝刃・へら状製品です。それ以外は装身具等となります。
2 漆喰貝層有無別集計
貝製品出土状況を漆喰貝層有無別に集計すると、貝製品出土竪穴住居はすべて漆喰貝層有竪穴住居になります。
漆喰貝層有無竪穴住居別貝製品出土数
この分布を立体的にみると次のようになります。
貝製品出土数の分布 1
貝製品出土数の分布 2
3 考察
貝製品が出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居に限定されることが判りました。
自分にとっては大変貴重なデータです。
漆喰貝層無竪穴住居の家族は魚の調理をしていないと判断できます。
貝塚集落の中の半分以上の竪穴住居が漁撈・魚介類食・貝殻利用を完全にしていないことが明らかになりつつあると考えます。
それは発掘調査報告書では触れられていない(認識されていない)事象であり、新たな発見(文献解読における発見)であると直観します。
次の記事で大膳野南貝塚後期貝塚集落が生業の異なる2集団から構成されていたという発見について検討します。
2018年2月25日日曜日
獣骨数統計の再集計
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 30
これまでの直近2記事で、「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土中テン箱数と石器数の再集計して、覆土層有竪穴住居を対象とすると、漆喰貝層有竪穴住居(漁民家族)の数値と漆喰貝層無竪穴住居(非漁民家族)の数値の差が縮まることなどから、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の見かけの数値に拘泥しないで、その2者の間に有意な差はないかもしれないと考察してきました。
この記事ではいささか機械的ですが上記と同じ作業を獣骨出土数に関して行い、獣骨出土数の特性を検討します。
なお、2018.01.09記事「獣骨出土数と漆喰貝層有無別竪穴住居との関係」で最初の検討を行っています。
1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの獣骨数統計
漆喰貝層有無別獣骨数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では獣骨数が約380倍になります。
獣骨は土器や石器と異なり通常は土層中で消失するものですが、貝層に覆われれば残存する可能性が生まれるという特性がありますのでこのような結果になったと考えることができます。
「後世の削平」云々の前に覆土層に貝層が含まれているか否かが獣骨数出土の決定的要因であると直観できます。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)
2 「後世の削平」影響を加味した獣骨数統計(再集計)
漆喰貝層有無別獣骨数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では獣骨数が約550倍となり、1とくらべてその差が大幅に拡大します。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)
3 考察
「後世の削平」の影響を取り除くと獣骨数は漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の間で開きが大幅に拡大します。
つまり、「後世の削平」がなければ獣骨数は実際の出土状況よりも漆喰貝層有竪穴住居でより大きくなることを意味します。
貝層が存在しなくても遺構に残る土器数(中テン箱数を関連指標とする)、石器数とは真逆の結果となりました。
この結果から、「後世の削平」以前の本来の遺跡では漆喰貝層有竪穴住居にもっと沢山の獣骨が含まれ、漆喰貝層無竪穴住居には最初からほとんど獣骨が含まれなかったという想定の蓋然性が極めて高いと考えることができます。
なお、この考察は漆喰貝層無竪穴住居が廃絶した当初に住居内に獣骨がほとんど残されなかったことを意味しません。漆喰貝層無竪穴住居でもその廃絶祭祀や廃屋墓利用が行われ、獣骨が多量に(漆喰貝層有竪穴住居と同じくらいに多量に)持ち込まれたことを否定できる情報はありません。
土器や石器出土状況から類推すると漆喰貝層無竪穴住居にも漆喰貝層有竪穴住居とおなじくらい獣骨が持ち込まれたと想定することが、見かけの統計とはかけ離れますが、合理的であると考えます。
漆喰貝層有竪穴住居で獣骨数が特段に多い竪穴住居の多くは廃屋墓(発掘調査報告書では廃屋墓と認定していないが、ヒト骨が出土するものを含む)であったことが既に判っています。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照
この検討から、漆喰貝層無竪穴住居でも同様の状況があったと想定しますが、その直接証拠はほとんど消えてしまったと想像します。
これまでの直近2記事で、「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土中テン箱数と石器数の再集計して、覆土層有竪穴住居を対象とすると、漆喰貝層有竪穴住居(漁民家族)の数値と漆喰貝層無竪穴住居(非漁民家族)の数値の差が縮まることなどから、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の見かけの数値に拘泥しないで、その2者の間に有意な差はないかもしれないと考察してきました。
この記事ではいささか機械的ですが上記と同じ作業を獣骨出土数に関して行い、獣骨出土数の特性を検討します。
なお、2018.01.09記事「獣骨出土数と漆喰貝層有無別竪穴住居との関係」で最初の検討を行っています。
1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの獣骨数統計
漆喰貝層有無別獣骨数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では獣骨数が約380倍になります。
獣骨は土器や石器と異なり通常は土層中で消失するものですが、貝層に覆われれば残存する可能性が生まれるという特性がありますのでこのような結果になったと考えることができます。
「後世の削平」云々の前に覆土層に貝層が含まれているか否かが獣骨数出土の決定的要因であると直観できます。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)
2 「後世の削平」影響を加味した獣骨数統計(再集計)
漆喰貝層有無別獣骨数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では獣骨数が約550倍となり、1とくらべてその差が大幅に拡大します。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)
3 考察
「後世の削平」の影響を取り除くと獣骨数は漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の間で開きが大幅に拡大します。
つまり、「後世の削平」がなければ獣骨数は実際の出土状況よりも漆喰貝層有竪穴住居でより大きくなることを意味します。
貝層が存在しなくても遺構に残る土器数(中テン箱数を関連指標とする)、石器数とは真逆の結果となりました。
この結果から、「後世の削平」以前の本来の遺跡では漆喰貝層有竪穴住居にもっと沢山の獣骨が含まれ、漆喰貝層無竪穴住居には最初からほとんど獣骨が含まれなかったという想定の蓋然性が極めて高いと考えることができます。
なお、この考察は漆喰貝層無竪穴住居が廃絶した当初に住居内に獣骨がほとんど残されなかったことを意味しません。漆喰貝層無竪穴住居でもその廃絶祭祀や廃屋墓利用が行われ、獣骨が多量に(漆喰貝層有竪穴住居と同じくらいに多量に)持ち込まれたことを否定できる情報はありません。
土器や石器出土状況から類推すると漆喰貝層無竪穴住居にも漆喰貝層有竪穴住居とおなじくらい獣骨が持ち込まれたと想定することが、見かけの統計とはかけ離れますが、合理的であると考えます。
漆喰貝層有竪穴住居で獣骨数が特段に多い竪穴住居の多くは廃屋墓(発掘調査報告書では廃屋墓と認定していないが、ヒト骨が出土するものを含む)であったことが既に判っています。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照
この検討から、漆喰貝層無竪穴住居でも同様の状況があったと想定しますが、その直接証拠はほとんど消えてしまったと想像します。
2018年2月21日水曜日
漆喰貝層有無別石器数統計の再集計
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 29
「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土石器数(石器合計数)を再集計してみました。
1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの石器数統計
「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土石器数(石器合計数)を再集計してみました。
1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの石器数統計
3 考察
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居はほとんど石器出土がありませんが、その値はその遺構が持っていた本来の石器数を示すものではありませんから、それを統計の母数に含めると間違った統計になります。
その間違った統計が1です。
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に石器数統計を再集計したものが2です。
この統計で石器数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が12.7、漆喰貝層無竪穴住居が3.7となり約3.4倍の開きのある関係になります。
漆喰貝層有竪穴住居の石器数平均値はサンプル数が多く信頼できる(意味のある検討ができる)と考えます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。石器数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより石器数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。
このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の石器数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の石器数が少ないという見かけの統計がそのまま漆喰貝層有無別竪穴住居の特性であると確実に判断できる状況にはないと考えます。
なお、集落創始期の竪穴住居は石器数がその後の時期より特段に多いという着目すべきデータがあります。2018.02.06記事「集落創始期は狩猟と漁労の二股であった 大膳野南貝塚後期集落」参照
その集落創始期の竪穴住居で覆土層有で漆喰貝層無竪穴住居のサンプルが少ないので(1例のみ)漆喰貝層有竪穴住居の石器数が漆喰貝層無竪穴住居の石器数より見かけ上多くなっている可能性があります。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値の間には有意な差は無いかもしれないと想像して、検討を進めることにします。
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に石器数統計を再集計したものが2です。
この統計で石器数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が12.7、漆喰貝層無竪穴住居が3.7となり約3.4倍の開きのある関係になります。
漆喰貝層有竪穴住居の石器数平均値はサンプル数が多く信頼できる(意味のある検討ができる)と考えます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。石器数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより石器数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。
このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の石器数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の石器数が少ないという見かけの統計がそのまま漆喰貝層有無別竪穴住居の特性であると確実に判断できる状況にはないと考えます。
なお、集落創始期の竪穴住居は石器数がその後の時期より特段に多いという着目すべきデータがあります。2018.02.06記事「集落創始期は狩猟と漁労の二股であった 大膳野南貝塚後期集落」参照
その集落創始期の竪穴住居で覆土層有で漆喰貝層無竪穴住居のサンプルが少ないので(1例のみ)漆喰貝層有竪穴住居の石器数が漆喰貝層無竪穴住居の石器数より見かけ上多くなっている可能性があります。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値の間には有意な差は無いかもしれないと想像して、検討を進めることにします。
2018年2月19日月曜日
漆喰貝層有無別中テン箱数統計の再集計
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 28
「後世の削平」影響を加味して中テン箱数統計を再集計してみました。
1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの中テン箱数統計
漆喰貝層有無別中テン箱数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では中テン箱数の平均値が10倍近くなり、異常です。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)
2 「後世の削平」影響を加味した中テン箱数統計(再集計)
漆喰貝層有無別中テン箱数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では中テン箱数の平均値は倍半分の関係になります。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)
3 考察
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居はほとんど中テン箱数がありませんが、その値は本来の中テン箱数を示すものではありませんからそれを統計の母数に含めると間違った統計になります。
その間違った統計が1です。
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に中テン箱数統計を再集計したものが2です。
この統計で中テン箱数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が2.7、漆喰貝層無竪穴住居が1.5となり倍半分の関係に近くなります。
漆喰貝層有竪穴住居はその数が多く平均値は信頼できます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。中テン箱数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより中テン箱数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。
このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の中テン箱数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数が少ないという捉え方が確実に判断できる状況にはないと考えます。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数平均値の間には有意な差は無いと仮定することにします。
「後世の削平」影響を加味して中テン箱数統計を再集計してみました。
1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの中テン箱数統計
漆喰貝層有無別中テン箱数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では中テン箱数の平均値が10倍近くなり、異常です。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)
2 「後世の削平」影響を加味した中テン箱数統計(再集計)
漆喰貝層有無別中テン箱数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では中テン箱数の平均値は倍半分の関係になります。
漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)
3 考察
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居はほとんど中テン箱数がありませんが、その値は本来の中テン箱数を示すものではありませんからそれを統計の母数に含めると間違った統計になります。
その間違った統計が1です。
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に中テン箱数統計を再集計したものが2です。
この統計で中テン箱数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が2.7、漆喰貝層無竪穴住居が1.5となり倍半分の関係に近くなります。
漆喰貝層有竪穴住居はその数が多く平均値は信頼できます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。中テン箱数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより中テン箱数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。
このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の中テン箱数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数が少ないという捉え方が確実に判断できる状況にはないと考えます。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数平均値の間には有意な差は無いと仮定することにします。
2018年2月18日日曜日
出土物統計の不適切考察記事について
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 27
「後世の削平」が結果として強選択的に働いた結果、漆喰貝層無竪穴住居の出土物が異常に少なく、漆喰貝層有竪穴住居の出土物が多いことに気が付きました。
これまで検討してきた中テン箱、石器、獣骨の統計の竪穴住居漆喰貝層有無別統計の考察の多くの部分が不適切なものであることに気が付きました。
また出土物時期別統計も覆土層有竪穴住居(遺構に遺物が残っている可能性のある竪穴住居)の数が時期別にアンバランスであることを確かめていませんでしたから不適切であったところが多くなっていると考えるようになりました。
参考 時期別漆喰貝層有無別 覆土層有竪穴住居軒数
母数(遺構に遺物が残っている可能性のある竪穴住居)の数が0、1、2のものが多く時期別比較が困難であることがこのグラフから判ります。
参考 時期別漆喰貝層有無別 覆土層無竪穴住居軒数
そもそも遺構に遺物が残っている可能性がほとんどない竪穴住居の軒数を示しています。
参考 時期別竪穴住居数
このグラフは大いに意味のある重要なグラフです。竪穴住居そのものの統計や分布を検討した結果からは重要な新知見が生れています。
しかしこのグラフを元に出土物の統計を作ったことが結果として不適切であり、その考察において必然的に間違いを生み出しました。
2017.11.29記事「大膳野南貝塚学習の再開」から2018.02.17記事「「後世の削平」が強選択的に働いた理由」までの50記事を読み直し、次の23記事に出土物統計の不適切考察がありましたので確認しておきます。
中テン箱、石器、獣骨関連統計に関する不適切考察記事
発掘調査報告書収録データの統計を作成し、その分析をしていく中で合理的な解釈ができない極端な数値に直面し、アーダコーダと苦悶しているなかで「後世の削平」の強選択性に気が付いたのですから、学習の質を1段階確実にレベルアップできたことになります。
多くの不適切考察を含む記事(間違い)を肥やしにして今後の学習の質を高めていくことにします。
……………………………………………………………………
不適切考察記事に関する対応
中テン箱、石器、獣骨などの出土物に関する検討が進行中であり、今後さらに自分の認識が向上すると思います。従って現時点で過去記事を訂正すると近い将来さらに再訂正が必要になる可能性もあります。従って過去記事は自分の学習記録そのものとして存置します。
なお、学習終了時点で学習結果とりまとめ(論説作成)を行い、自分の最終考察結果を公表することにします。
「後世の削平」が結果として強選択的に働いた結果、漆喰貝層無竪穴住居の出土物が異常に少なく、漆喰貝層有竪穴住居の出土物が多いことに気が付きました。
これまで検討してきた中テン箱、石器、獣骨の統計の竪穴住居漆喰貝層有無別統計の考察の多くの部分が不適切なものであることに気が付きました。
また出土物時期別統計も覆土層有竪穴住居(遺構に遺物が残っている可能性のある竪穴住居)の数が時期別にアンバランスであることを確かめていませんでしたから不適切であったところが多くなっていると考えるようになりました。
参考 時期別漆喰貝層有無別 覆土層有竪穴住居軒数
母数(遺構に遺物が残っている可能性のある竪穴住居)の数が0、1、2のものが多く時期別比較が困難であることがこのグラフから判ります。
参考 時期別漆喰貝層有無別 覆土層無竪穴住居軒数
そもそも遺構に遺物が残っている可能性がほとんどない竪穴住居の軒数を示しています。
参考 時期別竪穴住居数
このグラフは大いに意味のある重要なグラフです。竪穴住居そのものの統計や分布を検討した結果からは重要な新知見が生れています。
しかしこのグラフを元に出土物の統計を作ったことが結果として不適切であり、その考察において必然的に間違いを生み出しました。
2017.11.29記事「大膳野南貝塚学習の再開」から2018.02.17記事「「後世の削平」が強選択的に働いた理由」までの50記事を読み直し、次の23記事に出土物統計の不適切考察がありましたので確認しておきます。
中テン箱、石器、獣骨関連統計に関する不適切考察記事
発掘調査報告書収録データの統計を作成し、その分析をしていく中で合理的な解釈ができない極端な数値に直面し、アーダコーダと苦悶しているなかで「後世の削平」の強選択性に気が付いたのですから、学習の質を1段階確実にレベルアップできたことになります。
多くの不適切考察を含む記事(間違い)を肥やしにして今後の学習の質を高めていくことにします。
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不適切考察記事に関する対応
中テン箱、石器、獣骨などの出土物に関する検討が進行中であり、今後さらに自分の認識が向上すると思います。従って現時点で過去記事を訂正すると近い将来さらに再訂正が必要になる可能性もあります。従って過去記事は自分の学習記録そのものとして存置します。
なお、学習終了時点で学習結果とりまとめ(論説作成)を行い、自分の最終考察結果を公表することにします。
2018年2月17日土曜日
「後世の削平」が強選択的に働いた理由
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 26
2018.02.15記事「「後世の削平」の影響が強く選択的に働いていることに気が付く」で漆喰貝層無竪穴住居に強選択的に「後世の削平」が働き、出土物が異常に少ない状況が生まれたことに気が付きました。この記事ではその理由を大局的に考えてみました。
1 覆土層一部残存竪穴住居と覆土層無竪穴住居の分布
覆土層一部残存竪穴住居(ブルー)と覆土層無竪穴住居(ベージュ)の分布
2 思考補助図の作成
覆土層一部残存竪穴住居と覆土層無竪穴住居のそれぞれの分布の重なり具合を大局的直観的に把握するための思考補助図としてそれぞれのバッファ図(距離5m)を作ってみました。竪穴住居から5m圏の土地は竪穴住居が受けた影響と同じ影響を受けたと仮想する図です。
思考補助図 覆土層一部残存竪穴住居のバッファ図(距離5m)
思考補助図 覆土層無竪穴住居のバッファ図(距離5m)
思考補助図 覆土層一部残存竪穴住居のバッファ図(距離5m)と覆土層無竪穴住居のバッファ図(距離5m)のオーバーレイ図
3 考察
覆土層無竪穴住居は台地面全域に分布していると捉えることができます。台地面全域が「後世の削平」の影響を受けたといえます。
ただし台地崖(急斜面)には覆土層無竪穴住居はありませんから覆土層をほとんど全て除去あるいは攪乱するという「後世の削平」は台地面だけであったことが判ります。
一方、覆土層一部残存竪穴住居は殆どが3つの貝層及びその近隣に分布しています。
これは耕作等の「後世の削平」が行われた際、貝層の存在が削平活動に対して物理的な抵抗となったためであると考えます。3つの貝層とその周辺には純貝層だけでなく破砕された貝殻と土が混ぜわさった混貝土層が広がり、通常の土より硬かったと想定できます。
覆土層一部残存竪穴住居はこのほか台地崖(急斜面)に分布していて、ここでは地形条件から台地面のような削平活動は無かったようですが、別の条件(斜面浸食等)により竪穴住居の一部が壊されています。
以上の大局的考察をまとめると次のようなります。
1 台地面の全域が「後世の削平」の対象となり、そこに存在した漆喰貝層無竪穴住居はほとんど全て覆土層が失われ、出土物は異常に少なくなった。
2 漆喰貝層有竪穴住居は台地面に存在し「後世の削平」の対象となったにもかかわらず、貝層が被覆していて、それが物理的抵抗力を持っていたため覆土層一部残存竪穴住居となったものが多い。従って出土物が多い竪穴住居が多い。
3 台地崖(急斜面)には漆喰貝層有竪穴住居は存在しないけれども漆喰貝層無竪穴住居は存在する。この地形の竪穴住居は覆土層一部残存竪穴住居となっている。
この考察が正しければ、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の出土物の統計的比較はかなり無理であると考えざるを得ません。
統計的比較ではなく、漆喰貝層無竪穴住居でもたまたま貝層に覆われたもの(例 J88号住)など断片的個別情報から漆喰貝層無竪穴住居の特性を類推する検討が重要になりそうです。
また、次のような今後の検討課題が浮かび上がりました。
1 「後世の削平」の具体的イメージ
耕作か?、いつごろか? 除去された覆土層はどこに移動したか?
2 縄文時代地形(貝層形成前と後の地形)の復元
発掘調査時点の地形測量結果と1960年代測量図地形がかなり異なります。縄文時代地形(貝層形成前と後の地形)のイメージを正確に復元して、それと竪穴住居分布との関係を精密に考察する必要があります。
3 貝層分布の検討
発掘調査報告書掲載貝層分布図(南貝層、北貝層、西貝層)は一定の基準で貝層分布を描いた1例であり、絶対的なものではないと考えます。もっと広く混貝土層が広がっていたようです。発掘調査報告書の遺構別記述や発掘状況写真等から貝層分布のイメージを検討してみます。
4 混貝土層の意味
貝殻を破砕してそれを土と混ぜて意図的に作った混貝土を竪穴住居覆土層や貝層形成に使ったようです。その意味について考察することが大膳野南貝塚集落の検討に大切です。
2018.02.15記事「「後世の削平」の影響が強く選択的に働いていることに気が付く」で漆喰貝層無竪穴住居に強選択的に「後世の削平」が働き、出土物が異常に少ない状況が生まれたことに気が付きました。この記事ではその理由を大局的に考えてみました。
1 覆土層一部残存竪穴住居と覆土層無竪穴住居の分布
覆土層一部残存竪穴住居(ブルー)と覆土層無竪穴住居(ベージュ)の分布
2 思考補助図の作成
覆土層一部残存竪穴住居と覆土層無竪穴住居のそれぞれの分布の重なり具合を大局的直観的に把握するための思考補助図としてそれぞれのバッファ図(距離5m)を作ってみました。竪穴住居から5m圏の土地は竪穴住居が受けた影響と同じ影響を受けたと仮想する図です。
思考補助図 覆土層一部残存竪穴住居のバッファ図(距離5m)
思考補助図 覆土層無竪穴住居のバッファ図(距離5m)
思考補助図 覆土層一部残存竪穴住居のバッファ図(距離5m)と覆土層無竪穴住居のバッファ図(距離5m)のオーバーレイ図
3 考察
覆土層無竪穴住居は台地面全域に分布していると捉えることができます。台地面全域が「後世の削平」の影響を受けたといえます。
ただし台地崖(急斜面)には覆土層無竪穴住居はありませんから覆土層をほとんど全て除去あるいは攪乱するという「後世の削平」は台地面だけであったことが判ります。
一方、覆土層一部残存竪穴住居は殆どが3つの貝層及びその近隣に分布しています。
これは耕作等の「後世の削平」が行われた際、貝層の存在が削平活動に対して物理的な抵抗となったためであると考えます。3つの貝層とその周辺には純貝層だけでなく破砕された貝殻と土が混ぜわさった混貝土層が広がり、通常の土より硬かったと想定できます。
覆土層一部残存竪穴住居はこのほか台地崖(急斜面)に分布していて、ここでは地形条件から台地面のような削平活動は無かったようですが、別の条件(斜面浸食等)により竪穴住居の一部が壊されています。
以上の大局的考察をまとめると次のようなります。
1 台地面の全域が「後世の削平」の対象となり、そこに存在した漆喰貝層無竪穴住居はほとんど全て覆土層が失われ、出土物は異常に少なくなった。
2 漆喰貝層有竪穴住居は台地面に存在し「後世の削平」の対象となったにもかかわらず、貝層が被覆していて、それが物理的抵抗力を持っていたため覆土層一部残存竪穴住居となったものが多い。従って出土物が多い竪穴住居が多い。
3 台地崖(急斜面)には漆喰貝層有竪穴住居は存在しないけれども漆喰貝層無竪穴住居は存在する。この地形の竪穴住居は覆土層一部残存竪穴住居となっている。
この考察が正しければ、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の出土物の統計的比較はかなり無理であると考えざるを得ません。
統計的比較ではなく、漆喰貝層無竪穴住居でもたまたま貝層に覆われたもの(例 J88号住)など断片的個別情報から漆喰貝層無竪穴住居の特性を類推する検討が重要になりそうです。
また、次のような今後の検討課題が浮かび上がりました。
1 「後世の削平」の具体的イメージ
耕作か?、いつごろか? 除去された覆土層はどこに移動したか?
2 縄文時代地形(貝層形成前と後の地形)の復元
発掘調査時点の地形測量結果と1960年代測量図地形がかなり異なります。縄文時代地形(貝層形成前と後の地形)のイメージを正確に復元して、それと竪穴住居分布との関係を精密に考察する必要があります。
3 貝層分布の検討
発掘調査報告書掲載貝層分布図(南貝層、北貝層、西貝層)は一定の基準で貝層分布を描いた1例であり、絶対的なものではないと考えます。もっと広く混貝土層が広がっていたようです。発掘調査報告書の遺構別記述や発掘状況写真等から貝層分布のイメージを検討してみます。
4 混貝土層の意味
貝殻を破砕してそれを土と混ぜて意図的に作った混貝土を竪穴住居覆土層や貝層形成に使ったようです。その意味について考察することが大膳野南貝塚集落の検討に大切です。
2018年2月15日木曜日
「後世の削平」の影響が強く選択的に働いていることに気が付く
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 25
漆喰貝層有無別に竪穴住居を観察すると出土物のみならず空間分布も全く異なり、それが2集団の共存であると推察しました。
しかし出土物の違いはあまりに極端であり、極端すぎて穏当な解釈やストーリーが浮かびません。そのような中で、もしかしたら「後世の削平」の影響が強く選択的に働いているのではないかと気がつきました。
2018.02.14記事「竪穴住居の漆喰貝層有無別検討に関する考察メモ」参照
早速、後世の削平について発掘調査報告書の記載と断面図等を93竪穴住居全部について読み返しました。
発掘調査報告書の記述から住居壁や覆土層の一部が残存している竪穴住居と住居壁と覆土層の双方が無し(ほとんど無し)の竪穴住居に区分できることが判りました。
その結果を次に示します。
1 住居壁や覆土層の一部が残存している竪穴住居
覆土層一部残存竪穴住居の分布
大膳野南貝塚後期集落では竪穴住居が完全な姿で残っている例は皆無です。覆土層が残っている竪穴住居でも全て後世の削平や攪乱、あるいは重複の影響を受けています。それもほとんどが大幅な影響を受けています。
その分布が上記地図であり、漆喰貝層有竪穴住居は貝塚円環構造に沿っています。
貝塚(南貝層、北貝層、西貝層)の存在が後世の削平から地下の竪穴住居を守ったように考えることが出来そうです。
漆喰貝層無竪穴住居は南側谷津斜面に集中していて、台地面のものはほとんどありません。谷津斜面の竪穴住居は恐らく生業の場としての斜面林の管理という出先的竪穴住居であると想定され、集落本体の漆喰貝層無竪穴住居ではないようです。
従って、漆喰貝層無竪穴住居は極めて強く、選択的に「後世の削平」の影響を受けていると考えられます。
2 住居壁や覆土層が無い竪穴住居
覆土層無竪穴住居の分布
貝層分布域は弱まりますが、台地面に分布する竪穴住居の殆んどが後世の削平の影響を受けて覆土層がありません。つまり竪穴住居の内部に置かれた遺物が後世に消失したということです。
貝層分布域を除く台地面の分布する竪穴住居のほとんどは漆喰貝層無竪穴住居ですから、後世の削平の影響は強く選択的に漆喰貝層無竪穴住居に働いたといえます。
参考 全竪穴住居の分布
3 統計
この関係の統計をグラフ化すると次のようになります。
漆喰貝層有無別覆土層残存有無別 竪穴住居軒数
4 考察
これまで、漆喰貝層有竪穴住居は出土物が多く漆喰貝層無竪穴住居が少ないことの解釈として漆喰貝層有竪穴住居は豊かで優位であり、漆喰貝層無竪穴住居は著しく貧しく劣位であるとイメージしてきました。
このイメージは強い歪みのあるデータから導き出したものであることが確認できました。
データの強い歪みをどれだけ補正できるか、思い通りことはできないかもしれませんが、いずれにしても再考察して大幅に集落イメージを改変することにします。
漆喰貝層有集団と漆喰貝層無集団が漁撈と主食確保という別生業で協働していたかもしれないと空想できるようになりました。
漆喰貝層有無別に竪穴住居を観察すると出土物のみならず空間分布も全く異なり、それが2集団の共存であると推察しました。
しかし出土物の違いはあまりに極端であり、極端すぎて穏当な解釈やストーリーが浮かびません。そのような中で、もしかしたら「後世の削平」の影響が強く選択的に働いているのではないかと気がつきました。
2018.02.14記事「竪穴住居の漆喰貝層有無別検討に関する考察メモ」参照
早速、後世の削平について発掘調査報告書の記載と断面図等を93竪穴住居全部について読み返しました。
発掘調査報告書の記述から住居壁や覆土層の一部が残存している竪穴住居と住居壁と覆土層の双方が無し(ほとんど無し)の竪穴住居に区分できることが判りました。
その結果を次に示します。
1 住居壁や覆土層の一部が残存している竪穴住居
覆土層一部残存竪穴住居の分布
大膳野南貝塚後期集落では竪穴住居が完全な姿で残っている例は皆無です。覆土層が残っている竪穴住居でも全て後世の削平や攪乱、あるいは重複の影響を受けています。それもほとんどが大幅な影響を受けています。
その分布が上記地図であり、漆喰貝層有竪穴住居は貝塚円環構造に沿っています。
貝塚(南貝層、北貝層、西貝層)の存在が後世の削平から地下の竪穴住居を守ったように考えることが出来そうです。
漆喰貝層無竪穴住居は南側谷津斜面に集中していて、台地面のものはほとんどありません。谷津斜面の竪穴住居は恐らく生業の場としての斜面林の管理という出先的竪穴住居であると想定され、集落本体の漆喰貝層無竪穴住居ではないようです。
従って、漆喰貝層無竪穴住居は極めて強く、選択的に「後世の削平」の影響を受けていると考えられます。
2 住居壁や覆土層が無い竪穴住居
覆土層無竪穴住居の分布
貝層分布域は弱まりますが、台地面に分布する竪穴住居の殆んどが後世の削平の影響を受けて覆土層がありません。つまり竪穴住居の内部に置かれた遺物が後世に消失したということです。
貝層分布域を除く台地面の分布する竪穴住居のほとんどは漆喰貝層無竪穴住居ですから、後世の削平の影響は強く選択的に漆喰貝層無竪穴住居に働いたといえます。
参考 全竪穴住居の分布
3 統計
この関係の統計をグラフ化すると次のようになります。
漆喰貝層有無別覆土層残存有無別 竪穴住居軒数
4 考察
これまで、漆喰貝層有竪穴住居は出土物が多く漆喰貝層無竪穴住居が少ないことの解釈として漆喰貝層有竪穴住居は豊かで優位であり、漆喰貝層無竪穴住居は著しく貧しく劣位であるとイメージしてきました。
このイメージは強い歪みのあるデータから導き出したものであることが確認できました。
データの強い歪みをどれだけ補正できるか、思い通りことはできないかもしれませんが、いずれにしても再考察して大幅に集落イメージを改変することにします。
漆喰貝層有集団と漆喰貝層無集団が漁撈と主食確保という別生業で協働していたかもしれないと空想できるようになりました。
2018年2月14日水曜日
竪穴住居の漆喰貝層有無別検討に関する考察メモ
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 24
これまでの検討で、竪穴住居を漆喰貝層有無別に区分して遺構や出土物等の指標を整理するとその違いが際立ちます。あたかもメイン生業が異なる2つの集団、つまり竪穴住居に漆喰と貝殻や貝製品を残す集団と漆喰と貝殻・貝製品を全く残さない集団が1つの集落に混在します。そして漆喰貝層有竪穴住居群の分布は円環構造をなし、漆喰貝層無竪穴住居群は円環構造と無関係に分布します。
この2つの集団と見えるものが本当に生業や出自にかかわるような別集団であるのか、また2つの集団の関係がどのようなものなのか疑問が湧き、その疑問を解くべく躍起になっています。
しかしこれまで漆喰貝層有無別に中テン箱数、石器数、獣骨数を検討してきて、ますます2集団の際立つ差異を把握できてきていますがその関係は謎です。
そこでこの記事では漆喰貝層有無別指標整理作業から離れて、2集団の差異についてその意味を中間的に考察して、今後の検討方向を探る参考にするためにメモしました。
1 貝層の存在が出土物多寡要因になっていないか?
出土物の多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しています。このことから貝層に覆われた竪穴住居は後世の削平を受けにくく、そのために出土物が多く、貝層に覆われていていない竪穴住居は後世の削平を受けやすく、そのために出土物が少ないという現象が存在するかどうか確かめる必要があります。
具体的には貝層に覆われない地区と貝層の覆われた地区の削平の受けやすさ等を比較をする必要があります。
漆喰貝層無竪穴住居からの出土物がとても貧弱であり、それを持って漆喰貝層無竪穴住居は「貧しかった」と判断していますが、この考えに大きなバイアスが働いているのかないのか検証する必要があります。
2 漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係はあるか?
竪穴住居の重複関係が各所で見られますが漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係を調べれば漆喰貝層有竪穴住居群と漆喰貝層無竪穴住居群の関係性のヒントが得られるかもしれません。
ざっと地図を見ると重複は漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多く、次いで漆喰貝層無竪穴住居を漆喰貝層有竪穴住居が切るものが多いようです。その意味がわかるかどうか検討します。
重複が漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多いことから漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族はそれぞれ同じ場所に代々少しずつ場所を変えて住居を構えたようです。そうならば、2つの異なる集団が1つの集落に同居していて、お互いに侵害しない(できない)関係性があったと言えるかもしれません。2つの集団がそれぞれ既得土地所有権を確保していたのかもしれません。
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居…青、漆喰貝層無竪穴住居…ベージュ
3 漆喰貝層無竪穴住居の分布は台地西斜面、台地面、台地南斜面の3つに区分することに意義があるのではないか?
漆喰貝層有竪穴住居の分布は円環構造として捉えることができます。
漆喰貝層無竪穴住居の分布はその見かけの平面分布形状ではなく、地形特性(斜面と台地面)で分けて捉えるとその生業と結びつけて考えることが可能ではないかと直観します。
漆喰貝層無竪穴住居では漆喰貝層有竪穴住居と異なり谷津斜面下部までその分布が及びます。ここに漆喰貝層無竪穴住居の生業のヒントがあるような気がします。斜面林を生業の場(の一部)にしていたと判断できそうです。
地形区分
4 漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する
漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する必要があると考えます。漆喰貝層無竪穴住居群独自の構造形成が存在していたとすれば、漆喰貝層無竪穴住居群は漆喰貝層有竪穴住居群とは明らかに異なる集団であると捉えることができます。
これまでの検討で、竪穴住居を漆喰貝層有無別に区分して遺構や出土物等の指標を整理するとその違いが際立ちます。あたかもメイン生業が異なる2つの集団、つまり竪穴住居に漆喰と貝殻や貝製品を残す集団と漆喰と貝殻・貝製品を全く残さない集団が1つの集落に混在します。そして漆喰貝層有竪穴住居群の分布は円環構造をなし、漆喰貝層無竪穴住居群は円環構造と無関係に分布します。
この2つの集団と見えるものが本当に生業や出自にかかわるような別集団であるのか、また2つの集団の関係がどのようなものなのか疑問が湧き、その疑問を解くべく躍起になっています。
しかしこれまで漆喰貝層有無別に中テン箱数、石器数、獣骨数を検討してきて、ますます2集団の際立つ差異を把握できてきていますがその関係は謎です。
そこでこの記事では漆喰貝層有無別指標整理作業から離れて、2集団の差異についてその意味を中間的に考察して、今後の検討方向を探る参考にするためにメモしました。
1 貝層の存在が出土物多寡要因になっていないか?
出土物の多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しています。このことから貝層に覆われた竪穴住居は後世の削平を受けにくく、そのために出土物が多く、貝層に覆われていていない竪穴住居は後世の削平を受けやすく、そのために出土物が少ないという現象が存在するかどうか確かめる必要があります。
具体的には貝層に覆われない地区と貝層の覆われた地区の削平の受けやすさ等を比較をする必要があります。
漆喰貝層無竪穴住居からの出土物がとても貧弱であり、それを持って漆喰貝層無竪穴住居は「貧しかった」と判断していますが、この考えに大きなバイアスが働いているのかないのか検証する必要があります。
2 漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係はあるか?
竪穴住居の重複関係が各所で見られますが漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係を調べれば漆喰貝層有竪穴住居群と漆喰貝層無竪穴住居群の関係性のヒントが得られるかもしれません。
ざっと地図を見ると重複は漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多く、次いで漆喰貝層無竪穴住居を漆喰貝層有竪穴住居が切るものが多いようです。その意味がわかるかどうか検討します。
重複が漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多いことから漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族はそれぞれ同じ場所に代々少しずつ場所を変えて住居を構えたようです。そうならば、2つの異なる集団が1つの集落に同居していて、お互いに侵害しない(できない)関係性があったと言えるかもしれません。2つの集団がそれぞれ既得土地所有権を確保していたのかもしれません。
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居…青、漆喰貝層無竪穴住居…ベージュ
3 漆喰貝層無竪穴住居の分布は台地西斜面、台地面、台地南斜面の3つに区分することに意義があるのではないか?
漆喰貝層有竪穴住居の分布は円環構造として捉えることができます。
漆喰貝層無竪穴住居の分布はその見かけの平面分布形状ではなく、地形特性(斜面と台地面)で分けて捉えるとその生業と結びつけて考えることが可能ではないかと直観します。
漆喰貝層無竪穴住居では漆喰貝層有竪穴住居と異なり谷津斜面下部までその分布が及びます。ここに漆喰貝層無竪穴住居の生業のヒントがあるような気がします。斜面林を生業の場(の一部)にしていたと判断できそうです。
地形区分
4 漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する
漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する必要があると考えます。漆喰貝層無竪穴住居群独自の構造形成が存在していたとすれば、漆喰貝層無竪穴住居群は漆喰貝層有竪穴住居群とは明らかに異なる集団であると捉えることができます。
2018年2月13日火曜日
分析作業メモ3 獣骨数の分布
大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 23
2018.02.11記事「分析作業メモ 中テン箱数の分布」を出発点にして中テン箱数、石器数と指標について順次漆喰貝層有無別に立体グラフで観察しています。この記事では獣骨数について観察します。
1 竪穴住居別獣骨数の分布
漆喰貝層有竪穴住居の獣骨数 1
参考 漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数 1
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。
漆喰貝層有、無竪穴住居の獣骨数 1
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。
漆喰貝層有竪穴住居の獣骨数 2
参考 漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数 2
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。
漆喰貝層有、無竪穴住居の獣骨数 2
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。
2 考察
2-1 獣骨出土の意味
獣骨が多量に出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居にかぎられています。獣骨数が100以上出土する竪穴住居は9軒でありそのうち7軒が廃屋墓または人骨が出土し廃屋墓の可能性が濃厚な竪穴住居です。2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照
参考 獣骨出土数100以上の竪穴住居
参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1
参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1
獣肉食は祭祀における特別のご馳走であったと考えることができそうです。
獣骨数が多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しているので、南貝層と北貝層という貝層の被覆が獣骨の保存に大きな役割を果たしているものと推察できます。
南貝層と北貝層から外れ、竪穴住居覆土層の中の貝層・混貝土層(地点貝層)だけに覆われた廃屋墓から獣骨出土数が少ないのは、貝成分による被覆が弱く獣骨が融けてしまったことが関わっているからだと推定します。
……………………………………………………………………
特別メモ
J63、J81、J78、J80竪穴住居からはヒト骨が出土します。発掘調査報告書では獣骨出土の項目の中で記述されています。
このヒト骨出土の意義について発掘調査報告書では検討されていません。
現時点ではヒト骨出土はその竪穴住居でヒトの埋葬が行われたにもかかわらず、ヒト骨が保存される環境が劣悪であったため骨のほとんどが消失し、発掘時に埋葬という状況が観察できなかったものと考えます。
一方、出土ヒト骨の形状等の観察記載は発掘調査報告書では完全にゼロです。そのためヒト骨が人肉食の結果である可能性を完全に否定できません。
……………………………………………………………………
2-2 漆喰貝層無竪穴住居から獣骨出土が少ない理由
漆喰貝層無竪穴住居からの獣骨出土は極めて少量ですがその分布をみるとほとんど南貝層と北貝層付近だけです。この様子は漆喰貝層無竪穴住居に獣骨が置かれた後、運よく南貝層と北貝層に覆われて残ったことを表現していると考えます。
土器(関連指標として中テン箱数)や石器など腐らないものの出土自体が漆喰貝層無竪穴住居では少ないので、もともと置かれた獣骨数も少ないと考えられますが、漆喰貝層無竪穴住居の獣骨出土数は竪穴住居が覆土される直前の数より大幅に少なくなっていると推定します。
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※ 画像の差し替え 2018.02.14
竪穴住居別獣骨数の一部に集計ミスが見つかり、この記事の全ての画像を正確な画像と差し替えました。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」の全画像も正確な画像と差し替えました。
両方の記事ともに内容大要に変化はありません。
なお、竪穴住居別獣骨数とは発掘調査報告書の竪穴住居別記述に書かれている獣骨数です。
2018.02.11記事「分析作業メモ 中テン箱数の分布」を出発点にして中テン箱数、石器数と指標について順次漆喰貝層有無別に立体グラフで観察しています。この記事では獣骨数について観察します。
1 竪穴住居別獣骨数の分布
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。
2 考察
2-1 獣骨出土の意味
獣骨が多量に出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居にかぎられています。獣骨数が100以上出土する竪穴住居は9軒でありそのうち7軒が廃屋墓または人骨が出土し廃屋墓の可能性が濃厚な竪穴住居です。2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照
獣骨数が多量に出土する竪穴住居は廃屋墓あるいは廃屋墓の可能性が高い竪穴住居である
ことから、葬送に関連する祭祀で獣肉がふるまわれ、残った骨を竪穴住居の中に残したものと考えます。獣肉食は祭祀における特別のご馳走であったと考えることができそうです。
獣骨数が多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しているので、南貝層と北貝層という貝層の被覆が獣骨の保存に大きな役割を果たしているものと推察できます。
南貝層と北貝層から外れ、竪穴住居覆土層の中の貝層・混貝土層(地点貝層)だけに覆われた廃屋墓から獣骨出土数が少ないのは、貝成分による被覆が弱く獣骨が融けてしまったことが関わっているからだと推定します。
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特別メモ
J63、J81、J78、J80竪穴住居からはヒト骨が出土します。発掘調査報告書では獣骨出土の項目の中で記述されています。
このヒト骨出土の意義について発掘調査報告書では検討されていません。
現時点ではヒト骨出土はその竪穴住居でヒトの埋葬が行われたにもかかわらず、ヒト骨が保存される環境が劣悪であったため骨のほとんどが消失し、発掘時に埋葬という状況が観察できなかったものと考えます。
一方、出土ヒト骨の形状等の観察記載は発掘調査報告書では完全にゼロです。そのためヒト骨が人肉食の結果である可能性を完全に否定できません。
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2-2 漆喰貝層無竪穴住居から獣骨出土が少ない理由
漆喰貝層無竪穴住居からの獣骨出土は極めて少量ですがその分布をみるとほとんど南貝層と北貝層付近だけです。この様子は漆喰貝層無竪穴住居に獣骨が置かれた後、運よく南貝層と北貝層に覆われて残ったことを表現していると考えます。
土器(関連指標として中テン箱数)や石器など腐らないものの出土自体が漆喰貝層無竪穴住居では少ないので、もともと置かれた獣骨数も少ないと考えられますが、漆喰貝層無竪穴住居の獣骨出土数は竪穴住居が覆土される直前の数より大幅に少なくなっていると推定します。
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※ 画像の差し替え 2018.02.14
竪穴住居別獣骨数の一部に集計ミスが見つかり、この記事の全ての画像を正確な画像と差し替えました。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」の全画像も正確な画像と差し替えました。
両方の記事ともに内容大要に変化はありません。
なお、竪穴住居別獣骨数とは発掘調査報告書の竪穴住居別記述に書かれている獣骨数です。
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