2022年5月27日金曜日

3Dモデルによる土器観察 意匠充填系土器

 Observation of pottery by 3D model  Design filling type pottery


I have summarized the observations of design filling type pottery from February to May 2022. This observation utilizes a 3D model and a GigaMesh Software Framework deployment.


「2022年2月~5月の縄文土器学習記録」と銘打って今年2月以降の縄文土器学習の要点を記録としてまとめています。この記録は次のような目次を予定しています。

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1 はじめに

2 これまでに開催された企画展「あれもE…」と学習の概要

3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動

3-1 展示土器の3Dモデル作成と観察

3-1-1 観覧と写真撮影

3-1-2 3Dモデル作成とGigaMesh Software Framework展開

3-1-3 3Dモデルによる土器観察

1)意匠充填系土器

2)入組系横位連携弧線文土器

3)対向系横位連携弧線文土器 外

3-2 3Dモデル分析

3-3 興味を覚えたテーマ(講演会含む)

3-4 習得した3Dモデル関連技術

3-5 感想

4 今後の学習について

4-1 令和4年度企画展開催までの学習活動

4-2 令和4年度企画展にかかる学習活動

…………………

この記事では次の目次部分を掲載します。

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3-1-3 3Dモデルによる土器観察

1)意匠充填系土器

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3-1-3 3Dモデルによる土器観察

加曽利貝塚博物館令和3年度企画展展示土器18点及び常設展展示土器3点、優品展展示土器(千葉市埋蔵文化財調査センター)1点の合計22点について、3DモデルとGigaMesh Software Framework展開資料を活用して詳しく観察しました。

以下各土器の観察結果ポイントをメモします。なお、次の文様分類別を主、土器型式別を従とした便宜上の順番で記述します。

文様分類

1 意匠充填系土器

2 入組系横位連携弧線文土器

3 対向系横位連携弧線文土器 外

土器型式分類

1 加曽利EⅢ式土器

2 加曽利EⅣ式土器

3 加曽利EⅤ式土器

4 称名寺式土器

【文様分類について】

加曽利E式土器の文様分類は次の文献で詳しく解説されています。

加納実(1994):加曽利EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析-配列・編年の前提作業として-、貝塚博物館紀要第21号(千葉市立加曽利貝塚博物館)

当面の加曽利E式土器学習では文様分類に関してこの文献の考え方(次図参照)を参考に進めています。


意匠充填系土器


横位連携弧線文土器

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1)意匠充填系土器

1)-1 加曽利EⅢ式深鉢(No.26)(千葉市芳賀輪遺跡)


加曽利EⅢ式深鉢(No.26)(千葉市芳賀輪遺跡)

大きな渦巻が上段に、下段に細長い楕円が縄文で描かれます。渦巻は沈線で縁取られます。上段で渦巻のパターンに含まれない細長い逆三角形状の縄文施文域が存在しますが、それはこの土器の正面(などの特定位置)を示す意味のある文様だと想像します。(土器全体を観察できて、またおこげなどの様子を観察できれば、この仮説に関する資料が得られると考えます。)

1)-2 加曽利EⅢ式深鉢(千葉市加曽利貝塚)


加曽利EⅢ式深鉢(千葉市加曽利貝塚)

渦巻は波頂部に対応していて、上段だけではなく下段にまで続きます。渦巻は隆帯で縁取られています。

1)-3 加曽利EⅣ深鉢(No.35)(千葉市餅ヶ崎遺跡)


加曽利EⅣ深鉢(No.35)(千葉市餅ヶ崎遺跡)

波頂部に対応して上段に大きな楕円が描かれていて特徴的な図柄となっています。球抱文土器とも言われる文様で加曽利EⅣ期の特徴のようです。「加納実(1994):加曽利貝塚EⅢ・Ⅳ式土器の系統分析、貝塚博物館紀要21」では玉抱文土器について次のように記述しています。

「玉抱文土器群の成立は、弧線文が横位連携効果を有しており、球状意匠が充填されるものの、アクセント部の描出に乏しいことから、横位連携弧線文土器の影響を強く受けた意匠充填系土器群(紡錘状の円形意匠を有する土器群)であるとおもわれる。」

1)-4 加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.28)(千葉市餅ヶ崎遺跡)


加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.28)(千葉市餅ヶ崎遺跡)

玉抱の意匠充填系土器として把握できると考えます。加曽利EⅣ深鉢(No.35)(千葉市餅ヶ崎遺跡)の文様の下段を反転させた文様です。


No.35土器とNo.28土器の文様反転関係

なお、展示では次のような説明がされています。


展示説明

1)-5 加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.29)(千葉市餅ヶ崎遺跡)


加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.29)(千葉市餅ヶ崎遺跡)

玉抱の意匠充填系土器です。細長い楕円となった玉が波頂部と波底部に配置されています。

1)-6 加曽利EⅤ式・称名寺式深鉢(No.37)(千葉市餅ヶ崎遺跡)


加曽利EⅤ式・称名寺式深鉢(No.37)(千葉市餅ヶ崎遺跡)

波頂部に小さな紡錘が描かれているので、意匠充填系土器とも言えると考えました。この土器は全面縄文施文の上に多数の沈線を描いていて、土器づくり初心者が練習で沈線を描いた土器(練習台)と想像しました。


参考 展示資料

1)-7 称名寺Ⅰ式深鉢(No.3)(千葉市愛生遺跡)


称名寺Ⅰ式深鉢(No.3)(千葉市愛生遺跡)

中空の大きな紡錘が波頂部に対応して描かれていますが、意匠充填系土器の流れのデザインであると考えました。

1)-8 意匠充填系土器の一覧

意匠充填系土器の画像を土器型式別に配置すると次のようになります。


意匠充填系土器

意匠主要アクセントが渦巻から楕円(玉)に変化しているように感じます。


3Dモデル作成とGigaMesh Software Framework展開

 3D model creation and GigaMesh Software Framework deployment


I summarized the 3D model creation and GigaMesh Software Framework deployment for Kasori E type pottery from February to May 2022.


「2022年2月~5月の縄文土器学習記録」と銘打って今年2月以降の縄文土器学習の要点を記録としてまとめています。この記録は次のような目次を予定しています。

…………………

1 はじめに

2 これまでに開催された企画展「あれもE…」と学習の概要

3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動

3-1 展示土器の3Dモデル作成と観察

3-1-1 観覧と写真撮影

3-1-2 3Dモデル作成とGigaMesh Software Framework展開

3-1-3 3Dモデルによる土器観察

1)意匠充填系土器

2)入組系横位連携弧線文土器

3)対向系横位連携弧線文土器 外

3-2 3Dモデル分析

3-3 興味を覚えたテーマ(講演会含む)

3-4 習得した3Dモデル関連技術

3-5 感想

4 今後の学習について

4-1 令和4年度企画展開催までの学習活動

4-2 令和4年度企画展にかかる学習活動

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この記事では次の目次部分を掲載します。

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3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動

3-1 展示土器の3Dモデル作成と観察

3-1-1 観覧と写真撮影

3-1-2 3Dモデル作成とGigaMesh Software Framework展開

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3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動

3-1 展示土器の3Dモデル作成と観察

3-1-1 観覧と写真撮影

ア 第1回観覧

観覧日:2022.02.22

3Dモデル作成用撮影対象土器数:7

撮影枚数:935(注)

館内活動時間:1時間40分

イ 第2回観覧

観覧日:2022.02.24

3Dモデル作成用撮影対象土器数:7

撮影枚数:984

館内活動時間:1時間50分

ウ 第3回観覧

観覧日:2022.03.02

3Dモデル作成用撮影対象土器数:10

撮影枚数:1442

館内活動時間:2時間10分

エ 撮影の実際

撮影対象の選択は、全体をじっくりみてから脳内に湧いてくる興味の強さの大きさ順を基本としています。

他の観覧者に迷惑をかけないように、他の観覧者がいないときにのみ撮影しています。観覧は他の観覧者が少ない午後3時以降閉館までで、それが自分の展示館訪問パターンです。


撮影の様子

全ての撮影でスケール(ファイバー製の黄色折尺)を写し込んでいます。これにより3Dモデルに実寸情報付与が可能となっています。

注 撮影枚数の数値はシャッター数です。実際のファイル数はブラケット撮影で5フィルター写真を撮影しているのでその5倍です。

3-1-2 3Dモデル作成とGigaMesh Software Framework展開

企画展展示土器で3Dモデルを作成したものは次の通りです。


3Dモデルを作成した土器(加曽利EⅢ式~称名寺Ⅰ式) 写真は加曽利貝塚博物館パンフレットから引用


3Dモデルを作成した土器(北白川C式系土器) 写真は加曽利貝塚博物館パンフレットから引用

3Dモデルは3DF Zephyr Liteで作成し、全てSketchfabに投稿してwebで閲覧できるようにしました。Sketchfab画面サムネイルを集めると次のようになります。


加曽利E式土器3Dモデルのサムネイル

3Dモデルはすべて実寸法を付与しています。

作成した3Dモデルは一部を除きすべてGigaMesh Software Frameworkによる平面展開を行い、色塗りにより文様の把握を行いました。


GigaMesh Software Frameworkによる平面展開画像 左は3Dモデル正面オルソ投影
3Dモデルは全て動画撮影してYouTubeで公開しています。

YouTube公開動画サムネイル


2022年5月26日木曜日

過去4年間の縄文土器学習

 Jomon pottery learning for the past 4 years


Under the name of "Jomon pottery learning record from February to May 2022", I decided to divide the Jomon pottery learning from February this year onward. "Jomon pottery learning for the past 4 years", which is a part of this record summary, has been posted.


「2022年2月~5月の縄文土器学習記録」と銘打って今年2月以降の縄文土器学習をまとめていったん区切ることにしました。この記録は次のような目次を予定しています。メインはあくまでも「3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動」です。

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1 はじめに

2 これまでに開催された企画展「あれもE…」と学習の概要

2-1 平成30年度企画展と加曽利E式土器学習

2-2 令和元年度企画展と加曽利E式土器学習

2-3 令和2年度企画展と加曽利E式土器学習

2-4 令和3年度企画展と加曽利E式土器学習

2-5 参考 これまでに作成した加曽利E式土器3Dモデル

3 令和3年度企画展「あれもE…」と学習活動

3-1 展示土器の3Dモデル作成と観察

3-2 3Dモデル分析

3-3 興味を覚えたテーマ

3-4 習得した3Dモデル関連技術

4 今後の学習について

4-1 令和4年度企画展開催までの学習活動

4-2 令和4年度企画展にかかる学習活動

…………………

この記事では1と2について掲載します。

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2022年2月~5月の縄文土器学習記録

1 はじめに

加曽利貝塚博物館で毎年恒例となっている企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器-」が令和3年度も2021年11月~2022年3月に開催されました。この恒例企画展の展示土器を素材に、私は縄文土器学習を毎年行ってきています。今回も2月~5月に縄文土器学習を実施しました。

この学習をするなかで、学習しっぱなしでは自分の中に蓄積するものが少ないような気がするとともに、学習の楽しさを極大化させたいという自分の目標に照らして、なにかもったいないような気がしています。そこで一つの試みとして、今回の学習記録をまとめることにしました。この学習記録とりまとめの中で、学習の楽しみの具体点を確認するとともに、今後の学習の在り方を考え、今年度開催予定企画展「あれもE…」学習に備えることにしました。

2 これまでに開催された企画展「あれもE…」と学習の概要

2-1 平成30年度企画展と加曽利E式土器学習

企画展名称:あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-

開催期間:2018年11月~2019年3月


平成30年度企画展の様子


平成30年度企画展のパンフレット

企画展を5回観覧しました。この企画展に刺激を受けて縄文土器学習を継続的に行うことを決意して、学習結果を随時ブログ記事にすることにし、加曽利E式土器の観察結果記事多数をブログに掲載しました。また展示土器を3Dモデルにすることに興味を持ち、フォトグラメトリソフト3DF Zephyr Liteを購入して使いだしました。さらに加曽利E式土器に関する加曽利貝塚博物館主催研究講座が数回開催されましたので、積極的に聴講しました。

2-2 令和元年度企画展と加曽利E式土器学習

企画展名称:あれもE これもE -加曽利E式土器(印旛地域編)-

開催期間:2019年11月~2020年3月


令和元年度企画展の様子


令和元年度企画展のパンフレット


配布資料「考古学を勉強する皆様へ 本展示における加曽利E式土器の細分と表記について」

企画展を3回観覧しました。企画展展示加曽利E式土器多数について観察記録3Dモデルを作成しました。3Dモデルは3Dモデル公表サイトSketchfabにすべて掲載するようにし、現在も継続しています。また3Dモデルを平面に展開するソフトGigaMesh Software Framework(フリーソフト)の存在を知り、それを使って土器文様全体像を観察考察できるようになりました。これらの結果を多数記事にしてブログに掲載しました。さらに、加曽利E式土器に関する加曽利貝塚博物館主催研究講座が数回開催されましたので聴講しました。なお、配布資料「考古学を勉強する皆様へ 本展示における加曽利E式土器の細分と表記について」で加曽利E式土器の研究者間の細分や表記の対応が明らかになったことはユーザー(市民・学習者)にとって画期であると考えました。

2-3 令和2年度企画展と加曽利E式土器学習 
企画展名称:あれもE これもE -加曽利E式土器(北西部地域編)-

開催期間:2020年11月~2021年3月


令和2年度企画展の様子


令和2年度企画展のパンフレット

配布資料「考古学を勉強する皆様へ 本展示における加曽利E式土器の細分と表記について」

企画展を5回観覧しました。企画展展示加曽利E式土器多数について観察記録3Dモデルを作成しさらにGigaMesh Software Frameworkで展開して詳しく観察しました。観察結果多数を記事にしてブログに掲載しました。加曽利E式土器・中峠式土器に関する加曽利貝塚博物館主催研究講座を数回聴講しました。この展示では中峠式土器の標識となる土器が14点展示されました。このようにまとまった展示はほとんどないとのことで貴重な観察機会となりました。

2-4 令和3年度企画展と加曽利E式土器学習

企画展名称:あれもE これもE 加曽利E式土器 千葉市編2 -加曽利EⅣ式土器とその末裔たち-

開催期間:2021年11月~2022年3月


令和3年度企画展の様子


令和3年度企画展のパンフレット

コロナ禍のために企画展終了直前にやっと連続3回観覧しました。企画展展示加曽利E式土器多数について観察記録3Dモデルを作成しました。また作成した3DモデルはGigaMesh Software Frameworkで展開して詳しく観察しました。さらに3Dモデルから土器の大きさや容量を計測して土器を分類しました。観察結果は記事にしてブログに掲載しています。なお、加曽利E式土器に関する加曽利貝塚博物館主催研究講座を2回聴講しました。

2-5 参考 これまでに作成した加曽利E式土器3Dモデル

企画展「あれもE…」展示土器を主な対象として、これまで多数の加曽利E式土器と関連土器の3Dモデルを作成し、Sketchfabに投稿してきました。それらの一覧を掲載します。なお重複や集成モデルが含まれています。(2022.05.26現在)


中峠式土器 Sketchfab投稿サムネイル


加曽利EⅠ式土器 Sketchfab投稿サムネイル


加曽利EⅡ式土器 Sketchfab投稿サムネイル


加曽利EⅢ式土器 Sketchfab投稿サムネイル


加曽利EⅣ式土器 Sketchfab投稿サムネイル


加曽利EⅤ式土器 Sketchfab投稿サムネイル


称名寺式土器 Sketchfab投稿サムネイル


2022年5月25日水曜日

縄文土器3Dモデルに直接描画

 Draw directly on the Jomon pottery 3D model


I can now freely draw lines and colors such as patterns on the Jomon pottery 3D model, so make a note of it. It seems to be useful for learning Jomon pottery patterns.


縄文土器3Dモデルに文様などの線や色を自由に描画できるようになりましたのでメモします。縄文土器文様学習に役立ちそうです。

1 加曽利EⅤ式深鉢(No.39)(千葉市六通貝塚) 観察記録3Dモデル 色塗版

加曽利EⅤ式深鉢(No.39)(千葉市六通貝塚) 観察記録3Dモデル 色塗版 Kasori E Ⅴ type deep bowl Paint color version

縄文施文域をグリーンで塗色

元3Dモデル:https://skfb.ly/osRYJ

Paint the cord-mark impressions area with green

Original 3D model: https://skfb.ly/osRYJ


加曽利EⅤ式深鉢(No.39)(千葉市六通貝塚) 観察記録3Dモデル 色塗版の3DF Zephyr Lite画面


3Dモデルの動画

2 参考 加曽利EⅤ式深鉢(No.39)(千葉市六通貝塚) 観察記録3Dモデル 色塗透明版

加曽利EⅤ式深鉢(No.39)(千葉市六通貝塚) 観察記録3Dモデル 色塗透明版 Kasori E Ⅴ type deep bowl Colored transparent version

縄文施文域をグリーンで塗色

元3Dモデル:https://skfb.ly/osRYJ

Paint the cord-mark impressions area with green

Original 3D model: https://skfb.ly/osRYJ

3 感想

小さな土偶や小さな土器半分など立体性の少ない対象物の3Dモデル直接描画技術は3月4月に獲得しましたが、この度通常の縄文土器3Dモデルについてそのテクスチャ画像に線や色等を直接描画する技術を獲得できました。

3Dモデルを使った縄文土器文様学習では3DモデルをGigaMesh Software Frameworkで展開して、平面上で文様を把握して学習することが最も有効です。縄文土器文様の全体像を把握できます。一方3Dモデルそのものに分析結果を記入することがこれまで出来なかったのですが、この度の3Dモデル表面直接描画技術獲得により、3Dモデルで文様の分布等を検討(議論)できるようになりますから、学習ツールとしての3Dモデルの有用性が自分にとって向上することになります。学習における表現技術の選択肢が増えたことになります。

この技術の詳細は別記事でメモします。


参考 3Dモデルオルソ投影とGigaMesh Software Frameworkによる展開


2022年5月23日月曜日

加曽利E式土器 対向系横位連携弧線文土器 外

 Kasori E type pottery     Facing system horizontal cooperation arc line pottery, etc.


Of the 22 Kasori E-type pottery, I observed the facing system horizontal cooperative arc line pottery and others. The observation was performed by arranging the 3D model front ortho-projection image and the pattern diagram developed by GigaMesh Software Framework side by side.


加曽利貝塚博物館令和3年度企画展「あれもE…」展示土器のうち対向系横位連携弧線文土器外について、3Dモデル正面オルソ投影画像とGigaMesh Software Frameworkで展開して作成した文様図を並べてみました。

1 対向系横位連携弧線文土器外の集成


対向系横位連携弧線文土器外

各土器画像資料の左は3Dモデル正面オルソ投影画像、右はGigaMesh Software Frameworkで展開した図に縄文施文域を緑色に塗色した画像です。


参考 22土器の中での対向系横位連携弧線文土器外の位置

2 加曽利EⅢ式の対向系横位連携弧線文土器


加曽利EⅢ式深鉢(No.25)(千葉市中薙遺跡)

土器の括れた部分で弧線文が上下で対向します。2つの弧線文の対向位置は全て同じ方向に微妙にずれます。

3 加曽利EⅣ式の対向系横位連携弧線文土器


加曽利EⅣ式深鉢(No.36)(千葉市餅ヶ崎遺跡)

上下の弧線文の数が異なります。2つの弧線文の対向位置は微妙にずれますが、そのずれる方向はバラバラのようです。上下弧線文の先端を微妙にずらして表現する行為は、縄文人世界観と関連しているものと想像します。

4 加曽利EⅤ式の全面縄文土器


加曽利EⅤ式深鉢(No.15)(千葉市上谷津第2遺跡)

全面縄文としていて、文様を施文することがない製品であり、簡易的な用途に使われたと想像します。少なくとも「心を込めた調理」をする土器とくらべたら、ランクの低い活動用道具だと考えます。なお、土器展示正面下部だけ縄文のすり減りが激しくなっています。この土器を利用する際にどこかを「正面」として認識していて、炉との位置関係がいつも同じだったので、特定場所のすり減りが激しかったのだと想像します。

5 加曽利EⅤ式の区画文土器


加曽利EⅣ式・EⅤ式深鉢(No.21)(千葉市すすき山遺跡)

4つ並んだ区画文のうち左から2番目が意匠充填系土器の円文、その両側が逆三角形文のように感じることができます。この土器は意匠充填系土器の流れに位置付けることができるのかもしれません。

6 加曽利EⅤ式の両耳壺


加曽利EⅤ式両耳壺(No.2)(千葉市愛生遺跡)

沈線で描かれた模様が噴水を表現する記号(水瓶であることを示す記号)であると考えました。


愛生遺跡出土両耳壺模様の解釈

7 称名寺式のJ字文

7-1 称名寺式土器(千葉市内野第1遺跡)


称名寺式土器(千葉市内野第1遺跡)

7-2 称名寺Ⅰ式深鉢(No.18)(千葉市上谷津第2遺跡)


称名寺Ⅰ式深鉢(No.18)(千葉市上谷津第2遺跡)

8 称名寺式の波状文


称名寺Ⅰ式深鉢(千葉市加曽利南貝塚)

9 メモ

今回作成した3Dモデルで対向系横位連携弧線文土器の例は結果として2つだけとなりました。展示土器に対向系横位連携弧線文土器が少なかったようです。加曽利EⅣ式期とその前後において、対向系横位連携弧線文土器、入組系横位連携弧線文土器、意匠充填系土器の出土量の割合がどのようになるのか、空間的(地理的)分布はどうなのかなどの基本的情報を残念ながら自分は知りません。今年度加曽利貝塚博物館の「あれもE…」企画展に向けて学習を深めて行きたいと思います。


2022年5月22日日曜日

考古学講座「土器や土偶に描かれた「顔」」受講

 Take the archeology course "Faces drawn on pottery and clay figurines"


On May 21, 2022, I attended the archeology course "Faces drawn on pottery and clay figurines" (lecturer: Momoko Saga) at the Yamanashi Prefectural Archaeological Museum. There were only interesting topics such as the sculptural fusion of clay figurines and pottery. Make a note of my impressions.


2022年5月21日に山梨県立考古博物館令和4年度考古学講座第1回「土器や土偶に描かれた「顔」」(講師:山梨県埋蔵文化財センター佐賀桃子先生)がオンラインで開催され、受講することができました。その概要と感想をメモします。


考古学講座のチラシ

1 講座の概要

講座は判りやすい画像資料を次々に説明しながら進み、土器や土偶の顔についての理解が進みました。自分は講演内容が次の3つの部分から構成されているような印象をもちました。

ア 導入(顔認知など一般論)

イ 山梨県における「顔」表現

ウ 「顔」表現出現の背景

どれもこれも面白い話ですが、講師の佐賀桃子先生はイとウに重点をおいて話されました。

なお、事前に充実した6ページ資料をダウンロードできました。お話は資料で事前事後に確認できますので便利です。特に参考文献が20数編掲載されていて、今後の学習に特に便利です。


ダウンロード資料

2 感想


開会画面

自分が特に興味を抱いた点についてメモします。(順不同)

2-1 中部高地の中期の典型的な「顔」


笛吹市一の沢遺跡出土土偶

笛吹市一の沢遺跡出土土偶の例を示して次の特徴の説明がありました。

・眉と鼻がくっついたカモメ状またはT字状の表現(及びハート形輪郭)

・上向の鼻の穴、つり目、おちょぼ口

・頭部にヘビやイノシシを乗せるものもある。

この典型的な「顔」と縄文人復元図を対照して、カモメ状表現(ハート形輪郭)が縄文人の顔が対応してるという趣旨の説明がありました。

【感想】

中部高地の中期の典型的な「顔」はこのようなものであることはよく理解できました。

縄文人の眼窩上隆起の特徴がカモメ状表現(ハート形輪郭)に対応していることが理解できました。

同時に、この「顔」は、縄文人が縄文人成人を単純にイメージしてつくったものではなく、次のような多層のイメージをレイヤーを重ねるようにイメージした産物であると考えました。

・産道から頭を出した新生児の顔という状況(丸い穴から顔を出している)

・新生児であるから幼い様子で描かれる(目と目の間の距離が成人とくらべて長い)

・そもそも人ではなく神として描かれている(女神が子どもの女神を産む様子)→頭にヘビなどが乗る、→鼻の穴が1つの例がかなり沢山あり、それはその顔が人ではないことを表現している。

・女神だから、縄文人女性の身だしなみ表現を加えている。(目の下のイレズミ、耳輪の装着)

・女神が幸を呼ぶ歌(呪文)を歌っている。(丸い口)

なお、上向きの鼻とつり目はなぜそのように描かれるのか、今後検討することにします。(現代出産技術と異なる状況で、出産時あるいは出産直後に新生児顔にあらわれた特徴か?)

2-2 異形の「顔」

片目に傷があるものや、口蓋裂、のっぺらぼうなど異形の「顔」の例多数を画像で説明していだきました。

【感想】

目の障害や口蓋裂などの障害を土偶(女神)に負わせ、自らの出産で生まれる子供からはその災厄を避ける祈願に使われたと考えました。

2-3 土偶と土器の造形的融合

勝坂式期から土偶と土器の造形的融合が顕著になる。

胴の膨らんだ器形が多いのは、妊娠状態の土偶のイメージの象徴的表現と考えられる。

土偶の体内で調理する=食物が土偶の体内を通過=飲食物の神秘的な生命力を付加

食物という、生命維持に不可欠な要素に本質的に関係している。

2-4 中期段階に住居跡数と土偶の数がともに急増

「顔」表現が出現・増加する時期は、土器の器種の増加や人口が増加する時代

【感想】

中期の人口急増期(加曽利EⅡ式頃ピーク)に山梨では土偶が急増しましたが、千葉や東京(湾岸)など貝塚社会では土偶はほとんど使われていません。山と海で土偶が全く異なる扱われ方をしていて、その様子をもっと詳しく知りたくなります。そのためには山梨縄文中期の様子をもっと詳しく知りたくなります。

3 春季企画展

山梨県立考古博物館春季企画展「心を描く縄文人-人面・土偶装飾付土器の世界-」(2022.04.16~2022.06.12)の紹介がありました。今回講演に関連する興味深い展示物が目白押しのようです。早速駆けつけて観覧することにします。


山梨県立考古博物館春季企画展「心を描く縄文人-人面・土偶装飾付土器の世界-」チラシ