2025年5月27日火曜日

石剣5点(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Five stone swords (Kasori shell mound, Chiba city) Observation record 3D model


I created a 3D model of the observation record of five stone swords excavated from the late Jomon period remains at the Kasori shell mound in Chiba city. The three stone swords excavated from the remains of dwelling No. 85 were excavated in a heated state from the burnt soil layer directly above the floor.


千葉市加曽利貝塚の縄文晩期遺構から出土した石剣5点の観察記録3Dモデルを作成しました。85号住居跡から出土した石剣3点は床面直上の焼土層から被熱した状態で出土しています。

1 石剣5点(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

石剣5点(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

上3点:第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

下左:第14次調査遺構外出土

下右:第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 66 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 メモ

85号住居跡から、「床面直上の焼土層から被熱した完形に近い頁岩製石剣1本と緑色片岩製石剣2本がスコリア粒と共に出土し、廃屋時の儀礼の可能性が考えられた」(松田光太郎「千葉県特別史跡加曽利貝塚における縄文時代晩期の調査」(考古ジャーナル、2024)から引用)


85号住居跡石剣出土状況(発掘調査報告書掲載写真をトリミングして引用)


貝層大区分別遺物3D分布分析

 3D distribution analysis of artifacts by major shell layer division


A 3D distribution analysis of artifacts by major shell layer division was performed. Approximately 80% of the artifacts were excavated from slope shell layers, and approximately 10% from channel shell layers. Extraction of artifacts by major shell layer division was performed using BlenderPython, and aggregation analysis was performed in relation to the database.


貝層大区分別遺物3D分布分析を行いました。遺物の約8割が斜面性貝層から、約1割が流路性貝層から出土しています。貝層大区分別の遺物抽出はBlenderPythonで行い、集計分析はデータベースとリレーションして行います。

1 貝層大区分別遺物3D分布分析


検討空間 貝層大区分別遺物件数 表


検討空間 貝層大区分別遺物件数 グラフ


貝層大区分別遺物出土の特徴

貝層大区分の各区分別3Dモデル空間に含まれる遺物をカウントして件数と密度を整理するとともに、3D空間における遺物分布状況を観察しました。

遺物は圧倒的に斜面性貝層で多く出土しています。密度でみると斜面性貝層に次いで流路性貝層が大きくなっています。

遺物種別件数では骨・歯が全体の70%、土器・土製品が24%で、石器・石、貝製品が続きます。骨角歯牙製品、人骨も出土しています。

崩落層の基底層、崩落層の端に遺物が出土していることから、ガリー浸食による崩落活動の最初期に遺物を含む前代貝層が崩落し、その後付近の台地構成層が崩落した可能性があります。

2 貝層大区分別遺物数のカウント方法、分析方法

Blender3Dビューポートに遺物3D分布モデル(3721CUBEの分布、CUBEは遺物コードを所持している)と貝層大区分別3Dモデル(6曲面オブジェクト分布)が配置されています。この画面で、貝層大区分のそれぞれについて、その3Dモデルに内包されるCUBEをBlenderPythonスクリプトで抽出します。抽出結果(csvファイル)をデータベースに遺物コードをキーにリレーションして、データベースで集計・分析を行います。


貝層発達史(貝層区分と土器型式)

 Shell layer development history (shell layer division and pottery type)


A 3D spatial analysis of the slope shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound revealed that the shell layer development period was from the Nakabyo to Kasori EⅡ new stage. This is a groundbreaking achievement in that it established a method to link shell layer division and pottery type.


有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層について、土器型式との対応を3D空間で分析し、貝層発達時期が中峠式~加曽利EⅡ式新段階であることを明らかにしました。貝層区分と土器型式のリンク方法を確立した点で画期的成果です。

1 貝層区分と土器型式の対応

土器型式情報付土器3D分布モデルと貝層区分を3D空間の中で対応させる

土器3D分布モデルと貝層区分(貝層大区分及び斜面性貝層細区分)を3D空間の中で対応させて、貝層区分別土器型式データ数をカウントして整理しました。カウント範囲は検討空間から1m離れた領域まで含めました。

カウント方法は、検討空間内(10断面と11断面の間、幅2m)は貝層区分3Dモデルに内包されるデータをカウントしました。検討空間外(10断面と11断面からそれぞれ1mまで離れた領域)のデータはそれぞれの断面にオルソ投影して、その場所の貝層区分でカウントしました。

おおよそ、次の対応が観察できました。


貝層と土器型式との関係 表


貝層と土器型式との関係 断面表示

二次堆積層、斜面性貝層R1層、S1層:中峠式

斜面性貝層R2層:加曽利EⅠ式

斜面性貝層S2層:加曽利EⅡ式古段階

斜面性貝層S3層:加曽利EⅡ式新段階

データ(土器3D分布モデル)が流路性貝層に偏っていることと、座標精度がもともと良くないというハンデはあるものの貴重な情報が得られました。斜面性貝層発達の時期的枠のイメージを持つことができました。


R3層と流路性貝層の急激な堆積が対応する

なお、流路性貝層で加曽利EⅡ式中段階が9、加曽利EⅡ式中~新段階が12とデータ数が多くなっています。このデータの空間的層位は流路性貝層の堆積が急激に進行した部分(画像の緑色の部分)であることから、斜面性貝層R3層(褐色貝層)の時期に対応することになります。この対応(R3層と加曽利EⅡ式中段階、中~新段階の対応)はR3層下位のS2層が加曽利EⅡ式古段階に対応し、R3層上位のS3層が加曽利EⅡ式新段階と対応する結果と整合的です。

このことから、R3層の土器型式対応を間接的ながら、次のように考えることができます。

斜面性貝層R3層:加曽利EⅡ式中段階、中~新段階

11断面付近で急激な堆積があり、上流で激しい浸食作用があった時期に上流で大量の加曽利EⅡ式中段階、中~新段階土器が投棄されたことが、結果的に判明しました。

2 貝層と土器型式の対応の考え方


貝層と土器型式の対応の考え方

ポンチ絵に示すように、出土した土器の型式を指標とする場合、斜面性貝層では大雑把ですが、地層累重の法則が成立し、流路性貝層は見かけ上成立しないと考えます。斜面性貝層でも、斜面上部における浸食の影響がありうるので、出土した土器型式の最新のものがその貝層に対応することになります。

3 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層について、土器型式との対応を3D空間で分析し、貝層発達時期が中峠式~加曽利EⅡ式新段階であることが、今回分析で新たに明らかになりました。この結果のみならず、貝層区分と土器型式のリンク方法を確立した点でも今回研究成果は画期的です。今回の3D空間分析方法は本邦貝塚研究で初出であると考えます。本邦考古学一般でも、地層と土器型式関係の3D空間分析方法という点で初出かもしれません。


2025年5月26日月曜日

縄文晩期土器(5類A種)(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 Late Jomon pottery (Type 5, A) (Kasori shell mound, Chiba city) Observation record 3D model


A 3D model of the observation record of Late Jomon pottery Type 5, A, excavated from the Kasori shell mound, Chiba city, was created. The arc-shaped sunken lines are applied horizontally from the rim to the maximum diameter of the body, and diagonally below the maximum diameter, and then string line patterns are applied. The impression is made by pressing the fingers horizontally against the clay string, resulting in a flat cross-sectional shape.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の5類A種土器の観察記録3Dモデルを作成しました。弧状沈線を口縁部から体部最大径付近にかけては横に、最大径以下は斜めに施文した後に紐線文を貼付しています。押捺は指を横にして粘土紐に押し付けるように加えるので、扁平な断面形状です。

1 縄文晩期土器(5類A種)(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

縄文晩期土器(5類A種)(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査85号住居跡(安行3b式期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 103 images


3Dモデル動画


3Dモデル画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(部分拡大)

3 メモ

「弧状沈線を口縁部から体部最大径付近にかけては横に、最大径以下は斜めに施文した後に紐線文を貼付する。押捺は指を横にして粘土紐に押し付けるように加えるので、扁平な断面形状である。」(発掘調査報告書から引用)

分類5類A種は発掘調査報告書による。

有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層細区分

 Subdivision of the slope shell layer of the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita shell mound


The slope shell layer of the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita shell mound was subdivided based on on-site photographs. It can be separated into alternating layers of white and brown shell layers. The white shell layer is mainly composed of clams and ivokisago, and the brown shell layer is mainly composed of ivokisago.


有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層を現場写真から細区分しました。白色貝層と褐色貝層の互層として分層できます。白色貝層は主にハマグリとイボキサゴから、褐色貝層は主にイボキサゴから構成されています。

1 斜面性貝層細区分


現場写真による斜面性貝層細区分の様子


斜面性貝層細区分結果

斜面性貝層を現場写真から細区分しました。10断面、11断面、剥ぎ取り断面、12断面の現場写真で白色貝層(S1、S2、S3)と褐色貝層(R1、R2、R3)が断面連続して対比して観察できます。この観察結果にもとづき下から上に向けて、R1 → S1 → R2 → S2 → R3 → S3 という面的貝層発達を認識して分層しました。

白色貝層は混土率の低い貝層で二枚貝(主にハマグリ)とイボキサゴから構成されています。褐色貝層は混土率の高い貝層でイボキサゴの割合が大きいです。


貝層大区分-斜面性貝層細区分-発掘調査報告書断面の対比

2 R3層と流路性貝層との対比


R3層と流路性貝層との対比

特筆すべき観察事象として、白色貝層S2層とS3層に挟まれた褐色貝層R3層が、流路性貝層の堆積急増(図でグリーン表示)と対応していることをあげることができます。北斜面貝層が納まる地山地形全体がガリー浸食地形であることから、この堆積急増は11断面より上流部におけるガリー浸食現象激化を指標しているといえます。従って、R3層形成期の堆積環境をガリー浸食現象激化期(上流における浸食激化、11断面付近の堆積急増)として捉えることができます。

3 斜面性貝層細区分3Dモデル


斜面性貝層細区分3Dモデル

斜面性貝層細区分3Dモデルを作成しました。画像ではS1層、S2層、S3層のみ表示しました。


北斜面貝層の貝層大区分

 Major division of shell layers on the northern slope


A major division of shell layers was made from the cross-sectional view of the shell layers in the northern slope shell layer study area. Since we were able to distinguish between slope shell layers and channel shell layers, the basis for shell layer division was established. In a word, the slope shell layers are the original shell layers, and the channel shell layers are the shell layers deposited secondarily.


有吉北貝塚北斜面貝層検討空間の貝層断面図から貝層大区分を行いました。斜面性貝層と流路性貝層の弁別ができたので、貝層区分の基礎がかたまりました。一言で言えば、斜面性貝層はオリジナル貝層、流路性貝層は二次的に堆積した貝層です。

1 貝層大区分

貝層断面図(セクション図)に記載された情報から、貝層を大区分しました。大区分の視点は、斜面性貝層(斜面に投棄され堆積した貝層)と、流路性貝層(水流営力により浸食・運搬を経て投棄場所から離れた流路に堆積した貝層)の抽出です。

11 断面では斜面性貝層、流路性貝層とともに、崩落層、二次堆積層、流路性土層が弁別観察されました。


貝層大区分


斜面性貝層と流路性貝層のベクトルの違い

斜面性貝層は斜面に投棄された貝殻・遺物が移動はしていますが、当該斜面に留まっている状態の貝層です。従ってオリジナル貝層として認識できます。一方、流路性貝層は離れた場所の貝層がガリー浸食され、ガリー流路で運搬されてきて堆積したものです。従って流路性貝層は二次的に堆積した貝層です。考古学的遺物の出土環境という視点でみると、斜面性貝層の方が投棄環境保持の割合が大きいという意味で、流路性貝層より価値があります。

断面全体構成から、斜面性貝層は崩落層と二次堆積層形成後に形成されたことが読みとれます。流路性貝層は崩落層、二次堆積貝層、斜面性貝層のそれぞれの形成に対応して形成されています。

流路性貝層と流路性土層は同時異相の関係にあります。

2 崩落層基底部の貝層ブロック


崩落層基底部の貝層ブロック

崩落層はガリー浸食作用の跡ですが、貝層ブロック、土器片等を含んでいて、これらはガリー浸食作用前の前代貝層の痕跡であると考えられます。剥ぎ取り断面でその現物を観察できます。

3 二次堆積層


二次堆積層層相

二次堆積層の層相は剥ぎ取り断面該当層で湖成堆積環境を示しています。崩落層形成後、一時的にダムアップ現象があったと推察できます。

4 貝層大区分3Dモデル作成


貝層大区分3Dモデル

貝層大区分3Dモデル(各区分空間の3Dモデル)を作成しました。なお、視認性をよくするため画像では断面線における面は非表示としています。

3Dモデル作成方法は、11断面と10断面の2つの大区分断面線をBlenderの「辺ループのブリッジ」機能により3Dモデル造形しました。


2025年5月25日日曜日

姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 I created a 3D model of the observation records of Ubayama II-style pottery from the late Jomon period, excavated from the Kasori shell mound in Chiba City. The vessel is bullet-shaped, and the intricate sunken lines express yin and yang by filling and unfilling them. You can see rows of vertical thrusts densely added above the horizontal sunken lines.


千葉市加曽利貝塚から出土した縄文晩期の姥山Ⅱ式土器の観察記録3Dモデルを作成しました。砲弾状の器形で、細密沈線文の充填・非充填により陰陽を表出しています。横位沈線区画の上から密集して加える縦位の刺突列が観察できます。

1  姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査140号住居跡(大洞C1併行期)出土

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 136 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開(色薄)


GigaMesh Software Frameworkによる展開 一部拡大


GigaMesh Software Frameworkによる展開 一部拡大(色薄)

3 メモ

砲弾状の器形で、細密沈線文の充填・非充填により陰陽を表出しています。「口唇部は丁寧なミガキを加えて光沢を持ち、ヘラ状施文具で切り欠いたような刻文を集中して加える範囲が三か所ある」と報告書にかかれていますが、展示土器が伏せてあるので、その様子の観察はよくできません。


縦簾貼付文と縦簾刺突文

発掘調査報告書では本土器に見られる横位沈線区画の上から密集して加える縦位の刺突列に着目し、それが85号住居跡115(※)土器の縦簾貼付文の粘土貼付を省略し、細かな刻みを扁平な施文具先端での刺突に置き換えたものと理解して、「縦簾刺突文」と仮称しています。

※ 2025.05.21記事「姥山Ⅱ式土器(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル



北斜面貝層断面露頭現物を観察できる重大意義

 The great significance of being able to observe the actual cross-sectional outcrop of the shell layer on the north slope


Even now, 27 years after the publication of the excavation report, the actual cross-sectional outcrop of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound can be observed. Therefore, the results of the 3D spatial analysis of the shell layer remains can be verified with the actual object. No matter how wonderful the information is, it is not always possible to fully accept it. However, if it can be verified with the actual object, the certainty increases dramatically.

The existence of the stripped cross-section is of great significance as an academic resource.


発掘調査報告書刊行後27年経った現在でも、有吉北貝塚北斜面貝層の断面露頭現物を観察できます。従って、貝層遺物3D空間分析結果を現物で検証できます。どんなに素晴らしい情報もそれだけでは完全に首肯できるとは限りません。しかし、現物で検証できれば確実性が飛躍的に高まります。

剥ぎ取り断面の存在は学術資料としての重大意義があります。

1 データベース活用事例 -データベースの貝層・遺物分布分析への試行的適用-

1-1 目的、方法、資料

目的:3D空間分析用データベースを検討空間(3D空間)に適用して貝層発達と遺物分布の関係を分析し、遺物種毎の分布特性を明らかにします。この分析活動を通じて、データベースの有用性を確かめます。

方法:Blender3D空間で貝層(分層)3Dモデルを作成し、それと遺物分布3Dモデルの空間対応関係を把握し、その結果を分析します。

資料:3D空間分析用データベース、発掘調査報告書(掲載写真を含む)、北斜面貝層剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示、現物観察できる貴重な資料、11断面と12断面の中間に位置する断面)。

1-2 検討空間の設定


検討空間位置

10断面と11断面に挟まれた3D空間を検討空間として設定しました。

2 北斜面貝層剥ぎ取り断面の重大意義

発掘調査報告書刊行後27年経った現在でも、有吉北貝塚北斜面貝層の断面露頭現物を観察できます。従って、貝層遺物3D空間分析結果を現物で検証できます。どんなに素晴らしい情報もそれだけでは完全に首肯できるとは限りません。しかし、現物で検証できれば確実性が飛躍的に高まります。

剥ぎ取り断面の存在は学術資料としての重大意義があります。

3 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

高さ4.3m、幅4.0m

撮影場所:千葉県立中央博物館常設展

撮影月日:2023.03.07


展示の様子

3DF Zephyr v7.003で生成 processing 396 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


製作された剥ぎ取り断面の全景(上守秀明氏撮影)


展示はぎとり断面3Dモデル画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像


土器新分類と土器片3D空間分布

 New pottery classification and 3D spatial distribution of pottery fragments


Since the type identification of pottery excavated from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound was partially different from the current information, a new classification was made. We have succeeded in restoring the 3D coordinates of 647 pottery fragments linked to this new classification. It is groundbreaking that the pottery type information is arranged in 3D space.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した土器の型式判別が現在情報と乖離している部分があるため、新たに再検討し新分類を行いました。この新分類に紐づく647土器片の3D座標復元に成功しました。土器型式情報が3D空間に配置されたことは画期的です。

1 発掘調査報告書土器分類の再検討

発掘調査報告書土器分類の再検討


土器分類再検討結果の概要

発掘調査報告書(1998年刊行)の土器分類は報告書刊行から27年経ち、最新土器分類情報と乖離したところが見られます。そこで、第9群土器(加曽利EⅡ式古段階)~第12群土器(加曽利EⅢ式土器)について最新土器分類情報を踏まえ土器分類を再検討しました。再検討は前千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人さんが土器実測図1点1点の吟味を踏まえ行いました。再検討の結果、加曽利EⅢ式土器がなくなったほか、全面的ともいえる分類再配置となりました。再検討結果に基づく新分類をこの研究のベース情報とします。

2 土器新分類に基づく土器片の3D座標復元


発掘調査報告書掲載の土器片平面分布図(上)と立面分布図(下)


3D空間で土器片平面分布図と立面分布図から3D座標を復元している様子

発掘調査報告書には掲載土器の土器片立面分布図・平面分布図が掲載されています。この2種分布図をBlender3D空間に配置し、2種分布図で多数の土器片対応が確認できることから、その3D座標を復元しました。この資料には遺物番号の記載がないので、直接データベースにリンクしていません。しかし、土器分類番号から土器新分類情報と紐づきます。つまり土器新分類情報が3D空間に配置されたことになり、画期的です。


土器3D分布モデル


3D座標復元土器片数

3D座標が復元された土器型式を見ると加曽利EⅡ式中段階、同中~新段階が多くなっています。この土器型式はガリー浸食地形上流域で見られる特段の土器密集出土と対応するものです。

なお、加曽利EⅠ式の数が少なくなっています。一方有吉北貝塚集落のピークは竪穴住居数を指標とすると加曽利EⅠ式期になります。このギャップをどのように捉えるべきか、今後の課題です。集落ピークの時だけ北斜面貝層の利用が低調であったのか、それとも発掘調査報告書土器情報に大きなバイアスがかかっていて円満土器型式分布が復元されていないのか。


土器3D分布モデルと土器・土製品グリッド別分布

土器3D分布モデルと遺物データベースから作成した土器・土製品分布図(グリッド別平面分布棒グラフ)を較べると、土器3D分布モデルはガリー流路沿いから出土した土器(主に土器密集域の加曽利EⅡ式中、中~新の土器)に偏っていることが判ります。

3 土器新分類に紐づく土器片3D座標の画期的意義

土器新分類に紐づく土器片3D座標647件の復元は、貝層3Dモデルや遺物分布3Dモデルの時期を判定する指標として利用できるので、画期的意義があります。

今後、土器現物からそれを構成する土器片の遺物番号を読みとる作業を予定しているので、それが済めば、土器片3Dモデル座標データは遺物データベースの中に直接組み込まれることになります。


試行的に行った土器片遺物番号確認作業の様子


2025年5月24日土曜日

ひすい製勾玉状垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

 3D model of observation record of jade magatama-shaped pendant (Kasori shell mound, Chiba city)


A 3D model of the observation record of a jade magatama-shaped pendant excavated from the late Jomon layer at the Kasori shell mound in Chiba city has been created. Radiating concave lines are made from a round hole through which a string can be passed, and the lower part is missing. Maximum length is about 3.5 cm.


千葉市加曽利貝塚の縄文晩期層から出土したひすい製勾玉状垂飾品の観察記録3Dモデルを作成しました。紐を通す丸孔から放射状の凹線が施され、下部は欠損。最大長約3.5㎝。

1 ひすい製勾玉状垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

ひすい製勾玉状垂飾品(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

加曽利貝塚第14次調査遺構外出土(縄文晩期)

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2025年5月17日


展示の様子

3DF Zephyr で生成 v8.007 processing 59 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像 1(2と3から合成)


3Dモデルの画像 2(通常カラー)


3Dモデルの画像 3(モノクロ)

2 メモ


実測図

「37(注 ひすい製勾玉垂飾品)は勾玉状に下部が曲がっているが、下部は欠損している。断面は厚手である。器体には穿孔が1孔あり、表裏面および側面には孔を中心として放射状に凹線が施されている。」

器種…玉類

石材…ひすい

出土層…黒色土

高さ…34.5㎜

幅…27.9㎜

厚さ…18.7㎜

重量…31.91g

(以上発掘調査報告書から引用)