1 縄文早期初頭の海岸線地理的分布を知ることの必要性
縄文早期初頭は現在より海水面が40m以上低かったといわれています。
その時の海岸線の地理的状況を詳しく示す資料はほとんどないようです。
しかし、海水面が低かった時は土地が広大に広がっていて、そこが縄文人の生活空間になっていました。その広大な土地が縄文早期前半から後半にかけて急速に失われました。この急速に土地が失われるということは生活空間が失われることであり、即ち狩猟対象動物が急減することであり、狩猟空間が急減することを意味しています。
この生業(狩猟)に関わる大変動が縄文社会に根本的な変化をもたらしたことは確実です。
つまり、縄文社会の消長を詳しく知るためには、縄文早期から縄文後期にかけてについては海水面変動による海岸線の地理的変化について知る必要があります。
しかし、「土地が失われたことによる社会の大変動」という観点からの縄文社会考察資料は見かけませんから、考古専門書から知識を得ることは期待薄のようです。
そこで、自分レベルで縄文早期初頭の海岸線地理的分布の概要(大局観)を知り、早期初頭から早期後半(縄文海進ピーク)に至る社会変動を考察学習することにします。1年間くらいはかかるプロジェクトになると思います。
雑駁な資料でも、あるとないとでは時間が経てば学習の質が大きく違ってくるにちがいありません。
2 縄文早期初頭の海岸線地理的分布の概略を知る方法
次の二つのデータから縄文早期初頭の海岸線地理的分布の概略を知ることにします。
1 暦年データによる海水面高度変動データ
2 海底地形データ
例えば、ある地方で11500年前(縄文早期初頭)の海水面高度が現在より40m低かったことが第四紀学の成果で判っているとします。
一方現在の海底地形データでマイナス40mの等深線が判りますから、11500年前の陸地は「現在の陸地+マイナス40m等深線より浅い海底」ということになります。
(なお、より正確に言えば、現在の海底地形は11500年前の地形が海進で浸食され、その後海底になってから堆積が進んでいます。11500年前の海岸線は地形としては残っていません。ですからマイナス40m等深線が11500年前の海岸線には該当しません。補正する必要があります。しかし、どの程度補正すべきかは大河川との位置関係などで変動する堆積速度などに関わる専門的検討になります。その検討は自分の手には負えませんので、とりあえずの考古学習でイメージを掴めばよいのですから割愛します。)
3 暦年データによる海水面高度変動データ
日本第四紀学会発行「デジタルブック最新第四紀学」を入手したところ地方別の海水準変化曲線データが掲載されています。このデータを基本として、それより新しいデータが見つかればそれを使うことにします。地殻変動の影響が地方毎に異なるので、過去の海水面高度は地方毎に検討する必要がありそうです。
日本第四紀学会発行「デジタルブック最新第四紀学」掲載の海水準変化曲線データの例
4 海底地形データ
全世界海底高度の1分刻み(約1.8㎞)メッシュデータをNOAA national centers for environmental informationサイトからダウンロードできます。
大雑把な情報ですが列島に限定することなく海底の様子を知ることができるので便利です。
NOAA提供データの表示例 QGISによる 0m~-40m、-40m~-100m表示
NOAA提供データによる予察的検討例
列島付近の500mメッシュデータは日本海洋データセンターからダウンロードできます。
列島付近の500mメッシュ水深データの整備状況 日本海洋データセンターから引用
5 縄文早期初頭の海岸線地理的分布概略図の作成
今後3と4のデータにより検討遺跡毎に縄文早期初頭海岸線地理的分布概略図を作成して遺跡考察を深めたいと思います。
例えば、縄文早期前半(例えば井草式、夏島式、稲荷台式など)の遺跡・貝塚について、生業の状況や回帰的定住の様子などを考える場合、その当時の海岸線地理的分布を知ることが必須です。
千葉県の井草式遺跡の遺跡考察にはその当時の海岸線分布を知ることが必須ですが、これまでは「最終氷期海岸線概略位置」を代用品として使ってました。
井草式期遺跡考察に代用品として使った「最終氷期海岸線概略位置」
これからの考察では最終氷期海岸線概略位置ではなく縄文早期初頭頃海岸線概略位置を思考の補助として使えるようにします。
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6 参考 日本第四紀学会発行「デジタルブック最新第四紀学」
日本第四紀学会発行「デジタルブック最新第四紀学」(2013年、第2刷)
日本第四紀学会より価格1000円で購入しました。約2400ページでカラー図版多数のDVD資料です。最近の第四紀学確認には最良の資料です。
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