2023年6月8日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 早期・前期土器17点3D分布モデルの作成

 The Northern Slope Shell Layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound  Creation of 17-point 3D distribution model of earliest and early pottery


I obtained the 3D coordinates of 17 earliest and early pottery from the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound by perusing the excavation research ledger (distribution map of artifacts, inventory of artifacts). I viewed it in Blender3D space and did a preliminary study. This 3D coordinate is information not available from excavation reports.


発掘調査原簿(遺物分布図、遺物台帳)を閲覧して有吉北貝塚北斜面貝層の早期土器・前期土器17点の3D座標を取得してBlender3D空間で表示し、予備検討しました。この3D座標は発掘調査報告書からは得られない情報です。

1 早期土器・前期土器の3D座標取得

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した早期土器・前期土器はそれぞれ4点、24点あります。この合計28点土器の3D座標を知るために関連する遺物分布図と遺物台帳を閲覧しました。

遺物分布図と遺物台帳から遺物3D座標を取得する方法は次の記事にまとめてあります。

2023.06.01記事「1986年発掘調査原簿を閲覧して出土遺物の3D空間座標を復元する

遺物台帳を見ると「土器一括」して記載されていて座標記載のないものがあり、結局早期土器1点、前期土器16点合計17点の3D座標を取得することができました。


早期土器・前期土器の3D座標情報の有無


結果として得られた早期土器・前期土器の3D座標情報

この早期土器・前期土器17点をBlender3D空間にプロットしました。

2 有吉北貝塚北斜面貝層 早期・前期土器17点3D分布モデル(注記付)

有吉北貝塚北斜面貝層 早期・前期土器17点3D分布モデル(注記付)

早期土器1点…赤CUBE

前期土器16点…青CUBE

早期土器・前期土器の3D座標は千葉県教育委員会所蔵有吉北貝塚北斜面貝層遺物分布図及び遺物台帳から取得

ガリー侵食地形面3Dモデルは貝層断面図等から作成

貝層断面図、貝層平面図は発掘調査報告書から塗色引用

剥ぎ取り断面図は展示物3Dモデル及び上守秀明氏提供画像から構成

注記

No.1,Ⅱ-50 129,前期土器,土器番号158

No.2,Ⅱ-20 497,前期土器,土器番号114

No.3,Ⅱ-60 387,前期土器,土器番号94

No.4,Ⅱ-21 9,前期土器,土器番号36

No.5,Ⅱ-32 15,前期土器,土器番号22

No.6,Ⅱ-32 1,前期土器,土器番号145

No.7,Ⅱ-48 896,前期土器,土器番号160

No.8,Ⅱ-58 525,前期土器,土器番号32

No.9,Ⅱ-49 690,前期土器,土器番号112

No.10,Ⅲ-40 1531,前期土器,土器番号50

No.11,Ⅲ-62 317,前期土器,土器番号140

No.12,Ⅲ-52 689,前期土器,土器番号86

No.13,Ⅲ-53 355,早期土器,土器番号41

No.14,Ⅲ-64 171,前期土器,土器番号51

No.15,Ⅲ-74 126,前期土器,土器番号69

No.16,Ⅲ-75 33,前期土器,土器番号35

No.17,Ⅳ-18 140,前期土器,土器番号78


有吉北貝塚北斜面貝層 早期・前期土器17点3D分布モデルの画像1


有吉北貝塚北斜面貝層 早期・前期土器17点3D分布モデルの画像2


有吉北貝塚北斜面貝層 早期・前期土器17点3D分布モデルの動画

3 予備検討

3Dモデルの注記No.を使って予備検討しました。

No.1~4はガリー侵食地形谷頭部の急斜面から出土した前期土器です。No.3はガリー侵食地形面より下に位置しています。ガリー侵食地形面は中期土器出土標高を参考に推定しましたので、No.3は中期土器より下に位置していて、中期土器投棄より以前の時期に投棄された可能性があります。

なお、出土遺物がガリー侵食地形面より下から出土するように表現されることは適切ではありませんから、出土遺物が全てガリー侵食地形面より上から出土するようにガリー侵食地形面を作り直す必要があります。

No.5と6は尾根部(鞍部)近くの貝層が途切れる付近から出土しています。この場所には土器出土はほとんどありません。場所的に中期土器投棄活動と関連付けて考えることが困難な場所ですから、中期土器投棄以前に投棄された可能性を考えることができます。

No.7は貝層の上部から出土していますから、左岸上部から投棄された土器が二次的に流動したものと考えます。

No.8は貝層最下部(ガリー侵食地形面直上)から出土しています。中期土器より以前にこの場所に流れ着いた可能性があります。

No.9と10は斜面貝層がつくられる前の「崩落土砂」関連の貝層から出土しているように観察できます。

No.11は貝層最上部から出土していて二次的に流動したもとの考えます。

No.12は貝層中部から出土していて二次的に流動したものと考えます。

No.13~16は貝層が分布しない場所の土層から出土していて、その標高は中峠式土器などより高い場所に位置していることから、二次的に流動したものと考えます。

No.17は想定したガリー侵食地形面よりかなり深い場所から出土していて、この付近の(私が考えた)ガリー侵食地形面想定が間違っていることを示唆しているように感じます。

●予備検討のまとめ

前期土器のうちNo.3、5、6、8、9、10は加曽利EⅡ式土器大量投棄よりも以前にこの場所に持ち込まれた可能性を排除できないことを確認しました。

今後、これらの土器が加曽利EⅡ式土器大量投棄よりも以前にこの場所に持ち込まれた確実な証拠が得られるのか、さらには縄文前期に持ち込まれたものがあるのか、検討を深めることにします。

ガリー侵食地形面3Dモデルは谷頭部と下流出口部では断面図が無いため加曽利EⅡ式土器3Dモデル分布と平面図等から想定で作成しました。しかし、早期土器・前期土器3D分布からその想定の甘さが図らずも露呈しました。今後次のような方向で作成し直すことを目指すことととします。

・谷頭部…出土全遺物の3D座標を調査する機会を得て、その結果と整合する地形面想定を行う。

・下流出口部…出土全遺物の3D座標を調査する機会を得て、その結果を踏まえて、地形面想定が不可能な場所を特定して、その場所の地形面を削除する(表現しない)。

・ガリー侵食地形面とそれ以外の一般地形面を色分けして、ガリー侵食地形面の範囲を明確にする。


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