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2023年12月17日日曜日

大膳野南貝塚後期集落の竪穴住居床構造、炉構造

 Pit dwelling floor structure and furnace structure of the late Daizenno Minami Shell Mound settlement


For the past two weeks, I have concentrated on studying at Daizenno Minami Shell Mound. I considered the pit dwellings of late settlements to be divided into whether or not stucco was excavated. As a result, significant differences were found in the floor structure and furnace structure, indicating that the quality of the not-stucco-pit-dwelling was low.


この2週間、大膳野南貝塚学習に集中しました。後期集落竪穴住居を漆喰出土有無で分けると、床構造と炉構造に顕著な違いが見つかり、漆喰出土無住居の品質が低いことが判りました。


大膳野南貝塚中期末~後期集落の竪穴住居には漆喰が出土するものと、出土しないものがあります。その違いが何を意味するのか興味があり、集中的に発掘調査報告書情報を精査した結果の一部です。

以下漆喰出土のある竪穴住居を竪穴住居漆喰【有】、漆喰出土のない竪穴住居を竪穴住居漆喰【無】と呼びます。

1 床構造


竪穴住居 床の種類

床の種類はローム層直床、ブロック貼床、漆喰貼床の3種のいずれかになります。

ローム層直床→ブロック貼床→漆喰貼床の順に、住居施設として高機能で高品質になります。


漆喰出土有無別床種類集計

漆喰出土有無別に集計すると、竪穴住居漆喰【無】は全てローム層直床となります。一方竪穴住居漆喰【有】にはブロック貼床10軒(29%)、漆喰貼床4軒(11%)が含まれます。竪穴住居漆喰【有】の方が住居性能のレベルが高かったことが判ります。


漆喰出土有無別床種類分布

2 炉構造


屋内炉の模式的理解

屋内炉は竪穴住居漆喰【無】では火床面、地床炉、土器片囲い炉が見られます。竪穴住居漆喰【有】では漆喰炉、土器片囲い漆喰炉が見られます。それら5つの炉種類は図解で示す通りの方向で高機能、高品質になります。

機能・品質の判断は次のように考えました。

土器を安定的に設置する機能が火床面→地床炉→土器片囲い炉の順に強化される。

土器を安定させる際の使い勝手が地床炉→漆喰炉、土器片囲い炉→土器片囲い漆喰炉で良くなる。


漆喰出土有無別炉種類集計

竪穴住居漆喰【無】では炉という構造がみられない火床面が13軒(25%)見られます。高機能の土器片囲い炉は4軒(8%)に過ぎません。一方、竪穴住居漆喰【有】では高機能・高品質の土器片囲い漆喰炉が18軒(47%)になります。炉構造という点からみると、竪穴住居漆喰【有】の方が竪穴住居漆喰【無】よりもはるかに住居性能レベルが高かったことが判ります。


漆喰出土有無別炉種類分布

3 メモ

竪穴住居漆喰【有】は漁労民の定住住居であることは疑いようがありません。

そして、床構造、炉構造からみると、竪穴住居漆喰【無】は竪穴住居漆喰【有】と比べて住居性能が格段に劣ることが判りました。この情報は竪穴住居漆喰有無の違いの意義を考える上で、重要なエビデンスになると考えます。

次の記事で、漆喰出土有無別に出土物について見てみます。


2023年12月2日土曜日

大膳野南貝塚後期集落の盛衰と漆喰

 The rise and fall of the late Daizenno Minami Shell Mound settlement and its stuccorwork


The rise and fall of the late Daizenno Minami Shell Mound settlement and its relationship with stucco.

I organized QGIS into tools by time period. It started out as a non-fishing village in the Kasori E IV period, developed greatly as a fishing village in the Horinouchi I period, and ended as a non-fishing village in the Kasori B2 period.


大膳野南貝塚後期集落の盛衰と漆喰との関係をQGISをツールに時期別に整理しました。加曽利EⅣ式期に非漁労集落として出発して、堀之内1式期に漁労集落として大発展し、加曽利B2式期には非漁労集落として終焉します。

1 時期別竪穴住居・土坑からみた大膳野南貝塚中期末~後期集落の盛衰

1-1 加曽利EⅣ式、加曽利E式Ⅳ式~称名寺式


加曽利EⅣ式、加曽利E式Ⅳ式~称名寺式

加曽利EⅣ式期、加曽利E式Ⅳ式~称名寺式期の竪穴住居から漆喰炉や漆喰貼床は検出されていません。貝層が検出される土坑があるので、漁労が全く行われていなかったとは言えませんが、漁労が生業の中でメインでなかったと言えます。

竪穴住居分布が散漫であり、その様子は中期大規模貝塚崩壊後の小集落分散居住の様子と整合します。

1-2 称名寺式、称名寺式~堀之内1式古


称名寺式、称名寺式~堀之内1式古

竪穴住居は全て漆喰が検出されます。竪穴住居の位置は北斜面貝層と南斜面貝層に存在していて、これらの竪穴住居は大膳野南貝塚後期漁労集落の始祖といえる家族が居住したものであると想定できます。

称名寺式期に大膳野南貝塚集落の漁労活動が軌道に乗り、豊かな海産物を入手加工する条件や技術が確立し、漆喰文化がスタートしました。

1-3 堀之内1式


堀之内1式

竪穴住居は急増します。集落は堀之内1式期がピークとなります。竪穴住居漆喰【有】と匹敵する数の竪穴住居漆喰【無】が伴います。

海産物入手加工により大膳野南貝塚集落が地域の生産拠点となり、人口急増現象が生じたと理解します。漆喰文化が花開きました。

竪穴住居漆喰【有】は集落定住民の住居であると考えます。竪穴住居漆喰【無】は集落定住民と交易したり、各種サービスを提供する周辺地域住民の一時逗留施設などであったと想定します。

竪穴住居漆喰【無】の意義について、さらに検討を深めることにします。

竪穴住居漆喰【有】と土坑貝層【有】の分布は略環形となり、環形ゾーンを構成します。竪穴住居漆喰【無】と土坑貝層【無】の分布はこの漆喰・貝層環形ゾーンの内側と外側に分かれて分布するように大勢観察できます。


(参考)堀之内1式+後期

発掘調査報告書では縄文後期竪穴住居とされたもののほとんどは堀之内1式のものであると想定されるとしています。そこで、堀之内1式+後期の集落分布図を作成しました。この分布図が集落ピークの堀之内1式期集落のイメージにより近いものと考えます。

1-4 堀之内2式、堀之内2式~加曽利B1式


堀之内2式、堀之内2式~加曽利B1式

竪穴住居漆喰【有】と竪穴住居漆喰【無】が並立します。竪穴住居漆喰【無】には規模の大きなものが見られます。前の時期とくらべて漁労が衰退し、一方漁労ではない生業で生活する家族が生活していたことを想像できます。

1-5 加曽利B1式、加曽利B1式~B2式


加曽利B1式、加曽利B1式~B2式

竪穴住居は竪穴住居漆喰【無】だけです。土坑に貝層検出するものがありますから、漁労がゼロであったことはないと思いますが、集落家族は漁労以外の生業で暮らしていたと想定します。加曽利B2式期に集落は終焉した考えます。

2 メモ

集落が漁労をメインに大発展した堀之内1式期の竪穴住居漆喰【無】の意義について検討を深めることにします。竪穴住居漆喰【有】が存在する漆喰・貝層ゾーンと竪穴住居漆喰【無】が空間的に弁別されることは明白ですから、当時の縄文人も竪穴住居漆喰【有】と竪穴住居漆喰【無】の意味差異については強い弁別意識を持っていたに違いありません。


2018年2月28日水曜日

竪穴住居重複の様子 大膳野南貝塚後期集落

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 33

2018.02.27記事「新発見 貝塚における異なる生業2集団の共存 大膳野南貝塚後期集落」で生業が異なる2集団共存の根拠事象の1つに竪穴住居重複の様子をあげました。
これまで竪穴住居重複の詳しい検討はしてこなかったので、この記事でデータを分析します。

1 竪穴住居重複の様子

重複の様子 1
竪穴住居93軒のうち1軒と重複するものが22、2軒と重複するものが20、3軒4軒と重複するものがそれぞれ3となり、合計48軒(52%)が重複します。
他遺跡の同じようなデータを知りませんのでこの数値の専門的な評価はできませんが、大変混みあった集落であったことは確実です。祖先が廃絶祭祀を行った竪穴住居の存在を知りながら、かつ廃屋墓であることも知りながら、出来るだけそれらを避けながら、しかしかなり大胆にそれらを切って(重複させて)新たな竪穴住居を建設しています。

重複の様子 2
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居ではそれぞれだけで重複するものが18、13と多く、混在するものは17となります。漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居が混在する重複竪穴住居は重複竪穴住居の35%にすぎません。
この事実は漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族が別集団であり、異集団の廃絶竪穴住居は侵さないという不文律があったに違いありません。両者の緊張をはらんだ関係が存在していたを物語っていると考えます。

2 竪穴住居重複の分布

竪穴住居重複の分布
漆喰貝層有竪穴住居どうしの重複および漆喰貝層無竪穴住居どうしの重複がそれぞれ特定域に固まっていて、漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族がそれぞれ異なる別集団に属していたと想定することを支持する分布図となっています。
一方、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居が混在して重複する域の存在は両者の関係が敵対に至るような排他性ではなかったことを示していて、両者の間に一定の交流(婚姻等)があったことを物語っていると考えます。