2020年2月17日月曜日

称名寺式土器黒変部の観察と考察

縄文土器学習 348

作成した3DモデルからGigaMesh Software Frameworkにより外面・内面の展開写真ができるようになりました。これによりこの記事の黒変部観察考察が可能となりました。観察・分析用の道具(GigaMesh Software Framework)利用は自分にとって極めて大きな学習加速因子です。GigaMesh Software Frameworkの作者及び日本における紹介者に感謝、感謝です。

1 称名寺式土器の展開写真

称名寺式土器の外面
2段の模様付近に特段に黒い部分が存在しています。2段の模様より下の胴下部は比熱により赤化(白化)しています。

称名寺式土器の内面 (左右反転表示)
胴下部の深黒の部分は照明(天井蛍光灯)の影響です。
胴下部の青灰色部分はおこげであると観察しました。そのおこげが胴上部にも舌状に伸びている部分があります。

2 外面黒変部とおこげの対応状況
外面黒変部とおこげの対応状況を観察しました。

外面黒変部とおこげの対応
外面の特段に黒い部分をa、b、cとして抽出しました。aとcは黒光りしていますが、bは鈍い黒であり、aとcは同じ成因、bは別の成因のように感じました。
aは内面性青灰色fとhに対応するようです。
bは内面に対応するモノは無いようです。
cは内面に青灰色の上部出っ張りgに対応するようです。

以上の観察からaとcは内面のおこげに対応していて、土器の利用(被熱)により生じた黒変であると考えました。
なお、aは土器正面でありcはその対向位置にあることは着目すべき事柄です。
bは内面に対応するものがないので土器製作に際してできた黒変のようです。

3 考察
土器外面黒変と土器内面おこげの対応を次のように解釈しました。

土器外面黒変と土器内面おこげの対応考察
ア 土器正立による通常調理
土器を正立させた通常調理により外面胴部下部の赤化(白化)と内面におこげ付着が生まれると考えます。
イ 土器正面を下にした横置によるミニ調理
土器正面を手前(下)にして横置して土器上部を利用した熾火によるミニ調理(白湯、煎じ茶など)が行われたと推測します。
土器自体が熱くなっているとき、横置した土器内面に水を垂らせばお湯になり、煎じ茶をつくることも可能であったと考えます。熾火による食後のティータイムが考えられます。
内面ドーナッツ状黒変部はおこげというしっかりとした物的事象ではなく、茶渋のような事象であると考えます。

参考 土器内面の上部に広がるドーナッツ状黒変部 茶渋か?

ウ 土器正面を上にした横置による空焚き
縄文土器は調理後空焚きして有機物を炭化することによってカビ発生を防止していたと考えられます。その際土器正面を上にしたので、その対向位置付近内面におこげが土器上部まで広がったと考えます。

参考 土器内面上部に広がるおこげのような青灰~黒変部

この記事で特に参考とした図書
小林正史(2017):モノと技術の古代史 陶芸編(吉川弘文館) 

2020年2月16日日曜日

称名寺式土器の内外器壁デコボコ分析

縄文土器学習 347

加曽利貝塚博物館から許可をいただいて撮影・3Dモデル作成した称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡)の内外器壁デコボコ分析をしました。

1 分析の趣旨
器壁外面に深くかつ幅広に刻まれた沈線が器壁内面整形にどのような影響を与えているかという事実を知ろうという趣旨です。
具体的には次の記述を確かめようという趣旨です。
「沈線は何度もなぞられ、他の後期の土器に比べて幅が広く、かつ深いことが多い。そのため器壁の薄いものでは、沈線の裏の部分が盛り上がっていることがある。」(日本土器事典の称名寺式土器記述)2019.05.14記事「称名寺式土器 餅ヶ崎遺跡

2 3Dモデル切断断面による観察

称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡) 切断3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.27
許可:加曽利貝塚博物館の許可により全周多視点撮影及び3Dモデル公表
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 93 images

切断3Dモデルによる断面形を詳しく観察すると、口唇部と上部模様帯の境をなす2本の周回沈線に対応する器壁内面は凹部になっています。
一方上部模様帯と下部模様帯の境をなす2本の周回沈線に対応する器壁内面のデコボコは明瞭ではありませんが凸部であるように観察できます。

J字文(逆J字文)及び+文沈線は内面ではそれに対応するデコボコはほとんど観察できません。

3 GigaMesh Software Frameworkで作成した展開ソリッドモデルによる分析
GigaMesh Software Frameworkにより3Dモデルを展開したソリッドモデルを器壁内外面について作成し、その対応を観察しました。

GigaMesh Software Frameworkにより作成した器壁外面ソリッドモデル(左右反転)
Photoshopでデコボコを強調表示。

GigaMesh Software Frameworkにより作成した器壁内面ソリッドモデル
Photoshopでデコボコを強調表示。

上部周回2本沈線は内面では凹部周回に、下部周回2本沈線は内面では凸部周回に対応していることが観察できます。

上部周回2本沈線及び下部周回2本沈線の内面デコボコ対応

4 考察
切断3Dモデルとソリッドモデルによる分析から、この土器については次の事実を観察することができました。
ア 上部周回2本沈線は内面では凹部周回になっている。
イ 下部周回2本沈線は内面では凸部周回になっている。
ウ J字文(逆J字文)及び+文は内面デコボコとして表現されていない。
この観察事実から、この土器が次のように作成されたと考えます。
ア 上部周回2本沈線が道具で刻まれたとき、内面ではその部分が圧力により凸部になった。その後内面を平に整形するために手で周回してこすった。その際粘土が薄い部分は強い力のため逆に凹んだ。
イ 下部周回2本沈線が道具で刻まれたとき、内面のその部分は凸部になった。その後内面を手でこすって整形したが、手を深く伸ばして作業するため力の加わり方が弱く、上部のように逆に凹むほどのことは無かった。
ウ J字文(逆J字文)及び+文は、手で内面を周回してこする作業に対して沈線が直になっている部分が多く、凸部が適切に修正され平滑化した。

結論として次のように考えます。
これだけ深く広い沈線をつくると器壁が薄くなり、圧力で内面が凸部になる。
内面が各所で凸部になったのでその修正作業(平滑化作業)が必須となった。
修正作業では土器内面上部では作業しやすく、強い力で作業できるため薄い粘土が逆に凹んだ。
土器内面下部では作業しにくいため弱い力となり、薄い粘土が逆に凹むほどのことは無かった。

2020年2月15日土曜日

許可撮影 称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡)観察記録3Dモデル

縄文土器学習 346

加曽利貝塚博物館から許可をいただき、常設展展示土器である称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡)の周回多視点撮影を行い観察記録3Dモデルを作成しましたので検討します。

1 称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡)に関する問題意識と3Dモデル作成
加曽利貝塚博物館常設展展示の称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡)については、昨年の加納実先生講演で興味深いお話を聞きし、興味を持ちました。また展示観察によりすでに何回か記事にし、3Dモデルも2回ほど作成してます。
2019.02.17記事「加納実先生講演「縄文時代中期終末から後期初頭の様相」学習メモ
2019.05.14記事「称名寺式土器 餅ヶ崎遺跡
こうした興味のなかで、展示土器の沈線が特段に深く、その影響が土器内面にデコボコとして反映されているのではないだろうかという見立てをしました。
しかしガラス越し撮影による3Dモデルではその観察を十分にすることができませんでした。
そこでこの土器を机の上に置き周回多視点撮影して難の少ない3Dモデルを作成し、沈線と土器内面のデコボコの関係を精細に検討することを決意しました。
加曽利貝塚博物館に土器閲覧申請したところ、その許可を得て撮影が12月末に実現しました。さらに作成した3DモデルからGigaMesh Software Frameworkによる展開写真作成等が可能となり問題意識に関する解明が進みだしましたので、その内容をメモすることにします。

2 3Dモデル
次のとおり土器外面すべて(ただし底部は除く)と内面全てを3Dモデルにすることができました。3Dモデルとしての出来ばえは優良なものとなりました。


称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ先遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.27
許可:加曽利貝塚博物館の許可により全周多視点撮影及び3Dモデル公表
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 93 images

撮影写真の1枚

カメラ位置図

3 展開図作成
GigaMesh Software Frameworkにより3Dモデルの展開写真を外面、内面について作成しました。

土器外面展開写真

土器内面展開写真
(視点は土器内部に存在するので外面展開写真と左右が逆になっています。)

4 沈線文様の抽出
深く広い沈線を外面展開写真でトレースしました。

沈線トレース図
深く広い沈線で囲まれたJ字(逆J字)模様や+模様が浮かび上がります。この模様には縄文が施されています。つまり縄文が図として利用されています。称名寺式土器以前は縄文は地として利用されてきましたからデザイン面における大きな逆転が称名寺式土器で行われたといわれています。
また2段構成文様の上段の+模様の一つの両端が跳ね上がり他の+模様と差別的に描かれています。この差別からこの土器の正面は両端跳ね上がり+模様のところであると推察します。

土器正面の推察
J字(逆J字)模様は植物の芽を、+模様は植物の葉を連想しました。

次の記事でこの沈線模様が土器内面凹凸に影響しているかどうか検討します。

長野県立歴史館縄文土器コーナーの観覧

縄文土器学習 345

長野県立歴史館の縄文土器コーナーを観覧しました。
入り口に草創期土器等4点、メインショーケースには中期のものを主として10数点が展示されています。同時に土偶、土製品が多数展示されています。

縄文土器展示

縄文土器展示

土偶展示

縄文土器は千葉県ではあまり見かけない派手な模様・器形のものもあります。
向学のため全土器について3Dモデル用撮影を行いました。ショーケースのガラスが一部だけであり、上方空間が開放されているためガラス面反射が少なく良好な写真が撮れました。3Dモデルに実寸法を付加するためにスケールをショーケース手前に置いて撮影しました。2時間ほどの観覧・撮影で、気が付いてみると1100シャッター(ブラケット撮影によりJPEGファイル数6600)撮影していました。

なお売店で先日まで開催されていた特別企画土偶展の解説図書(223ページカラー)を入手しました。

特別企画土偶展解説図書
帰りがけ車中でこの解説図書を読んでいると、先ほど観覧した土偶コーナーの中の人面土版に女性器が表現されていることを知りました。
この人面土版はそれだけを対象にして3Dモデル用撮影をしましたので、追って詳しく検討することにします。千葉市埋蔵文化財調査センターで観覧した人面付土版は髭があるので男だと説明されていました。
2020.02.05記事「人面付土版 観察記録3Dモデル
人面土版に男女それぞれがあるとすれば、どのように土版を考えていくことになるのか、興味がドンドン深まります。

この解説図書はこれまでに尖石縄文考古館等で観覧した土偶についても新たな詳しい解説があり、とても参考になります。さらに縄文土偶から弥生時代のヒトガタ、奈良時代の木製ヒトガタに至る系譜までも解説しています。狭い視野の専門説明ではなく、遠大な文化的視野から縄文土偶が語られています。とても素晴らしい図書です。

おかげで過去に学習した印西市西根遺跡奈良平安時代ヒトガタがはるか遠い縄文時代土偶から延々と受け継がれてきた文化であるという認識を持つことができました。
2016.03.06記事「西根遺跡出土馬形・人形の意義

長野県立歴史館縄文土器コーナー観覧はまことに意義深いものとなりました。

2020年2月11日火曜日

「加曽利EⅡ式土器らしさ」の評価

縄文土器学習 344

加曽利EⅠ式土器8点の観察の学習締めくくりとして2020.01.27記事「「加曽利EⅠ式土器らしさ」の評価」を書きました。
同様に加曽利EⅡ式土器23点観察の学習総括として「加曽利EⅡ式土器らしさ」を評価してみます。評価と称する知的遊戯をすることにより加曽利EⅡ式土器観察体験を少しでも頭に定着させることにします。

1 「加曽利EⅡ式土器らしさ」について
もっとも加曽利EⅡ式土器らしい土器、EⅡ式土器の理想形として「H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.9加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器(有吉北貝塚)」を設定することにします。

H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.9加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器(有吉北貝塚)

H30年度加曽利E式企画展(千葉市内編) No.9加曽利EⅡ式連結渦巻文対向土器(有吉北貝塚) 実測図
発掘調査報告書から引用

この土器の特徴は加曽利貝塚博物館の資料で説明される加曽利EⅡ式土器の特徴を備え、パンフレットに代表例として採用されています。

「加曽利EⅡ式土器らしさ」はこの土器の特徴に似ているか似ていないかという視点で評価することにします。

2 評価の指標と評点
評価は次の指標による評点の合計値で行うことにします。評点10点は最も「加曽利EⅡ式土器らしい」とし、評点が下がるにしたがって「加曽利EⅡ式土器らしい」程度が減じると考えます。
……………………………………………………………………
●評価指標と評点
・器形
1 キャリパー形
ラッパ形 0点
キャリパー形 1点
2 胴部ふくらみ
胴部ふくらみ無 0点
胴部ふくらみ有 1点
3 口唇部の独立
口唇部が独立しないもの 0点
口唇部が独立しているもの 1点
4 口縁部の平坦性
口縁部が波状のもの、把手があるもの 0点
口縁部が平坦なもの 1点

・段構成
5 段構成
1段・3段構成、口縁部を欠いた2段構成 0点
口縁部と胴部の2段構成 1点

・文様
6 渦巻文
口縁部に渦巻文が無いもの 0点
口縁部に渦巻文があるもの 1点
7 区画文・円文
口縁部に区画文・円文が無いもの 0点
口縁部に区画文・円文があるもの 1点
8 磨消懸垂文
胴部に懸垂文、磨消懸垂文のないもの 0点
胴部に懸垂文(磨消無)があるもの 0.5点
胴部に磨消懸垂文があるもの 1点
9 口縁部の強調
縄文の方向が口縁部と胴部で同じもの 0点
縄文の方向が口縁部と胴部で異なるもの 1点
10 連弧文系要素
連弧文系の文様要素を持つもの 0点
連弧文系の文様要素を持たないもの 1点
※連弧文系文様要素…刺突文、波状周回沈線、胴部唐草文(渦巻・棘)
……………………………………………………………………

3 評価の結果
23土器の評点-順位グラフを示すと次のようになります。

加曽利EⅡ式土器らしさ 評点-順位グラフ
10点のものから2点のものまで分布します。
評点の分布は10点~7.5点、6点~4点、3点~2点のものに群的に分布しています。そこでこの区切りで土器を分級し、それぞれA群、B群、C群とします。
この分級は土器の直観的評価分級とよく対応していますので、次のように表現することにします。
A群:加曽利EⅡ式土器本流
B群:連弧文系土器
C群:異系統土器

加曽利EⅡ式土器らしさ 評価分級

この結果を図示すると次のようになります。

加曽利EⅡ式土器らしさ 評価分級 図示

加曽利EⅡ式土器らしさ 評価分級 一覧表

加曽利EⅡ式土器23点を「加曽利EⅡ式土器らしさ」という観点から評価するという知的遊戯を楽しむことができました。

……………………………………………………………………
参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり

2020年2月10日月曜日

加曽利EⅡ式土器観察 企5 波状3段構成土器

縄文土器学習 343

この記事では加曽利博今年度企画展展示土器「加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5」について観察します。(注 「企5」はこのブログにおける整理番号です。)

31 R元年度加曽利E式企画展(印旛地域編) 加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5
31-1 展示状況写真

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5

31-2 3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5 観察記録3Dモデル 
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」 
撮影月日:2019.11.19 
整理番号:企5 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 69 images

31-3 展開写真

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市坂戸念仏塚西遺跡)企5 展開写真
3DモデルからGigaMesh Software Frameworkで作成

31-4 観察
器形観察
・キャリパー形をしています。
・4単位波状口縁となっています。
・口唇部は口縁部から独立しています。
・胴部ふくらみの存否は下部欠如のため確認できませんが、無いように感じられます。
段構成観察
・口縁部、頸部、胴部の3段構成のように観察できます。
文様観察
・4単位波状口縁の頂部に対応して口縁部に渦巻文が設置されています。
・口縁部は渦巻文、円文、楕円文の組み合わせで構成されています。
・頸部は2本沈線が波状に土器を周回します。
・頸部と胴部の間は3本の周回沈線で境されます。
・胴部は3本直線沈線垂下で(おそらく)4区画に区分され、それぞれに唐草模様風の文様が沈線で描かれています。観察できる3区画のうち2区画は同じ文様で1区画はすこし異なります。
・2本沈線の間に磨消が見られます。磨消が不十分なところも見られます。

文様の様子

31-5 感想
・「No.16 2段構成連弧文土器(荒屋敷貝塚)」(2020.01.29記事「加曽利EⅡ式土器の観察 その2」)の文様と頸部・胴部文様が似ています。この土器は連弧文土器の影響を強く受けているものと感じます。

参考 No.16 2段構成連弧文土器(荒屋敷貝塚)
・キャリパー形、口縁部の渦巻文及び連弧文土器の影響を色濃く受けていることなどから、この土器は加曽利EⅡ式土器に判別されていると考えます。

……………………………………………………………………
参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり

加曽利EⅡ式土器観察 企6 渦巻文区画文土器

縄文土器学習 342

この記事では加曽利博今年度企画展展示土器「加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市神門房下遺跡D地点)企6」について観察します。(注 「企6」はこのブログにおける整理番号です。)

30 R元年度加曽利E式企画展(印旛地域編) 加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市神門房下遺跡D地点)企6
30-1 展示状況写真

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市神門房下遺跡D地点)企6

30-2 3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市神門房下遺跡D地点)企6 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」
撮影月日:2019.11.19
整理番号:企6
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 69 images

30-3 展開写真

加曽利EⅡ式深鉢(佐倉市神門房下遺跡D地点)企6 展開写真
3DモデルからGigaMesh Software Frameworkで作成

30-4 観察
器形観察
・キャリパー形をしています。
・口唇部は口縁部から独立しています。
・土器下部欠落のため胴部下部に想定されるふくらみの存否や程度は不明です。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成と考えられます。
文様観察
・口縁部は渦巻文と楕円区画文から構成されています。2つの渦巻文がつながり、それが楕円区画文を支えているように見える個所が特徴的です。
・胴部は3本の直線沈線垂下と2本波動沈線垂下の繰り返しの文様となっています。沈線の間には磨消は無いようです。
・口縁部と胴部の縄文の方向は同じです。

文様構成

30-5 感想
・キャリパー形、口縁部渦巻文、沈線の垂下などから加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。
・波動沈線が垂下することと直線沈線垂下に磨消が見られないことから加曽利EⅡ式土器の最盛期より古いものにあたると考えます。

……………………………………………………………………
参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり

2020年2月9日日曜日

GigaMesh Software Frameworkによる縄文遺物の効率的距離計測

縄文土器学習 341

縄文遺物3Dモデルの作成とそれに対する実寸法付与を3DF Zephyr Liteで行うこうとができるようになりました。
ブログ花見川流域を歩く番外編2020.02.06記事「3Dモデルに実寸法を付与する方法(3DF Zephyr Lite)
ただし、3DF Zephyr Liteで遺物の距離計測を行うことは可能ですが、操作性が極めて劣悪で事実上使えません。
ブログ花見川流域を歩く番外編2020.02.06記事「縄文遺物3Dモデルの距離測定初体験
そこで土器や土器片等を主対象とする考古遺物専門分析ソフトGigaMesh Software Frameworkで遺物の距離計測をしてみました。大変効率的かつ快適に距離を計測できましたのでその体験をメモします。

1 計測例3Dモデル
3DF Zephyr Liteで3Dモデルを作成し、実寸法を付与した人面付土版(千葉市内野第1遺跡)を計測例としました。

人面付土版(千葉市内野第1遺跡) 観察記録3Dモデルその2
縄文時代晩期前葉(約3300年前)
撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター
撮影月日:2020.02.04
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 63 images

2 3DモデルのGigaMesh Software Frameworkへの投入と背景平面の設定
3DモデルをGigaMesh Software Frameworkに投入して背景平面に対する遺物の位置を設定します(正面の設定)。その際キーボードで1度単位あるいは90度単位で回転させることができます。キーボードを画面に表示させることもできます。(ただし画面キーボードは操作できません。)

画面に表示したキーボード
一度設定した正面はいつでもそのデフォルト位置に遺物を戻すことができますから便利です。
なお、特筆すべきは背景平面のグリッドは3Dモデル実寸法単位になっていることです。この例ではグリッドが1㎝方眼となっています。このグリッドを利用して画像内の任意地点距離(平面投影距離)をPhotoshop等で計測することも可能です。

3 2点間距離測定
遺物の2点間距離(ユークリッド距離)測定の操作性が極めて良好です。

距離測定のための測点設定の様子
遺物を拡大して観察しながら測点を設定することが可能です。いつでも遺物をデフォルト位置に即座に戻すことが可能です。

距離測定のための2点を設定した様子

距離測定結果の表示
縦方向の寸法は16.92㎝という結果になりました。

距離測定結果の表示
横方向の寸法は11.38㎝という結果になりました。

遺物の厚さは1.5㎝~3㎝程度となりました。(3Dモデルの裏側が完成していませんから正確な測定は不可能です。)

なお、土器表面などの曲面における距離計測(接地距離計測)もGigaMesh Software Frameworkで可能です。

4 感想
GigaMesh Software Frameworkは土器や土器片などの考古遺物を主対象にした計測分析ソフトですが、その操作性が極めて良好であり即その虜になりました。
3Dモデル作成と実寸法付与までは3DF Zephyr Liteで行い、3Dモデルの計測分析はGigaMesh Software Frameworkで行うという手順が自分の中で確立しました。

GigaMesh Software Frameworkを開発されたHubert Mara様をはじめとする皆様、GigaMesh Software Frameworkを日本で紹介した奈良文化財研究所金田明大様はじめ文化財方法論研究会の皆様に心から感謝申し上げます。

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GigaMesh Software Frameworkから書き出した人面付土版正面画像

GigaMesh Software Frameworkから書き出した人面付土版左から画像

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追記メモ
GigaMesh Software Frameworkを稼働中にその画面のスクリーンショットを撮るためにAltキー+PrintScreenキーを押したところ、GigaMeshが誤動作(大きな影発生とマウス操作異常)しました。スクリーンショットはPrintScreenキーを押すだけで撮ることにしました。

学習加速資料サイト「縄文土器3Dモデル素材集」の充実

縄文土器学習 340

1 サイト「縄文土器3Dモデル素材集」充実の必要性
Sketchfabにおける3Dモデルコンテンツ掲載が356と多数になりました。

Sketchfab画面 最近掲載コンテンツの様子
縄文草創期から晩期までのかなりの土器型式を網羅するようになりました。また加曽利E式土器だけでも60以上のモデルになり、比較学習がある程度可能な数になりました。
しかし、これだけモデルが増えると「あの土器モデルを見たいけれどもドコダッケ」ということに時間ばかり食ってしまいます。
Sketchfabはもともと原データ格納保存機能を期待しているのですが、それにしてもそのリストが作成出来ていないことは大変不便でした。
しかし、リスト作成方法の端緒が開かれました。
ブログ花見川流域を歩く番外編2020.02.08記事「Sketchfab3Dモデルリスト作成の目途が立つ
そこで、Sketchfab3Dモデルコンテンツリスト作成により原データをデータベース化し、そのデータベースと連携したサイト「縄文土器3Dモデル素材集」で効率的に閲覧利用できるようにします。
Sketchfabで3Dモデルコンテンツを直接閲覧してもよいのですが、リストを置く場所がSketchfabサイト内に作れないことと、日本語検索機能が虚弱で「あの土器モデルはドコダッケ」に十分対応できません。

サイト「縄文土器3Dモデル素材集」画面
注)サイト「縄文土器3Dモデル素材集」はBloggerブログを利用しています。
サイト「縄文土器3Dモデル素材集」は現在のところ記事数が148で作りかけになっています。
このサイトにおける縄文土器3Dモデル閲覧機能を充実させて、縄文土器学習加速の手立てとすることにします。

なお、原データデータベース作成、サイト「縄文土器3Dモデル素材集」作成そのものは学習の目的ではなくあくまでも手段です。従って自分の学習加速促進に資する範囲内で作業をとどめることにし、完結的作業は必ずしも目指さないことにします。

2 Sketchfab3Dモデルコンテンツのデータベース化
2-1 Sketchfab3Dモデルコンテンツへの情報追記
3Dモデルコンテンツへ次の情報を追記します。
●番号
●ブログ「縄文土器3Dモデル素材集」関連記事のURL

2-2 Sketchfabコンテンツリスト作成
次の項目を含む3Dモデルコンテンツリストを作成します。(FileMakerで作成。リストはサイト「縄文土器3Dモデル素材集に掲載」します。)
●番号
●名称
●撮影場所
●撮影月日
●メモ(整理番号、撮影要件、3Dモデル諸元等)
●ブログ「縄文土器3Dモデル素材集」のURL

3 サイト「縄文土器3Dモデル素材集」の充実
3-1 ページ作成
次の項目を含む3Dモデルページを作成します。
なお、GigaMesh Software Frameworkにより3Dモデル作成土器は全て展開写真が簡易な手間で作成できるようになったことは特筆すべきことで、ページの利用価値を大いに高めます。
●3Dモデル(Sketchfab画面のはめ込み)
●Sketchfab掲載情報
●撮影写真の一例
●展開写真
●器形測定資料(実寸法、指標値)
●関連ブログ記事URL

展開写真の例

3-2 サイト「縄文土器3Dモデル素材集」索引作成
サイトの索引(リンク)を作成し、サイト内記事にすぐアクセスできるようにします。
同時にSketchfab3Dモデルコンテンツリストも掲載し原データにもアクセスできるようにします。

4 メモ
Sketchfab3Dモデルとその画面はめ込みサイトの作成はあくまでも自分の学習加速用ツールです。
しかし、興味のある方には学術資料性が担保されていないことを前提として、楽しんでいただくことが可能です。

5 参考 縄文土器学習ブログ記事の検索
縄文土器学習記事について「あの記事ドコダッケ」的検索は学習管理ページがとても有効に機能しています。

縄文土器学習全記事のツリー表示

6 参考 千葉県縄文土器形式別出土遺跡分布図
縄文土器形式別に見た千葉県遺跡分布図はサイト「千葉県縄文土器形式別出土遺跡分布図」が学習に役立っています。

サイト「千葉県縄文土器形式別出土遺跡分布図」画面

またサイト「私家版千葉県遺跡DB地図帳」も学習に役立っています。

サイト「私家版千葉県遺跡DB地図帳」画面