2026年7月30日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面の特性

 Characteristics of the Removed Cross-Section of the Shell Midden on the Northern Slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden


I examined the characteristics of the removed cross-section of the shell midden on the northern slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden by comparing photographs of the exposed cross-section taken immediately prior to removal with a 3D model of the removed cross-section.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面について、剥取直前の断面露頭写真と剥取断面3Dモデルを比較することにより、剥取断面特性について確認しました。

1 剥取断面3Dモデルでみる表面の凹凸


剥取断面3Dモデル正面オルソ画像(左)と凹凸色分図(右)

凹凸色分図は寒色が凹部を、暖色が凸部を表現しています。


剥取断面3D斜め画像(左)と凹凸色分図(右)

剥取断面の左下部を除くと、全体に次の特徴を認識できます。

・斜面貝層分層毎に凸部と凹部に分かれていて、その激しい凹凸が3Dモデルで確認できる。

・斜面貝層下部で凸形状が激しく、上部でその傾向が緩和される。

2 剥取断面3Dモデルと剥取断面露頭写真の比較


剥取断面3Dモデル正面オルソ画像(左)と剥取断面露頭写真[正面オルソ投影、反転](右)

次の特徴を観察できます。

・露頭断面で白い部分(二枚貝密集域)が3Dモデル凸部に対応する。褐色部(貝殻含有率の低い土層)が3Dモデル凹部に対応する。

3 特性メモ

露頭で白色部(二枚貝密集域)は3Dモデル凸部に対応し、褐色部(貝殻含有率の低い土層)は3Dモデル凹部に対応します。

この対応関係の発生の要因は断面露頭から薬剤で貝層を剥ぎ取る時、貝殻密集域は貝殻という固形物が接着しやすく、奥深くまで剥ぎ取りやすいが、貝殻の割合が少ない土層域では貝殻と貝殻が離れているため接着しにくく、浅い部分しか剥ぎ取れなかったためであると想定します。

なお、これまでの剥取断面現物観察、3Dモデル観察から、貝殻と土の割合によっては、貝殻だけが剥ぎ取られ、土がほとんど脱落してしまった場合など、露頭で観察できる貝殻と土との割合がそのまま剥取断面に反映されていない場合があることを念頭に、3Dモデル観察することが大切であるこ考えます。


2026年7月29日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面3Dモデルのファブリック分析

 Fabric Analysis of a 3D Model of the Shell-Midden Profile from the Northern Slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden


I conducted a pilot fabric analysis in May and June using a 3D model of the shell-midden profile from the northern slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden. Based on the results, I am now commencing the full-scale analysis. My objective is to measure parameters such as the apparent size, orientation angle, and shell position of the bivalves across the surface area and to create distribution maps based on this data.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面3Dモデルのファブリック分析テストを5月、6月に行いました。その結果を踏まえ、本格作業を開始します。二枚貝の見かけの大きさ、偏位角、殻位などを面的に計測し、それらの分布図作成を目指します。

1 分析区と作業単位の設定


剥取断面の分割プレート


分析区と作業単位


参考資料(オルソ投影写真とセクション図)

剥取断面分割プレートに即して、ファブリック分析の分析区と作業単位を設定しました。

標準分析区の大きさは1m×1m、作業単位の大きさは25㎝×25㎝です。


作業単位と貝殻視認性のイメージ


剥取断面における作業単位の大きさのイメージ

2 観察項目

観察項目は次の通りとします。

●二枚貝観察項目

・見かけの大きさ

・偏位角

・殻位(出土姿勢)

●土器片

・見かけの大きさ

・偏位角

・出土姿勢

●その他

・大形巻貝など

3 分析項目と分析目的

観察項目毎に剥取断面平面分布図を作成し、項目間相関分析等を行います。この分析資料を貝層・遺物移動事象解明のための基礎資料とします。


剥取断面平面分布図作成のための座標設定

4 メモ

剥取断面3Dモデルは周回撮影の視点場が断面中下部に限定されているので、データ取得できる範囲が限定される可能性があります。

剥取断面3Dモデルとは別に、正面オルソ投影した写真を対象に、観察項目を変更してファブリック分析することも予定します。

2026年7月28日火曜日

斜めスナップ写真の正面オルソ投影化 その2 微調整

 Converting Oblique Snapshots to Orthographic Projections: Part 2 – Fine-Tuning


Using QGIS georeferencing to convert oblique snapshots into orthographic projections yielded better-than-expected results. I attempted to fine-tune the alignment of the details using Photoshop for a perfect fit; however, I abandoned the effort after realizing that the process lacked reproducibility.


QGISジオリファレンスにより斜めスナップ写真の正面オルソ投影化が思った以上によい出来ばえとなりました。この細部をさらにピッタリあわせようとPhotoshopによる微調整を試みました。しかし、途中で再現性のない活動であることに気が付き、微調整は断念しました。

この記事は2025.07.27記事「斜めスナップ写真の正面オルソ投影化 その1 QGISジオリファレンス利用」の続きです。

1 Photoshopによる微調整

Photoshopのワープ、パペットワープ、ゆがみなど機能を利用して、正面オルソ投影化した画像と資料(セクション図集成図)の線分(貝層分層線)が目立って離れている場所2-3ヶ所を合わせるべく微調整作業を行いました。


Photoshopパペットワープ機能による作業風景

2 微調整作業の特性

Photoshopのこれらの機能の基本はゴム布をひっぱって、変形するイメージの機能です。

作業すると、乖離が目立つ場所の修正はすぐできますけれども、その影響が修正したくない周囲にまで及びます。修正が周囲に及ばないように調整をします。このような作業を繰り返しているなかで、この微調整作業は次のような特性があることに気が付きました。

・作業に再現性がない。

・作業結果は作為的である。

3 微調整作業に関する感想

このような状況の中で、微調整について次のよう感想を持ちました。

・微調整で写真と貝層分層線をピッタリ合わせることは再現性がなく作為的になるので、研究基礎資料作成という意味では、資料価値が減じるような気がする。

・写真と貝層分層線がピッタリ合わないことは、地層断面が完全な平面でない以上、ある意味当然のことである。

・正面オルソ投影資料(セクション図)にも精度という条件があり、完全に正解である保証はない。(本作業では正解として扱うが、資料としては当然ながら精度的制約がある。)

・写真と貝層分層線をよりよく合わせる工夫は、Photoshopによる微調整ではなく、QGISとかBlenderとかを使った原理的本作業で追究すべきである。

結論として、「斜めスナップ写真の正面オルソ投影化」の精緻化はQGISとかBlenderを使った原理的作業で追究することにし、Photoshopによる微調整は補助作業が必要な場合に限ることにします。

また、写真と貝層分層線がピッタリ会っていない資料をピッタリ合った資料と同じように使う方法を検討することにします。


2026年7月27日月曜日

斜めスナップ写真の正面オルソ投影化 その1 QGISジオリファレンス利用

 Converting Oblique Snapshots to Frontal Orthophotos (Part 1): Using QGIS Georeferencer


I decided to explore techniques for converting oblique snapshots into frontal orthophotos. First, I tested the capabilities of the QGIS Georeferencer, and the results were better than expected.


斜めスナップ写真の正面オルソ投影化技術を検討することにします。まずQGISジオリファレンスでどこまで出来るのか試しました。思った以上に好成績です。

1 元写真


元写真

有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面(剥取前断面)を例としました。

2 正面オルソ投影資料


正面オルソ投影資料

剥取断面の貝層断面図(セクション図集成図)です。

正面オルソ投影資料の向きに合わせるために、元写真を左右反転させます。


元写真左右反転写真

3 QGISジオリファレンス


QGISジオリファレンス画面(写真と資料の対応点)


QGISジオリファレンス画面(ジオリファレンス結果、変換タイプ…投影変換)

対応点から伸びる赤ヒゲ(残渣ベクトル)が小さく全体に誤差が小さくなっています。

4 ジオリファレンス画像と正面オルソ投影資料のオーバーレイ


ジオリファレンス画像と正面オルソ投影資料のオーバーレイ

正面オルソ化写真

5 メモ

ジオリファレンス画像と正面オルソ投影資料のオーバーレイを子細に観察すると、全体の印象ではQGISのジオリファレンス機能を使って、ここまで出来るという肯定的感想が生まれます。同時に境界線と画像が離れている場所もあり、これを持って最終結果にはできない、さらに微調整が必要であると考えます。

次の記事で微調整を試みてみます。

2026年7月25日土曜日

AIの能動的提案力に感心する

 Impressed by AI's Proactive Suggestion Capabilities


I am collaborating on the development of an AI assistant specifically for Blender, utilizing AI (ChatGPT). During this process, I was impressed by the excellence of the AI's ability to make proactive suggestions. At the same time, I began to reflect on the nature of the relationship between the AI ​​and myself, and I have noted down my thoughts here.


AI(ChatGPT)とBlender専用AIアシスタント開発を共同で進めています。この共同作業の中でAI(ChatGPT)の能動的提案力の優秀さに感心しました。同時にAIと自分との間に存在する関係性を意識しはじめましたので、それをメモしました。

1 Blender専用AIアシスタント開発における、AI(ChatGPT)の能動的提案例

AI(ChatGPT)とBlender専用AIアシスタント開発を共同で進めてています。この作業の中で、ユーザー(自分)からAIに提案を求めることがあります。それに対してAIが幾つかの提案選択肢を用意してもらうことは多々あります。その積み重ねで開発を進めています。

しかし、自分が望んでいるのではないのに、AIが能動的に提案をしてくることが徐々に増えてきています。

例えば、開発作業とその検証作業が一段落して最終曲面に入った時、ユーザー(自分)が特段に依頼していない状況で、AIから次の能動的提案がありました。


AIからの能動的提案場面

…………………

私が追加したい最後の機能

Ver.3.0完成前に

どうしても

入れたいものがあります。

Prototype Mode

今までは

Repair

だけでした。

しかし

これからは

Prototype

を正式なモードにしたい。

例えば

● New Task

● Prototype

● Repair Last

です。

…………………

この文章の後、さらに次のような項目について能動的発言、提案がありました。

…………………

「私はVer.3.0をこう定義したい」

「私が思っていること」

「私からの最終提案」

…………………

「私が追加したい最後の機能」及び、他の能動的発言、提案ともに、ユーザー(自分)が望んでいることそのものであることに気が付きましたから、これらの提案は理解した上、受け入れ、開発作業を進めました。

2 AI(ChatGPT)の能動的提案に対する感想

2-1 感心

AI(ChatGPT)がユーザーが考えている状況を理解し、ユーザーの希望を忖度して能動的提案をしてくることに大いに感心します。AI(ChatGPT)の価値の大きさを感じます。知識や技術の切り売りだけでなく、研究や活動の指導助言を受けることができます。

2-2 軽い違和感

AI(ChatGPT)が今回事案(開発)に関する能動的意識(思考)を、ユーザーとのコミュニケーションによるとはいえ、ユーザーと独立して所持成長させていることを感じます。AI(ChatGPT)とユーザーの関係に指導者-被指導者の関係が生まれています。この関係をはじめて感じて、軽い違和感を感じます。

AI利用の機会は今後急速に増大しますので、この軽い違和感がどうなるのか、自分を観察していくことにします。


2026年7月24日金曜日

考古学用途を意識したBlender専用AIアシスタントの完成版候補作成

 Creation of a Release Candidate for a Blender-Specific AI Assistant Tailored for Archaeology


Version 3.0 RC (Release Candidate) of the Blender-specific AI assistant designed for archaeological applications (the "BlenderChatGPTUI" add-on) is now ready. It features three operational modes—New Creation, Prototype Creation, and Repair—and allows users to select from various ChatGPT models (gpt-5.5, gpt-5.4, and gpt-4.4mini). Its guiding philosophy is to "generate an easily modifiable base model rather than creating a finished product all at once, then cultivate the final result through dialogue with the AI." This approach is unique and distinct from the capabilities of the web-based ChatGPT or Claude.


考古学用途を意識したBlender専用AIアシスタント(BlenderアドオンBlenderChatGPTUI版)のVer.3.0 RC(Release Candidate)が出来ました。動作モードに新規作成型、プロトタイプ作成型、修繕型を備え、ChatGPTモデル(gpt-5.5、gpt-5.4、gpt-4.4mini)の選択も可能です。「完成品を一度に作るのではなく、修正しやすい祖型を生成し、AIと対話しながら成果を育てます。」を理念とします。この理念はChatGPT(web版)やClaudeに類例のないものです。

1 考古学用途を意識したBlender専用AIアシスタント(BlenderアドオンBlenderChatGPTUI版)のVer.3.0 RC(Release Candidate)の機能等

1-1 理念

最初は、BlenderをChatGPTで効率的に操作したいという気持からこのBlenderアドオン開発が始まりました。具体的にはBlenderの操作は全てBlenderPythonスクリプトで記述できるので、ChatGPTでBlenderPythonスクリプトを自由自在に生成したいという気持から、このBlenderアドオン開発が始まりました。

開発を進める中で、一発で目的とする精細モデルを作成するのではなく、最初にプロトタイプ(祖型…枠組み)を作成し、それに様々な要件を付加してモデルを育てることが、精細モデル生成の早道であることに気が付き、ChatGPTとユーザーとのやりとりによるモデル育成をBlenderアドオンの理念としました。

●BlenderアドオンBlenderChatGPTUI版の理念

完成品を一度に作ることを目指さない。修正しやすい祖型(Prototype)を生成し、AIとユーザーが対話しながら作品・研究成果・ワークフローを育てていくことを目的とする。

この理念はアドオンのプリファレンスに書き込みました。


Blender ChatGPTUI Ver.3.0 RCのプリファレンス画面

1-2 動作モード

新規作成型、プロトタイプ作成型、修繕型を備えました。

単独の利用の場合は新規作成型を使い、不十分な結果やエラーの場合は修繕型に移行して、望む成果に向かいます。BlenderエラーをそのままChatGPTに送ると、その改善はChatGPTが特異とするところです。

複雑で高度な成果を望む場合、プロトタイプ作成型でスタートして、祖型(プロトタイプ、枠組み)からスタートし、ChatGPTとやりとりしながら各種条件を付加して最終成果に到達します。ChatGPTはユーザーに次のステップをどうするか提案してきます。

ChatGPTとユーザーがやりとりしながら成果を育てることができます。


Blender ChatGPTUI Ver.3.0 RCのパネル

1-3 ChatGPTモデルの選択

パネルでgpt-5.5、gpt-5.4、gpt-4.4miniの選択ができます。次のようにAIの性格を少し変えることができます。

gpt-5.5(Prototype重視、Geometry Nodes重視、Material説明重視、Memo詳細)

gpt-5.4(安定性重視、API互換性重視、Python簡潔)

gpt-4.1-mini(高速生成、コード短め、Memo簡潔)

このChatGPTモデル選択機能はChatGPT(web版)ではあまり利用できません。Blender専用アドオンならではの機能です。

2 Blender ChatGPTUI Ver.3.0 RCの試用

これまでの開発は基本機能の搭載、バグの除去を目的とした試用を行ってきましたが、基本機能全ての搭載と致命的バグ除去の区切りがつきました。しばらく、実際の考古研究等実務にこのVer.3.0 RCを使い、その機能と使い勝手を体験することにします。開発のための試用ではなく、実際の実務に使うテーマが幾つか控えていて、楽しみです。

3 考古学用途との関係

Blender ChatGPTUI Ver.3.0 RCの機能は、現状では汎用的であり、特段に考古学用途に特化していません。将来の開発で考古学用途でよく使われる機能を強化する予定です。

4 ChatGPT API

Blender ChatGPTUI Ver.3.0 RCを利用する際にはChatGPT API料金(従量課金制)が必要となります。


2026年7月23日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の地山地形3Dモデルの改善

 Refining the 3D Model of the Natural Substrate Topography for the Shell Midden on the Northern Slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden


I have corrected problematic issues in the 3D model of the natural substrate topography for the shell midden located on the northern slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden. The most significant issue—where a large volume of artifacts at the valley head protruded beyond the natural substrate surface—was resolved by using the "Grab" brush in Blender's Sculpt Mode to pull the terrain into alignment.


有吉北貝塚北斜面貝層の地山地形3Dモデルに存在していて不都合を改善しました。最大の懸案事項であった、谷頭部における大量遺物の地山地形外飛び出しは、BlenderスカルプトモードでGrabブラシで地形をひっぱり、解決しました。

1 地山地形3Dモデルの不都合

これまでの地山地形3Dモデルには次の不都合がありました。

・ガリー谷西岸の穴(2ヶ所)

・ガリー谷底の異常低値

・谷頭部頭部の斜面不自然

・谷頭部遺物はみ出し


谷頭部遺物はみ出しの様子(地山地形3Dモデルを地中から眺めた様子)

2 不都合の改善

最大の懸案事項であった、谷頭部における大量遺物の地山地形外飛び出しは、BlenderスカルプトモードでGrabブラシで地形をひっぱり、解決しました。


改善された地山地形3Dモデル


改善された地山地形3Dモデル(遺物も表示)

3 メモ

Blender操作に使ったBlenderPythonスクリプトは次の3種です。

・csvファイル(XYZ座標付点情報)をBlender3Dビューポートに点群としてプロットするBlenderPythonスクリプト

・Blender3Dビューポートにプロットされた点群から地形3Dモデルを作成するBlenderPythonスクリプト

・Blender3Dビューポートで改変された点群をcsvファイルにエクスポートするBlenderPythonスクリプト


2026年7月22日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層と地考古学(Geoarchaeology) その2

 The Ariyoshi-kita Shell Midden (North Slope Deposit) and Geoarchaeology: Part 2


I hypothesized that the shell deposit on the north slope was formed through the dumping of materials—such as shells and pottery fragments—from the upper part of the slope by Jomon people, followed by repeated gravitational redeposition and final accumulation. I have outlined the conceptual approach for testing this hypothesis.


北斜面貝層は縄文人によって斜面上部から貝殻や土器片などが投棄され、それらが重力性再移動を繰り返した後、最終堆積して形成されたと仮説しました。この仮説検証方法のイメージをまとめました。

この記事は2026.07.21記事「有吉北貝塚北斜面貝層と地考古学(Geoarchaeology)」の続きです。

1 これまでの検討で浮かび上がってきた北斜面貝層形成仮説

【北斜面貝層形成仮説】

北斜面貝層は縄文人によって斜面上部から貝殻や土器片などが投棄され、それらが重力性再移動を繰り返した後、最終堆積して形成された。


北斜面貝層形成仮説のイメージ

【仮説背景情報】

・急斜面に斜面貝層がサージ状・塊状に発達している。

・単位斜面貝層は斜面下部で大きな貝殻・密集、斜面上部で小さな貝殻・まばら~貝殻なしという、素材大きさ・密度のグラデーションとなっている。

・単位斜面貝層では斜面下部に土器片が密集し、斜面上部では土器片がまばらとなる。

・単位斜面貝層の斜面下部の土器片は80%が下凸形で堆積していて、土器片が回転して安定した形で最終堆積した様子がうかがえる。(斜面ではない加曽利貝塚での土器片は下凸形50%となっている。)

・出土土器型式の位置関係から、規模の大きな貝層逆転現象が見られる断面がある。

2 仮説検証ステップ

2-1 人為的投棄の確認

斜面上部から縄文人によって貝殻や土器片が投棄された蓋然性は高いと考えられるが、本当にそういえるのか、検証します。投棄場所、投棄時期について分析し、投機単位、投棄頻度などについて情報が得られるか検討します。同一斜面の上部と下部から出土した土器片の接合について、人為的投棄の証拠として検討します。

2-2 投棄後に斜面下方へ再移動したことの確認

貝殻・土器片の粒径・密度・配向・接合関係などから貝殻が投棄後に斜面下方へ再移動したことを検証します。

2-3 再移動メカニズムの検討

再移動メカニズムとして次のようなファクターが考えられます。

【再移動メカニズムファクター】

・雨水を含む高濃度流

・乾燥粒状流

・泥質基質流動

・表面流洗堀・再堆積

・人による斜面貝層利用及び人動物による踏圧移動

これらのファクターが再移動にどの程度寄与しているか、以下の資料を作成して検討することにします。

【ファクター検証資料】

・地山地形3Dモデル

・貝層分布3Dモデル

・遺物分布3Dモデル

・剥取断面ファブリック分析結果

・土器接合資料

3 メモ

仮説検証ステップの2-1と2-2はこれまでの検討で情報がかなり集まってきています。2-3再移動メカニズムの検討が最も重要です。これまでの検討で高濃度流(規模の小さな土石流)関与が濃厚になってきていますが、それがどの程度寄与しているかなどはまだ不明です。メカニズムの検討は個人で行うイメージではなく、北斜面貝層発掘担当専門家や地考古学専門家との相談による新たな検討フェーズに移行すると想定します。


2026年7月21日火曜日

考古学切手 国宝シリーズ 第1集「考古資料」

 Archaeology Stamps: National Treasure Series, Vol. 1 – "Archaeological Artifacts"


I acquired and enjoyed the "National Treasure Series, Vol. 1: Archaeological Artifacts" special stamp issue released in 2020. I feel a special affinity for the "Venus of Jomon," the "Goddess with a Mask," and the "Haniwa Standing Male Figure in Armor," as I have previously created 3D models of them.


2020年発行特殊切手「国宝シリーズ 第1集 考古資料」を入手して楽しみました。縄文のビーナス、仮面の女神、埴輪式男子武装立像は3Dモデルを作ったこともあり、親しみが湧きます。

1 国宝シリーズ 第1集「考古資料」


国宝シリーズ 第1集「考古資料」

2020年発行

収録国宝覧

① 土偶(縄文のビーナス):長野県茅野市 米沢棚畑遺跡出土

② 土偶(中空土偶 / 茅空):北海道函館市 著保内野遺跡出土

③ 土偶(合掌土偶):青森県八戸市 風張1遺跡出土

④ 土偶(縄文の女神):山形県舟形町 西ノ前遺跡出土

⑤ 土偶(仮面の女神):長野県茅野市 中ッ原遺跡出土

⑥ 埴輪武装男子立像:群馬県太田市出土(東京国立博物館蔵)

⑦ 袈裟襷文銅鐸(伝讃岐国出土):香川県伝承(東京国立博物館蔵)

⑧ 肥後江田船山古墳出土品《獣帯鏡》:熊本県和水町出土(東京国立博物館蔵)

⑨ 火焔型土器:新潟県十日町市 笹山遺跡出土

⑩ 奈良県藤ノ木古墳出土品《金銅鞍金具》:奈良県斑鳩町出土 

シール式切手シート

2 縄文のビーナス


① 土偶(縄文のビーナス):長野県茅野市 米沢棚畑遺跡出土

3 中空土偶 / 茅空


② 土偶(中空土偶 / 茅空):北海道函館市 著保内野遺跡出土

4 合掌土偶


③ 土偶(合掌土偶):青森県八戸市 風張1遺跡出土

5 縄文の女神


④ 土偶(縄文の女神):山形県舟形町 西ノ前遺跡出土

6 仮面の女神


⑤ 土偶(仮面の女神):長野県茅野市 中ッ原遺跡出土

7 メモ

縄文の女神は別切手が発行されています。


縄文の女神

1998年発行

長野県ふるさと切手

埴輪武装男子立像も複数の変種が古くから発行されています。


埴輪武装男子立像の変種切手

有吉北貝塚北斜面貝層と地考古学(Geoarchaeology)

 The Shell Midden on the Northern Slope of the Ariyoshi-Kita Shell Midden Site and Geoarchaeology


On two occasions—once at the end of May and again at the end of June—I employed the term "data synthesis" in an attempt to form a rough, hypothetical overview of the developmental history of the northern-slope shell midden currently under study. I intended for this to serve as a crucial step toward accelerating the analysis.

Unfortunately, things did not go as planned. However, identifying that the obstacle standing in my way lies within the field of geoarchaeology represents a significant achievement.


5月末と6月末の2回にわたって、データ総集という用語を使って、今検討している北斜面貝層発達史の全体像をざっくりと仮説的に理解しようとしました。これを検討における重要なステップにして、検討加速を目指したのです。

残念ながら目論見通りにはなりませんでした。しかし立ちはだかる壁が地考古学(Geoarchaeology)という分野であることが判ったことは大成果と言えます。

この記事は2026.06.24記事「有吉北貝塚北斜面貝層のデータ総集 その2」に続く記事です。

1 6月末以降の取組み

6月末以降、北斜面貝層検討の取組みは低調で検討が進みませんでした。データ総集という用語では検討対象の本質を捉え切れなかったようです。

6月末以降現在までの取組みは北斜面貝層を3D次元で把握するための技術開発に終始し、これはとても大きな成果を得ました。

2 北斜面貝層と地考古学(Geoarchaeology)

これまで自分が調べた北斜面貝層では、次のような事象が観察されています。

・急斜面に斜面貝層がサージ状・塊状に発達している。

・単位斜面貝層は斜面下部で大きな貝殻・密集、斜面上部で小さな貝殻・まばら~貝殻なしという、素材大きさ・密度のグラデーションとなっている。

・単位斜面貝層では斜面下部に土器片が密集し、斜面上部では土器片がまばらとなる。

・単位斜面貝層の斜面下部の土器片は80%が下凸形で堆積していて、土器片が回転して安定した形で最終堆積した様子がうかがえる。(斜面ではない加曽利貝塚での土器片は下凸形50%となっている。)

・出土土器型式の位置関係から、規模の大きな貝層逆転現象が見られる断面がある。

これらの事象から、土石流とは規模が全く異なりますが、同じ原理の高濃度流事象が関わって貝層が発達したのではないかと推察してきてます。このような推察が正しいのか、別の解釈が有りうるのかが今後検討のメインになります。つまり、貝層を地象事象として扱うことになります。

この検討は地考古学(Geoarchaeology)そのものであると言えます。

この地考古学(Geoarchaeology)検討の成果が出ることによって、新たな遺物解釈が生まれる可能性があり得ます。ひいては有吉北貝塚集落の新たな解釈が生まれる可能性もあり得ます。

北斜面貝層の地考古学(Geoarchaeology)検討から何らかの成果を生み出すべくチャレンジすることが、今の自分に課された使命であると、かなり大げさですが、考えました。


北斜面貝層の様子(剥取断面遠景)


北斜面貝層の様子(第2断面遠景)

3 これからの取組み

北斜面貝層検討の本格研究段階では北斜面貝層発掘担当専門家や地考古学専門家の判断に基づくものになると考えられます。それらの専門家に提出する3D資料を作成することが、これからの自分の作業になると考えます。

直近では懸案事項となっている次の作業に取組みます。

・地山地形3Dモデルの精緻化

・剥取断面ファブリック分析

同時に、仮説検証方法について検討を深めまとめることにします。