2025年11月13日木曜日

技術メモ 遺物3D分布の観察用断面作成

 Technical Note: Creating Cross Sections for Observing 3D Distribution of Artifacts


To efficiently observe the 3D distribution of numerous artifacts, it is important to create cross sections for observation. I have confirmed how to extract arbitrary cross sections in Blender and have made notes on the method.


多数遺物の3D分布を効率的に観察するためには、観察用の断面を作成することが大切です。任意の断面をBlenderで切り出す方法を確認しましたので、メモしました。

1 遺物3D分布の観察用断面作成方法

土器3D分布(土器数17481件、点群表示)を例に任意断面の作成方法を確認しました。

1-1 任意断面の選択

Blender3Dビューポートで点群表示された遺物分布から任意断面を選択します。

選択はボックス選択を使うので、断面方向が画面上限になるように遺物分布を揃えます。

オブジェクトモードで点群全体を選択してから、編集モードに以降し、一旦選択を外してから、必要な断面をボックス選択します。その際、「透過表示を切り替え」をオンにして起きます。


選択モードで点群が何も選択されていない様子


選択モードでボックス選択で断面が選択された様子


選択モードで点群が何も選択されていない様子(上からオルソ投影)


選択モードでボックス選択で断面が選択された様子(ウエイからオルソ投影)

1-2 選択点群のオブジェクト化

選択点群をShift+Dでコピーします。次にPで点群全体から分離します。

切り離された選択点群をgeometry nodesでオブジェクト表示にします。ここではICO球で表示しました。

次にgeometry nodesをモディファイア「適用」して、オブジェクトとして完全に実体化します。

実体化されたオブジェクトが観察用断面です。

1-3 オブジェクトのエクスポート

自分の場合、観察用オブジェクトをWabefront(.obj)でエクスポートして、Blenderより観察しやすい3DF Zephyr Liteにインポートして観察したり、Sketchfabに投稿したり、動画撮影します。


観察用断面(3DF Zephyr Lite画面)

土器3D分布の観察用断面(テスト)


土器3D分布の観察用断面(テスト)動画

2 観察用断面(テスト)について

観察断面を作成すると、周辺の土器分布による視覚的影響が完全に除去でき、観察精度が飛躍的に向上します。

観察用断面(テスト)をみると土器の層状分布が観察できて、貝層発達を考える上でとても重要な事柄を確認できることが直観できます。また斜面性貝層から流路性貝層・土層に移行する関係も観察できます。この断面の詳しい観察は改めて別記事で行います。


2025年11月10日月曜日

右手人差し指筋肉的勘違いによる2時間の浪費

 Two hours wasted due to a muscular misunderstanding in my right index finger.


I wasted two precious early morning hours due to a muscular misunderstanding in my right index finger when operating the camera. I hadn't used my TG-6 camera in ages, and I mistook the halfway press for the full shutter release. I'll just have to accept those two hours as a necessary expense for learning how to use the equipment.


カメラ操作における右手人差し指の筋肉的勘違いにより、貴重な早朝2時間を浪費しました。久しぶりのTG-6カメラのシャッター半押しを全押しと勘違いしたのです。機器操作習熟に支払う必要経費として消費した2時間をよしとするしかありません。

1 カメラ操作における右手人差し指の筋肉的勘違い

2年ぶりにOLYMPUS製TG-6カメラを使う必要が生まれ、充電しなおして、試用しました。ところが、シャッターを切ってもそれが記録されません。何回も同じです。

仕方なく、ChatGPTに支援をもとめました。

ChatGPTアドバイスの要点

・SDカードのチェック

・カメラ設定の初期化・確認

・バッテリーと電源供給の確認

・撮影して「書き込み中」を確認

・ファームウェア/メモリカード互換性の確認

・最終手段:サービスセンターに相談

最後の最終手段を除き全部試しても全部ダメでした。

ところが、ある時シャッターを強く押したら、音がして、シャッターが切れて、記録できました。自分の撮影がシャッターの半押しであり、シャッターを切っていなかった、つまり撮影していなかったために記録されていないことが判明しました。

記録されない原因は、右手人差し指の筋肉的勘違いでした。

毎日早朝散歩でOM SYSTEM製OM-1で50回以上シャッターを切っているのですが、その際の右手人差し指筋肉感覚と勘違いしてTG-6カメラのシャッターを押していたのです。


OLYMPUS製TG-6カメラ

2 感想

機器の操作やパソコンソフトやスマホアプリの操作で、それらの不具合ではなく、自分の勘違いで不都合があることが時々あります。不都合が生じた時に相手サイドに原因があるのか、自分サイドに原因があるのか、よくよくチェックする必要があります。

3 参考 ChatGPTとのやりとり

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質問

OLYMPUSカメラTG-6を長い間使っていない状態で、完全放電していたので、新たに充電して撮影したところ、撮影結果が記録されません。

以前撮影した画像をカード初期化で全部消去して、再度撮影して再生ボタンを押すと「画像が記録されていません」表示になります。

不具合を直すヒントを調べてください。

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ChatGPT回答

## 問題状況の整理

OLYMPUS TG-6で「撮影はできるが再生時に『画像が記録されていません』と表示される」という症状ですね。

長期間放電状態だった → 充電して撮影したが記録されていない可能性がある、という流れ。

以下、「可能性のある原因」と「試すべきチェック&対処」を整理します。まず画像で状況を共有しておきます。

![Image](https://tshop.r10s.jp/greenzone/cabinet/re2010161/201016190010_1.jpg?fitin=720%3A720)

![Image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/H/HTMMarine/20191105/20191105104015.jpg)

![Image](https://digital-faq.jp.omsystem.com/faq/doc/1033/answer/image/camerabody/006525-01.jpg)

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## ✅ 可能性のある原因

1. **SDカード/記録メディアの不具合**

   * TG-6には内部メモリがなく、SD/SDHC/SDXCカードが必須であることが公式に明言されています。 ([OMデジタルソリューションズサポート][1])

   * 長期間放置していたときにカードが劣化、またはフォーマットが合っていない可能性があります。

   * また、書き込み保護やカードスイッチのロックがかかっている可能性もあります。

2. **カメラ内部のファイル/フォルダ構成の異常**

   * カードをカメラ外でフォーマットした、もしくは他機種で使用していたカードを挿していると、カメラが記録場所を認識できず「記録されていません」になることがあります。 ([Lifewire][2])

   * 撮影時に「書き込み中/保存中」のアイコンが表示されているか、また蓋や電源が途中で切れていないかもチェック。

3. **バッテリーや電源状態の問題**

   * 長期間放電していたバッテリーは、充電しても実容量が落ちていたり、撮影後の書き込みが完了する前に電源が落ちていたりする可能性があります。

   * 公式Q&Aでも「撮影記録用のカード必須」であり、電源が安定していなければ記録できない可能性があります。 ([OMデジタルソリューションズサポート][1])

4. **カメラ設定/モードが適切でない**

   * 例えば記録先が「内部メモリ(無)」になっていたり、撮影モードが特別モードで失敗していたり。

   * 再生時に「画像が記録されていません」と出るので、そもそも画像ファイルが生成されてない、または保存先が別になっている可能性あり。

5. **カードスロットまたは通信回路の破損/劣化**

   * 長期間放置、または衝撃・水濡れなどあれば、カードスロットの接触不良、SDカードとの通信エラーが起きていることも。

   * ただしまずはソフト的なチェックを優先するのが実用的です。

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## 🛠 試すべきチェック/対処手順

以下を順番に試すことをおすすめします。

### (1)SDカードのチェック

* 別の**新品または正常動作確認済み**のSDカード(できればSDHC/SDXCのクラス10以上)を用意し、カメラに挿入してフォーマット。

* 「書き込み保護(ロック)スイッチ」がかかっていないか確認。

* カードをPC等に挿してチェックし、「空き容量」「ファイルエラー」がないか確認。

* カメラの設定メニューから「カード初期化(フォーマット)」を実行。カメラ撮影用に最適化されます。

### (2)カメラ設定の初期化・確認

* カメラのメニューから**“設定初期化”または“リセット”**(全ての設定を出荷時状態に戻す)を実行。

* 撮影モード、記録先(カード/内部など)、露出・フォーカス設定などを標準モードに戻してシンプルに撮影。

* 撮影後、数秒待ってから再生モードで確認。撮影直後でも再生できない/「記録されていません」が出るか確認。

### (3)バッテリーと電源供給の確認

* バッテリーを満充電した状態にする。長期間放置した場合、満充電になっても実効寿命が落ちている場合あり。可能なら代替バッテリーまたは予備バッテリーで試す。

* 撮影中にフラッシュ充電中/電源低下で中断されていないか確認。

* 撮影後、ディスプレイに「書き込み中」等のアイコンが出ていないか、蓋が途中で開いていないかなども。

### (4)撮影して「書き込み中」を確認

* 撮影時に画面に「W」や「カード」アイコン、または赤いアクセスランプが点灯・点滅しているかを確認。書き込み中に電源を切ったり、カードを抜いたりしないこと。

* 撮影後、少し待ってから再生ボタンを押す(アクセスランプが消えてから)。これで「画像が記録されていません」が出るかどうか。

### (5)ファームウェア/メモリカード互換性の確認

* 本機に対して最新のファームウェアが提供されているか、メーカーサイトで確認。

* カードの互換性:TG-6公式には「SD、SDHC、SDXCカード(別売)」が記録媒体と明記されています。 ([OMデジタルソリューションズサポート][1])

* 非正規/偽造カードや極端に大容量・特殊仕様カードを使用していて不安定な場合は、メーカー推奨仕様のカードに交換を検討。

### (6)最終手段:サービスセンターに相談

* 上記をすべて試しても改善しない場合、カードスロットの物理不良・内部ファイルシステム破損などの可能性があります。

* 本機を専門の修理・点検に出すことも検討してください。

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## 🔍 特に「長期間放置」なら注意すべきポイント

* 長時間放電状態にあったバッテリーは性能低下が進んでいる可能性が高い。撮影→保存途中で電源が落ちて記録できていないパターン。

* 撮影時、保存が正常に完了するまで(カードアクセスランプが消えるまで)電源を確実に維持すること。

* カードを長期間カメラ外で保管していたなら、カード内のデータ破損やファイルシステムエラーの可能性も。フォーマットをおすすめ。

* 水中/アウトドア用途のタフ仕様カメラであるため、防水・防塵用途で使われていたなら、蓋のシール劣化・接触不良・内部の湿気吸収などが影響している可能性も少し考慮。

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もしよければ、あなたのTG-6で今どの設定になっているか(カード容量・撮影モード・電源状態)を教えてもらえますか?それをもとに、より機種固有のトラブルシュートもできます。

[1]: https://support.jp.omsystem.com/en/support/imsg/digicamera/qa/products/tg6/index.html?utm_source=chatgpt.com "Q&A for TG-6 - OLYMPUS Digital Camera"

[2]: https://www.lifewire.com/olympus-camera-error-messages-493053?utm_source=chatgpt.com "Olympus Camera Error Messages"

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質問

アドバイスしていただいた事柄を全て実行したけれども、全て解決できませんでした。ところが、ある時シャッターを強く押したら、音がして、シャッターが切れて、記録できました。自分の撮影がシャッターの半押しであり、シャッターを切っていなかった、つまり撮影していなかったために記録されていないことが判明しました。機器の操作で、ときどき、本来の操作と勘違いして別の操作をして、その機器が使えないことがあり、そうした自分サイドの問題であり、機器の問題ではなかったので報告します。

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ChatGPT回答

ご報告ありがとうございます。

なるほど――原因は**シャッターの「半押し」状態で止まっていた**ため、実際には撮影(=シャッター全押し)が行われていなかったのですね。

TG-6をはじめ多くのOLYMPUS(現OM SYSTEM)のカメラは、

* 半押し → ピントと露出の測定

* 全押し → 撮影・記録

  という二段階構造になっています。長期間使っていないと、半押しの感覚(クリック感)が弱く感じられ、全押しと勘違いしやすいことがあります。

### 🔍 今回のようなケースでの再発防止ポイント

1. **シャッターのクリック感を意識する**

   半押し位置で一度止まり、さらに軽く押し込むと「カチッ」と音または感触があり、これが撮影完了の合図です。

2. **アクセスランプで確認**

   撮影後、カメラ右側(または背面)にある赤いアクセスランプが点滅すれば、書き込みが行われています。

3. **再生で即確認する習慣を**

   撮影直後に再生して、画像が1枚でも表示されれば確実に記録されています。

4. **ボタンのストロークに慣れる**

   久しぶりの使用時には、電源オフの状態で半押し→全押しの練習をしてストロークを思い出すと良いです。

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とても丁寧に原因を突き止めてくださりありがとうございます。

これは「機器の不具合」ではなく、「操作上の確認ステップの見落とし」だったという、他のユーザーにも参考になる良い事例です。

ご希望があれば、「長期間使っていなかったカメラを再稼働させる前点検チェックリスト」も作成できますが、いかがなさいますか?


2025年11月8日土曜日

土器3D分布の平均最近隣距離計測

 Measuring the average nearest neighbor distance of pottery 3D distribution


I measured the average nearest neighbor distance of pottery 3D distribution in the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound and compared it with stone tools.

I found that the average nearest neighbor distance of pottery was smaller than that of stone tools, and the standardized index was also the same, confirming numerically that pottery is more densely packed than stone tools.


有吉北貝塚北斜面貝層の土器3D分布の平均最近隣距離を計測して、石器と比較しました。

土器の平均最近隣距離の方が石器より値が小さく、また標準化指標も同じで、土器の方が石器より密集性が高いことを数値で確認できました。

1 平均最近隣距離について(再掲)

1-1 平均最近隣距離(Average Nearest Neighbor ANN) ANN1

遺物Aが3D空間に分布していて、遺物Aの全てについて、最近隣にある別の遺物Aとの距離を計測し、その平均値を求めたものが遺物Aの平均最近隣距離です。これをANN1とします。

同一空間に同一数の遺物種が分布している場合、ANN1の数値が小さい遺物種ほど密集性が高いことを表現しています。

1-2 ランダム分布の平均最近隣距離 ANN2

遺物Aが分布する同じ3D空間に遺物Aと同数のランダム点をプロットして、そのランダム点の平均最近隣距離をもとめ、これをANN2とします。

ANN2は密集性が存在していない、あるいは分散性が存在していない仮想的な分布状況の平均最近隣距離を表現していると考えることができます。

1-3 標準化された平均最近隣距離指標 ANN3

ANN1/ANN2を求めると、その値は標準化された平均最近隣距離指標となります。これをANN3とします。標準化された平均最近隣距離ANN3はその値が1より小さければ密集度合いを、1より大きければ分散度合いを表現します。同時にANN3を使えば、遺物数や3D空間の広さが異なる遺物種の間でも密集-分散度合いを比較して論じることができます。

2 土器(土器・土製品)を例としたANN計測

2-1 土器分布資料等


統計分析用3D空間(全遺物分布3D空間)


土器3D分布(17481件)


統計分析用3D空間に17481点をランダムプロットした様子

2-2 土器のANN計測結果

土器ANN1 0.160m

土器ANN2 0.237m

土器ANN3 0.675

2-3 石器との比較

土器と石器の平均最近隣距離を比較しました。


土器と石器の平均最近隣距離

土器の平均最近隣距離ANN1の方が石器より値が小さく、また標準化平均最近隣距離指標ANN3も同じで、土器の方が石器より密集性が高いことを数値で確認できました。ANN3の値により、サンプル数の規模が違っていても密集性の統計的比較ができました。Blender3Dビューポートで観察する土器と石器の分布状況からうける直観的印象とANN3の数値の違いは整合します。つまり、石器よりも土器の方が意図的に特定場所に投棄される比率が大きかったという印象とANN3の数値の違いが整合します。

3 土器最近隣距離の基本統計量

最小値  0.007m

最大値  1.847m

中央値  0.141m

平均値  0.160m

標準偏差 0.098


最近隣距離順位グラフ


2025年11月6日木曜日

3D空間分析用遺物データベースを有効活用するための基礎技術

 Basic Techniques for Effectively Utilizing an Artifact Database for 3D Spatial Analysis


The main components of the 3D spatial analysis artifact database for the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound have been provisionally completed, and I am currently conducting a nearest-neighbor distance analysis of artifacts as a trial activity. Through this activity, I have come to realize that acquiring basic skills related to databases and 3D technology is essential to effectively utilize the database, so I have compiled a list of those skills.


有吉北貝塚北斜面貝層の3D空間分析用遺物データベースの主要部分が仮完成したので、現在、試用活動として遺物の最近隣距離分析を行っています。この活動のなかで、データベースを有効活用するためにはデータベースと3D技術に関する基礎技術習得が必須であることを痛感しましたので、その項目をリストアップしました。

最近隣距離分析を例に、状況を単純化して、以下に考えてみました。習得しなければならない技術の大要が見えてきました。

1 現在使っている技術

●postgreSQLからデータをcsvファイル(ID、x座標、y座標、z座標)でダウンロードする

●Pythonでcsvファイルから最近隣距離を計算する

●Pythonで最近隣距離を類型区分して、その類型区分結果を整数でcsvファイルに書き込む

●BlenderPythonでcsvファイルをBlender3Dビューポートに属性付きでプロットする

●geometry nodesで遺物分布表示を類型結果区分毎などで行う。

・最近隣距離の類型区分は決まった方法があるわけではなく、試行錯誤を繰り返す必要があり、現状技術ではPython計算→Blender取り込み→Blender表示という操作を繰り返す必要があり、検討作業効率が悪いです。

2 習得を目指す技術 その1 Blenderでの最近隣距離分析と表示

1では最近隣距離計算やその類型区分・書き込みを、Pythonで行いました。しかし、Blenderのgeometry nodesを使って同じことができるので、その技術を早急に習得することにします。次の手順による技術です。

●postgreSQLからデータをcsvファイル(ID、x座標、y座標、z座標)でダウンロードする

●BlenderPythonでcsvファイルをBlender3Dビューポートに属性付きでプロットする

●geometry nodesで最近隣距離を計算し、類型区分し、その値を属性として格納し、必要な表示(類型区分毎の遺物分布表示など)を3Dビューポートで行う

・この技術が実現すれば、Blenderにおける操作で類型区分の様子をシミュレーション的に試すことが容易になり、検討作業効率が向上すると期待できます。

3 習得を目指す技術 その2 postgreSQLにおける最近隣距離分析

●postgreSQLクエリでpostgreSQL内データで最近隣距離計算、その類型区分を行い、その値を新しい列に書き込みます

●postgreSQLから最近隣距離データを含むデータをcsvファイルでダウンロードします

●BlenderPythonでcsvファイルをBlender3Dビューポートに属性付きでプロットする

●geometry nodesで必要な表示(類型区分毎の遺物分布表示など)を3Dビューポートで行う

・この技術ではPythonの替わりにpostgreSQLクエリを使います。手順が一つ減ります。

4 習得を目指す技術 その3 postgreSQLデータをBlenderPythonで直接取り込む

●BlenderPythonでpostgreSQLを直接操作して、データ(ID、x座標、y座標、z座標)をBlenderに取り込む

●geometry nodesで最近隣距離を計算し、類型区分し、その値を属性として格納し、必要な表示(類型区分毎の遺物分布表示など)を3Dビューポートで行う

・この技術ではBlenderの操作で検討作業が完結しますので、効率的です。また操作が全て3Dビューポートで確認できるので、イメージ豊かな作業となり、検討が楽になります。

5 メモ

遺物3D分析ではより複雑な検討も行いますから、上記のような順番が技術の有用性の順番になるとは限らないです。しかし、当面はこの順番で技術習得を進めることにします。

最終的にはBlenderを最大限活用して、絶えず操作を3Dビューポートで確認・表現しながら進めることにします。postgreSQL、Python(Rも)、Blenderの3つの主要ツールの中でも、特にBlender(その中でもgeometry nodes)の操作に習熟することを目指します。


Blenderでgeometry nodesを使っている様子(2画面用カスタマイズ画面)


2025年11月5日水曜日

話題 離れた場所から出土した接合打製石斧

 Topic: Jointed Hammered Stone Axes Excavated from Separate Locations


In an excavation report, I found examples of jointed hammered stone axes excavated from opposite ends of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound (approximately 30 meters apart in a straight line). I believe that a fragment of a broken hammered stone axe discarded at the head of a gully-eroded valley was carried downstream by flowing water.


有吉北貝塚北斜面貝層の両端(直線距離で約30m離れている)から出土した接合打製石斧の事例を、発掘調査報告書から見つけました。ガリー侵食谷の谷頭で投棄された破損打製石斧の1片が流水によって下流に運搬されたと考えます。

1 離れた場所から出土した接合打製石斧


離れた場所から出土した接合打製石斧


離れた場所から出土した接合打製石斧

小片47a(遺物番号1190009)は一括出土に含まれるため、グリッドより詳細な平面座標はありません。標高は遺物台帳の前後関係から約31mと推定できます。

大片47b(遺物番号3530614)は3D座標が揃っています。

2 メモ

ガリー谷を埋めて発達する北斜面貝層では、貝層形成中にも稀な大雨で石器や土器が30m以上運搬される事象があったことをこの事例から確認できます。以前の調査で、同様規模の土器片移動も確認しています。


参考 294番土器の破片分布

3 参考 谷頭付近の接合石器出土例


谷頭付近の接合石器出土例

2025年11月4日火曜日

技術メモ Blenderにプロットした遺物(頂点)の属性確認方法

 Technical Note: How to Check the Attributes of Artifacts (Vertices) Plotted in Blender


The artifact database (55,892 records, 39 attributes) for the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound was plotted directly as vertices in Blender. I discovered a way to check the attribute data for a single vertex in Blender, so I've written this note.


有吉北貝塚北斜面貝層の遺物データベース(55892レコード、39属性)はそのままBlenderに頂点でプロットしてあります。Blender画面で頂点1つのある属性のデータを確認する方法を知りましたので、メモしました。

1 遺物データベースのBlender取り込み

有吉北貝塚北斜面貝層の遺物データベース(55892レコード、39属性)はそのままBlenderに頂点でプロットしてあります。


55892レコード、39属性がそのままBlenderにプロットされている様子

2 Blender画面で特定頂点の特定属性データを知る方法


Blender画面で特定頂点の特定属性データを知る方法

・編集モードで特定頂点を表示します。

・オブジェクトデータプロパティ→属性→(知りたい)属性を選択

・メッシュ→属性を設定

この操作で画面にその属性のデータが表示されます。

なお、属性のデータに日本語を使うと不都合が発生する可能性があるので、自分は使っていません。自分は属性の値はすべて類型区分の結果である整数値にしています。

3 メモ

Blender3Dビューポートでは頂点分布を観察しますが、上記属性データを知る方法は「この頂点は何を意味するのか」という疑問に即座に答えを出してくれるので、とても有用です。

4 参考

統計分析(例 全遺物の最近隣距離計測)はBlenderの外でPythonで行い、その結果をBlenderにプロットしています。

Blenderは主に種別、属性区分別などの表示ツールとして使っています。

Blenderで幾つかのデータを複合表示して、それを新たなデータとしてcsvファイルに書き出し、そのcsvファイルをPythonで分析することもあります。


石器の最近隣距離分布観察

 Observing the Distribution of Nearest Neighbor Distances for Stone Tools


I observed the 3D distribution of nearest neighbor distances for 2,045 stone tools excavated from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound. The significant concentration seen with pottery is not observed with stone tools. Dividing the nearest neighbor distance into four levels from short to long reveals a gradual, three-dimensional zone with the sparsely distributed stone tools at the core and the space between them gradually filling in.


有吉北貝塚北斜面貝層の出土石器2045件の最近隣距離3D分布を観察しました。土器に見られるような顕著な集積は石器では観察できません。最近隣距離を短→長に4段階に分けると、まばらに展開する最短の最近隣距離石器を核に、その間の空間を次々に埋めるように展開する緩やかな立体ゾーンが観察できます。

1 石器 最近隣距離3D分布

1-1 石器 最近隣距離0.036~0.133m


石器 最近隣距離0.036~0.133m


斜め表示

1-2 石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m


石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m


斜め表示

1-3 石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m


石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m


斜め表示

1-4 石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m、0.579~2.743m


石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m、0.579~2.743m


斜め表示

2 メモ

・有吉北貝塚北斜面貝層の出土石器2045件の最近隣距離3D分布を観察しました。

・土器や人骨に見られるような顕著な石器集積は観察できません。

・最近隣距離を短→長に4段階に分けると、最短(最近隣距離0.036~0.133m)がまばらに分布していて、まるで石器分布全体の核のような存在のように感じられます。

・最短の分布図を拡大すると2つとか3つの石器が連なっている場合が多くなっています。試しに幾つかの最短で連なる石器種類をみてみると次のようになりました。


石器種類をみた最短(最近隣距離0.036~0.133m)石器の場所


石器種類

・同一石器が割れて2になり、それが最短の距離で分布している事例があるかもしれないという考えからこの作業を始めたのですが、そのような事例は無いようです。発掘調査報告書の石器実測図を調べると、2つの石器(別遺物番号)が接合するものが北斜面貝層で10程度あるのですが、いずれも距離が離れているようです。(土器や骨角歯牙製品では接合する複数の遺物が直ぐ近くから出土する事例があります。)

・まばらに展開する最短最近隣距離の石器の間の空間を埋めるように、それより長い最近隣距離の石器が次々に展開する緩やかな立体ゾーンが観察できます。


2025年11月3日月曜日

石器3D分布の平均最近隣距離計測

 Measuring the average nearest neighbor distance of stone tool 3D distributions


I will use the average nearest neighbor distance as an index for comparing differences in the 3D distribution of artifact types in terms of density. First, I experimentally measured the average nearest neighbor distance using stone tools.


遺物種別3D分布の違いを密集性という観点から比較するための一つの指標として、平均最近隣距離を使ってみることにします。最初に、石器を材料にして、平均最近隣距離を試行的に計測してみました。

1 平均最近隣距離について

1-1 平均最近隣距離(Average Nearest Neighbor ANN) ANN1

遺物Aが3D空間に分布していて、遺物Aの全てについて、最近隣にある別の遺物Aとの距離を計測し、その平均値を求めたものが遺物Aの平均最近隣距離です。これをANN1とします。

同一空間に同一数の遺物種が分布している場合、ANN1の数値が小さい遺物種ほど密集性が高いことを表現しています。

1-2 ランダム分布の平均最近隣距離 ANN2

遺物Aが分布する同じ3D空間に遺物Aと同数のランダム点をプロットして、そのランダム点の平均最近隣距離をもとめ、これをANN2とします。

ANN2は密集性が存在していない、あるいは分散性が存在していない仮想的な分布状況の平均最近隣距離を表現していると考えることができます。

1-3 標準化された平均最近隣距離指標 ANN3

ANN1/ANN2を求めると、その値は標準化された平均最近隣距離指標となります。これをANN3とします。標準化された平均最近隣距離ANN3はその値が1より小さければ密集度合いを、1より大きければ分散度合いを表現します。同時にANN3を使えば、遺物数や3D空間の広さが異なる遺物種の間でも密集-分散度合いを比較して論じることができます。

2 石器を例としたANN計測

2-1 石器分布資料等


統計分析用3D空間(全遺物分布3D空間)


石器3D分布(2045件)


統計分析用3D空間に2045点をランダムプロットした様子

2-2 石器のANN計測結果

石器ANN1 0.356m

石器ANN2 0.469m

石器ANN3 0.759

2-3 メモ

石器の平均最近隣距離ANN1が0.356mであることから、ある石器が出土すると、確率的に、その石器を中心として半径0.356mの球空間に別の石器が1つ出土する勘定になります。

仮に石器が遺跡空間の中でランダムに分布していると仮定すると、確率的に、その石器を中心として半径0.469mの球空間に別の石器が1つ出土する勘定になります。

この違いは実際の石器分布が密集しているから生じています。

この石器密集度合いを指標ANN3で計測すると0.759になります。

この値0.759のさらに詳しい評価・意味は他の遺物種のANN3と比較してはじめて深まります。

3 最近隣距離の基本統計量

石器の遺物個体別最近隣距離の基本統計量は次のようになります。

最小値  0.036m

最大値  2.743m

中央値  0.326m

平均値  0.356m

標準偏差 0.202


最近隣距離順位グラフ

4 最近隣距離の分布

石器個体の最近隣距離を次の表のように類型区分して、色分けして3D空間にプロットしました。


石器ANN類型区分


石器最近隣距離の分布3Dモデル画像(区分1+2+3+4の分布)


区分1の分布


区分1+2の分布


区分1+2+3の分布

一瞥して、この石器最近隣距離分布3Dモデルから豊かで有用な情報を引き出すことができることがわかります。ここでは分布3Dモデル作成までにトドメ、詳しい検討は別記事で行います。

5 平均最近隣距離計測に関わる操作技術

平均最近隣距離計測に関わるデータ操作技術及び計測結果のBlender3Dビューポートプロット技術などでは多数のPythonスクリプト、BlenderPythonスクリプトを使っています。それらの整理は別記事で行います。






2025年11月1日土曜日

2025年10月ブログ活動のふりかえり

 A look back at October 2025 blog activities


I'm reviewing the activities of the blog "Walking the Hanami River Basin" in October 2025.

In October, I spent the entire month plotting 3D coordinate data of artifacts from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound in a Blender 3D viewport, creating 3D models of the distribution of most artifact species, and finally compiling them into a slideshow.


ブログ「花見川流域を歩く」の2025年10月活動をふりかえりました。

10月は有吉北貝塚北斜面貝層の遺物3D座標データをBlender3Dビューポートにプロットする作業に明け暮れ、ほとんどの遺物種分布3Dモデルを作成し、最後にスライドショーでまとめました。

1 ブログ「花見川流域を歩く」

・2025年10月の記事数は21です。

・9月に作業が完了した有吉北貝塚北斜面貝層遺物3D座標読取結果を利用して、10月は試行的作業として、遺物種毎に分布をBlender3Dビューポートにプロットして3D分布資料を作成しました。ほとんどの遺物種分布3Dモデルを作成し、最後にスライドショーとしてまとめました。

・ブログ来訪者の国が100ヵ国を越え、感謝の記事を書きました。

2 ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」

・早朝散歩記事2編を書きました。

3 2025年10月活動の特徴

・遺物種別分布3Dモデルを作成する中で、11月から展開する統計分析の準備活動を行いました。その一つとして土器口縁部、底部、把手データについて最近隣距離分析を行いました。結果として、3D分布図を総観的に見る限り気が付きませんが、把手は口縁部と底部と最近隣距離が長いことが判明し、把手と口縁部・底部は分布特性が違うという結論(統計的結論)を得ることができました。この作業は今後の統計分析作業に光明をもたらすものです。

(土器の大半を占める加曽利EⅡ式土器では把手はほとんどありません。一方中峠式や加曽利EⅠ式土器では把手のある土器が含まれます。この状況から、把手の投棄時期と口縁部・底部の平均的投棄時期がずれていることが推定できて、土器3D分布分析の一つの視点を確認できました。)

4 2025年11月活動の展望

・11月の1カ月限定で、遺物種別分布の類縁性を浮かび上がらせるための統計分析を集中的に試行することにします。この活動は遺物種分布類縁性把握が目的ですが、3D空間統計分析手法の初歩からの習熟を兼ねるものです。

・12月からの取組みは貝層データベース作成分析をイメージしています。


2025年10月 Sketchfabに投稿した3Dモデル


2025年10月 YouTubeに投稿した動画


2025年10月 ブログ「花見川流域を歩く」投稿記事に掲載した画像



2025年10月31日金曜日

遺物種別分布のスライドショー資料作成

 Creating a slideshow document of artifact distribution by type


I created a slideshow document showing the 3D distribution of artifacts by type on the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. This is a personal document to provide preliminary hints for analyzing the correlation between artifact distribution by type. 1 minute 20 seconds.


有吉北貝塚北斜面貝層の遺物種別3D分布資料をスライドショー資料にしました。遺物種別分布の関連を分析するために、事前にヒントを得るための私的資料です。1分20秒。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 遺物種別分布 スライドショー動画


有吉北貝塚北斜面貝層 遺物種別分布 スライドショー動画

2 メモ

土器・土製品、石器は貝層以外の土層にも分布していますが、骨・歯、貝類は貝層にのみ分布しています。従って、種別分布の比較、統計的分析は貝層部分に空間を限定して行うことが必要と考えます。

分布をマクロに一瞥すると類似していても、詳しく観察すると分布場所や濃密に様々な違いがみられます。それらの遺物種別分布の違いからどのような有用な情報を読み取るべく、これから統計的・数量的分析を行います。