2019年8月24日土曜日

安行3a式重心下方偏球形注口土器(下ヶ戸貝塚)の観察

縄文土器学習 244

我孫子市教育委員会1階ロビーに展示されている下ヶ戸貝塚出土安行3a式重心下方偏球形注口土器を写真で詳しく観察しました。
現物及び復元物が展示されていて、その3Dモデルを作成しましたが、ショーケースガラス面反射が強すぎてまともな3Dモデルは出来ませんでした。
参考 安行3a式重心下方偏球形注口土器 下ヶ戸貝塚 現物・復元展示風景3Dモデル
参考 安行3a式重心下方偏球形注口土器(復元) 下ヶ戸貝塚 観察記録3Dモデル

1 特徴
この土器について「我孫子市史 原始・古代・中世編」ではつぎのように記述しています。
図4は晩期の安行Ⅲa式の土器で、胴部は下方に重心を持つ扁球形で、円文を中心に、三叉文と横向きのS字状文を連続的に組み合わせた玉抱三叉文を連続し一周させている。口縁部には透孔のある山形の蓋の残存が見られ、胴部外面にわずかに朱が残っており、本来は器形、色彩とも豪華な土器であったと考えられる。

図4 「我孫子市史 原始・古代・中世編」から引用
次の写真の中央部付近に小さな赤い斑点がいくつか見えますが、それが朱の跡かもしれません。

安行3a式重心下方偏球形注口土器(下ヶ戸貝塚)

注口部直下には2つの装飾溝のある玉が付いています。

安行3a式重心下方偏球形注口土器(下ヶ戸貝塚)

安行3a式重心下方偏球形注口土器(下ヶ戸貝塚)

2 感想
注口土器は酒を注ぐ土器で祭祀(酒宴)で使われたと考えます。その器の注口部のデザインは直立した陰茎と2つの睾丸を表現していると推定します。この時代の縄文人の関心が生殖にあり、その関心をはばかることなく表現する社会であったと想像します。
白濁したどぶろくを注いで飲むという祭祀行為(酒宴行為…社会的に新たな絆をつくり深める活動)と生殖活動における精液射出とその結果による妊娠(新生命誕生)をアナロジカルに考えていたのかもしれません。

2019年8月23日金曜日

安行系ミミズク土偶 下ヶ戸貝塚 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 243

下ヶ戸貝塚出土ミミズク土偶の観察記録3Dモデルを作成しました。

安行系ミミズク土偶 下ヶ戸貝塚 観察記録3Dモデル 
撮影場所:我孫子市教育委員会1階ロビー 
撮影月日:2019.08.20 
ガラスショーケース越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.506 processing 30 images

安行系ミミズク土偶 下ヶ戸貝塚 展示の様子



安行系ミミズク土偶 下ヶ戸貝塚
「我孫子市史 原始・古代・中世編」から引用
ガラスショーケースの光反射が極めて強く、他の展示土器の観察記録3Dモデルはほぼ全滅のような感じですが、このミキズク土坑は何故か優良な質の3Dモデルを作成することが出来ました。
大きな耳飾りのついた両耳と結い髪と言われる3つの髪のうち両側の2つの形状が斬新です。
これまでに見た妊娠正中線を強調した土偶や乳房だけの土偶などは生殖本能との関わりが強いものと直観できますが、この土偶はそのような生殖との関わりを感じないものです。

2019年8月22日木曜日

白井市出土縄文土器4点の展示風景3Dモデル作成

縄文土器学習 242

白井市郷土資料館に白井市出土縄文土器4点が展示されていますので、その展示風景3Dモデルを作成しました。

白井市出土縄文土器4点 展示風景3Dモデル
撮影場所:白井市郷土資料館
撮影月日:2019.08.20
ガラス面越し撮影
後左:深鉢(中期後半)、神々廻宮前遺跡014号住
後右:深鉢(後期前半)、向台Ⅱ遺跡001号土坑
前左:深鉢(前期末葉)、河原子台遺跡遺構外
前右:注口土器(後期前半)、海老内台(平塚)出土
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.506 processing 34 images

白井市出土縄文土器4点 展示風景
後左深鉢(中期後半)は住居の炉に寝かせた土器を用いた斜位土器埋設炉として出土したものです。

斜位埋設炉の状況
「白井のあゆみ」から引用

「白井のあゆみ」を読むと、白井市の縄文時代の様子は・・・であったと多色刷りで判りやすく記述されています。
元来縄文時代遺跡・遺構・遺物の様子と現代行政区域とはまったく無関係です。しかし初心者が学習を始めるにあたって行政区域別視点が興味や知識を結び合わせるトリガーとして利用できることに最近気が付きました。自治体ごとに縄文時代に関して着目している点(自治体として興味を持っている点)が微妙に異なり、それを比較し楽しみながら学習すれば、自分の知識や興味の組織化を豊かなものにできるような感覚を持っています。

白井市郷土資料館では写真撮影は出来ませんが、その場で許可をもらい撮影しました。また許可書類には「snsで情報発信しない」というチェック欄がありましたので、チェックはしないで提出しました。

2019年8月21日水曜日

称名寺式深鉢形土器の観察記録3Dモデル作成

縄文土器学習 241

習志野市の藤崎3丁目南遺跡D地点から出土した称名寺式深鉢形土器の観察記録3Dモデルを作成しました。
360度近くの写真撮影が出来ましたので3Dモデルとしては質の高いものができました。

称名寺式深鉢形土器(埋甕) 藤崎3丁目南遺跡 観察記録3Dモデル
撮影場所:習志野市教育委員会
撮影月日:2019.08.20
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.506 processing 36 images

称名寺式深鉢形土器(埋甕) 藤崎3丁目南遺跡の様子
この土器は柄鏡型住居の入口部から埋甕として出土し、内部から骨粉状物質が見つかりました。胞衣壺として使われ周産期幼児の亡骸が入れられたのかもしれません。

称名寺式深鉢形土器資料 発掘調査報告書から引用
藤崎3丁目南遺跡D地点埋蔵文化財発掘調査報告書(2014、習志野市教育委員会)

この土器は習志野市で最初の称名寺式土器出土例です。
称名寺式期は加曽利EⅡ式期という縄文最高人口ピークと次のピークである加曽利B2式期の間の最も人口衰退した時期であり、この時期の集落の様子の学習のきっかけになる土器です。

習志野市教育委員会ご担当者の心こもった対応によりこの土器を観察することができました。こころからお礼申し上げます。
8月20日は幾つかのラッキーが重なったわたしにとっての特異日となりました。

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参考
千葉県土器形式別遺跡数

2019年8月20日火曜日

我孫子市教育委員会ロビー展示縄文土器

縄文土器学習 240

我孫子市湖北郷土資料室展示縄文土器を閲覧し(2019.08.15記事「我孫子市湖北郷土資料室観覧」)、その関連資料を入手するために我孫子市教育委員会を訪問し、資料を入手しました。
帰りがけ、ロビーをふと見るとなんと縄文土器が展示されています。先日電話で担当の方から我孫子市で縄文土器展示は湖北郷土資料室のみであると教えていただいたばかりですから驚きです。
担当の方も当たり前すぎる職場内の展示であり、眼中になかったのだと思います。

我孫子市教育委員会ロビー展示 下ヶ戸貝塚出土縄文土器

我孫子市教育委員会ロビー展示 下ヶ戸貝塚出土縄文土器

我孫子市教育委員会ロビー展示 下ヶ戸貝塚出土縄文土器

我孫子市教育委員会ロビー展示 下ヶ戸貝塚出土縄文土器

我孫子市教育委員会ロビー展示 下ヶ戸貝塚出土縄文土器
下ヶ戸(さげと)貝塚出土の縄文後期晩期の土器7点、復元土器1点、ミミズク形土偶1点他の展示で、自分にとっては興味深いものばかりです。

注口土器2点の展示があり、うち1点はその復元土器も展示されています。注口部下に玉2点が付いていて意味深長です。

形状自体が四角の椀も展示されていて、珍しいものだと思います。

入手資料にもこれらの出土物の詳しい記載があり格好の学習資料になります。
全点について3Dモデル作成用写真撮影を行いましたが、ショーケース光反射が極めて強く、3Dモデルが作成できるかどうかは不明です。

8月20日のラッキーな出来事その1となりました。ラッキーな出来事その2は別記事に書きます。

2019年8月18日日曜日

加曽利EⅡ式把手付鉢の把手復元イメージ

縄文土器学習 239

流山市立博物館企画展「流山のお宝新発見」展示加曽利EⅡ式把手付鉢の把手部の破片は見つからなかったようです。

把手部の残存部の様子が正確にわかるようにオルソ投影すると次のようになります。

正面向かって右の把手部残存の状況 オルソ投影画面

企画展説明資料では次のような把手部復元を行っています。

企画展説明資料

把手が上にはねていておしゃれな感じになっていて、「違和感」を感じます。
WEBで検索するとこのようなおしゃれな把手の例もあるようですが、多くは次のような丸い把手になっています。

参考 加曽利EⅢ~Ⅳ式両耳壺(りょうじこ) 愛生遺跡出土
加曽利貝塚博物館企画展「あれもE これもE -加曽利E式土器(千葉市内編)-」(終了)展示

おしゃれな感じの把手に「違和感」を感じた理由を考えると、この土器が実用土器であり、把手だけおしゃれにする理由が存在しないことからきていることに気が付きました。
もともと存在したであろう把手はおそらくそれ自身は力学的な意味での実用機能はなかったと思いますが、そうであってもその把手は土器の役割(実用性)を表現していたと考えます。
加曽利EⅡ式の時代は縄文時代人口急増最盛期であり、実用性(業務性)が全てに勝っていた時期だとイメージしています。

加曽利EⅡ式把手付鉢の杖のような模様

縄文土器学習 238

流山市立博物館企画展「流山のお宝新発見」展示加曽利EⅡ式把手付鉢には杖のような模様が付いています。

加曽利EⅡ式把手付鉢で観察できる杖のような模様

観察記録3Dモデルでよくみると3箇所に存在しますから、おそらく4か所に同じ模様が存在しているものと推察します。

この模様から次のようなインスピレーションが湧きましたのメモしておきます。

水噴出を表現する沈線記号か?
杖のような沈線模様は水が噴出する様子を表現していて、この片口土器が水瓶であることと対応するのではないかと考えます。
杖のような模様の両側の沈線は縄文と磨消を区分する役割の線分と理解します。

縄文土器にこのような象形文字的記号が存在するのかどうか知りません。
そのため、杖模様=泉記号という仮説が成り立つのかどうか、わかりません。
今後学習を深めることにします。

加曽利EⅡ式把手付鉢の片口の利用法

縄文土器学習 237

流山市立博物館企画展「流山のお宝新発見-さわってみよう、見てみよう-最新発掘情報展」(2019.07.13~09.16)展示のおさわり自由な大型土器加曽利EⅡ式把手付鉢(小谷貝塚)には片口(単独の注ぎ口)が付いています。

片口を展示正面の反対側から見た様子(3Dモデル画面)

加曽利E式土器で片口のついた土器はめずらしものと思います。
この片口は実用機能であると考えます。
実用機能であるとするとこの大きな土器(容量71リットル、重量17キロ)を傾けて使っていたと考えられます。
この土器を地面に穴をあけ、そこに設置していたのでは土器を傾けることはできません。
土器を傾けることができる仕掛は次のような木枠台座毎傾ける方法しかないのではないかと考えます。

片口の利用方法
木枠台座で液体の入った土器を安置し、液体を注ぐときには木枠台座毎土器を傾けたと考えられます。

このように考えると、木枠台座が遺物として残る可能性はほとんどゼロですが、木枠台座を置いた跡、特に台座を傾けた時にできる溝は床面に残る可能性があります。
小谷貝塚のこの土器出土遺構にそのような跡が見られるか、あるいは、類似大型土器出土遺構で台座跡が見つかるか、新たな興味が生れます。

加曽利EⅡ式把手付鉢の観察記録3Dモデル作成

縄文土器学習 236

流山市立博物館企画展「流山のお宝新発見-さわってみよう、見てみよう-最新発掘情報展」(2019.07.13~09.16)で展示され、おさわり自由な大型土器加曽利EⅡ式把手付鉢(小谷貝塚)の観察記録3Dモデルを作成しました。

加曽利EⅡ式把手付鉢 小谷貝塚 観察記録3Dモデル
撮影場所:流山市立博物館企画展「流山のお宝新発見」
撮影月日:2019.08.14
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.506 processing 26 images

展示風景

ガラス面越し撮影ではなく、かつ特段に暗い場所ではないため観察記録3Dモデルの質が高まりました。さらに手を触れて観察できたこともあり形状詳細面に自分の意識が集中していきます。
この3Dモデル観察から次の3点について特に強い興味を持ちましたので、それぞれ別記事で検討します。

1 片口の利用方法
加曽利E式土器では珍しく片口が付いています。その利用方法に興味が及びます。

2 杖のような模様
磨り消し部に杖のような沈線模様があります。その模様からインスピレーションが湧きます。

3 把手の形状
説明資料に把手復元イメージが描かれています。そのイメージに違和感が生れます。

我孫子市湖北郷土資料室 縄文土器展示風景3Dモデル

縄文土器学習 235

我孫子市湖北郷土資料室に大型の加曽利EⅠ式頃深鉢形土器(鹿島前遺跡)が単独でショーケースに入れられて展示されています。

我孫子市湖北郷土資料室の加曽利EⅠ式頃深鉢形土器(鹿島前遺跡)展示風景

ショーケースのガラス面に反射する天井蛍光灯の光が中途半端なものではなく、作成した土器観察記録3Dモデルはまさに満身創痍の状態となりました。

加曽利EⅠ式頃深鉢形土器 鹿島前遺跡 観察記録3Dモデル

土器の模様に、自分にとって加曽利E式らしからぬ点が感じられ興味があります。

次に、多数の直線状反射光投影跡の残る土器単体観察記録3Dモデルだけでなく、むしろその展示状況を3Dモデルで示す方が自分の学習活動記録としては意味があるような気がして、展示風景3Dモデルも作成しました。

加曽利EⅠ式頃深鉢形土器 鹿島前遺跡 展示風景3Dモデル

1点の土器を単独でショーケースに入れて展示するという方法自体が自分にとってなにか特異なものに感じられます。
同時に、展示風景3Dモデルは学習興味とは全く異なる、何か郷愁のような、セピア色の古い写真に感じるような雰囲気を感じてしまいます。学習資料ではなく、それ自体に作品的価値があるような錯覚を覚えます。