2023年3月24日金曜日

Photoshopを利用した中心投影画像のオルソ投影画像への疑似変換

 Pseudo-conversion of central projection image to ortho-projection image using Photoshop


I confirmed that if you have a normal photo and the corresponding ortho-projection material (this time a cross-sectional view), you can pseudo-transform the normal photo into an ortho-projection image by using the Photoshop puppet warp function.


通常写真とそれに対応するオルソ投影資料(今回は断面図)があれば、Photoshopパペットワープ機能を使うことにより、通常写真をオルソ投影画像に疑似的に変換できることを確認しました。

1 課題 剥ぎ取り断面画像を断面図に嵌め込む

壁に立てかけてある剥ぎ取り断面の画像(中心投影画像)を断面図に嵌め込む方法・手順を検討しました。


剥ぎ取り断面画像(上村秀明氏撮影)


断面図(上守秀明・宮城孝之「報告 千葉市有吉北貝塚斜面貝層の接状剥離作業」、『(財)千葉県文化財センター研究連絡誌』20-1 1987年)

2 方法・手順

2-1 画像と断面図のオーバーレイ配置

画像の不用部を除去します。


不用部を除去した画像

画像と断面図の大きさを略一致させ、Photoshopで別レイヤーとして配置します。もちろん画像と断面図の細部は合っていません。


Photoshopにおける画像と断面図の配置

2-2 パペットワープ機能で特徴点を一致させる

パペットワープ機能で画像の特徴点にピンを打ちます。特徴点とは画像と断面図で同じ場所であると判断できる点です。次に打ったピンをマウスでドラッグして断面図の同じ場所に移動します。


パペットワープ機能で特徴点に打ったピンを移動する様子

2-3 特徴点を一致させた結果

今回は18個所の特徴点を一致させました。


特徴点を一致させた結果

画像を疑似的に断面図に嵌め込むことができました。画像と断面図の層相区分線の両方が見やすいように濃度を調整して作業を完成させました。


作業結果(完成)

3 メモ

写真とそれに対応するオルソ投影資料(今回は断面図)があれば、Photoshopパペットワープ機能を使うことにより、通常のスナップ写真をオルソ投影画像に疑似的に変換できることを確認しました。


2023年3月23日木曜日

花島観音

 花見川よもやま話 第14話


Hanashima Kannon


Hanashima Kannon has a founding tradition (709) by Gyoki along with Chibadera. Since Hanashima Kannon is located at the headwaters of the Hanami River, I imagine that the legend of Gyoki has something to do with the maintenance of the transportation route connecting the Hanami River and the Inbanuma area.


花島観音は千葉寺とともに行基による開基伝承(709)があります。花島観音が花見川源流部に位置していることから、行基伝承は花見川と印旛沼方面を結ぶ交通路整備とかかわるのではないかと想像しています。

1 行基による開基伝承がある花島観音


現在の花島観音(天福寺)

花島観音についての詳しい資料を求めて、手持ちの資料をいろいろと見ていると、次の記述があり、驚きました。

「西暦709年(和銅2年)、僧行基千葉寺・天福寺を建立したと伝える。」(千葉市史現代編p515「千葉史年表」)

天福寺とは花島観音のことです。(正確には花島観音の別当寺として天福寺がつくられたと考えられています。現在花島観音は天福寺境内にあります。)

花島観音の寺伝によれば、「和銅2年(709)4月、行基が東国巡錫のとき、当地へ至り、その時観音を刻み、一宇を建立し、これを安置した。これが花島観音の始まりといわれている。」としています。

2 花島観音と交通ネットワーク

この寺伝に気がつき(それが正しいか、後から創作されたものであるかの議論はさておき)、この寺伝の年号と行基が来訪したということと、花島観音と浮島駅の位置関係が私の頭のなかで結びつき、絡み合いました。

行基が東国巡錫(じゅんしゃく)したとき、東国には次図で示した幅員12mの直線幹線道路網(駅路網)が整備されていました。


持統3年(689)から神護景雲2年(768)までの道路体系

出典:中村太一著「日本古代国家と計画道路」(吉川弘文館、平成8年)

引用者が道路を赤色で着色

この幹線道路網を補助する陸路支線網(伝馬路、伝路)、水運路が整備あるいは存在していたはずです。行基はその交通ネットワークを利用して花島観音の始まりとなった場所に来たはずです。

行基が、いわばたまたま花島の地を訪れたということは、花島の地がその時すでに、交通ネットワークの中に組み込まれていたということを証明しているのではないでしょうか。

何もない、行き止まりの花島の地に、たまたま行基が来訪したということは考えにくいことです。

花島を巡る8世紀初頭の交通ネットワークは次図のAではなく、Bであったと思います


8世紀初頭の花島を巡る交通ネットワークモデルA


8世紀初頭の花島を巡る交通ネットワークモデルB

花島観音と同じ西暦709年に、行基は千葉寺をも開基しているのです。

千葉寺は河曲駅のすぐ近くにあります。

私は、浮島駅と花島観音の関係に行基が介在したことに注目したのですが、同じように、河曲駅と千葉寺の関係に行基が介在したことになり、情報が相似的に対応するので大いに興味が湧きます。


千葉寺の位置

花島観音と千葉寺に関する情報の相似性

●行基開基伝承…花島観音(和銅2年(709))、千葉寺(和銅2年(709))

●東海道最寄り駅…花島観音(浮島駅)、千葉寺(河曲駅)

●交通ネットワークにおける要衝性…花島観音(東京湾-花見川-平戸川-印旛沼(香取の海))、千葉寺(東京湾-都川-鹿島川-印旛沼(香取の海))

空想の域を出ませんが、花島観音の行基開基伝承は、花島観音の位置が自然河川としての花見川源流域に存在していることから、花見川-流域界陸路越え-平戸川という交通路の土木的整備促進を土木救済者行基に託したという側面があると考えます。

3 秘仏 木造十一面観音立像

花島観音の秘仏(木造十一面観音立像)は胎内に墨書で、建長8年(1256)に仏師賢光が制作したと記されています。花島観音が置かれている天福寺は天福元年寺とも呼ばれます。天福元年は西暦1233年です。これらの情報から現在の花島観音は13世紀初めごろ開かれたことがわかります。ちなみにこのころは行基信仰の盛んな時代ですから、その当時開かれた花島観音の母体となる土着信仰対象が行基開基伝承とともに語られることは当然です。


参考 花島観音の秘仏

出典:「天福寺再興落慶供養記念 天福寺本尊十一面観音像」(昭和48年、天福寺)附録写真


参考 花島観音の秘仏

出典:「天福寺再興落慶供養記念 天福寺本尊十一面観音像」(昭和48年、天福寺)附録写真

4 花島観音入口と石塔

御成街道と検見川道が交差している花島観音入口に江戸時代中頃から明治時代にかけての観音信仰の名残ともいえる石塔が存在しています。


石塔


石塔説明板

この石塔は明治前期フランス式地図の挿図としても描かれています。


花島 世観世音(明治前期フランス式地図挿図)


石塔の場所

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の全体画像

Overall image of the stripped cross-section of Ariyoshi Kita Shell Mound


I obtained the whole image and the facies classification diagram of the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, transformed the whole image using the Photoshop function, and projected it onto the facies classification diagram. I have prepared materials for deepening the study of the developmental history of shell layers.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の全体画像と層相区分図を入手し、全体画像をPhotoshopパペットワープ機能により変形して層相区分図に投影当てはめました。貝層発達史学習を深めるための材料が揃ってきました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体画像


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体画像(上守秀明氏撮影)

剥ぎ取り断面作成担当者であった上守秀明さん撮影の有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体画像を入手しました。壁に立てかけてある剥ぎ取り断面を撮影した通常の中心投影画像です。剥ぎ取り断面の大きさをイメージできるように人物が写っています。

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体の写真はこの1枚の写真以外にはほとんど存在しないようです。

この写真の利用について許可していただいた上守秀明さんに感謝します。またこの写真存在を教えていだだき入手及び上守さんお取次の便をいただいた西野雅人さんに感謝します。

2 有吉北貝塚剥ぎ取り断面に関する資料

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の作成に関する次の資料の存在を千葉県立中央博物館から教えていただき、早速入手しました。

上守秀明・宮城孝之「報告 千葉市有吉北貝塚斜面貝層の接状剥離作業」、『(財)千葉県文化財センター研究連絡誌』20-1 1987年

この資料には剥ぎ取り断面作成方法の詳しい説明と断面位置図(北斜面貝層位置及び周辺地形図)、層相区分線図(接状剥離面土層断面図)が掲載されています。


断面位置図(北斜面貝層位置及び周辺地形図)

この位置図から剥ぎ取り断面は発掘調査報告書掲載断面11番と12番の間で、11番より0.8m下流側であることがわかります。


剥ぎ取り断面位置と発掘調査報告書断面位置の関係図


層相区分線図(接状剥離面土層断面図)


参考 発掘調査報告書11番断面


参考 発掘調査報告書12番断面

3 剥ぎ取り断面全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影

剥ぎ取り断面全体画像をPhotoshopパペットワープ機能を利用して変形し、層相区分線図(接状剥離面土層断面図)へ投影当てはめました。


剥ぎ取り断面全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

4 展示はぎとり断面3Dモデル画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

展示剥ぎ取り断面3Dモデルのオルソ画像を層相区分線図(接状剥離面土層断面図)へ投影しました。


展示はぎとり断面3Dモデル画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

5 展示剥ぎ取り断面画像及び全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

3及び4の画像を合成して展示剥ぎ取り断面画像及び全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像を作成しました。


展示剥ぎ取り断面画像及び全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

6 剥ぎ取り断面写真

剥ぎ取り断面作成直前の清掃作業終了写真が発掘調査報告書に掲載されています。


剥ぎ取り断面写真

7 メモ

5の画像および発掘調査報告書における11番断面、12番断面とその説明、さらに6の現場写真から剥ぎ取り断面付近における検討材料が整いました。これらの材料を参考にしながら、千葉県立中央博物館展示剥ぎ取り断面の現場観察により貝層発達史学習を深め、その結果を仮説的にまとめることにします。


 

2023年3月20日月曜日

サイト「花見川よもやま話」の開設

 Opening of the site "Chatting about all sorts of the Hanami River"


Chatting about all sorts of the Hanami River is serialized on the blog "Walking in the Hanami River Basin". I opened a website called "Chatting about all sorts of the Hanami River", which collects the serial articles. I have written 13 episodes so far.

Looking at society, history, and nature from the perspective of the Hanami River, there are many interesting topics.


ブログ「花見川流域を歩く」で「花見川よもやま話」を連載しています。その連載記事を集成したサイト「花見川よもやま話」を開設しました。現在13話まで書いています。

花見川という切り口で社会・歴史・自然を見ると興味深い話題がメジロ押しです。


サイト「花見川よもやま話」ヘッダー

サイト「花見川よもやま話


第1話~第13話の目次(2023.03.20)

花見川よもやま話 第1話 花見川の地下トンネル 2023.01.17 第1話

花見川の「上(うわ)ガス」 2023.01.18 第2話

花見川のトーチカ 2023.01.19 第3話

花見川と二宮尊徳 2023.01.21 第4話

花見川に舞い降りた白鳥 2023.01.24 第5話

花見川とお雇い外人技師デレーケ 2023.01.26 第6話

松本清張「天保図録」に登場する化灯土対策としての「流堀り工法」 2023.01.30 第7話

アユ・ウナギと制水門 2023.02.02 第8話

花見川と渋沢栄一 2023.02.05 第9話

鉄道連隊の花見川架橋演習 2023.02.11 第10話

現存する印旛沼堀割普請の捨土土手地形 2023.02.18 第11話

花見川(ハナミガワ)は検見川(ケミガワ) 2023.02.21 第12話

花見川の法的名称は印旛放水路(下流部) 2023.03.17 第13話


今後の話題予定

・花島観音

・不法占用

・大賀ハスと丸木舟

・花見川河川争奪

・カワウ

・河川整備計画

・流域変更

・成田参拝記

・現代運河構想

・死体発見

・玄蕃所

・化灯土

・オオタカ

・柏井浄水場

・ハクビシンのタメフン

・カヌーとボート

・柏井は「杵隈(かしわい)」

・東海道水運支路仮説

・大和田排水機場

・下志津演習場と習志野演習場

・縄文海進と花見川地峡

・カゲロウの一斉羽化

・マダケのタケノコ採り

・川面が白い泡で真っ白(30年前)

・山火事

・谷中分水界

2023年3月18日土曜日

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の土器調査

 Investigation of pottery on the stripped cross section of Ariyoshi Kita Shell Mound


I visually created a map of the distribution of pottery fragments in the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. Certain pottery fragments 51 were confirmed, and about half of them were found in the lower part of the sloping shell layer, in other words, near the waterside at that time, indicating the characteristics of pottery fragment dumping activities.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面における土器破片分布図を目視で作成しました。確実な土器破片51を確認し、約半数が斜面貝層下部に、つまり当時の水辺付近に分布していて、土器破片投棄活動の特徴が読み取れます。

1 土器破片分布図


土器破片分布図 (3Dモデルのオルソ投影図 高さ4.3m、幅4.0m)

目視で土器破片と確実に確認できたもの(赤丸)は51あります。展示上部は照明が暗く目視が不十分であった可能性があります。なお、双眼鏡を持参しましたが、近すぎて効果的に利用できませんでした。

目視で土器破片の可能性があるけれども確認できなかったもの(青丸)が7あります。

断面左下部に剥ぎ取り作業痕のようですが、最初は土器破片と直観したもの(空色丸)が3あります。


作業痕か土器か、土器か否か


作業痕か土器か

2 考察


土器破片分布図 考察

土器破片は斜面貝層分布に対応して土器破片が分布しているように見えます。このことから、貝層投棄活動と土器破片投棄活動は時期的に連動していることが推察できます。

同時に、土器破片は斜面貝層下部に半数が集中分布していますから、貝分布と比べて土器破片分布は偏在性がきわめて強いことが判ります。斜面貝層下部は当時の水辺付近です。土器破片投棄は水辺付近で行われる祈願活動の一環で行われたと想像します。


2023年3月17日金曜日

花見川の法的名称は印旛放水路(下流部)

 花見川よもやま話し 第13話


The legal name of the Hanami River is the Inba Discharge Channel (Downstream).


The legal name of Hanami River is "Inba Discharge Channel (Downstream)". Feeling uncomfortable with this difference, I once asked a river administrator a question and received an answer. Since the Inba Discharge Channel (Hanami River) is also written, few people seem to take issue with the sense of incongruity.


花見川の法的名称は「印旛放水路(下流部)」となっています。この違いに違和感をおぼえ、河川管理者に質問して、その回答をもらったことがあります。印旛放水路(花見川)などの併記があるので、違和感を問題にする人は少ないようです。

1 はじめに

国土地理院発行地図では花見川は花見川として記載されています。そもそも花見川区という行政単位があり、花見川という河川名称とそれから派生する地域名称は極当たり前の社会事象です。


国土地理地図

ところが、ひとたび河川行政に足を踏み入れると、花見川は印旛放水路(下流部)という名称に替わってしまいます。それは河川法では花見川が印旛放水路(下流部)という名称になっているためです。


河川整備計画における表示

印旛放水路(下流部)と言われて、それが花見川であると理解できる住民はおそらく5%未満、いや1%未満(河川行政関係者だけ)程度であると想像します。

このような状況(一般社会における河川名通称と河川行政における河川名称の齟齬)に違和感をおぼえ、「こともあろうに」というべきか、「怖いもの知らず」というべきか、「おめでたい」というべきかその形容の言葉が見つかりませんが、2013年に千葉土木事務所に河川名称に関する質問状を提出したことがあります。千葉土木事務所からは丁寧な回答を口頭でいただきましたので、その結果を紹介します。

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2 質問(2013年5月)

●花見川の法的河川名称に関する疑問

花見川は法的に「印旛放水路(下流部)」となっています。

この法的名称は、次のような理由により現代社会とマッチしていないという疑問があります。

法的名称「印旛放水路(下流部)」が現代社会とマッチしていない理由

1 事業者独占名称である

花見川は印旛沼の放水路機能を持っているからといって、自然流域から成り立つ河川を「印旛放水路(下流部)」と名付けることは、この川を治水・利水事業者が独占していることになる。

2 河川法の趣旨に反する名称である

平成9年の河川法改正により、河川の目的に環境が加えられ、治水・利水・環境の3つの河川管理により河川の目的を達成することになった。

自然流域から成り立つ花見川を「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことは、この河川法の趣旨と齟齬をきたしている。

3 古代からの名称「花見川」が存在し使われている(注1)

ハナミガワのハナは花島、猪鼻、花輪などのハナと同類で、下総台地の崖に付けられた縄文語由来の一般自然地名ハナである。

古代から受け継がれてきている花見川という名称は人々に親しまれ、行政区の名称にもなっている。

このように由緒ある固有名詞としての花見川を敢えて使わないで「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことに、強い違和感が生じている。

4 「印旛放水路(下流部)」は住民に使われていない

殆どの住民が「印旛放水路(下流部)」という名称自体を知らない。聞いたことがあっても、それが花見川だとは理解していない。「印旛放水路(下流部)」は、事実上、行政機関の隠語にしかすぎない。

一方、花見川という名称を理解していない住民はいない。

5 人工施設をイメージさせてしまう

「印旛放水路(下流部)」という名称は、人々に人工施設という誤ったイメージを与える。花見川が自然流域からなる河川という実態を人々の目から覆い隠す役割をしている。

6 「印旛放水路(下流部)」では川づくり・地域づくりの発想がうまれない

放水路という名称は放水機能単体を表現しており、治水利水を思考するには好都合である。しかし、放水路という言葉からその川の流域について発想することは困難である。流域の発想が出来なければ、その自然や歴史についての発想はさらに困難である。

一方花見川という名称ならば、その自然、歴史、流域に関わる発想がだれでも浮かぶ。

「印旛放水路(下流部)」という名称は、花見川において人々の川づくり・地域づくりに関する興味を生じさせない役割を果たしている。


質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。

質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?

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3 回答(2013年5月)

この質問にたいして次の趣旨の回答(情報)をいただきました。

「質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。」について

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)

①県が住民とコミュニケーションする際には花見川という言葉を使うこともある。県が関係する団体の出版物には「印旛放水路(下流部)」とともに「花見川」という言葉を追記している場合もある。

②法的河川名称について住民からの意見はこれまでない。

「質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?」

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)

①再検討する機会は考えていない。

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4 感想と再質問(2013年5月)

私は次のような感想を持ち、同時に千葉土木事務所に再質問させていただきました。

① 「印旛放水路(下流部)」という河川名称がこれからの川づくりや地域づくりにふさわしくないという意見に県が接したのは、どうも今回が初めてのようです。

住民から意見がないから、名称再検討などの機会を設けることもあり得ないということです。

河川管理者としては、これまで誰も口から発することのなかった疑問に少々驚いた(面食らった)ようです。

私も、そのような河川管理者の様子を感じて、そういう無風環境が存在していることに驚き、面食らいました。

河川管理者というよりも、住民とか自治体(千葉市には「花見川区」まである)が花見川についてどれだけ愛着をもっているのだろうか、どれだけ「自分事」として花見川について考えているのだろうかということが心配になりました。

千葉市が花見川の名称についてどのように考えているのか、いつか聞いてみたいと思います。

また、何かの機会があれば、花見川の河川名称問題について地域で情報発信していきたいと思います。

② 土木事務所の回答は私の疑問に対する回答(情報)ではないので、次のような再質問をさせていただき、後日回答をいただけることになりました。

再質問

「仮に「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、「花見川」とか「○○川」に名称変更すると、河川行政上何かの不都合が発生するか?」

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5 再質問に対する回答と感想(2013年9月)

回答

「印旛放水路(下流部)という名称を別の名称に変更しても河川行政上の支障はない。」

「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、花見川と公式に呼ぶことにやぶさかでないという回答です。

ありがたい有額回答と言ってもいいものです。

沿川住民や千葉市の気持ちの持ち方と活動しだいによっては、花見川という名称が公式に使われる可能性があるということです。

この回答が活きて、実際に「印旛放水路(下流部)」が花見川に正式にチェンジするかどうかは、今後の活動次第だと思います。

私も住民自治組織や千葉市に対して、「印旛放水路(下流部)」から花見川に名称変更する意義、必要性について情報提供したいと思っています。

千葉県が「印旛放水路(下流部)」から花見川に名称変更すれば、右へならえで千葉市も名称変更することになります。そうすれば、行政がつくる計画・諸文書、地図類やパンフレット、現場の看板・各種表示が全て花見川で統一されることになります。

名称変更を機に、花見川に対する関心と愛着が増し、花見川がよい川になっていくきっかけになるとおもいます。

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6 感想(2023年3月)

まず、団体組織・グループとなんらかかわらない純粋1市民(個人)の質問状に丁寧に答えていただいた千葉県千葉土木事務所にあらためて感謝申し上げます。

次の写真は本日(2023.03.17)撮影した柏井橋架替工事関連河川工事(千葉市発注工事)の看板ですが、ここでは花見川が使われています。


工事写真

弁天橋の河川名は花見川になっています。


弁天橋

また千葉県の河川海岸図では花見川が追記されています。


千葉県の河川海岸図(一部)

このように、社会生活の現場では「印旛放水路(下流部)」という名称が使われることは少ないので、使われても花見川が追記されるので、河川名称に関する社会的軋轢や損失の実体は顕在化していないように感じます。

しかし、将来、花見川と周辺住民のかかわりを濃密にした社会がつくられる過程で、「印旛放水路(下流部)」から「花見川」に法的名称を変更することが必要になる時が必ず来ると考えます。

なお、2013年当時はその意義について深く理解できていませんでしたが、「印旛放水路」という名称は江戸時代の印旛沼堀割普請や明治期印旛沼開発(印旛沼開鑿)などの系譜を引き継ぐ用語であり、歴史的、土木的意義のある語法です。「印旛放水路(下流部)」が唐突に生まれた用語でないことの意義も理解しておく必要があります。

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注1 花見川の語源

私は、2013年には花見川の語源を縄文語由来の一般自然地名ハナ由来であると考えていました。現在では花見川の語源は「検見川(ケミガワ)」の吉祥表現「花見川(読みはケミガワ)」が転じて「花見川(読みはハナミガワ)」になったと考え、その時期は幕末から明治はじめ頃と推定しています。

2023.02.21記事「花見川(ハナミガワ)は検見川(ケミガワ)



2023年3月15日水曜日

水中考古学切手

 Underwater archeology stamp


I got an underwater archeology stamp. Underwater excavation of a Roman shipwreck off the island of Giraglia, north of Corsica.


水中考古学切手を入手しました。コルシカ島北のジラリア島沖でのローマ帝国時代難破船の水中発掘調査の様子です。


水中考古学切手 フランス 2022年発行

ワイン貿易で使う巨大壺の水中発掘の様子がデザインされています。

考古学切手収集の中ではじめて水中考古学切手を入手しました。また、調査の様子がデザインされた切手もはじめてです。陸上遺跡発掘調査で調査員が活動している様子をデザインした切手はあるようでほとんどありません。


ジラリア島の位置

2023年3月13日月曜日

剥ぎ取り断面における土器破片分布

 Distribution of pottery fragments in stripped cross section


A 3D model was used to create a preliminary study of the distribution of pottery fragments in the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. The pottery fragments are distributed near the riparian environment at the bottom of the shell layer at any time. A relationship between pottery dumping and the waterside environment is suggested.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面における土器破片分布図を3Dモデルから予察的に作成して考察しました。土器破片は、どの時期貝層もその最下部の水辺環境近くに分布しています。土器投棄と水辺環境との関連が示唆されます。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面土器破片分布予察図


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面土器破片分布予察図

3Dモデルで確実に土器破片であることが確認できるモノは赤丸、土器破片の可能性が残るモノを青丸で表示しました。

今後千葉県立中央博物館の展示現場で双眼鏡等を使った観察を行い、精度の高い土器破片分布図を作成することにします。

2 考察


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面土器破片分布予察図 考察

確認した土器破片(赤丸)を対象に考察すると、つぎのようなメモを作成することができます。

ア 土器破片は貝層最下部に集中して分布する

貝層は約30度の傾斜で重なって堆積していますが、どの時期の貝層でも土器破片出土位置はほぼその最下部です。貝層最下部はその当時のガリー水路にあたる場所です。つまり土器破片は水辺環境付近に集中していることになります。

このことから貝の投棄と土器破片投棄は全く別の原理で行われたことがわかります。土器投棄は水辺における祈願活動と関連していると推察できそうです。

また、この断面でみると、古い土器と新しい土器は水平方向に分布し、通常地層でみられる上下方向分布ではありません。

イ 土器破片はほとんが内面を上側方向にして分布している

土器破片はほとんどが内面を上側方向に、外面を下側方向にして分布しています。これは土器破片が人の手で投げられたものだからであると考えます。つまり、人が投げる時、手で持ちやすいように、土器内面を上にしてつかんで(上からみて凹に湾曲した土器をつかんで)いたからであると想像します。


土器破片の様子


2023年3月12日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面3Dモデルの画像解析資料作成

 Creation of image analysis materials for a 3D model of the stripped shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


I created several image analysis materials from the 3D model to support on-site observation of the Ariyoshi Kita shell Mound stripped cross-section. I created images that index cross-sectional unevenness and shell density, and superimposed images with photographs. It can be used as a reference for stratigraphic line drawing.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示)の現場観察(展示観覧)を支援するために3Dモデルから画像解析資料を作成しました。断面凹凸や貝密度を指標する画像やそれらと写真と重ねた画像を作りました。層位線描画の参考になります。

1 剥ぎ取り断面3Dモデルから作成した画像資料

1-1 通常画像


通常画像

3Dモデルのオルソ投影画像です。

1-2 断面凹凸画像


断面凹凸画像

剥ぎ取り断面を水平に置いた時、上下方向をグレーのグラデーションで表現した画像です。展示で言うと黒が奥、白が手前となります。

1-3 断面凹凸等高線表示画像


断面凹凸等高線表示画像

断面凹凸画像をPhotoshopのフィルター→表現手法→輪郭検出で等高線表示に変換した画像です。

等高線の粗密やパターンが貝の大きさや密度などに対応しています。

1-4 断面凹凸カラー表示画像


断面凹凸カラー表示画像(奥→手前を青→白→赤で表示)

グレーではなく色グラデーションで断面凹凸を表現することにより、断面凹凸が判りやすくなっています。断面凹凸は貝の大きさや密度などと関連していると推察できます。

1-5 「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

断面凹凸カラー表示画像と断面凹凸等高線表示画像の乗算ミックス画像です。

この画像から貝の大きさや密度の様子を推察できると考えられます。この画像は3Dモデルを作成してはじめて得ることができます。

1-6 断面凹凸干渉色表示画像


断面凹凸干渉色表示画像

地図アート研究所(所長やまだこーじ)干渉色変換ツールで断面凹凸画像を干渉色表示に変換した画像です。


干渉色変換の様子

断面凹凸を干渉色に変換することにより、通常カラー変換(2~3色の変換)よりも事象をダイナミックに把握することが可能となります。

干渉色変換ツールを公開している地図アート研究所(所長やまだこーじ)に感謝します。

1-7 「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

断面凹凸干渉色表示画像と断面凹凸等高線表示画像の乗算ミックス画像です。

1-5画像と同じ趣旨の画像ですが、事象をよりダイナミックに表現しています。

1-8 「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像

断面凹凸カラー表示画像と通常画像の乗算ミックス画像です。

1-9 「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像

断面凹凸干渉色表示画像と通常写真の乗算ミックス画像です。

1-10 メモ

次の画像を総合的に参考にすることによって、剥ぎ取り断面に層位線を描く活動が容易になると期待できます。

・通常画像

・「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

・「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

・「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像

・「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像

2 参考 拡大画像

2-1 通常画像


通常画像

2-2 「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

2-3 「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

2-4 「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像

2-5 「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像

3 参考 拡大画像2

3-1 通常画像


通常画像

3-2 「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

3-3 「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像