2026年4月26日日曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross-Sections (Test Analysis)


I conducted a test fabric analysis of shell layer cross-sections and identified areas for improvement. Repeated fabric analysis may reveal the shell layer cross-sectional structure, potentially providing clues for high-concentration flow analysis.


貝層断面のファブリック分析のテストを行い、今後の課題を洗い出しました。ファブリック分析を重ねれば、貝層断面構造が浮かび上がり、高濃度流解析の手がかりを得られる可能性があります。

1 テスト対象

有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面3Dモデルの12㎝×12㎝小画面(メイン検討画面)とその関連域をファブリック分析(テスト分析)の対象とします。


有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面3Dモデル


12㎝×12㎝の小画面(メイン検討画面)

2 分析ツール

二枚貝座標・角度・方向取得ツール(自作Pythonツール)と地物視認性向上画像処理(Photoshopフィルター「輪郭検出」)を分析に使います。

・二枚貝座標・角度・方向取得ツール(自作Pythonツール)

2026.04.23記事「貝層断面の貝殻ファブリック分析の基礎技術メモ

・地物視認性向上画像処理(Photoshopフィルター「輪郭検出」)

2026.04.23記事「技術メモ 貝層剥取断面画像に見える地物大きさの視認性を向上させる画像処理

3 ファブリック分析

3-1 貝殻・土器等の分布

3-1-1 貝殻・土器等種別分布


ハマグリ等二枚貝、イボキサゴ以外で確認できる地物

貝層を構成するハマグリ等二枚貝とイボキサゴが今回メインの分析対象ですが、最初にハマグリ等二枚貝とイボキサゴ以外の主な地物を確認しておく必要があります。

3-1-2 貝殻・土器等大きさ分布

出土地物(貝殻・土器等)の大きさを視認しやすい画像をPhotoshop輪郭検出で作成しました。


地物の大きさを視認しやすい画像(Photoshop輪郭検出)


A,BよりCの地物大きさが小さい

C(2)層を対象とすると、斜面上方のCの方が斜面下方のA、Bより地物が小さいことを視認できます。この特徴は斜面を高濃度流が流下した時の特徴であると予察します。

3-1-3 特異な分布パターン


遺物密集パターンA,Bが観察できる

C(2)層で遺物密集パターンA,Bが観察できます。このパターンはこの剥取断面の他の場所、別断面写真でも確認できるので、高濃度流が斜面を下る際に残したパターンであると予察します。Aは既にある地面で高濃度流先端が止まった時の跡であると予察します。

3-2 二枚貝の分布

3-2-1 二枚貝の分布

・分布


二枚貝の分布

CU層とC(2)層はハマグリをメインとする貝層であり、CD層はイボキサゴをメインとする貝層ですが、当然ながらその差は分布図に反映します。

・ヒートマップ


二枚貝分布ヒートマップ

遺物密集パータンAは大形の二枚貝・巻貝・土器から構成されていますが、それに隣接して二枚貝密集域(ヒートマップの赤域)があります。これらは高濃度流の先端部の構成物として、一連の遺物密集として捉えられると考えます。規模は全く異なりますが、同じ高濃度流である土石流の先端部堆積物と類似の地学事象であると予察します。

3-3 二枚貝の配向

3-3-1 二枚貝の傾斜


二枚貝の傾斜

CU層とCD層の境界、CD層とC(2)層の境界付近の二枚貝は境界線傾斜に類似したものが多いように観察できます。高濃度流流下と関係すると予察します。各層の内部では高濃度流の流下傾斜と異なる傾斜のものが多く、特徴的です。

3-3-2 二枚貝の方向(上凸・下凸)


二枚貝の方向(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸

二枚貝方向(上凸・下凸)はランダムではなく、上凸と下凸がそれぞれ凝集して分布しているように観察できます。何かの構造を表現している可能性があります。しかし、この範囲でその説明をすることは困難です。

3-3-3 二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向・ヒートマップ)

二枚貝方向が下凸(赤色)のものとヒートマップ密集域(赤色)が対応するところが多いことが観察できます。二枚貝下凸は安定している形状であり、高濃度流で多数の二枚貝が運ばれ停止する時に一斉に回転して沈下堆積したと予察します。

4 メモ

4-1 ファブリック分析の順番

最初に「地物視認性向上画像処理」により全体状況を観察して「構造」の見たてを行い、次いで二枚貝座標・角度・方向取得ツールで二枚貝の分布(密度、パターン)、配向(傾斜・方向)を検討することが適切であると考えます。

4-2 有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面作業

有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面について今回利用した2つのツールで作業を進め、貝層構造理解を深めることとします。

4-3 作業の自動化

地物視認性向上画像から遺物大きさに関連する指標デジタルデータを自動取得する方法について検討することとします。

二枚貝座標・角度・方向取得ツールは現在は手作業です。全二枚貝を1つ1つデータ化しています。この作業を最初から自動化することは現代技術なら可能であると考えます。自動化にチャレンジします。


技術メモ 貝層剥取断面画像に見える地物大きさの視認性を向上させる画像処理

 Technical Memo: Image Processing to Improve the Visibility of Surface Object Size in Shell Layer Cross-Sectional Images


Through trial and error, I have acquired an image processing technique that significantly improves the visibility of surface objects such as seashells in shell layer cross-section images. This allows for intuitive understanding that, within the same shell layer, surface objects are larger at the lower part of the slope and smaller at the upper part.


貝層剥取断面画像に見える貝殻など地物大きさの視認性を大幅に向上させる画像処理技術を試行錯誤のなかで獲得しました。同一貝層で、斜面下部では地物大きさが大きく、斜面上部では小さいことを直観的によく理解できます。

1 貝層剥取断面画像


貝層剥取断面画像 (3Dモデルのオルソ投影画像)

貝層分層線は有吉北貝塚北斜面貝層セクション図分層線を画像に合わせて投影トレースしたものです。

2 地物大きさの視認性向上画像


地物大きさの視認性向上画像

貝層剥取断面画像をPhotoshopで「輪郭検出」したものです。

3 参考 セクション図における貝層分層


参考 セクション図における貝層分層

有吉北貝塚北斜面貝層セクション図の貝層分層記号です。分層記号の記述(説明)は掲載されていません。

4 メモ

地物大きさの視認性向上画像のC(2)層を見ると、斜面下部では地物大きさが大きく、斜面上部では小さいことを直観的によく理解できます。

C層(上)、C(2)層は二枚貝(ハマグリ)をメインとする貝層、C層(下)、C(3)層はイボキサゴをメインとする貝層です。


2026年4月23日木曜日

貝層断面の貝殻ファブリック分析の基礎技術メモ

 Basic Techniques for Shell Fabric Analysis of Shell Layer Cross Sections


The first version of the basic digital techniques for performing spatial arrangement and orientation analysis of shells constituting shell layers (shell fabric analysis) has been completed for shell layer cross-sections such as the northern slope shell layer cross-section of the Ariyoshi North Shell Mound and the southern shell layer cross-section of the Kasori Shell Mound. This technique is expected to provide data for understanding shell layer formation processes (sedimentary forces, redeposition, slope formation, etc.).


有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面や加曽利貝塚南貝層剥取断面などにおいて、貝層構成貝殻の空間配列・配向分析(貝殻ファブリック分析)を実行するためのデジタル基礎技術の最初バージョンができました。この技術により貝層形成プロセス(堆積営力、再堆積、斜面形成など)を読み解くためのデータが得られることが期待できます。

1 貝層断面写真の用意


貝層断面写真(有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面の例、画像解像度500pixel×500pixel)

以下の作業はスナップ写真でも可能ですが、詳細判断を正確に行うために、ここでは貝層断面3Dモデルの投影画像を使い、3Dモデルを補助資料として使っています。

2 貝殻座標、角度、方向データ取得方法

二枚貝の画像平面における座標(X、Y)、断面と貝殻が交わる線分の角度、方向(上凸か、下凸か)を求めるPythonスクリプトを作成しました。


Pythonスクリプトで作業した結果画像


Pythonスクリプトで得た結果(csvファイル)の一部

作業方法は、最初に画像の2隅をクリックして座標を設定し、次に二枚貝全てについて断面と貝殻が交わる線分の左端点と右端点のクリック、上凸か(1)、下凸か(2)の入力を行い、「この線分を記録」をクリックします。最後に「csv保存して終了」をクリックします。

画像では二枚貝であるかどうか、上凸か下凸かの判断に迷う場合があり、その時は3Dモデルを参照します。

3 貝殻ファブリック分析方法

仮想断面写真と貝殻座標、角度、方向データをQGISにプロットして貝殻ファブリック分析を行います。

3-1 画像と縮尺をあわせるためのcsvファイル変換

2で得た座標は正規化されたものであるので、座標値に500(画像縦横500pixelに対応)を乗じて変換します。

3-2 QGIS起動し、csvファイル読込

QGISを起動し、「csvテキストレイヤを追加」でcsvファイルを読込ます。

今回作業はQGISの機能を利用するだけで、座標は仮座標として使うため、EPSGコードは何でもよいことになります。ここではデフォルトの4326を使いました。

3-3 貝層断面写真読込

貝層断面写真をジオリファレンサで読込、画像とcsv点を一致させました。


画像と二枚貝座標点

3-4 上凸・下凸色分け

csv点レイヤを複製して、シンボロジ機能により1=青(上凸)、2=赤(下凸)で表示しました。


上凸・下凸色分け

3-5 角度線分表示

csv点レイヤを複製して、ジオメトリジェネレータ機能により30pixel長さの棒で貝殻角度を表示しました。


角度線分表示

3-6 密集域ヒートマップ表示

csv点レイヤを対象にプロセッシング→ツールボックス→補間→ヒートマップで、半径や色などの設定をおこない、点の密集性をヒートマップで表示します。


ヒートマップ表示

4 メモ

貝層断面画像から、二枚貝貝殻の分布・密集性、角度、方向という空間配列・配向を分析するデジタル基礎技術の最初バージョンを作成することができました。これから有吉北貝塚北斜面貝層や加曽利貝塚南貝層などの断面に適用して貝層断面の貝殻分析を深めるとともに、この技術の改良も進めることにします。


加曽利貝塚の貝層断面観覧施設の観覧

 Visiting the Shell Layer Cross-Section Viewing Facilities at Kasori Shell Mound


I visited the shell layer cross-section viewing facilities located at both the North and South Shell Mounds of the Kasori Shell Mound and took photographs for creating 3D models of the shell layer cross-sections. The North Shell Mound displays the excavated cross-section as is, while the South Shell Mound displays a stripped cross-section.


加曽利貝塚の北貝塚と南貝塚にそれぞれ設置されている貝層断面観覧施設を観覧し、貝層断面3Dモデル作成用の撮影を行いました。北貝塚の貝層断面は発掘された断面そのままが、南貝塚は剥取断面が展示されています。

1 貝層断面観覧施設の位置


貝層断面観覧施設の位置(加曽利貝塚博物館パンフレットから引用)

2 北貝塚の貝層断面観覧施設


北貝塚の貝層断面観覧施設(発掘断面そのまま)


北貝塚の貝層断面観覧施設(発掘断面そのまま)


発掘写真


北貝塚の貝層断面観覧施設

3 南貝塚の貝層断面観覧施設


南貝塚の貝層断面観覧施設(剥取断面)


南貝塚の貝層断面観覧施設(剥取断面)


博物館に展示されている剥取断面の一部


南貝塚の貝層断面観覧施設

4 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面3Dモデルのファブリック観察(貝殻土器などの堆積状況詳細観察)を進めていますが、その比較対照資料として加曽利貝塚の北貝塚、南貝塚の断面のファブリック観察を行う予定です。そのための3Dモデル作成用の撮影を行いました。断面延長が膨大であることから、今回の撮影は極一部に留まりました。

南貝塚のハマグリの方が北貝塚のハマグリより大きいことが実感できます。また南貝塚断面には整地した跡など興味深い事象が観察できます。北貝塚断面も遺構との関係など興味が深まります。

まずは3Dモデルを作成してからじっくりと貝層断面を観察することにします。


2026年4月21日火曜日

セクション図トレース作業に取組む

 Undertaking Section Diagram Tracing Work


I am currently conducting a 3D analysis of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, and I have realized the necessity of tracing the section diagrams. Therefore, I have immediately created a work plan and decided to undertake this as a project. Having obtained a broad overview (preliminary interpretation) of the shell layer development, I now have a clearer idea of ​​how to extract information from the section diagrams. For this purpose, tracing the section diagrams has emerged as an essential task.


有吉北貝塚北斜面貝層に関する3D分析を進めていますが、セクション図トレース作業の必要性に気がつきましたので、早速作業計画を立て、プロジェクトとして取組むことにしました。貝層発達大局観(予備解釈)を得たので、セクション図から情報を汲み出すメドが立ちました。そのためにはセクション図トレースが必須作業として浮上したのです。

1 再掲 有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観(予備解釈)


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観(予備解釈)

2026.04.20記事「有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観(予備解釈)

2 これまでのセクション図検討作業

これまで、貝層断面図(セクション図)における貝層区分(貝層分層)の有り方と、断面図間の対比作業を進めてきました。貝層区分と断面図間対比作業はいずれも暗中模索であり、セクション図全体をトレースして分析に使えるようするという発想は生まれませんでした。暗中模索の中で第4断面から第12断面などはセクション図トレース(Illustratorによるトレース彩色)を行ってきた経緯はあります。

3 セクション図トレース作業の必要性

貝層発達大局観(予備解釈)に基づいて、各貝層断面図(セクション図)の検討を行い、合理的な貝層分層を色分け表示する必要が生まれました。その作業は発掘調査報告書掲載貝層断面図では精度的に不十分です。セクション図(セクション図原票を貝層断面図として貼り合わせた集成セクション図)に色塗りして、セクション図に書かれている注記との整合をとる、あるいは整合しない理由の検討をする必要があります。

また、合理的貝層区分を思考する中で、区分の考え方が変更します。その変更の際に、汎用トレース図があり、色変更はワンタッチで出来るようにしておく必要があります。

そのため、全てのセクション図をIllustratorでトレースする基礎作業が必要となります。


発掘調査報告書掲載貝層断面図(凡例による色塗り)


セクション図(貝層断面図として集成したセクション図 反転表示)


セクション図(検討に基づく貝層区分色塗り)

4 セクション図の分布


セクション図の分布

セクション図は全部で31葉あります。


セクション図の分布(3D空間)Blender画面

5 作業イメージ

5-1 作業工程

7月末までの約100日間を予定します。

5-2 セクション図注記の分析

トレース作業の中で、セクション図注記がどの程度存在するのか確認して、その分析をどのように進めることができるか検討します。

6 セクション図トレース後の作業イメージ

セクション図トレース後、貝層区分と断面間対比作業を確定させます。ついで、その貝層区分結果を3Dモデル化します。その結果に基づいて、遺物3D分析を貝層区分3D分布との対応に基づいて行います。


補足資料 発掘状況写真に見える土器片の型式

 Supplementary Information: Types of Pottery Fragments Visible in Excavation Photograph


I have identified the types of densely packed pottery visible in the cross-sectional photograph of the shell layer. The densely packed pottery consists of the middle and middle-to-new stages of the Kasori EII type. I hypothesize that densely packed pottery of this type was transported from a nearby area by a high-density flow and deposited here.


貝層断面写真に写る密集土器の型式を確認しました。密集土器は加曽利EⅡ式中段階と中~新段階から構成されています。このような構成の密集土器が、近傍から高密度流で運搬されてきて、ここに堆積したと想定します。

この記事は2026.04.17記事「資料 発掘状況写真と密集土器分布図との関係(第20断面)」の続きです。

1 発掘状況写真に見える土器片の型式


発掘状況写真に見える土器片の型式

EⅡ中…加曽利EⅡ式中段階土器

EⅡ中~新…加曽利EⅡ式中~新段階土器

2 感想

加曽利EⅡ式中段階土器と加曽利EⅡ式中~新段階土器から構成されるほぼ完形の廃用土器群が近傍に存在し、その廃用土器群を巻き込んだ高濃度流(貝殻泥流)が発生したと想定します。高濃度流に運ばれる中で土器は破壊されて大小の破片となり、その高濃度流の先端に土器群集まったと想定します。高濃度流運動が停止する際に多くの土器片は下凸に回転して沈下し、貝殻の下に堆積した想定します。


2026年4月20日月曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観(予備解釈)

 A Broad Perspective (Preliminary Interpretation) on the Shell Layer Development of the Northern Slope Shell Bed of the Ariyoshi Kita Shell Mound


A broad perspective on the shell layer development of the northern slope shell bed of the Ariyoshi Kita Shell Mound came to mind, so I jotted it down before it faded away. This is a truly satisfying broad perspective on shell layer development that I've finally arrived at after several years of consideration.


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観が脳裏に浮かびましたので、消えないうちにメモしました。数年越し検討ではじめて生まれた納得感のある貝層発達大局観です。

1 有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観(予備解釈)


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層発達大局観(予備解釈)

北斜面貝層の上流部を②断面で、中流部を⑥断面で、下流部を⑪断面で代表させています。

1 崩落層形成(崩落現象)

ガリー侵食によりガリー浸食谷が生じ、浸食谷側面に斜面上部から台地構成層が崩落し、崩落層が形成しました。

2 斜面貝層形成(貝殻投棄→高濃度流による移動・堆積))

崩落層上面は急斜面になっていますが、その急斜面に向けて、左岸台地面端から貝殻や生活残滓が投棄されました。降雨により貝殻などは高濃度流(貝殻泥流)となって斜面を下りました。右岸からも高濃度流(砂泥流)が発生しました。左岸と右岸の高濃度流は谷底付近で接触(衝突)しましたが、混ざり合うことはありませんでした。

3 上流浸食、下流堆積(流水による浸食・運搬・堆積)

上流で2斜面貝層などが浸食され、それが下流で堆積する流水による浸食・運搬・堆積現象が突然発生し、収束しました。

4 斜面貝層形成(下流のみ、貝殻投棄→高濃度流移動・堆積)

下流でのみ、再び貝殻などが投棄され、それが高濃度流で移動堆積して4斜面貝層が形成されました。4斜面貝層は3堆積層を覆い、ガリー浸食谷は完全に埋まりました。

2 感想

北斜面貝層全体を通した貝層発達大局観をはじめて持つことができました。この大局観で第2断面から12断面まで齟齬なく説明できます。

ただし、詳細に踏み込むと、次のような事象をどのように位置付けるか、今後細部の検討が必要です。

・下流の崩落層では湖成層のような層相のところがあり、堰き止めがあったようです。この事象をどのように位置付けるか。

・2斜面貝層は中流では密集土器を指標に2区分しました。下流部の検討(※)では層相から5区分しました。今後全体を通して適用できる区分を行う必要があります。

・中流、下流の右岸側2斜面貝層(実際は貝層ではなく土層)に崩落層が含まれている可能性があります。

※ 荒木稔・西野雅人:有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用(2025.05、千葉縄文研究会)


2026年4月19日日曜日

資料 第20断面における密集土器分布(予備解釈の裏付け資料)

 Document: Distribution of Densely Concentrated Pottery in Section 20 (Supporting Document for Preliminary Interpretation)


I previously made notes on the "Preliminary Interpretation Regarding the Distribution of Shell Layers and Densely Concentrated Pottery as Seen in Sections 4-6" of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. As supporting documentation, I have created a map showing the distribution of densely concentrated pottery in Section 20. The densely concentrated pottery is distributed in two layers, upper and lower, which I believe corresponds to two events (two occurrences of high-concentration flows).


有吉北貝塚北斜面貝層の「第4~6断面でみた貝層と密集土器分布に関する予備解釈」をメモしましたが、その裏付け資料として、第20断面における密集土器分布図を作成しました。密集土器が上下2層に分布していて、2つの事象(2回の高濃度流発生)に対応すると考えます。

この記事は2026.04.18記事「第4~6断面で見た貝層と密集土器分布に関する予備解釈」の続きです。

1 第20断面と土器分布図の対応関係及び密集土器分布


第20断面と土器分布図の対応関係及び密集土器分布

第20断面図はセクション図貼り合わせ図です。

土器分布図は土器集中区間における土器分布図です。発掘調査報告書掲載図です。

密集土器分布(赤丸)は隣の土器までの距離が10㎝以内にある土器を密集土器と定義し、その密集土器の当該断面前後10㎝以内スリットにあるものの分布です。

2 第20断面から10㎝以内の密集土器の分布


第20断面から10㎝以内の密集土器の分布

密集土器分布を近傍のものでくくってみると、1~6の塊として把握することができます。

このうち1~5は予備解釈の第2波貝殻泥流に起因する土器破片に、6は予備解釈の第1波貝殻泥流に起因する土器破片として捉えることができます。

なお、1~5の分布に対応した貝層分層分布をみると、貝層分層がそこで生起しているように記載されているところがあります。この対応関係から、1~5の事象生起は完全に同一ではなく1→2→3→4→5の順番に連続的に、しかしある程度の時間差をもって生じたと考えることもできます。

つまり、1~5は貝層全体の発達の中では同一と捉えても、ミクロな視点で考えれば、細別して捉えることもできると考えます。

3 第20断面スリット(前後10㎝スリット)の密集土器分布図の作成方法メモ

・北斜面貝層の全土器分布csvファイル→密集土器抽出Pythonスクリプト→北斜面貝層の密集土器分布csvファイル

・北斜面貝層の密集土器分布csvファイル→第20断面前後10㎝スリットから密集土器を抽出するPythonスクリプト→第20断面前後10㎝スリットの密集土器分布csvファイル

・第20断面前後10㎝スリットの密集土器分布csvファイル→座標のあるcsvをBlenderにプロットするPythonスクリプト→Blenderに第20断面前後10㎝スリットの密集土器プロット(点群としてプロット)

・Blenderで、第20断面スリット密集土器点群をgeometry nodesで赤球表示

・Blenderで、第20断面位置調整(前後10㎝オブジェクト(赤球)を全部投影するための位置変更)

・Blenderで、第20断面に赤球投影表示→画像取得


Blender画面(第20断面(本来の位置から20㎝移動している)と密集土器(幅20㎝スリット内の赤球))


2026年4月18日土曜日

第4~6断面で見た貝層と密集土器分布に関する予備解釈

 Preliminary Interpretation of Shell Layers and Densely Concentrated Pottery Distribution as Seen in Sections 4-6


I have noted down a preliminary interpretation of the distribution of shell layers and densely concentrated pottery as seen in Sections 4-6 of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. The densely concentrated pottery, which appears as a single phenomenon in the plan view, can be divided into two distinct phenomena in the cross-sectional view. Furthermore, it appears that the densely concentrated pottery, transported by the high-concentration flow on the left bank (shell mudflow), was incorporated into the high-concentration flow on the right bank (sand mudflow).


有吉北貝塚北斜面貝層の第4~6断面でみた貝層と密集土器分布に関する予備解釈をメモしました。平面図で一つの事象のように分布する密集土器は、断面図でみると上下2つの事象に区分できます。また左岸高濃度流(貝殻泥流)で運ばれてきた密集土器が右岸高濃度流(砂泥流)に取り込まれているようです。

1 貝層と密集土器3D分布に関する予備解釈メモ


貝層と密集土器3D分布に関する予備解釈メモ

・第1波貝殻泥流堆積物が第4、5、6断面の底部に 堆積した。

・第5、6断面付近には密集土器を残した。

・第2波貝殻泥流堆積物が第1波堆積物の上に 堆積した。

・第4断面では貝層末端に密集土器を残した。

・第5断面、第6断面では貝層末端の密集土器が右岸砂層泥流に飲み込まれた。

2 補足

平面図で分布する密集土器を、これまでは連続する一つの事象として考えてきましたが、第4~6断面図と照合して、貝層と密集土器それぞれが上下2つに区分できることに気がつきました。

また左岸高濃度流の先端で運ばれてきた密集土器が、右岸高濃度流に取り込まれているようです。右岸高濃度流の方が勢いが強く、左右岸高濃度流が接触(衝突)する境部分で、左岸から運ばれた密集土器が右岸高濃度流に飲み込まれたと考えました。


2026年4月17日金曜日

資料 発掘状況写真と密集土器分布図との関係(第20断面)

 Document: Relationship between excavation photographs and dense pottery distribution map (Section 20)


In Section 20, the correspondence between pottery fragments in the excavation photographs and those in the dense pottery distribution map was determined. This document provides an important clue for understanding the relationship between dense pottery distribution and shell layers in detail within a 3D space.


20断面において、発掘状況写真の土器片と密集土器分布図の土器片の対応関係が判明しました。この資料は3D空間において、密集土器分布と貝層との関係を詳しく知るための重要なてがかりとなります。

1 発掘状況写真

第4断面検討に関連して、第20断面に関係する発掘状況写真の空間位置を検討することにしました。


発掘状況写真1


発掘状況写真2

2 発掘状況写真と密集土器分布図との関係


発掘状況写真と密集土器分布図との関係

写真に写る個々の土器片と密集土器分布図の個々の土器片が対応したことに驚きました。この資料によりより一層詳しい分析が可能となります。

3 第20断面と写真との関係


第20断面


参考 第4断面

発掘状況写真2は第20断面の現場写真そのものであると言えます。