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2021年11月22日月曜日

山梨県考古学協会研究集会「曽利式土器とその周辺」2日目zoom参加

 Yamanashi Prefectural Archaeological Association Research Meeting "Sori-style pottery and its surroundings" Participated in zoom on the second day


I don't know about myself, but I also participated in the 2021 Yamanashi Prefectural Archaeological Association Research Meeting "Sori-style pottery and its surroundings" on the second day (2021.11.21) at zoom. The discussion based on the Sori-style (system) pottery 7,000 individual collection materials was powerful, and I was impressed even though I was an amateur when I made a research breakthrough. I am curious about the discussion about the exchange between Sori-style pottery and surrounding pottery types.


身の程知らずですが、2021年度山梨県考古学協会研究集会「曽利式土器とその周辺」2日目(2021.11.21)もzoomで参加しました。

1 演目

演目は次の通りです。

●曽利式土器と周辺土器型式群との関係

「曽利式土器と曽利式系土器」(帝京大学文化財研究所 櫛原功一)

「大木式土器文様の南下」(長野県立歴史館 水沢教子)

「加曽利E式系土器の広がり」(名古屋市教育委員会 纐纈茂)

「連弧文土器の広がり」(東京都埋蔵文化財センター 大綱信良)

「唐草文(系)土器の広がり」(山梨県埋蔵文化財センター 岩永祐貴)

●各地の曽利式(系)土器

「福島県・茨城県・栃木県における曽利式(系)土器の集成」(東京大学大学院人文社会系研究科 太田圭)

「群馬県における曽利式(系)土器集成」(群馬県文化財保護課 多賀谷蓮)

「埼玉県における曽利式(系)土器集成」(埼玉県埋蔵文化財調査事業団 入江直毅)

「千葉県における曽利式(系)土器集成」(船橋市埋蔵文化財調査事務所 小林美貴・箱石幸祐)

「東京都における曽利式(系)土器集成」(東京都埋蔵文化財センター 佐賀桃子)

「神奈川県における曽利式(系)土器集成」(北杜市教育委員会 生山優実)

「山梨県東部域の曽利式土器集成」(帝京大学文化財研究所 櫛原功一)

「山梨県西部域の曽利式土器集成」(北杜市教育委員会 村松佳幸)

「静岡県における曽利式(系)土器集成」(山梨県埋蔵文化財センター 桐部夏帆)

「長野県における曽利式(系)土器集成」(井戸尻考古館 副島蔵人)

「愛知県における曽利式(系)土器集成」(小松市埋蔵文化財センター 横幕真)

「岐阜県における曽利式(系)土器集成」(山梨県埋蔵文化財センター 岩永祐貴)

●討論(司会者、発表者、コメンテーター)

2 メモ

有益な情報を多数獲得することができましたが、その概要を全てメモしだすときりがありません。そこで特に興味を抱いた情報に絞ってメモします

ア 曽利式土器分類の基本情報

曽利式土器と曽利式系土器分類の基本情報が櫛原論文として提示されています。曽利式土器学習の基本になると考えます。


曽利式土器の分類

研究集会資料集「曽利式土器と曽利式系土器」(帝京大学文化財研究所 櫛原功一)から引用


曽利式土器と曽利式系土器の分布

研究集会資料集「曽利式土器と曽利式系土器」(帝京大学文化財研究所 櫛原功一)から引用

イ 曽利式土器と周辺土器型式群との交流様相

曽利式土器と周辺土器型式群との交流様相が各発表者により多数例示・検討されています。

・大木式と曽利式の文様・技術の交流、時間的にパラレルな変化。

・曽利式土器と連弧文土器の非対象的交流の様相

・曽利式土器の波及影響が東部方面(重弧文、斜行文)と西部方面(X把手)で異なる様相

ウ 異系統土器やキメラ土器が伴う理由(背景)

ウ-1 高橋龍三郎

・土器型式圏は婚姻圏である。

・土器は女性がつくっている。母系制である。代々母親から娘へと土器型式が伝わる。その女性が夫の離れた集落へある程度長期にわたって行くことがある。そこで別の型式や技術を夫の母親から習得する。そして自分の集落にもどり、「異系統土器」をつくることがある。

・完形土器の移動もプレゼントとして血縁組織のなかで行われる。

・曽利式も唐草文も婚姻圏である。

・曽利式圏が加曽利E圏に入り込む事象があれば、部族間の勢力争いを表しているとみることもできる。

・加曽利E式が遠方まで進出するのは、トーテミズムが関係している。おなじトーテムの氏族の間では親戚のようにお互いを助けるので、遠方の知らない土地まで出かけられるようになる。交通の便が飛躍的によくなる。加曽利E3式-4式ではトリ形の氏族により、また外婚性により、遠方まで到達できるようになった。交通がトーテミズムによってとても円滑になった。

・連弧文土器分布は地域性があり、一時的ではなく、同じ仲間がそこにいる証拠である。連弧文分布域はその婚姻ネットワーク域である。

ウ-2 谷口康浩

・中期環状集落発生と勝坂式発生とキメラ土器・異系統土器発生が時期的に重なり、その事象から社会の様子を紐解く必要がある。そのころの社会認識は高橋先生想定とは異なる。高橋先生の半族の考えは成り立たないように考える。

エ 曽利式を古式と新式に2大別分離する案

エ-1 谷口康浩

・曽利古式と新式分離は重要である。文様や構成が違って見えるので、同一視できない。

・土偶などの系統でみても曽利の古と新は違う。文化の系統からも土器型式を見るべきだ。

エ-2 戸田哲也

・古式と新式分離の検討はあまり意味がない。むしろ、曽利式の編年を山梨中心部で固めてほしい。

オ 資料集の活用

・この資料集に曽利式(系)土器が7000個体集成されていて画期的である。この資料にもとづいて、つまり土器実存情報に基づいて、曽利式土器と周辺土器型式群との交流の様相を研究していきたい。

3 感想

・この研究集会が曽利式土器研究および関東・中部の中期土器研究の画期となる重要イベントであることに、参加後、気が付きました。

・2日間にわたる専門家の曽利式土器に関する討議を聴講して、曽利式土器に関する問題点がどこにあり、どのような研究が行われているのか全体像がわかりました。

・一般向け講演会とくらべると得られる情報量と刺激(得られるモチベーション)が全く異なることを体験しました。

・曽利式土器の型式学的研究で得られる成果の意味をどのような方法で明らかにするのか、その点が大きな論点になっていることが浮き彫りになったと考えます。

・曽利式土器と周辺土器型式群との交流実体情報がこれから急速に蓄積していった時、その意味をどのように汲み取るか、その方法の違いも浮き彫りになりました。

・高橋龍三郎先生はパプアニューギニアなどの民族知識投影という方法を強味にして意味を汲みだそうとしているように見えます。一方、谷口康浩先生は土器型式と文化的資料の対比を軸に意味を汲みだそうとしています。お二人の意味汲みだし方法が異なり、またイメージする中期社会様相も異なり、その差異を意識しつつ自分の学習を深めていくことにします。

・zoomによる研究集会参加は移動のエネルギーを使わないで済むので、とても合理的な活動であると感じました。集会に参加しながら同時に書斎環境(パソコン環境)も使えるので、学習効率も向上します。移動時間もなくなり、学習に集中できます。

・これほどの研究集会を組織された関係者及び事務局の方々に感謝します。


2021年11月20日土曜日

2021年度山梨県考古学協会研究集会「曽利式土器とその周辺」1日目にzoomで参加

Participated in the 2021 Yamanashi Prefectural Archaeological Association Research Meeting on the first day at zoom

I don't know about myself, but I participated in the 2021 Yamanashi Prefectural Archaeological Association Research Meeting "Sori-style pottery and its surroundings" on the first day (2021.11.20) at zoom.

Lecturers are Ryuzaburo Takahashi, Yasuhiro Taniguchi, and Tetsuya Toda.

I was deeply interested in the story of Ryuzaburo Takahashi's circular village and totemism, and was drawn into it. At the same time, I was skeptical about the deer bone waist decoration bird expression theory.

身の程知らずですが、2021年度山梨県考古学協会研究集会「曽利式土器とその周辺」1日目(2021.11.20)にzoomで参加しました。

演目は次のとおりです。

開会挨拶(山梨県考古学協会会長 末木 健)・趣旨説明(櫛原功一)

基調講演1 「土器装飾からどのようなストーリーを描くか-社会史復元に向けての試み-」(山梨県立考古博物館、早稲田大学 高橋龍三郎)

基調講演2 「縄文土器型式の概念と実体-曽利式土器の多型と変異-」(国学院大学 谷口康浩)

基調講演3 「曽利式土器の伝播に見る土器型式の諸問題」(玉川文化財研究所 戸田哲也)


事前に郵送されてきた研究集会資料

それぞれの演目ともにとても興味深いものですが、自分の興味の深さの程度に基づいた順番で感想をメモします。

1 高橋龍三郎先生講演

・次の項目のお話がありました。

「中期環状集落の構造の説明、環状集落の解体の理由説明、後期分散型集落への移行、後期集落の特性としての氏族制とトーテミズム、(ふりかえって)中期動物形象とプロト・トーテミズムの説明」

・現在自分が実施している有吉北貝塚学習とか、興味を持っているトリの意義とか、半獣半人の事例などについて「それが知りたかったのです」と口に出したくなるような興味深い話を聞き、情報を得ることができました。有吉北貝塚学習については、今回の話で自分にとっての学習意義が一挙に深まり、学習を深めるきっかけになりそうです。

・土製品や土器貼付の動物造形が氏族制やトーテミズムという観点で観察すべきことがわかりました。これまで観察してきた遺物や今後観察する遺物から得られる情報・思考が豊かになりますから、ワクワクします。

・草刈遺跡出土の鹿骨製腰飾についてそれがトリ表徴であるとして半族の話が進んでいました。草刈遺跡環状集落を考える上でそれがトリ表徴であるということは重要なポイントとなっています。トリ表徴である根拠は、東北の〇〇先生(聞き取れず)とか春成先生もこれをトリ表徴であるとしているからだとのお話でした。出っ張っている部分がクチバシで、丸い穴が目であるという説明です。


草刈集落の半族のレガリア

研究集会資料集から引用

しかし、この鹿骨製腰飾りは西野雅人(2012)「縄文中期腰飾出現の背景」(千葉県縄文研第49回例会資料)では勝坂式土器の蛇体文との比較でヘビ表徴として考えられています。


勝坂式土器の蛇体文との比較

西野雅人(2012)「縄文中期腰飾出現の背景」(千葉県縄文研第49回例会資料)から引用

西野雅人先生鹿骨製腰飾りヘビ表徴説は資料を読むとその根拠が強いように感じます。一方高橋龍三郎先生トリ表徴説は「〇〇先生や春成先生の言説」を根拠としているという点で虚弱であるように感じました。縄文時代とトリの関係に興味をもっているので、特に気になりました。

・高橋龍三郎先生の研究にとても強い興味を持ち、また素人ながら共鳴・共感するところが多いので、先生の著作をよく読み、機会をみつけてお話を聞き、学習を深めたと思います。

2 谷口康浩先生講演

今年の3月に「土器から探る縄文社会-2002年度研究集会資料集」(2002、山梨県考古学協会)を入手し、「谷口康浩(2002):縄文土器型式情報の伝達と変形-関東地方に分布する曽利式土器を例に-」を学習したので谷口康浩先生講演はとても興味がありました。

2021.03.31記事「曽利式土器情報伝達と変形の学習

先生のお話もよく理解できました。2002年論文とくらべて先生の思考がバージョンアップしている様子が素人ながら感じることができました。

お話の最後で「展望 縄文土器型式研究のこれから」と題して「土器の多型・変異に潜在する情報」として次の4点をあげられ、そうした分野での研究が進むとのべられました。

・土器製作者に関する情報(性別・世代・分業・熟練度など)

・技術の社会化に関する情報(技術の共有・教育・伝承など)

・コミュニケーションシステムに関する情報(情報交換・集団関係など)

・物質文化と社会に関する情報(流行・集団表象・文化伝統など)

これらのテーマは興味深いものばかりであり、無味乾燥なイメージ感のある土器研究がより豊かなものに変身していく可能性を感じました。それにより自分の縄文土器学習モチベーションが高まるような気持ちになりました。

3 戸田哲也先生講演

・曽利式土器区分、加曽利E式土器区分、大木式土器区分の対比を地域別に行い、各地域でどのような問題があるのか現場から検討し、話題提供するという趣旨の講演でした。

・長野県棚畑遺跡では加曽利E3式土器が多出し、それは荒川源流部などを通じて埼玉・群馬方面からもたらされたというお話は印象に残りました。

・自分には加曽利E式土器区分は別にして、曽利式土器区分、大木式土器区分などの詳細をイメージできる知識がありません。したがってお話のほとんどが実感を持って理解することができませんでした。資料も土器実測図版だけでした。多少なりともメモがあれば良かったと思います。