2017.07.23記事「竪穴住居跡送り場のイメージ」からのつづき記事になります。
大膳野南貝塚の縄文時代後期集落竪穴住居跡に祭祀用柱(イナウ、ヌササンなど)跡と推定できる柱穴を紙上発見できるのでないかと疑ってきています。
西根遺跡出土物にイナウが見つかったので大膳野南貝塚で発見できる可能性は濃厚であると考えてきています。
この記事では後期集落の全ての廃屋墓(10軒の竪穴住居)について柱穴色分け図を作成してみました。
1 大膳野南貝塚後期集落の廃屋墓分布
大膳野南貝塚後期集落の廃屋墓分布
2 柱穴色分け図
2-1 加曽利E4~称名寺古式期
J88
発掘調査報告書では機能不明柱穴はありません。
2-2 称名寺~堀之内1古式期
J77
発掘調査報告書では機能不明柱穴はありません。
2-3 堀之内1式期
J67
発掘調査報告書では機能不明柱穴が家屋内と家屋外に存在します。
家屋内機能不明柱穴が東西に並んでいて、北に向かって拝む祭壇の可能性を感じます。
出入口付近の機能不明柱穴もこの場所が送り場であることを示す標識の柱である可能性を感じます。
J95
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内と家屋外に存在します。
J74
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内に多数存在します。
J79
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内に存在します。
北側の機能不明柱穴は少し斜めですが、北向きに拝む祭壇の可能性を感じます。
J18
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内と家屋外に存在します。
家屋内の機能不明柱穴は北向きに拝む祭壇の可能性を感じ取ります。
J9
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内に存在します。
機能不明柱穴の配列は北向きに拝む時の祭壇の可能性を感じます。
2-4 堀之内2式期
J40
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内に存在します。
J11
発掘調査報告書で機能不明柱穴が家屋内と家屋外に存在します。
3 検討の方向
10軒の廃屋墓竪穴住居のうち8軒の廃屋墓竪穴住居で機能不明柱穴が見つかりました。
8軒のうち4軒の機能不明柱穴の並びが、北を向いて拝むときに設置するであろう祭壇の柱の並びのように観察することができます。
この10軒の機能不明柱穴の分布だけでシッカリとした判断をすることはできませんが、廃屋墓竪穴住居に祭祀用柱が存在していた可能性を思考する合理的根拠を得ることができたと考えます。
(2017.12.02追記 祭祀用柱が建てられた(祭壇が建設された)時期は、住居としての役目を終えた後、家屋構造物の中に建てられた場合と、家屋構造物が撤去あるいは焼却された後の穴に建てられた場合の双方が存在したのではないかと前期集落の柱穴分析から想像しています。)
次の記事でこのデータを使って分析を深めてみることにします。
なお、機能不明柱穴には次の要素が含まれ得ると考えています。
1 祭祀用柱(イナウ、ヌササンなど)の柱穴
2 当該竪穴住居の構造柱の柱穴
3 重複竪穴住居の構造柱の柱穴
4 当該竪穴住居の乾燥施設の柱穴(2017.12.03追記)
祭祀との関わりが薄いと考えられる竪穴住居(出土物がほとんど無いものなど)についてこの記事と同様の柱穴色分け図を作成して廃屋墓竪穴住居と統計的比較すると、廃屋墓竪穴住居データの意味が浮かび上がるかもしれないと考えていて、順次作業をしてみることにしています。
2017年12月1日金曜日
2017年4月25日火曜日
テラス付き竪穴住居における非構造柱穴配列の相似性
大膳野南貝塚 前期後葉集落 テラス付き竪穴住居における非構造柱穴配列の相似性
大膳野南貝塚前期後葉集落の竪穴住居に関して発掘調査報告書では4つのグループについてその位置近接性からその関連性を指摘し、「これらの住居には時期的な前後関係があるものと推定される。」と記述しています。
2017.04.18記事「複数竪穴住居の関連性検討」参照
この記事ではそのうちのDグループ(J83、J89、J97、J98)について検討します。
大膳野南貝塚前期後葉集落の竪穴住居に関して発掘調査報告書では4つのグループについてその位置近接性からその関連性を指摘し、「これらの住居には時期的な前後関係があるものと推定される。」と記述しています。
2017.04.18記事「複数竪穴住居の関連性検討」参照
この記事ではそのうちのDグループ(J83、J89、J97、J98)について検討します。
J83、J89、J97、J98の位置関係
1 出土物等による検討
次の2つの表に示す通り、優勢土器が諸磯式であるものが3つあること、建物の面積が狭いことなどから4つの住居に共通性があります。
同時にJ97では獣骨出土量が特段に多く(中テン箱6箱)、またこの住居にはテラスが付いていて他の近接住居と異なる様相が観察できます。
大膳野南貝塚 前期後葉集落 獣骨出土量
大膳野南貝塚 前期後葉集落 竪穴住居
2 竪穴住居柱穴分析による検討
J83、J89、J97、J98について発掘調査報告書の記述に基づいて柱穴分類を図化しました。
J83柱穴分類
J89柱穴分類
J97柱穴分類
J98柱穴分類
J83、J89、J98は構造を読み解くことが困難であるような柱穴分布が似ているので、同じ血族の住居と考えても合理性を欠かないという印象を受けます。
一方J97はテラスを有していて明瞭な壁柱を有しているのでJ83、J89、J98と並列な建て替えの一環であるとは考えづらいと考えます。
4つの住居が諸磯式土器一族のものであると考えられますが、J97だけは通常の建て替え行為の中でうまれたのではなく、特別な意義のある建物として建てられたと想像します。
諸磯式土器一族のシャーマンとかリーダーの居住を意識して建てられたと想像します。
4軒の竪穴住居の関連性はJ83・J89・J98グループとJ97の2つに分解できそうです。
3 J56とJ97と非構造柱穴配列の相似性
J97の説明の無い柱穴、つまり構造に関係しない柱穴は祭祀用柱(祭壇用柱)であると想定されます。それを図化すると次のようになります。
J97の説明の無い柱穴の分布
この分布はJ56の同じ分布図とパターンが酷似しています。
J56 説明のない柱穴、意味が不明の柱穴の分布
2017.04.22記事「建物構造と関係しない竪穴住居柱穴の配列様式」
ここでJ97もJ56もAは建物入口付近の建物内テラス下に建物の一部として常備されていた祭壇であると想定します。
Bは建物廃絶時の故人送りに際して建てられた送り用臨時祭壇であり、そのそばで土器送り、動物送り(獣骨堆積)などが営まれたと考えます。
J97は諸磯式土器優勢、J56は浮島式土器優勢で血族が異なりますが、その血族のシャーマン(リーダー)送りの祭壇の設置の仕方がテラスや獣骨堆積場所との関係から同じであることが判明しました。
祭壇の配置の仕方が同じであるとういことは、祭祀の営み方も同じであったことを表現していると考えます。
浮島式土器一族と諸磯式土器一族は集落内で明瞭な社会的優劣が観察でき、生業の分担も異なるようですが、送り祭祀に関する心性は同じであったことが判りました。
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