1 発掘調査報告書による土器分布図
西根遺跡の土器集中は獣骨を伴い、特定の意義を有する祭祀空間であると考えています。
土器はほとんど全て加曽利B式土器であり、それが正立平面配置されていたと考えられています。
加曽利B式土器の配置は集中地点別に小ブロック図に分布図として発掘調査報告書に掲載されています。
土器分布図
土器分布図凡例
この土器分布図を読み解くと加曽利B式土器平面配置による祭祀造景空間をある程度よみがえらすことが可能であると考え、出来るところまでチャレンジしてみることにします。
この記事では土器分布図をGISにプロットして、集中地点の精細分布図および土器重量分級図とオーバーレイして眺めてみて、感想(見立て)をメモします。
2 土器分布図と土器重量分級図等とのオーバーレイ図
第1集中地点
小グリッド色分けは土器重量で凡例は2017.06.01記事「西根遺跡 水辺祭祀濃密さの空間評価」参照
第2集中地点
第3集中地点
第4集中地点
第5集中地点
なお、第6、第7集中地点の分布図は作成されていません。
3 感想(加曽利B式土器平面配置による祭祀造景空間の見立て)
・不用な土器を端から置いていったようなものではなく、意識的に土器配置風景を創出した造景空間であったと考えます。
・土器集中部(「土器集中地点」に複数存在)の分布から期間限定の大小造景空間プロジェクト(祭祀プロジェクト)が存在していたと考えます。
・大口径土器(45㎝以上)により祭祀造景空間のおおよその骨格を作っていた可能性が感じられます。(大口径土器を集中域中心部と集中域外側線に配置)
・中口径土器をメイン素材にして集中区域造景を行ったと考えられます。(造景の量的実質素材は中口径土器44㎝~25㎝)
・精製土器を集中域に満遍なく配置していることから精製土器が造景上(祈願上)特定の意味を有していたと感じられます。(造景の質的レベルを高めるための優良素材のように感じられます。)
・大口径土器出土頻度は土器集中域の大きい第1、第3、第5にほぼ限られることから(ただし第2からも1器出土)、手に入れにくい造景素材であり、苦労して(大きな集団を背景にして)それを手にした様子が感得されます。(このような事情から、土器集中配置が意識的組織活動であり、プロジェクトであることが判ります。)
・大口径土器は西岸(右岸)のみから出土していて、西岸の土器集中に関わる母地域(母集落群)が東岸のそれより裕福であったことを物語っています。
・今後このような感想の的確性をGIS空間分析や統計分析で検証してみることにします。
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