この記事では同じ第2、第3集中地点について考察します。
1 第2集中地点
第2集中地点から特大加曽利B式土器が1器出土しています。
特大加曽利B式土器(最大径45㎝以上)の分布 第2集中地点
画像は発掘調査報告書「印西市西根遺跡」から引用
この出土小グリッドの位置を獣骨重量分布図にプロットすると次のようになります。
獣骨重量分布図 第2集中地点 特大加曽利B式土器分布プロット
土器重量及び獣骨重量ともに値の小さな分布であり、かつその分布は相関していて、次のようなゾーニングの可能性をまとめることができます。
祭祀造景空間主要部ゾーニングの可能性 第2集中地点の見立て(2017.06.05)
Bゾーンは特大加曽利B式土器を伴う土器密集低ゾーンであり、祭祀主催者が特大土器を配置して目印とし、その付近で祭祀アクティビティー(祈祷、踊り…)、一般人による土器「奉納」、獣骨調理肉食祭祀が全て行われたと考えます。
第1集中地点のように機能が空間的に分化していなかったと考えます。
それだけ小規模の祭祀が営まれた場であったと考えます。
Dゾーンは祭祀主要部からはなれた風景のなかに小土器送り場を配置して、周辺の造景(修景)を行った空間であると考えます。
2 第3集中地点
第3集中地点から特大加曽利B式土器が7器出土しています。
特大加曽利B式土器(最大径45㎝以上)の分布 第3集中地点
画像は発掘調査報告書「印西市西根遺跡」から引用
土器重量と獣骨重量の分布はよく相関しているように観察できます。
この分布と特大加曽利B式土器分布は少しずれているように見えます。
つまり土器重量や獣骨重量の値が大きなグリッドに特大加曽利B式土器が集中するだけでなく、それらの値が小さなグリッドにも特大加曽利B式土器が分布するということです。
特大加曽利B式土器は祭祀の中心部に配置して目印にするだけでなく、祭祀空間の区画にも使われたと考えます。
第3集中地点では祭祀空間における土器「奉納」空間と祭祀アクティビティー空間が分化していて、その全体を特大加曽利B式土器が囲っていたと考えます。その考えを次に模式的に示します。
祭祀造景空間主要部ゾーニングの可能性 第3集中地点の見立て(2017.06.05)
Aゾーンは特大加曽利B式土器を伴う土器密集高ゾーンであり、同時に獣骨重量の値が大きな場所であることから土器「奉納」と獣肉食祭祀が行われた場であると考えます。
Bゾーンは特大加曽利B式土器を伴う土器密集低ゾーンであり、土器「奉納」の場に隣接する祭祀アクティビティー(祈祷、踊り、…)の場であったと想定します。
Dゾーンは特大加曽利B式土器を伴わない土器密集低ゾーンであり、祭祀空間主要部から離れた周辺の風景を小土器送り場を配置することにより造景(修景)した空間であると考えます。
A、B、Dゾーンには送り土器だけでなく、立木や丸太でできた祭壇(イナウ列)がそれぞれ配置され、祭祀空間にふさわしい風景が作られていたと考えます。
なお、第3集中地点だけ1つの小グリッドから複数(3つ)特大土器が出土します。
この理由は、第3集中地点だけ同じ空間が2回にわたって祭祀に利用されたことによるからだと考えます。
第3集中地点では土器出土層の間に砂層が挟まり土器出土層が2層になっていることからこのように考えることができます。
土器送り祭祀や獣肉食祭祀が行われた後(あるいはその途中に)出水があり、祭祀会場に砂層が堆積して空間が完全にリセットされてしまった結果、再びその場で祭祀を行ったものと想定します。
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