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2021年12月29日水曜日

マダカアワビ貝刃の真珠干渉色変化の確認

 Confirmation of pearl interference color change of madaka abalone shell knife


The pearl interference color change of the madaka abalone shell knife was confirmed in the photograph. The pink and green brilliant stripes change. The gorgeous pearl interference color change must have fascinated the Jomon people. With my own technology, I cannot express pearl interference color change with a 3D model.


マダカアワビ貝刃はその輝きから大膳野南貝塚縄文人にとって実用性を超越した特別の道具(「第2の道具」)であったと考えました。

2021.12.27記事「「第二の道具」としてのマダカアワビ貝刃

葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」展示説明でも「内面に太陽光やライトを当てると虹色に照り返し、光を反射する特殊な道具として用いられた可能性が高い。」と述べています。

この「虹色の照り返し」とは真珠干渉色に外なりません。そして真珠干渉色とは静的な輝き(色味)にとどまらず、動的に輝き(色味)が変化するということが最大の特徴になります。

この記事では3Dモデル作成用に撮影した写真を使ってマダカアワビ貝刃の真珠干渉色変化を確認しました。

1 見る角度の変化に伴う真珠干渉色変化


写真1

ライトが直接反射する付近はピンクの輝きとなり、周辺はグリーンとピンクが縞模様となって輝きグリーンが卓越します。


写真2

ライトが直接反射する付近はピンクに輝き、写真1よりその範囲が広い。周辺はグリーンとピンクが縞模様となって輝きグリーンが卓越するが写真1よりその範囲は狭くなっています。


見る角度による干渉色の変化

真珠干渉色でもピンク1色とかグリーン1色の場合があり、そうした場合と比べてこのマダカアワビ貝刃はとても豪華な真珠干渉色を具備しています。ピンクとグリーンの輝きが変化する様子、ピンクとグリーンの輝きの縞模様は大膳野南貝塚縄文人を魅了したに違いありません。

2 3Dモデルにおける真珠干渉色の表現

残念ながら自分は3Dモデルにおける真珠干渉色表現技術を知りません。

おそらく、自分が知らないだけであり、世の中には干渉色表現(見る角度による輝く色味変化の表現)技術は存在するに違いありません。今後その技術を見つけ出し、学習して、3Dモデルで表現できるようになりたいと思います。

普通の3Dモデルでは次のように単一テクスチャが張り付きます。


通常3Dモデルでは干渉色変化を表現できない


2021年12月27日月曜日

「第二の道具」としてのマダカアワビ貝刃

 Madaka abalone shell blade as a "second tool"


Observe the blade of the madaka abalone shell blade in detail at the Chiba Municipal Folk Museum "Chiba City Archaeological Excellent Material Exhibition" with a 3D model. Although the practical function as a large kitchen knife can be confirmed, the essence is assumed to be the "second tool" in cooking rituals.

[madaka abalone shell=Haliotis (Nordotis) madaka]

["second tool"=implements used in rites and rituals]


千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で展示されているマダカアワビを3Dモデルで観察しました。

2021.12.24記事「真珠干渉色に輝く大形アワビ(千葉市大膳野南貝塚)を3Dモデルで観察する

3Dモデルでさらに細部を観察しているなかで、この製品の意義についての思索が深まりましたのでメモします。

1 全体形状

3DモデルからGigaMesh Software Frameworkで6面図を作成しました。


マダカアワビ貝刃 6面図

webでマダカアワビ写真を多数収集し、その形状とこの6面図を比較してみました。比較の結果刃部が極端にすり減っているということは確認できませんでした。このアワビ製品は採集されたときの形状とあまり変わらないことが判りました。

2 断面形状

3Dモデルを切断して発掘調査報告書掲載断面形状を確認しました。


3Dモデル断面形状

3 刃部の観察

発掘調査報告書では刃部の位置を記載しています。


大膳野南貝塚発掘調査報告書掲載 1号屋外漆喰炉出土貝製品

この刃部を3Dモデルで観察すると、内面の厚い真珠干渉色層の表層の一部が剥落していることがわかります。刃部以外にこの剥落はありませんから、刃部がモノの切断等に実際に使われたことが確認できます。


刃部


刃部拡大

なお、刃部の刃渡りは17.3㎝になります。一般的なハマグリ貝刃の刃渡りは9㎝程度ですから、マダカアワビ貝刃は刃渡りが倍近くになります。


マダカアワビ貝刃の刃渡り

4 マダカアワビ貝刃の出土状況

マダカアワビ貝刃の出土場所


大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

マダカアワビ貝刃は大膳野南貝塚のメイン屋外漆喰炉から出土しています。屋外漆喰炉における調理活動とこのマダカアワビ貝刃が関連していることは確実です。

5 マダカアワビ貝刃の意義

大膳野南貝塚の漁場である村田川河口では、当時、このマダカアワビを採ることはできないと考えます。東京湾口など遠方から交易で入手した宝物であると考えます。真珠干渉色で光り輝くこのアワビを巨大貝刃に仕立て上げて特別な調理活動で使ったのだと想像します。その特別な調理活動とは祭祀で使う料理、より直接的には神に捧げる料理をつくる時の包丁であったと想像します。神にささげる料理を作る際にマダカアワビ製の光り輝く大包丁を使い、その料理を神に捧げたあと、集落構成員全員でそれを食べたのだと思います。

刃部の磨耗がアワビの形を変えるほどに進んでいないので、包丁(貝刃)といっても実用物というより祭器という側面の方が強かったのだと思います。マダカアワビ貝刃は「第二の道具」であると考えます。

マダカアワビ貝刃が屋外漆喰炉から出土した関係(遺物-遺構関係)は、異形台付土器・土偶・石棒等が大型住居(特殊遺構)から出土する関係(遺物-遺構関係)と相似的です。屋外漆喰炉でマダカアワビ貝刃を使って料理祭祀が挙行されたこと、大型住居(特殊遺構)で異形台付土器・土偶・石棒等を使って各種祭祀が挙行されたことが推察できます。


加曽利貝塚112号住居跡の出土遺物分布

「史跡加曽利貝塚総括報告書」(2017、千葉市教育委員会)から引用