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2018年8月17日金曜日

縄文後期イナウ似木製品の造形詳細

縄文後期イナウ似木製品の観察と解釈例 4

1 造形詳細
丸木の皮をはぎ、不必要な枝を掃ったあとの木製品に加えられた石器による加工跡等をまとめてみました。

石器による加工跡等
●基本構造
頂部削り出し、下部削り出しと刻印1及び枝基部残置はA面、B面共有項目で、この木製品の基本構造をつくっています。
●面取り部
A面B面ともに頂部にかかる部分に面取り部(平らにした部分)が存在し、その中に刻みと小孔集中がみられます。A面B面で面取り部の大きさや刻みの傾き方向が異なるのですが、共通する造形セットは共通する「何か」を表現していて、かつその「何か」が少し異なる様子を表現していると想定できます。
面取り部が文字通り「面」(顔)を表現していると考えると頂部が頭、刻みが目、小孔集中が頬、刻印1が口という想像も生まれ、A面B面で違う表情の顔ということになります。この想像が役立つものであるかどうか、詳しく検討することにします。
●削りかけ跡と刻印2
面取り部の下にはA面は削りかけ跡、b面は刻印2が存在しA面B面で造形がことなります。
A面削りかけ跡は単に筋を引いたというものではなくアイヌイナウの削りかけ(木の表面を薄く削って残しカールした部分)と同じようなものを作った跡のように観察できます。もちろん削り掛けそのもの(カールした鉋屑のような部分)はないのですが、溝の形状が削りかけを作った跡として観察できます。
B面刻印2は刻印1より深く削られ立派です。刻印2は刻印1と同じく水平に彫られています。また刻印2はその直上だけでなく刻印の中にも小孔があります。
A面の削りかけ跡とB面の小孔付刻印は表すものは異なりますが、面取り部の下に存在するものであるという意味で対応するものであると考えます。つまりA面削りかけとB面小孔付刻印は同じものの異なる様相を表現している可能性があります。
もし面取り部が文字通り「面」(顔)ならば削りかけ跡と小孔付刻印は体の上部付近にあたるのかもしれません。
●縛り跡
A面削りかけ跡とB面小孔付刻印の下にA面B面共通となりますが、木製品の表面を紐のようなもので硬く縛った跡(圧迫痕)が2筋存在します。B面では2筋の上の圧迫痕に付着物が残存しているように観察できます。ツタのようなものを2筋にわたって硬く縛り付け、それが脱落しないように接着剤を使った可能性が浮かび上がります。付着物はウルシとかマツヤニとかタールみたいなものではないかと考えます。
接着剤をつかってまでこの木製品を縛ったのはこの木製品を別の何かに縛り付けたか、あるいは別の何かをこの木製品にとりつけたかのどちらかだと考えます。木製品が別のものに固定されていたのでないことは出土状況から判明していますから、この木製品に付属物が取り付けられていた可能性が濃厚です。その付属物は一緒に出土した木片製品(太い箸のような木製品)であったのかもしれません。もしそうならこの木製品に「足」が付いていた可能性が浮上します。
●小孔
小孔はA面B面ともに多数存在します。小孔はその形状が4つの角をもつ特徴があり、同じ石器工具で開けられた可能性が濃厚です。またその大きさは5mm程ですから小孔そのものに造形的な意味は考えにくいです。小孔の深さが浅いものが多いことから、鳥の羽根や薄い葉っぱや茎をこの木製品に押しつけ食い込ませて取り付けた跡のように観察できます。この木製品は鳥の羽根やあるいは草などで飾られていたことが想定できます。

2 参考 付着物と縛り跡の様子

付着物と縛り跡の様子

3 参考 同一工具(石器)跡と考えられる小孔画像

同一工具(石器)跡と考えられる小孔画像

同一工具(石器)跡と考えられる小孔

4 参考 木製品拡大図

木製品拡大図 1 写真は千葉県教育委員会所蔵

木製品拡大図 2 写真は千葉県教育委員会所蔵

木製品拡大図 3 写真は千葉県教育委員会所蔵

木製品造形の意味解釈を次の記事で行います。