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2022年7月17日日曜日

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の胴部動物文ゾーニング

 Body animal pattern zoning of the deep bowl with a face handle (Tsukimimatsu site, Ina City)


I examined the body animal pattern zoning of the deep bowl with a face handle (Tsukimimatsu site, Ina City). The pattern can be zoned into the frog's head, torso, and hands. The frog body is also used decoratively.


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の胴部動物文ゾーニングを検討しました。文様はカエルの頭部、胴部、手にゾーン区分することができます。カエル胴部は装飾的にも使われています。

1 ゾーン区分のテクスチャ画像描き込み


ゾーン区分のテクスチャ画像書き込み風景

2 資料 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル (胴部動物文ゾーニング検討)

資料 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル (胴部動物文ゾーニング検討)

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル (文様構成要素塗色) https://skfb.ly/ow7EX

元観察記録3Dモデル https://skfb.ly/ouWWu

3 土器胴部の動物文ゾーニング検討


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 胴部動物文ゾーニング検討

4 メモ

4-1 文様について

カエルの手(二本指)が各所に存在し、またカエル胴部は円環文で表現されるので、胴部文様基本はカエル文であると考えました。ゾーンとしてみると、カエル頭部(双眼突起)2、カエル胴部(円環文半裁をふくむ)5つ、カエルの手2つで構成されます。カエル胴部のうち4つは円環文が半裁されていて、メインのカエル胴部とは直交する方向で配置されていて、装飾性が強いものとなっています。

カエルの手が多数存在します。このうち簡易的に描かれたものの中にはイノシシ刻印に似たものも見受けられますが、この土器にはイノシシは描かれてないと想定します。

4-2 テクスチャ画像への直接描き込み

3DモデルをUV展開して、それに適合したテクスチャ画像にゾーニング検討を描き込むことができました。Blenderなどで3Dモデルに直接ペイントする方法では線分をきれいに描くことはほぼ不可能です。


2022年7月15日金曜日

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の文様構成要素分布図作成

 Creating a pattern component distribution map for the deep bowl with face handle (Tsukimimatsu Site, Ina City) 


I made a pattern component distribution map of the deep bowl with face handle (Tsukimimatsu Site, Ina City) and examined the pattern composition. The handle is an anthropomorphic frog pattern. One large frog pattern is drawn on the body, and four decorative frog patterns are drawn orthogonal to it. There are 33 frog hands.


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の文様構成要素分布図を作成し、文様構成を検討しました。把手は擬人化カエル文です。胴部には大きな1つのカエル文が描かれ、それに直交して装飾的カエル文が4つ描かれます。カエルの手は33あります。

1 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル(文様構成要素塗色)

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル(文様構成要素塗色)

縄文時代中期中葉 

撮影場所:伊那市創造館 

撮影月日:2021.11.08 


展示の様子 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.507 processing 187 images 

Deep bowl with face handle (Tsukimimatsu Site, Ina City) Observation record 3D model (Coloring of pattern components)

Mid-Middle Jomon period

Location: Ina City Sozokan

Shooting date: 2021.11.08

Shooting through the glass surface

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.507 processing 187 images

元観察記録3Dモデルhttps://skfb.ly/ouWWu


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様構成要素分布図

3 メモ

3-1 カエルの手

2本指の「カエルの手」が多数描かれています。顔面把手にもカエルの手が3つ描かれていることから、この顔面はカエル文の擬人化表現であると考えます。

2つの双眼突起の間にはそれぞれ大きなカエルの手が描かれ(点線表示)、さらに重畳して多数のカエルの手が描かれています。中央のカエルの手には半球状の円文も描かれます。

3-2 円環文・円文と三叉文

顔面把手対向位置の双眼突起下には中央に半球状の盛り上がりのある円環文が描かれています。この円環文の下には三叉文が描かれます。円環文には必ずカエルの手が付随することと、類似顔面把手土器事例から、双眼突起はカエルの頭、円環文はカエルの胴と想定します。三叉文は円環文を寿ぐような意味を与える付加的デザインであると考えます。半裁円環文と三叉文のセットが2つの双眼突起の両側に描かれます。この描画は土器文様デザインを豊かにし、カエル文を強調するためのするためのデザイン的仕掛けであると考えます。

3-3 文様全体構成

顔面把手には擬人化カエル文、胴部には大きな1つのカエル文が描かれています。このカエル文に直交する形で装飾的カエル文が4つ描かれています。カエルの手は土器全体で33カウントできました。

なお、顔面把手の裏にはヘビ文と思われる渦巻がありますから、この土器もヘビとカエルの対峙土器といえるようです。


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様構成の検討

2022年6月6日月曜日

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル

 Deep bowl with face handle (Tsukimimatsu Site, Ina City) Observation record 3D model


Observe a 3D model (created last year) of a deep bowl with a face handle (Tsukimimatsu Site, Ina City). It is one of the materials to be compared with the three birth pattern pottery excavated from Hokuto City.


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の3Dモデル(昨年作成)を観察します。北杜市出土出産文土器3点と比較する材料の一つとなります。(この記事は2021.11.13記事「顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の観察記録3Dモデル」を引用して作成しています。)

1 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル 

縄文時代中期中葉 

撮影場所:伊那市創造館 

撮影月日:2021.11.08 


展示の様子 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 187 images 

Deep bowl with face handle (Tsukimimatsu Site, Ina City) Observation record 3D model

Mid-Middle Jomon period

Location: Ina City Sozokan

Shooting date: 2021.11.08

Shooting through the glass surface

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 187 images


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開図作成


GigaMesh Software Frameworkによる展開図作成

3 メモ

3-1 展示館の説明

伊那市創造館展示パネルの説明をそのまま展開図に書き込むとつぎのようになります。 


伊那市創造館展示パネル説明の図化 

3-2 興味と疑問

・乳房と「ヘソか生まれ出る赤ちゃん」が同じ丸い突起で象徴されていますが、何故同じなのか、理解できるようで理解できない事柄です。 

・他遺跡の類似同様土器で「生まれ出る赤ちゃん」の例があるので、ヘソではないと思います。 

・類似同様土器で乳房表現の例があるのかどうか調べたいです。 

・顔、乳房、妊娠して膨らんだ腹、性器あるいは出産風景が土器に表現されているとすれば、表現要素はほとんど土偶と同じです。この土器と一緒に土偶が出土しているのかどうか、調べることにします。この土器が使われる祭祀と土偶祭祀がどのような関係にあるのか、知りたくなります。 

・把手顔面は女神の顔ということになりますが、なぜこのような吊り目で顔が尖っているのか、その理由を知りたくなります。縄文のビーナスの顔と同じ顔です。

4 出産文土器の変遷

山梨県立考古博物館のページでは4つの出産文土器を次のように並べて、出産文土器の変遷を論じています。

・北杜市海道前C遺跡出土・深鉢形土器

・長野県伊那市月見松遺跡出土・深鉢形土器

・北杜市酒呑場遺跡出土・深鉢形土器

・北杜市津金御所前遺跡出土・深鉢形土器


出産文土器の変遷

山梨県立考古博物館のページ「おうちde土器のものがたり10「出産文土器とその意味」」から引用

 次の記事で、この変遷説明に関する感想を手がかりにして出産文土器に関する学習を深めることにします。


2021年11月15日月曜日

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様の解釈

 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)について3DモデルやGigaMesh Software Frameworkによる展開図を作成して観察しました。

2021.11.13記事「顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の観察記録3Dモデル

この中で土器文様に関する伊那市創造館展示パネルの説明をそのまま展開図に書き込み学習しました。

その後、類似土器として顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)について同様の学習を行い、文様意味について独自に考察(想像)しました。

2021.11.14記事「顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)の3Dモデル観察

この記事では箕輪町土器考察にならい、顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様についても独自の考察(想像)を行いました。

1 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様の解釈(想像)


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様の解釈(想像)

ア 土器を正面からみた場面

把手の顔面を母神と考え、土器全体が妊娠した母神を表現していると考えます。この考えは伊那市創造館パネル説明と同じです。

土器に双眼把手とその下に丸い小突起があります。これを母神から(土器から)生まれ出た子神の顔と子神の産道とそこから出る孫神の頭であると考えます。子神の両側には半円と三叉文が描かれていますので、それが母神の産道です。正面からみると母神、母神の産道、産道から出た子神、子神の産道から頭を出した孫神を見ることができると考えます。

イ 土器を裏からみた場合

把手上部の双眼把手を祖母神の顔、その下の丸い突起(渦巻が描かれている)を(祖母神の)産道から出た母神の頭であると考えます。土器胴部には子神の頭(双眼把手)と子神の未成熟な産道出口が描かれていると考えます。子神の両側には子神が出てきた母神産道が描かれています。

ウ 胴部の2つの双眼把手の間にある丸い小突起

胴部の2つの双眼把手の間にある丸い小突起を子神と考え、その回りを母神の子宮と考えます。


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)文様

2 伊那市創造館展示パネル説明との違い


伊那市創造館展示パネル説明による解釈

展示館説明では母神が赤ちゃん(子神)を産んでいるかもしれないという説明ですが、母神の産道が大きく描かれているので、丸い小突起は子神が産んでいる孫神と考えた方がよいと考えました。(ヘソは論外だと考えます。)

また二つの丸い小突起が乳房であるとの展示館説明は、母神の子宮とその中の子神と考えた方が、この土器全体が表現している世界(妊娠-出産による命の継続)に合う解釈だと考えます。

3 顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)文様解釈との関係


顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)文様の解釈(想像)

伊那市月見松遺跡出土土器の解釈は箕輪町丸山遺跡出土土器の解釈とほぼ同じになります。土器文様の基本構造が同じなので、それに起因して同じ解釈(想像)になるのだと思います。

双方ともに祖母神が母神を、母神が子神を、子神が孫神を産むというストーリーが描かれています。妊娠、出産により命が代々継続していくという社会原理が土器文様に描かれています。また顔面把手正面の顔面は母神、土器自体も母神の妊娠した様子という点も同じです。

4 メモ

女性が親から子へと代々命をつなげていくという点では、男との継続的性交(結婚)、妊娠、出産、育児という場面が大事になります。この土器では妊娠と出産が描かれています。したがって、この土器を使った祭祀は妊娠と出産の場面で使われたと想像します。性交(結婚)に関する祭祀は石棒を使って行われたのではないだろうかと想像します。育児に関する祭祀も別の道具で行われたと想像します。土鈴機能のある土偶をみるとその表情が柔らかく、子ども用を感じさせます。土鈴機能付土偶や育児土偶などが育児祭祀道具の一つであったのかもしれません。


2021年11月13日土曜日

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の観察記録3Dモデル

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の3Dモデルが完成しましたので、それにより観察しました。 
1 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル 
顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル 
縄文時代中期中葉 
撮影場所:伊那市創造館 
撮影月日:2021.11.08 

展示の様子 
ガラス面越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 187 images 

3Dモデルの動画 
2 GigaMesh Software Frameworkによる展開図及び6面図作成 

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)観察記録3DモデルのGigaMesh Software Frameworkによる展開図 

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)観察記録3DモデルのGigaMesh Software Frameworkによる6面図 
3 観察とメモ 
3-1 展示館の説明 
伊那市創造館展示パネルの説明をそのまま展開図に書き込むとつぎのようになります。 

伊那市創造館展示パネル説明による解釈 
3-2 興味と疑問 
・乳房と「ヘソか生まれ出る赤ちゃん」が同じ丸い突起で象徴されていますが、何故同じなのか、理解できるようで理解できない事柄です。 
・他遺跡の類似同様土器で「生まれ出る赤ちゃん」の例があるので、ヘソではないと思います。 
・類似同様土器で乳房表現の例があるのかどうか調べたいです。 
・顔、乳房、妊娠して膨らんだ腹、性器あるいは出産風景が土器に表現されているとすれば、表現要素はほとんど土偶と同じです。この土器と一緒に土偶が出土しているのかどうか、調べることにします。この土器が使われる祭祀と土偶祭祀がどのような関係にあるのか、知りたくなります。 
・把手顔面は女神の顔ということになりますが、なぜこのような吊り目で顔が尖っているのか、その理由を知りたくなります。縄文のビーナスの顔と同じ顔です。

2021年11月9日火曜日

顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の未調整素3Dモデル

 懸案だった顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の展示様子を3Dモデルにすることができました。未調整素3Dモデルをみると背後まで一応結像しています。今後ゴミを取り除き観察記録3Dモデルに仕立て上げる予定です。


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の未調整素3Dモデル動画

伊那市創造館展示

撮影枚数187

顔面が「縄文のビーナス」と同じようになぜこのようになっているのかなど興味が尽きない土器です。

以前、長野県立歴史館でこの土器のレプリカの観察記録3Dモデルを作成したことがあります。

縄文中期中葉顔面把手付深鉢形土器(複製)(伊那市月見松遺跡)外3点S4 観察記録3Dモデル

左から縄文中期後葉初台付鉢形土器(塩尻市上木戸遺跡)[中空の円文とコイル状の飾りが極度に発達し、台をつけて目立つようにしている。このような土器は、県中部・北部の大規模なムラから、ごく少数だけ見つかる。]、縄文中期中葉顔面把手付深鉢形土器(複製)(伊那市月見松遺跡)[長野県宝]、縄文中期中葉「土偶装飾の付く有孔鍔付土器」(複製)(南箕輪村久保上ノ平遺跡)、縄文中期前葉「雲母片を混ぜ、キラキラしている土器」(千曲市屋代遺跡群)

撮影場所:長野県立歴史館 

撮影月日:2020.02.14 

整理番号:S4 

実寸法付与 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 164 images