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2023年8月5日土曜日

崩落層・斜面貝層・ガリー運搬堆積層と早期土器・前期土器との関係

 Relationship between collapsed layer, sloped shell layer, gully-transported sedimentary layer and initial pottery and early pottery


I divided the shell layers of the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound into three layers: the collapsed layer, the slope shell layer, and the gully transport sediment layer, and began to observe the relationship between these layers and the type of pottery. Most of the early pottery was excavated from the gully-transported sedimentary layer. And some are excavated from the bottom of the sedimentary layer. Based on this fact, I hypothesized that early pottery might have been discarded in the early Jomon period.


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層を崩落層、斜面貝層、ガリー運搬堆積層に3区分して、それと土器型式との関係の観察をはじめました。前期土器はほとんどがガリー運搬堆積層から出土していて、堆積層最下部から出土するものもあり、前期に投棄されたのかもしれないと作業仮説しました。

1 崩落層・斜面貝層・ガリー運搬堆積層の区分

北斜面貝層は3番断面~12番断面付近では崩落層・斜面貝層・ガリー運搬堆積層の3層から構成されていると考え、その3層と土器型式との関係を考察することにします。


11番断面を例にした崩落層・斜面貝層・ガリー運搬堆積層の区分

2 崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

早期土器:赤CUBE(1)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器との関係3Dモデル画像

●観察

3D座標が判明した早期土器は1点だけで、ガリー運搬堆積層の上部から出土しています。この1点から貝層発達状況に関する有益情報を汲みだすことは困難です。

ある時期にこの早期土器がガリー侵食谷頭部あるいはガリー流路のどこかに持ち込まれ、何回かのガリー運搬を経て、加曽利EⅡ式期頃に、出土場所にこの早期土器が堆積したものと考えます。

3 崩落層と斜面貝層の推定境界面と前期土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器・前期土器との関係3Dモデル

崩落層と斜面貝層の推定境界面:カラーグラデーション等高縞模様表現

貝層断面図:4番断面、7番断面、11番断面

早期土器・前期土器:赤CUBE(18)


崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器・前期土器との関係3Dモデル画像1


崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器・前期土器との関係3Dモデル画像2


崩落層と斜面貝層の推定境界面と早期土器・前期土器との関係3Dモデル動画

●観察


観察結果

・前期土器17点のうち7点はガリー谷頭急斜面から出土、9点はガリー運搬堆積層から出土しています。残り1点は斜面貝層から出土しています。これから、前期土器の多くはガリー谷頭上の台地面から投棄され、年に数回出現するガリー流路の影響の繰り返しにより、徐々に下流に運搬され、堆積したことが推察されます。

・ガリー運搬堆積層出土の前期土器1点はガリー運搬堆積層の基底部から出土していて、同じ場所の多量加曽利EⅡ式土器より明確に下層から出土しています。これから、前期土器の投棄が加曽利EⅡ式期より以前の時期に行われたことが推察できます。前期土器の投棄は前期に行われたと作業仮説的に推察して、今後の作業をすすめ、検証して行くことにします。

・斜面貝層から前期土器1点が出土することから、斜面にも前期に土器が投棄され、その土器は、その後重力や流水の影響で下方に移動し、加曽利EⅡ式頃の貝層に混入したと作業仮説的に推察します。


2022年10月11日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層における早期土器と前期土器の分布

 Distribution of Earliest and Early pottery in the Shell Layer on the North Slope of Ariyoshi Kita Shell Mound


The distribution of earliest and early pottery in the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound was determined. The uneven distribution in two places expresses the place of use at that time, and there may have been a wetland or a spring.


有吉北貝塚北斜面貝層における早期土器と前期土器の分布を把握しました。2ヶ所に偏在分布している様子は当時の利用場所を表現していて、湿地や湧泉があったのかもしれません。

1 早期土器と前期土器の分布


早期土器と前期土器の破片出土場所


早期土器と前期土器の破片出土場所 Blender画面

2 メモ

・早期土器と前期土器は出土平面位置をメッシュ(2m×2m)番号で知ることができます。標高は記載されていません。

・早期土器と前期土器の分布は2ヶ所に偏在していることが特徴です。その偏在性について、早期土器と前期土器が同期しています。

・早期土器と前期土器が偏在分布していて、貝層全体の分布と異なる様子から、早期土器と前期土器は阿玉台式期~加曽利EⅢ式期の貝層形成活動にともなって持ち込まれたものでないことが判ります。

・早期土器と前期土器の出土層位の詳細は不明ですが、一部推定できるものは土層や混貝土層出土のものが多く、阿玉台式期から加曽利EⅢ式期の活動で撹乱を受けた地層・貝層出土が大半であると推測します。

・早期土器と前期土器は偏在出土した場所付近で人々の活動があり、その結果土器が投棄され、その土器破片が貝層形成活動で生まれた地層・貝層に混入したものと想定します。

・早期と前期の活動とはこの場がガリー流路谷底であることから、水辺に関わる活動であると想定します。湿地・池あるいは湧泉があったのかもしれません。




2020年12月30日水曜日

有吉北貝塚 前期の土器

 縄文社会消長分析学習 65

有吉北貝塚の学習をスタートしています。有吉北貝塚学習のメインはあくまでも中期です。現在はその前後の早期、前期、後期の学習をウォーミングアップを兼ねて行っています。この記事では前期土器について学習します。

1 有吉北貝塚の前期土器


有吉北貝塚 前期 土器埋設 土坑 土器分布(3D Qgis2threejs画面)

前期の土器破片総点数は7601点です。胎土に繊維を含まないものが多いことから大半が前期後半期に属すると考えられ、大半が調査区北半に集中しています。出土土器は文様や製作の特徴が多様性をもつことから17分類されて記述されています。

土器から遺跡消長をみると、前期後半諸磯a式期に遺跡形成が再開され、諸磯c式期まで続きます。土器の出土量から単純に見ると、諸磯b式期に最も活動が活発化すると考えられます。土器形式構造は単純ではなく、関東地方に広く分布する諸磯式系の土器群と霞ヶ浦周辺から利根川下流域に特徴的に分布する浮島式系の土器群が共存し、融合する形でみられることから、二つの地域性の折衷域に本遺跡が立地することを示すと考えられます。この状況は東京湾岸域、特に千葉市周辺に特徴的な傾向です。(発掘調査報告書による)


有吉北貝塚出土前期土器の例 1

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


有吉北貝塚出土前期土器の例 2

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

このような文様の土器片は諸磯式系、このような文様は浮島式系という土器文様感覚を自分はまだ持ち合わせていないので残念なことです。発掘調査報告書の17分類に諸磯式系と浮島式系とその融合系などの区分は掲載されていません。

2 参考 大膳野南貝塚における前期後葉竪穴住居址

大膳野南貝塚では前期後葉竪穴住居址を遺物から観察すると、出土土器が諸磯式系主体住居、浮島式系主体住居、2つの土器が共伴する住居に分類できます。また石器種類の割合も狩猟系石器が浮島式系主体住居で多く、諸磯式系住居で少ないなどの違いも見られます。生業の様子が異なる2つの集団(浮島式系集団と諸磯式系集団)が一つの集落に内部的なゾーニングをしつつ協同生活をしていたようです。前期後葉の千葉は諸磯式土器を使う集団と浮島式土器を使う集団がそれぞれ独自生活を維持しつつ一緒の集落で協同生活をしているというとても興味深い事象が存在しています。


大膳野南貝塚 前期後葉 竪穴住居址 主体土器形式別分布


大膳野南貝塚 前期集落 優勢土器形式別竪穴住居軒数

3 参考 


諸磯式土器出土遺跡分布図


浮島式土器出土遺跡分布図


諸磯式土器と浮島式土器が出土する遺跡数(千葉県)