貝塚を例とした千葉県遺跡DB活用方策の検討 6 立地分類
千葉県遺跡DBにおける貝塚755件の立地欄に記載されている地形立地を分類して統計と分布図を作成してみました。
1 千葉県貝塚 地形立地分類
千葉県貝塚 地形立地分類
地形立地を山地、丘陵地、台地・段丘、台地斜面、低地微高地、低地、不明の7つに分類して統計をとると、山地と丘陵地合計は12(1.6%)、台地・段丘と台地斜面の合計が656(86.9%)、低地微高地と低地の合計が75(9.9%)、不明12(1.6%)となります。台地に立地している貝塚が圧倒的に多いことがわかります。台地に立地する貝塚は集落と対応する場合がほとんどであると考えられます。一方、低地(微高地)に立地する貝塚には現場出先作業場などの特別の意味があると考えられ、台地立地貝塚とは異なる意義があると考えられます。
2 千葉県貝塚 地形立地分類の分布
千葉県貝塚 地形立地分類
台地立地貝塚(貝塚集落)と低地立地貝塚(現場作業場)の関係という観点でこの図を眺めると、東京湾岸、古鬼怒湾、九十九里、房総南端で異なる特性があるかもしれないという思考が生れます。それが海退に伴う地形特性の違いに起因するものであるのかどうか、興味が湧きます。
この図から縄文時代貝塚だけを抜き出すと次の図になります。
千葉県縄文時代貝塚 地形立地分類
縄文時代の貝塚集落と海浜現場出先作業場の関係は東京湾岸と九十九里では異なっているように感じれらます。台地立地貝塚数と低地立地貝塚数の比が大きく異なります。またその距離も大きく異なります。漁労の仕方が異なっていたと考えることができそうです。
3 感想
・遺跡DB情報を使って遺跡と地形立地との関係で考察すると遺跡のさまざまな特性をあぶり出すことができると考えます。
・遺跡DBの立地記述はすべてそのまま正確である保証はありません。引き写した情報をフィルターを通して吟味し、正確なものに修正する必要があります。情報をすべてGIS上で観察操作できるので、この作業は困難ではありません。
2018年11月27日火曜日
2018年11月26日月曜日
千葉県貝塚 文献の有無
貝塚を例とした千葉県遺跡DB活用方策の検討 5 文献の有無
千葉県遺跡DBにおける貝塚755件の文献欄に文献の記述があるかどうかカウントしてみました。文献欄に文献の記述があるということはDB記述以上の遺跡調査結果記述が存在しているということであり、情報をたどればその記述を図書館等で閲覧して学習できる可能性があります。一方、文献欄に記述がないということはDB記述以上の遺跡情報が存在していないことになります。
1 貝塚の文献の有無
千葉県貝塚及び遺跡の文献の有無
貝塚(755件)と遺跡全部(20130件)について文献の有無を調べたところ、貝塚は全体の57%にあたる428件に文献があり、遺跡全体でみると31%にあたる6177件に文献があることがわかりました。
遺跡全体より貝塚の方が文献がある率が約2倍となります。これは遺跡の中でも貝塚が人々や研究者の興味を引いてきていることを示しています。遺跡全体のなかでも貝塚に対する調査が進み情報が多いことがわかります。
2 貝塚文献の有無分布
千葉県貝塚 文献の有無
貝塚の文献有無の分布をみると文献無貝塚が多い空間が偏在していることがわかります。特に九十九里につくられた貝塚に文献無がめだち、この貝塚には「弥生時代以降」のものも少なからず含まれています。富津君津付近や千葉県北西端付近にも文献無がめだちます。このことから、文献無貝塚が多い空間付近の文献有貝塚の情報価値が大きいことがわかります。
貝塚の学習をする上では読み切れないほどの(それ以前に収集できないほどの)文献があり、学習素材不足ということは全く考えられません。
逆に多量の文献をいかに収集し、いかに効率的に解読するか。あるいは文献重要性評価を適性に行い、学習すべき文献の絞り込みをいかに行うかということが重要な学習技術となりそうです。
遺跡DBの情報を踏まえて、つまり20130遺跡の情報の存在を十分に意識し、有効活用しつつ考古歴史の学習を進めることにします。
千葉県遺跡DBにおける貝塚755件の文献欄に文献の記述があるかどうかカウントしてみました。文献欄に文献の記述があるということはDB記述以上の遺跡調査結果記述が存在しているということであり、情報をたどればその記述を図書館等で閲覧して学習できる可能性があります。一方、文献欄に記述がないということはDB記述以上の遺跡情報が存在していないことになります。
1 貝塚の文献の有無
千葉県貝塚及び遺跡の文献の有無
貝塚(755件)と遺跡全部(20130件)について文献の有無を調べたところ、貝塚は全体の57%にあたる428件に文献があり、遺跡全体でみると31%にあたる6177件に文献があることがわかりました。
遺跡全体より貝塚の方が文献がある率が約2倍となります。これは遺跡の中でも貝塚が人々や研究者の興味を引いてきていることを示しています。遺跡全体のなかでも貝塚に対する調査が進み情報が多いことがわかります。
2 貝塚文献の有無分布
千葉県貝塚 文献の有無
貝塚の文献有無の分布をみると文献無貝塚が多い空間が偏在していることがわかります。特に九十九里につくられた貝塚に文献無がめだち、この貝塚には「弥生時代以降」のものも少なからず含まれています。富津君津付近や千葉県北西端付近にも文献無がめだちます。このことから、文献無貝塚が多い空間付近の文献有貝塚の情報価値が大きいことがわかります。
貝塚の学習をする上では読み切れないほどの(それ以前に収集できないほどの)文献があり、学習素材不足ということは全く考えられません。
逆に多量の文献をいかに収集し、いかに効率的に解読するか。あるいは文献重要性評価を適性に行い、学習すべき文献の絞り込みをいかに行うかということが重要な学習技術となりそうです。
遺跡DBの情報を踏まえて、つまり20130遺跡の情報の存在を十分に意識し、有効活用しつつ考古歴史の学習を進めることにします。
2018年11月25日日曜日
千葉県貝塚 大枠時代別集計とその分布
貝塚を例とした千葉県遺跡DB活用方策の検討 4 大枠時代別集計とその分布
千葉県貝塚遺跡を大枠の時代別集計をして、その分布を概観してみました。
1 貝塚の大枠時代別集計
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡の年代別集計
種別に貝塚が含まれる遺跡の時代を「縄文時代だけ」「縄文時代と弥生時代以降」「弥生時代以降」の3区分してみました。遺跡には貝塚だけでなく他の種別(例 包蔵地、集落跡…)も含まれている場合がありますから、遺跡の時代は貝塚形成の時代とは限りません。しかし統計大勢的な意味で貝塚形成年代を推察できる資料にはなると考えます。
「縄文時代だけ」の貝塚遺跡が434、「縄文時代と弥生時代以降」が227で合計661(88%)ですから貝塚のほとんどが縄文時代に存在していたことになります。「弥生時代以降」の貝塚遺跡は79で全体の約10%となります。
なお、参考までに貝塚遺跡から旧石器時代遺物が出土した遺跡の数は75となります。
年代別集計結果を地図にプロットして、分布面からの特徴があるか観察してみました。
2 年代別集計結果の地図プロット
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 年代 縄文時代だけ
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 年代 縄文時代と弥生時代以降
「縄文時代だけ」と「縄文時代と弥生時代以降」遺跡分布の大要は類似しているように観察できます。しかしその二つを比較するとある顕著な特徴が現れます。
千葉県貝塚遺跡を大枠の時代別集計をして、その分布を概観してみました。
1 貝塚の大枠時代別集計
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡の年代別集計
種別に貝塚が含まれる遺跡の時代を「縄文時代だけ」「縄文時代と弥生時代以降」「弥生時代以降」の3区分してみました。遺跡には貝塚だけでなく他の種別(例 包蔵地、集落跡…)も含まれている場合がありますから、遺跡の時代は貝塚形成の時代とは限りません。しかし統計大勢的な意味で貝塚形成年代を推察できる資料にはなると考えます。
「縄文時代だけ」の貝塚遺跡が434、「縄文時代と弥生時代以降」が227で合計661(88%)ですから貝塚のほとんどが縄文時代に存在していたことになります。「弥生時代以降」の貝塚遺跡は79で全体の約10%となります。
なお、参考までに貝塚遺跡から旧石器時代遺物が出土した遺跡の数は75となります。
年代別集計結果を地図にプロットして、分布面からの特徴があるか観察してみました。
2 年代別集計結果の地図プロット
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 年代 縄文時代だけ
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 年代 縄文時代と弥生時代以降
「縄文時代だけ」と「縄文時代と弥生時代以降」遺跡分布の大要は類似しているように観察できます。しかしその二つを比較するとある顕著な特徴が現れます。
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 年代 弥生時代以降
「弥生時代以降」の分布をみると、東京湾付近では干潟に立地するものはありません。ところが九十九里では干潟の砂洲に立地するものがあります。貝塚の分布範囲が「弥生時代以降」に明瞭に拡大しています。貝塚を形成した縄文人の末裔は「弥生時代以降」になると東京湾では以前と同じ場所で居住したり、貝塚を形成しましたが、九十九里では縄文時代の貝塚付近の場所を捨てて干潟に進出して新たな貝塚を形成する場合が多くみられたと言える可能性があります。検討に値する現象を見つけることができました。
「弥生時代以降」の分布をみると、東京湾付近では干潟に立地するものはありません。ところが九十九里では干潟の砂洲に立地するものがあります。貝塚の分布範囲が「弥生時代以降」に明瞭に拡大しています。貝塚を形成した縄文人の末裔は「弥生時代以降」になると東京湾では以前と同じ場所で居住したり、貝塚を形成しましたが、九十九里では縄文時代の貝塚付近の場所を捨てて干潟に進出して新たな貝塚を形成する場合が多くみられたと言える可能性があります。検討に値する現象を見つけることができました。
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 年代 年代別地図の重ね合せ
地図が小縮尺のため明瞭とは言えませんが、貝塚が集中している市川-松戸付近と千葉市付近をくらべると千葉市付近の方が貝塚全体に占める「縄文時代と弥生時代以降」の割合が多いように感じられます。図のオーバーレイは赤(「縄文時代だけ」)が上、黄色(「縄文時代と弥生時代以降」)が下になっていますが、市川-松戸付近では黄色が隠れてしまいますが、千葉市付近では黄色が目立ちます。
千葉県の縄文時代で貝塚が特に集中した場所2箇所のうち千葉市付近の方が弥生時代以降になってもその貝塚付近が集落として継続している割合が多かったという仮説が浮かび上がります。この仮説が正しいかどうか大いに検討する価値があると思います。
千葉市付近の縄文人集落の特徴が縄文語で語り継がれて地名「千葉」が生れたという「地名「千葉」は縄文語起源 梅原猛仮説」を検討している現在、千葉市付近で貝塚遺跡の多くが弥生時代以降も集落等として存続していたという事実は大変興味が湧きます。
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 参考 旧石器時代を含む
多くの事例が旧石器時代遺跡の場所に後年にたまたま貝塚が形成されたものであると考えます。しかし、場合によっては旧石器時代から縄文時代草創期・早期に貝塚が形成されるまで継続して旧石器時代人→縄文時代人が生活に利用していた場所であることが想定できる遺跡が含まれているかもしれません。その可能性のある遺跡を個別に検討してみる学習上の価値はあると考えます。
3 感想
貝塚を対象に遺跡DBの年代大枠を分析しただけでも興味のある事象を複数見つけることができました。さらに貝塚を対象に縄文時代を細分化して分析すれば貝塚文化変遷検討に関わる基礎資料を得ることができると考えます。
地図が小縮尺のため明瞭とは言えませんが、貝塚が集中している市川-松戸付近と千葉市付近をくらべると千葉市付近の方が貝塚全体に占める「縄文時代と弥生時代以降」の割合が多いように感じられます。図のオーバーレイは赤(「縄文時代だけ」)が上、黄色(「縄文時代と弥生時代以降」)が下になっていますが、市川-松戸付近では黄色が隠れてしまいますが、千葉市付近では黄色が目立ちます。
千葉県の縄文時代で貝塚が特に集中した場所2箇所のうち千葉市付近の方が弥生時代以降になってもその貝塚付近が集落として継続している割合が多かったという仮説が浮かび上がります。この仮説が正しいかどうか大いに検討する価値があると思います。
千葉市付近の縄文人集落の特徴が縄文語で語り継がれて地名「千葉」が生れたという「地名「千葉」は縄文語起源 梅原猛仮説」を検討している現在、千葉市付近で貝塚遺跡の多くが弥生時代以降も集落等として存続していたという事実は大変興味が湧きます。
千葉県 種別「貝塚」を含む遺跡 参考 旧石器時代を含む
多くの事例が旧石器時代遺跡の場所に後年にたまたま貝塚が形成されたものであると考えます。しかし、場合によっては旧石器時代から縄文時代草創期・早期に貝塚が形成されるまで継続して旧石器時代人→縄文時代人が生活に利用していた場所であることが想定できる遺跡が含まれているかもしれません。その可能性のある遺跡を個別に検討してみる学習上の価値はあると考えます。
3 感想
貝塚を対象に遺跡DBの年代大枠を分析しただけでも興味のある事象を複数見つけることができました。さらに貝塚を対象に縄文時代を細分化して分析すれば貝塚文化変遷検討に関わる基礎資料を得ることができると考えます。
2018年11月24日土曜日
千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定)
貝塚を例とした千葉県遺跡DB活用方策の検討 3 ヒートマップ(カーネル密度推定)作成
千葉県貝塚755のうち位置情報のあるもの748をQGISにプロットし、ヒートマップ(カーネル密度推定)を作成してみました。
1 千葉県貝塚のプロット
千葉県貝塚のプロット
2 千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定)の作成
どのような色合いのものが貝塚分布の粗密をより直観的に分りやすく表現することができるか、幾つかの例を作ってみました。
千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定) 例1
千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定) 例2
千葉県貝塚755のうち位置情報のあるもの748をQGISにプロットし、ヒートマップ(カーネル密度推定)を作成してみました。
1 千葉県貝塚のプロット
千葉県貝塚のプロット
2 千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定)の作成
どのような色合いのものが貝塚分布の粗密をより直観的に分りやすく表現することができるか、幾つかの例を作ってみました。
千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定) 例1
千葉県貝塚分布 ヒートマップ(カーネル密度推定) 例2
輪郭線を入れてみました。
輪郭線を入れてみました。
3 感想
地図表現技術的には輪郭線を入れた方が色の変化や濃密だけより、より密度分布の様子を直観できるようです。
貝塚学習の本来の興味である、なぜ貝塚分布に粗密があり、密な地域はどのような条件をそなえているのかということは追って近々本格的に取り組むことにします。この記事では市川市から松戸市にかけての一帯が千葉県で最も密度が高く、千葉市中央区・若葉区・稲毛区・花見川区の一帯がそれに次いで密度が高くなっていることを押さえておくことにとどめます。
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