ラベル 学習問題意識 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 学習問題意識 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年6月10日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層に関する学習問題意識

 縄文社会消長分析学習 98

有吉北貝塚北斜面貝層情報図試作1を作成して眺めるとこれまでバラバラだった興味・問題意識がつながりだしたので、忘れないうちにメモしました。

1 地形発達に関する興味・問題意識


北斜面貝層基底面の地形発達に関する興味・問題意識

1-1 ガリー浸食地形

上流部にはガリー谷頭浸食地形と思われる断面が観察されます。

ガリー浸食は稀な大雨でのみ谷が発達し、それに対応した遷急点の発生が顕著です。

学習を進め深める上で、上流の基底面がガリー浸食で発達したことを地形学的にオーソライズする必要があります。

1-2 ガリー浸食地形が中期(加曽利EⅡ式頃)だけの現象

上流部では基底面のガリー浸食地形を埋めて混土貝層・混貝土層・純貝層が堆積し、その人工堆積層もガリー浸食されています。その上には土層が堆積して緩斜面となりその上に後期純貝層が観察されます。この層準からガリー浸食地形は中期(加曽利EⅡ式頃)だけの現象として把握できます。気候変動や人口急増による裸地化などがガリー浸食地形発生にどのように関連するのか、学習上の興味が深まります。

1-3 斜面崩壊

下流の横断面では急斜面とその下部に砂層の堆積があり、ガリー浸食ではなく斜面崩壊の跡のように観察できます。上流と下流では基底面の地形発達が異なるようです。時期も違い、下流の基底面は古く、その上に堆積する貝層も古い(中峠式以降)ようです。

2 混土貝層・混貝土層の成因に関する興味・問題意識


北斜面貝層混土貝層・混貝土層の成因に関する興味・問題意識

2-1 上流部

上流部ガリー浸食地形発達区域では浸食地形(V字谷)を充填するかたちで混土貝層・混貝土層・純貝層が堆積しています。

特に最上流ではガリー谷頭空間を苦労して混土貝層・混貝土層で埋めた(工事した)としか考えられません。

2-2 下流部

崩壊地形(緩斜面)に混土貝層・混貝土層・純貝層が層を成して堆積しています。一般的にはこれが斜面貝層の姿であり、疑問が生まれないかもしれません。しかし改めて考えると何故混土貝層・混貝土層が広範囲に成層して分布するのか大いに疑問です。縄文人が意識して混土貝層・混貝土層を(いわば一種の工事として)つくりあげたとしか考えられません。それとも河床ではない一般斜面において、貝集中廃棄場所から流水・霜・風・生物等の作用でこのような成層がうまれるのでしょうか。混土貝層・混貝土層・純貝層のでき方を知る必要があります。専門家のこれまでの研究や見解を学習したいと思います。

3 大形土器片層の成因と意義に関する興味・問題意識


北斜面貝層ガリー浸食基底面に堆積する大形土器片層の成因と意義に関する興味・問題意識

一人では持ち運びできないような廃用大型土器をわざわざガリー谷底に持ち込み破壊して大形土器片にしてばら撒いたという意識的活動が行われたことは確実です。

次のような作業仮説を検証するかたちで学習を深めることにします。

妄想的仮説

1 中期(加曽利EⅡ式頃)にだけガリー浸食が発達した(災害・集落危機)

2 ガリー浸食谷を完全充填する土木工事が計画された

3 基礎工事としてガリー谷底に大型土器を持ち込み破壊して大形土器片をばら撒き、河床安定を企図した

4 基礎の上に貝殻を破砕して土と混ぜた素材(混土貝層・混貝土層)を堆積させていった 破砕貝を混ぜた土はよく締まり、浸食されにくい

5 ガリー浸食谷充填工事が終わった後に再びガリー浸食が発生した(それが集落放棄につながったのかもしれない) 

4 参考 図面の立体的位置関係


1~3で使った図面の立体的位置関係


2018年5月31日木曜日

大膳野南貝塚 報告書通読学習をふりかえる

大膳野南貝塚の発掘調査報告書通読学習をこの記事で一度収斂させます。
6月から新たな視点、新たな学習意欲で縄文時代学習、大膳野南貝塚学習を始めたいと考えています。

1 大膳野南貝塚学習の経緯
いつか縄文時代学習をある程度本腰をいれて始めたいと考えていたのですが、その時期が2016年12月になりました。
学習を始めるにあたって、千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生に学習対象遺跡についてアドバイスを求めました。そうしたところ西野先生からいくつかの遺跡を紹介していただき、その中から最新発掘成果がまとまっている大膳野南貝塚を選ぶことができました。また資料に関してサポートしていただきました。
西野雅人先生のアドバイスとサポートにあらためて感謝申し上げます。
2016.12.23記事「縄文時代遺跡 大膳野南貝塚の学習を開始」参照

発掘調査報告書の通読学習を始めてこれまでに関連記事が昨日までで226となりました。

大膳野南貝塚 学習記事数

旧石器時代の出土物、早期の陥し穴や炉穴、前期集落の竪穴住居や土坑、後期集落の竪穴住居や土坑などについて発掘調査報告書を通読するような順番で学習してきました。
2018年2月末には無限に続く興味の連続を一旦区切る必要性を感じ、2018.03.01記事「大膳野南貝塚 学習収斂に向けた興味まとめと今後の予定」を書き、3月一杯で通読学習を収斂させることとしました。
しかしその後、土坑データベース作成やQGIS操作技術の飛躍的向上などがあり、学習が特段に深まったため収斂時期を4月末に、さらに5月末に延長してようやくこの記事に至ったという次第です。

2 発掘調査報告書情報の空間分析という学習スタイルの意識
考古学に関する最も重要な情報は、発掘現場における発掘作業に伴う現場観察情報であると考えます。
ところが、私の大膳野南貝塚学習は発掘調査報告書を対象にした文献学習であり、私自身発掘現場体験がないので学習に現場感覚的な虚弱さが伴うのは避けられません。門外漢の趣味の学習ですから、その点はある意味当然です。
一方、文献学習と割り切れば、つまり発掘調査報告書に掲載されている情報をいかに汲みだし、いかに分析して有用な情報を生み出すかという点に立脚すれば、私の学習は意義があるのではないかと自覚します。
特に発掘調査報告書の詳細情報をGISに展開し、空間分析するという行為は身の回りではほとんどみかけません。
発掘調査報告書の生の詳細情報をGISで空間分析して有用情報を生みだすという活動は一つの学習スタイルとして特筆して良いのではないかと自覚します。
大膳野南貝塚学習では発掘調査報告書の生の詳細情報をデータベースソフトやGISソフトを使って、これまで実現しなかった(実現できなかった)分析を行ってきており、それを新たな学習スタイルとして意識しつつあります。

3 学習問題意識について
3-1 当初学習問題意識
2016年12月の問題意識は次の2点でした。
……………………………………………………………………
1 遺跡と地形との関係
生活において地形をどのように利用していたのか、興味が深まります。(海はどこにあり、どのように出たか。狩と地形との関係、住居と水場の関係…)
2 集落の空間構造
遺構・遺物の空間情報をGISを使って分析して、発掘調査報告書からどのような有用情報(価値ある情報)を引き出せるか、興味が湧きます。
……………………………………………………………………
この時は右も左も判らなかったのですが、その後の1年半の活動のなかでこの時意識していた「知りたいこと」や「知識が増えた状況」のイメージを思い出すと、それらはほぼ実現できたと考えます。GIS空間(電子空間)に存在する大膳野南貝塚の状況についての知識は増えました。

3-2 現在の学習問題意識
2018年3月の問題意識は次の5点です。
……………………………………………………………………
1 後期集落が始まり急成長した要因は何か?
2 後期集落が急減退・衰退消滅した要因は何か?
3 後期集落で共伴する漆喰貝層有竪穴住居グループと漆喰貝層無竪穴住居グループの関係はどのようなものか?
4 前期集落の浮島式土器優勢竪穴住居家族と諸磯式土器優勢竪穴住居家族の関係はどのようなものか?
5 3と4の問題意識を関連させることは有意義であるか?
……………………………………………………………………
いずれの問題意識も割り切れるようなイメージで解決したものはありません。
しかしいずれの問題意識も「重要で興味深い解答」がすぐそこにあるような感覚を持ちます。そこまで学習がすすんでいます。
心機一転して始める6月からの大膳野南貝塚学習総とりまとめで上記5つの問題意識に肉薄したいと思います。
なお、上記問題意識はすべて千葉県域などの広域の遺跡情報の中で検討すべき側面があります。
従って大膳野南貝塚だけの情報で得られる結論はあるべき一般結論のための一つの材料に過ぎないことは言うまでもありません。

4 総とりまとめの最初の活動
6月からこれまでの大膳野南貝塚学習を総とりまとめします。
「学習の総とりまとめは判ったことと派生した問題意識等をデータとともに簡潔に表現し、今後の縄文時代学習のよすがとします。」
総とりまとめの最初の活動は自分が書いた過去記事226を読み直し、分析内容や問題意識を整理することとします。
分析内容や問題意識の整理活動の中で総とりまとめの方法等を決めることにします。

過去記事を日付逆順に閲覧する画面
Bloggerブログでは記事を日付逆順に並べなおすことができません。しかしダイナミックビューsidebar表示にすると日付逆順閲覧を快適に行うことができます。