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2017年4月23日日曜日

竪穴住居における主柱穴・壁柱穴以外の柱穴検討

大膳野南貝塚 前期後葉集落 竪穴住居における主柱穴・壁柱穴以外の柱穴検討

大膳野南貝塚前期後葉集落の竪穴住居に関して発掘調査報告書では4つのグループについてその位置近接性からその関連性を指摘し、「これらの住居には時期的な前後関係があるものと推定される。」と記述しています。
2017.04.18記事「複数竪穴住居の関連性検討」参照

この記事ではそのうちのCグループ(J72、J113)について検討します。

J72、J113の位置関係

1 出土物等による検討

次の2つの表に示す通り、出土物などからJ72とJ113の関連性を見つけ出すことは困難です。

大膳野南貝塚 前期後葉集落 獣骨出土量

大膳野南貝塚 前期後葉集落 竪穴住居

2 竪穴住居柱穴分析による検討
J72とJ113の柱穴分類を発掘調査報告書の記述に従い図化しました。

J72柱穴分類

J113柱穴分類

J113の柱穴分類は出土遺構が断片的であるため壁柱穴のみとなっています。従って柱穴の検討を深めることができません。

柱穴の検討からJ72とJ113の関連性を検討することは無理のようです。
出土物等からの検討もできませんから、J72とJ113は位置が近接しているという情報以外に関連性を検討できる有力情報は、残念ながら集まらなかったという結論になります。
しかし、関連性を否定する情報もないのですから、発掘調査報告書の通り関連性ありと想定します。

3 J72の柱穴分析
J72の柱穴情報を分析してみました。

J72 説明のない柱穴の分布

発掘調査報告書で説明のない柱穴としているものの分布を、近いものを線でつないでなぞってみたのが上図です。
説明のない柱穴とは主柱、壁柱以外の柱の穴ということで、建物構造に関係しない柱穴であり、それらのほとんどが祭祀用柱の穴であると想定しています。

次のような特徴が浮かびあがります。
・主柱で囲まれる範囲を超えて説明の無い柱穴が連続するように分布しています。これから、建物主柱が取り払われた後(つまり上物撤去後)、設置された祭祀用柱があるとうことがわかります。
・B地点を中心に3重程度の同心円のような模様で祭祀用柱(つまり祭壇)が設置されたような印象を受けます。幾度かの送り祭祀があり、その途中で建物上物が除去され、それらの重合結果の姿かもしれません。
・Aは竪穴住居最後に使われた炉ですが、この炉付近は祭祀用柱は立てなかったようです。その場所に特定の物(土器や獣骨など)が置かれていたのかもしれません。
縄文人にとって故人の送りと故人が使った炉の送りとは同一事象であり、炉の場所で土器や石器や獣骨の送りが行われたのかもしれません。
私は故人の送り、炉と竪穴住居空間の送り、土器の送り、石器の送り、動物の送り…が故人の送りを軸に展開する全て同一の「送り」として営まれたと考えています。
故人の送りを盛大に行うためにはその一環として炉送りが営まれ、さらにその炉送りの一環として土器送り・石器送り・動物送りが存在したと考えます。
・C地点に大きな柱とそれを囲む柱が存在していたようです。上物が除去された後、この場が送り場であることを遠方からでもわかるような背の高い幟などが建てられたのかもしれません。

2017年4月18日火曜日

複数竪穴住居の関連性検討

大膳野南貝塚 前期後葉集落 複数竪穴住居の関連性検討

千葉市大膳野南貝塚発掘調査報告書のまとめでは前期後葉集落の竪穴住居について次のような組み合わせでその関連性を指摘しています。

大膳野南貝塚 前期後葉 竪穴住居 発掘調査報告書における関連性の見立て

発掘調査報告書では、これらのグループは群在していて、一部はかなり近接しているので、「これらの住居には時期的な前後関係があるものと推定される。」と記述しています。

はたしてその記述通りであるか、学習することにします。

全体をざっと眺めると次のような検討方向の感想を持ちます。
J50・68は関連しているように感じます。
J56・58・60・121は場所が近接しているだけで、全く異なる性格のものが混じっているように感じます。
J72・113は関連しているように感じます。
J83・89・97・98は諸磯式という点で共通しますが、J97は特殊ですから、単純な関連性あるものとして捉えることは困難かもしれないと直観します。

参考 大膳野南貝塚 前期後葉集落 竪穴住居

この記事ではJ50とJ68の関連性について学習します。

J50とJ68の位置関係は次の通りです。

J50とJ68の位置関係

建物の間の空間は2m以下であり大変近接しています。
また、建物の平面形状・方向・面積なども似ています。

次に発掘調査報告書の柱穴分類を色分けしてみました。

J50号・J68号竪穴住居の柱穴分類

両方の竪穴住居ともに建て替え(拡張)を1回行い、それに対応して二組の主柱穴と内側・拡張外側の2列の壁柱穴が見られます。
主柱穴の位置変更にともない、炉祉も変更となっています

J50と68が前後関係のある竪穴住居で、同じ血族の竪穴住居であったと考えても合理的です。
今のところ、J50と68の前後関係は判りません。

さて、この検討の中で、自分レベルで新たな発見をし、いささか興奮気味になったことがありますので、次の記事で紹介します。