ラベル 甲府市後呂遺跡 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 甲府市後呂遺跡 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022年7月24日日曜日

人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡)動物文解釈訂正

 Deep pot-shaped pottery with face decoration (Ushiro site,Kofu City) Animal pattern interpretation correction


In the 2022.07.21 article, I interpreted that the two human faces of the deep pot-shaped pottery with human face decoration (Ushiro site,Kofu City) correspond to the anthropomorphization of snakes and frogs. However, when I got the actual measurement map and learned more information, I noticed this misinterpretation. Both human faces seem to be anthropomorphic frogs.It has nothing to do with childbirth.


2022.07.21記事で、人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡)のつり目人面がヘビの、垂れ目人面がカエルの擬人化に対応すると解釈しました。しかし、実測図を入手して詳しい情報を知り、この解釈の間違いに気が付きました。双方人面ともカエル擬人化のようです。出産とは無関係です。

1 つり目人面上部の把手渦巻文は創作

発掘調査報告書(※)を全国遺跡報告総覧からダウンロードして、次の実測図を入手しました。


人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡)実測図

※「供養寺遺跡後呂遺跡-東八代広域斎場建設事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-、2000、東八代広域行政事務組合中道町・中道町教育委員会」

この実測図から遺物として出土した部分と土器復元過程で付加された部分が判ります。

出土部と付加部を3Dモデルで分けると次のようになります。

人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡)観察記録3Dモデル(動物文塗色、付加部白色)


3Dモデルの動画

つり目人面上部の復元付加された把手は次の点で間違っています。

1 復元されるべき大きさよりも大きく復元されている。

把手裏側には円環文が確認できます。この円環文の高さが復元されるべき把手の高さであることは、隣の渦巻文のある把手から想定できます。復元は把手の大きさ(高さ)を間違って行われています。

2 根拠のない渦巻文

把手の内側に円環文があるにもかかわらず、復元頂部外側に渦巻文を描いています。渦巻ではなく円環文を描くべきです。その位置は把手内側円環文に合わせるべきであり、そこが把手頂部になるべきです。


復元された把手が間違っている可能性

2 2022.07.21記事における間違い

2022.07.21記事「人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル(動物文塗色)」では、つり目人面がヘビの擬人化であると想定しました。その主要な根拠はその上部把手に渦巻文(ヘビ文)があるからでした。しかし、この渦巻文は完全なる創作であることが判明しました。これにより、つり目人面がヘビの擬人化であるという根拠はなくなりました。

3 2つの人面の解釈

実測図をみると、2つの人面の対向位置の場所には渦巻文(ヘビ文)が描かれていることを利しました。

同時に、つり目人面の上の把手に内側に円環文が記録されています。円環文はカエル文(カエル胴部)です。

これらの情報を整理すると次のようになります。


動物文と人面の位置関係


動物文と人面の位置関係 GigaMesh Software Framework展開図

位置関係の規則性から、2つの人面はカエル文の擬人化であると捉えることが合理的であると考えます。

つまり、この土器にはヘビ2体と擬人化したカエル2体が描かれていると考えます。

なお、人面に対向する場所の渦巻文(ヘビ文)の渦が逆になっていて、人面のつり目(怒り)、垂れ目(笑い)と対応するような関係が見られます。

この土器では、個性の違うヘビ2体と同じく個性の違うカエル2体が登場する物語が語られたのだと考えます。

この土器は出産とは無関係であると考えます。

4 感想

この土器の把手復元は大きさと文様の2点でミスを犯していると考えます。3Dモデルを使った人面解釈という活動をしなければ、このミスは発見出来なかったと思います。3Dモデルを使った土器観察が、観察行為を深めていることを確認できたことは素晴らしいことです。今後の活動では土器復元付加部がどれほど適切であるのか、注意していくことにします。


2022年7月21日木曜日

人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル(動物文塗色)

 Human face decoration pottery (Ushiro Site,Kofu City) Observation record 3D model (Animal pattern coloring)


I observed the frog's hands, hind legs, torso, and snake pattern. The human face of the hanging eye may correspond to the anthropomorphic snake, and the human face of the drooping eye may correspond to the anthropomorphic frog. I think it has nothing to do with childbirth.


カエルの手、後足、胴、ヘビ文が観察できます。つり目の人面はヘビの擬人化に、垂れ目の人面はカエルの擬人化に対応するのかもしれません。出産とは無関係と考えます。

1 人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル(動物文塗色)

人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル(動物文塗色)

縄文時代中期中葉

展示説明:「通常は正対する位置の把手に人面装飾がなされますが、この例は並びあっています。これらは、片方が吊りあがった目をしており「怒り」、片方は垂れ目で「笑い」などと、表情が異なる点が注目されています。出産の苦しみと子を抱く喜びを込めたのかもしれないとされ、普段は甲府市北口の藤村記念館に展示され、日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」における御朱印のモチーフとなっています。」

撮影月日:2022.06.01


展示の様子

「怒り」とされるつり上がった目

「笑い」とされる垂れ目

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.507 processing 208 images

Human face decoration pottery (Ushiro Site,Kofu City) Observation record 3D model (Animal pattern coloring)

Mid-Middle Jomon period

Location: Yamanashi Prefectural Archaeological Museum Reiwa 4th Spring Exhibition “Jomon people who draw their hearts-The world of pottery with human face and clay figurines-“

Shooting date: 2022.06.01

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.507 processing 208 image


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開と文様解釈


GigaMesh Software Frameworkによる展開と文様解釈

3 メモ

・カエルの手、後足、胴、ヘビ文が観察できます。

・2つの人面はカエルあるいはヘビの胴部に位置すると考えることができ、カエルあるいはヘビの擬人化が図られていると想定できます。

・人面は出産とは無関係であると考えます。

・2つの人面が2つの別表情を表現しているように、確かに感じることができます。

・つり目の人面はヘビの擬人化に、垂れ目の人面はカエルの擬人化に対応するのかもしれません。

4 メモ追記(2022.07.22)

・『もし、つり目がヘビの擬人化、垂れ目がカエルの擬人化とするならば、縄文人女性(土器の作り手)の次の意識が物的に証明されたことになり、面白いと思います。「ヘビは怖い、恐ろしい、カエルは可愛いい。」』と考え、鬼の首を取ったように楽しくなりました。しかし、この考えはどうも間違いのようです。というのはこの土器の発掘調査報告書実測図をみるとつり目人面の上の把手の最上位のヘビ文がなんと「創作」だからです。専門家に一杯食わされました。このような「創作」が考古学世界にまかり通っているとは知りませんでした。二つの人面はカエル文の擬人化のように判断できるようです。展示では見えない同じ部分には渦巻(ヘビ文)があります。この土器にはヘビ2体と擬人化されたカエル2体が描かれているようです。詳しくは別記事で検討します。

・人の出産では産道から顔が出てくることは無く、必ず頭から出てきます。そういう縄文人が必ず注意深く観察した出産情景という点からも、人面は出産とは無関係で、動物の擬人化という仮説支持が合理的です。

・3Dモデルに色塗りする中で、この3Dモデルの質が大変低いことを再確認させられました。この3Dモデルはもともとこの土器専用に撮影した写真から作ったものではなく、隣土器の撮影写真を使って副産物的に作成した3Dモデルです。この3Dモデルを時間をかけて調整して質を向上させることはある程度可能とは思います。しかしそれも限界があります。この土器から自分にとって有用な情報を汲み取るという本来目的を達成するための時間配分を考えると、3Dモデル質低さを少しだけ向上させるために多大な時間を消費するよりは、土器の意味・意義を考えるために貴重な時間を消費すべきことであると判断しました。




2022年6月26日日曜日

人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル

 Human face decoration pottery (Ushiro Site,Kofu City) Observation record 3D model


I observed pottery in which the two human faces are believed to represent two facial expressions, anger and laughter.


2つの人面が怒りと笑いの2つの表情を表現していると考えられている土器を観察しました。

1 人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル

人面装飾付深鉢形土器(甲府市後呂遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文時代中期中葉

展示説明:「通常は正対する位置の把手に人面装飾がなされますが、この例は並びあっています。これらは、片方が吊りあがった目をしており「怒り」、片方は垂れ目で「笑い」などと、表情が異なる点が注目されています。出産の苦しみと子を抱く喜びを込めたのかもしれないとされ、普段は甲府市北口の藤村記念館に展示され、日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」における御朱印のモチーフとなっています。」

撮影場所:山梨県立考古博物館令和4年度春季企画展「心を描く縄文人 -人面・土偶装飾付土器の世界-」

撮影月日:2022.06.01


展示の様子


「怒り」とされるつり上がった目


「笑い」とされる垂れ目

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.506 processing 208 images

Human face decoration pottery (Ushiro Site,Kofu City) Observation record 3D model

Mid-Middle Jomon period

Location: Yamanashi Prefectural Archaeological Museum Reiwa 4th Spring Exhibition “Jomon people who draw their hearts-The world of pottery with human face and clay figurines-“

Shooting date: 2022.06.01

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.506 processing 208 image


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

・2つの人面が2つの別表情を表現しているように、確かに感じることができます。展示説明にあるように、同一人が持つ二つの感情の変化を動的に表現しているのかもしれません。

・現代人が人面を見て抱く感情と、縄文人が人面に表現しようとした感情は近似していると考えることを前提にします。

・この企画展で展示された多数の人面はそれぞれ表情を表現しているものであると考えることができます。つり目の人面が多く、垂れ目も有りますが少ないです。怒りやその周辺にある感情を人面に表現しているのはなぜでしょうか?笑いやその周辺にある感情を人面に表現するのはなぜでしょうか?