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2022年1月11日火曜日

縄文早期土偶の4種3Dモデルによる実験的観察

 3D experimental observation of initial Jomon clay figurine


Four types of 3D models of the initial Jomon period clay figurine (Nakakanoko Daini Site, Chiba City) exhibited at the Chiba City Folk Museum "Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition" were created and experimentally compared and observed. I wrote down the information I received. I imagined that this clay figurine had a head.


千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で展示されている、縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡)の3Dモデルを4種作成し、実験的に比較観察し、得られた情報をメモしました。

1 4種3Dモデルの作成

1-1 通常の観察記録3Dモデル

縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡) 観察記録3Dモデル Clay Figurine in Initial Jomon period

2022.01.09記事「縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡)の3Dモデルによる観察」参照

1-2 テクスチャをモノクロにした3Dモデル

縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡) モノクロ3Dモデル Clay Figurine in Initial Jomon period

1-1モデルのテクスチャをモノクロに変換したモデル。

1-3 テクスチャを干渉色にした3Dモデル

縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡) 干渉色3Dモデル Clay Figurine in Initial Jomon period

1-1モデルのテクスチャをやまだこーじ氏作成公開「干渉色変換フィルター」で干渉色に変換したモデル。

1-4 テクスチャに輪郭トレースを追記した3Dモデル

縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡) 輪郭トレース追記3Dモデル Clay Figurine in Initial Jomon period

1-1モデルのテクスチャにPhotoshopを利用して輪郭トレースを追記した3Dモデル。輪郭トレースは「指定レベル以下の画像の周り、レベル50」、「同、レベル100」、「同、レベル150」、「同、レベル200」の4画像を作成し、テクスチャに「焼き込み(リニア)」でオーバーレイ。

1-5 4種3Dモデルの動画


縄文時代早期土偶(千葉市中鹿子第2遺跡)4種3Dモデルの動画


画像

2 4種モデル比較実験の結果

2-1 干渉色3Dモデルについて

干渉色3Dモデルがどれほどの意味があるか確認することが実験目的の半分を閉めていました。今回の事例では結果として、干渉色3Dモデルから、遺物観察という点で新たな情報を得ることができませんでした。情報量(観察有用性)の大きさとい点でいえば、カラー3Dモデル→モノクロ3Dモデル→干渉色3Dモデルの順になります。

干渉色変換はカラー画像をモノクロに変換し、それをさらに干渉色セットに変換するので、画像内におけるモノクロ分布に特段の意味が隠されている場合、その価値を発揮すると考えられます。

2-2 輪郭トレース追記3Dモデルについて

自分の意思(判断)とはかかわらない輪郭トレースを3Dモデルに追記することによって、観察を深めることができると実感できました。輪郭トレース追記3Dモデルは遺物観察の有用な補助資料となります。

3 実験に伴う土偶観察と想像

3-1 頭

軸受けのように見える溝とそのまわりに黒ずんだ模様が見えます。これから、この土偶には頭部があり、それが木の軸と接着剤で胴部と接合していたかもしれないと想像しました。


頭部存在の想像

3-2 向かって左乳房

向かって左乳房の位置に矩形の孔があります。この孔は乳房粘土塊と胴体を固定する軸受け口であると想像しました。


乳房粘土塊固定のための軸受け口か?

3-3 向かって右脇

向かって右脇に土偶製作時に補正的に貼り付けた粘土面の欠落が見えます。


粘土面の欠落

3-4 縛り跡?

土偶の腹部と脚部に紐で縛った跡のような線(溝)があります。


縛り跡?

3-5 考察

この土偶は、高さ約3.0㎝、最大幅約2.3㎝、脚部付近の厚さ約0.7㎝という小さな造形物にもかかわらず、頭や乳房を軸で胴部と結合するという、メカニックな作りになっている可能性が大です。みかけによらない凝った作りです。

その凝りぶりから3-4縛り跡の意味は、この土偶を着せ替え人形のようにしてつかっていたからではないかと想像します。


2020年11月19日木曜日

縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡)の3Dモデル作成と観察

 縄文土器学習 496

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡)の3Dモデルを作成し、観察しました。予期に反して重たい思考が伴いました。草創期後半石偶(上黒岩岩陰遺跡)との関連が念頭に浮かぶ重要な遺物です。

1 縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.13 

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.009 processing 43 images


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 観察と考察

3Dモデルを観察して、その展示正面が土偶正面として認識することができないので、袖ヶ浦市ホームページから展示裏面写真を入手してみたところ、展示裏面がこの土偶の正面(顔や陰部のある面)であることがわかりました。

この土偶(縄文早期中葉沈線文期)は縄文草創期後半(隆線文期)石偶(上黒岩岩陰遺跡)の流れで見ることができるビーナス像であると想像しました。上黒岩岩陰遺跡の石偶は後期旧石器時代後半のビーナス像の流れの中で位置付けられていますから、この土偶も後期旧石器時代後半から伝わるビーナス像の一つであると想像できます。


縄文早期土偶(袖ヶ浦市打越岱遺跡)に関する想像

・土偶体形は頭、手、胴部、腰から下が表現されています。

・展示正面はビーナス像の背面であると考えます。

・後頭部の髪が斜め線で表現されていて、女性性を表現しています。

・曲線的にカーブしてT字状に連続する刺突文は女性体形のしなやかさを表現する模様であると想像します。

・展示裏面の写真(袖ヶ浦市ホームページから引用)をみると腰から下部分に縦方向の沈線が刻まれ、陰毛をイメージしていると考えられることから、この面が土偶正面(顔のある面)です。

・土偶に顔や乳房は省略されています。

・この土偶は出産時に妊婦が手に握って安産を祈願する道具、いわば実用道具として使われたものと想像します。


参考 上黒岩岩陰遺跡出土石偶(線刻礫) 国立歴史民俗博物館研究報告154集から引用


参考 後期旧石器時代後半のヴィーナスの型式変遷

国立歴史民俗博物館研究報告第154集(2009)から引用

参考 2020.04.23記事「産小屋としての上黒岩岩陰遺跡