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2021年11月19日金曜日

顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)の復元について

 Restoration of deep pot-shaped pottery with a face handle (Minowa Maruyama Site)

I learned that the deep pot-shaped pottery with a face handle (Minowa Maruyama Site) is the second restoration.

I also learned that the main pattern on the front of the torso was restored by imagination.

I wish I could know the restored part.

箕輪町郷土博物館常設展に展示されている顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)について観察しました。しかし後になって箕輪町郷土博物館からこの土器が2回にわたって復元作業が行われたことを教えていただきました。またこの土器の正面メイン文様の復元は想像によるものであることに気が付きましたのでメモします。

1 発掘調査報告書による当初復元

発掘調査報告書掲載実測図は次の通りであり、図化されている部分が出土部分のようです。


顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)実測図

丸山遺跡発掘調査報告書から引用

発掘調査報告書による復元は次の通りです。


発掘調査報告書による顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)復元

丸山遺跡発掘調査報告書から引用

土器正面胴部の把手とその下のメイン文様は想像による復元です。

2 現在展示物の復元


発掘調査報告書による復元と現在の復元

箕輪町郷土博物館からの情報によると、当初復元では推測で胴部に顔の文様を付したが、それは適当ではないと考え、顔の文様を取って復元し直したものが現在展示してある土器であるとのことでした。

現在の胴部メイン文様は土器反対側にある文様を転写しているようです。(ただし、展示現物では観察できませんので、自分の目では確認できません。)土器反対側の文様が土器正面に同じように現れるという推測も適当であるとは思えませんから釈然とする復元とは思えないというのが偽らざる感想です。

復元箇所を表示すると次のようになります。


復元箇所


現在展示土器復元箇所のGigaMesh Software Framework展開図表示

3 感想

この復元箇所を全部のっぺらな表示にしてしまうと到底「長野県宝」には見えませんから、考古関係者が苦労してたどり着いたのが現在の復元のようです。

この土器の価値の巨大さがわかり、文様ありようの想像は豊かに湧いてくるのだけれども、その想像をそのまま表現してしまうと学術とは離反してしまうという葛藤のなかでの妥協の産物が現在復元のようです。

発掘調査報告書の復元の方が感覚的には現在復元よりも筋が通っているような気がします。しかしあくまでも個人の想像です。従って、個人の想像である旨を明確にして、かつ復元箇所が明瞭に判るようにして復元すれば良かったと思います。

現在復元物も復元箇所が誰にでも判るようになっていないので残念です。私も復元に気が付きませんでした。一般人はほとんどが復元に気が付かないと思います。「長野県宝」の表記の前にまさか胴部正面メイン文様が想像による復元とは思いもよりません。復元箇所の明示をパネル等で明示していただけるとありがたいです。


2021年11月14日日曜日

顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)の3Dモデル観察

 箕輪町郷土博物館常設展に展示されている顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)を3DモデルとGigaMesh Software Framework展開図で観察し、その文様の意味について想像しました。

1 顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡) 観察記録3Dモデル

顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文時代中期中葉

長野県宝

撮影場所:箕輪町郷土博物館常設展

撮影月日:2021.11.10


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 184 images


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開図


GigaMesh Software Frameworkによる6面図


GigaMesh Software Framework作業風景

3 観察とメモ

顔面把手を正面から見た時の吊り目で吻が出ている顔面を母神と考えると、次のような祖母神-母神-子神-孫神の顔が描かれていると想像しました。


顔面把手付深鉢形土器(箕輪町丸山遺跡)文様の解釈(想像)

ア 把手顔面を正面から見た時

母神だけが具象的顔で表現されていて、母神の体が即ち土器そのものであると想像します。母神の対向位置に子神が描かれていて、子神の顔は双眼把手として抽象的に表現されています。子神は背中を土器表面に貼り付けているように表現されています。子神はその乳房、手(指4本)、胴、足が人風に描かれています。さらに子神の腹には双眼把手があり、これは子神から生まれた孫神の顔であると考えます。

なお、母神の顔の上に双眼把手があります。これは母神を今産んでいる祖母神の顔であると考えます。

つまりこの場面では祖母神が母神を産み、母神が子神を産み、子神が孫神を産んでいる様子を一挙に表現していると考えます。しかし母神の顔だけ具象的なので、母神が子神を産んでいる様子がメインテーマになっていると考えます。

イ 把手を裏から見た時

展示では視線が到達できないので把手裏面の様子が不明瞭ですが、発掘調査報告書写真で確認すると把手裏面の母神顔面に相当する場所には大きな丸い穴が存在します。この穴が母神顔の抽象表現であると想像します(注)。その上に双眼把手があり祖母神の顔と考えます。


発掘調査報告書掲載写真 

丸山遺跡発掘調査報告書から引用

子神の様子はアの子神とほとんど同じように表現されています。

つまり把手を裏から見た時も祖母神が母神を産み、母神が子神を産み、子神が孫神を産んでいる様子を一挙に表現していると考えます。しかし母神の顔は双眼把手とは異なる抽象表現となっています。この場面でも母神が子神を産んでいる様子がメインテーマになっていると考えます。

注)大きな穴は祖母神の産道を表現していて、ここから母神の顔が出てくることを想像させる趣向であると想像します。