2023年3月17日金曜日

花見川の法的名称は印旛放水路(下流部)

 花見川よもやま話し 第13話


The legal name of the Hanami River is the Inba Discharge Channel (Downstream).


The legal name of Hanami River is "Inba Discharge Channel (Downstream)". Feeling uncomfortable with this difference, I once asked a river administrator a question and received an answer. Since the Inba Discharge Channel (Hanami River) is also written, few people seem to take issue with the sense of incongruity.


花見川の法的名称は「印旛放水路(下流部)」となっています。この違いに違和感をおぼえ、河川管理者に質問して、その回答をもらったことがあります。印旛放水路(花見川)などの併記があるので、違和感を問題にする人は少ないようです。

1 はじめに

国土地理院発行地図では花見川は花見川として記載されています。そもそも花見川区という行政単位があり、花見川という河川名称とそれから派生する地域名称は極当たり前の社会事象です。


国土地理地図

ところが、ひとたび河川行政に足を踏み入れると、花見川は印旛放水路(下流部)という名称に替わってしまいます。それは河川法では花見川が印旛放水路(下流部)という名称になっているためです。


河川整備計画における表示

印旛放水路(下流部)と言われて、それが花見川であると理解できる住民はおそらく5%未満、いや1%未満(河川行政関係者だけ)程度であると想像します。

このような状況(一般社会における河川名通称と河川行政における河川名称の齟齬)に違和感をおぼえ、「こともあろうに」というべきか、「怖いもの知らず」というべきか、「おめでたい」というべきかその形容の言葉が見つかりませんが、2013年に千葉土木事務所に河川名称に関する質問状を提出したことがあります。千葉土木事務所からは丁寧な回答を口頭でいただきましたので、その結果を紹介します。

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2 質問(2013年5月)

●花見川の法的河川名称に関する疑問

花見川は法的に「印旛放水路(下流部)」となっています。

この法的名称は、次のような理由により現代社会とマッチしていないという疑問があります。

法的名称「印旛放水路(下流部)」が現代社会とマッチしていない理由

1 事業者独占名称である

花見川は印旛沼の放水路機能を持っているからといって、自然流域から成り立つ河川を「印旛放水路(下流部)」と名付けることは、この川を治水・利水事業者が独占していることになる。

2 河川法の趣旨に反する名称である

平成9年の河川法改正により、河川の目的に環境が加えられ、治水・利水・環境の3つの河川管理により河川の目的を達成することになった。

自然流域から成り立つ花見川を「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことは、この河川法の趣旨と齟齬をきたしている。

3 古代からの名称「花見川」が存在し使われている(注1)

ハナミガワのハナは花島、猪鼻、花輪などのハナと同類で、下総台地の崖に付けられた縄文語由来の一般自然地名ハナである。

古代から受け継がれてきている花見川という名称は人々に親しまれ、行政区の名称にもなっている。

このように由緒ある固有名詞としての花見川を敢えて使わないで「印旛放水路(下流部)」と呼ぶことに、強い違和感が生じている。

4 「印旛放水路(下流部)」は住民に使われていない

殆どの住民が「印旛放水路(下流部)」という名称自体を知らない。聞いたことがあっても、それが花見川だとは理解していない。「印旛放水路(下流部)」は、事実上、行政機関の隠語にしかすぎない。

一方、花見川という名称を理解していない住民はいない。

5 人工施設をイメージさせてしまう

「印旛放水路(下流部)」という名称は、人々に人工施設という誤ったイメージを与える。花見川が自然流域からなる河川という実態を人々の目から覆い隠す役割をしている。

6 「印旛放水路(下流部)」では川づくり・地域づくりの発想がうまれない

放水路という名称は放水機能単体を表現しており、治水利水を思考するには好都合である。しかし、放水路という言葉からその川の流域について発想することは困難である。流域の発想が出来なければ、その自然や歴史についての発想はさらに困難である。

一方花見川という名称ならば、その自然、歴史、流域に関わる発想がだれでも浮かぶ。

「印旛放水路(下流部)」という名称は、花見川において人々の川づくり・地域づくりに関する興味を生じさせない役割を果たしている。


質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。

質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?

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3 回答(2013年5月)

この質問にたいして次の趣旨の回答(情報)をいただきました。

「質問その1 法的河川名称に関する上記疑問についての河川管理者のお考えをお聞かせください。」について

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)

①県が住民とコミュニケーションする際には花見川という言葉を使うこともある。県が関係する団体の出版物には「印旛放水路(下流部)」とともに「花見川」という言葉を追記している場合もある。

②法的河川名称について住民からの意見はこれまでない。

「質問その2 花見川の法的名称について再検討する機会を設けることは考えられないか?」

回答(情報)(口頭でいただいた話を当方でまとめたものです)

①再検討する機会は考えていない。

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4 感想と再質問(2013年5月)

私は次のような感想を持ち、同時に千葉土木事務所に再質問させていただきました。

① 「印旛放水路(下流部)」という河川名称がこれからの川づくりや地域づくりにふさわしくないという意見に県が接したのは、どうも今回が初めてのようです。

住民から意見がないから、名称再検討などの機会を設けることもあり得ないということです。

河川管理者としては、これまで誰も口から発することのなかった疑問に少々驚いた(面食らった)ようです。

私も、そのような河川管理者の様子を感じて、そういう無風環境が存在していることに驚き、面食らいました。

河川管理者というよりも、住民とか自治体(千葉市には「花見川区」まである)が花見川についてどれだけ愛着をもっているのだろうか、どれだけ「自分事」として花見川について考えているのだろうかということが心配になりました。

千葉市が花見川の名称についてどのように考えているのか、いつか聞いてみたいと思います。

また、何かの機会があれば、花見川の河川名称問題について地域で情報発信していきたいと思います。

② 土木事務所の回答は私の疑問に対する回答(情報)ではないので、次のような再質問をさせていただき、後日回答をいただけることになりました。

再質問

「仮に「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、「花見川」とか「○○川」に名称変更すると、河川行政上何かの不都合が発生するか?」

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5 再質問に対する回答と感想(2013年9月)

回答

「印旛放水路(下流部)という名称を別の名称に変更しても河川行政上の支障はない。」

「印旛放水路(下流部)」という名称を止めて、花見川と公式に呼ぶことにやぶさかでないという回答です。

ありがたい有額回答と言ってもいいものです。

沿川住民や千葉市の気持ちの持ち方と活動しだいによっては、花見川という名称が公式に使われる可能性があるということです。

この回答が活きて、実際に「印旛放水路(下流部)」が花見川に正式にチェンジするかどうかは、今後の活動次第だと思います。

私も住民自治組織や千葉市に対して、「印旛放水路(下流部)」から花見川に名称変更する意義、必要性について情報提供したいと思っています。

千葉県が「印旛放水路(下流部)」から花見川に名称変更すれば、右へならえで千葉市も名称変更することになります。そうすれば、行政がつくる計画・諸文書、地図類やパンフレット、現場の看板・各種表示が全て花見川で統一されることになります。

名称変更を機に、花見川に対する関心と愛着が増し、花見川がよい川になっていくきっかけになるとおもいます。

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6 感想(2023年3月)

まず、団体組織・グループとなんらかかわらない純粋1市民(個人)の質問状に丁寧に答えていただいた千葉県千葉土木事務所にあらためて感謝申し上げます。

次の写真は本日(2023.03.17)撮影した柏井橋架替工事関連河川工事(千葉市発注工事)の看板ですが、ここでは花見川が使われています。


工事写真

弁天橋の河川名は花見川になっています。


弁天橋

また千葉県の河川海岸図では花見川が追記されています。


千葉県の河川海岸図(一部)

このように、社会生活の現場では「印旛放水路(下流部)」という名称が使われることは少ないので、使われても花見川が追記されるので、河川名称に関する社会的軋轢や損失の実体は顕在化していないように感じます。

しかし、将来、花見川と周辺住民のかかわりを濃密にした社会がつくられる過程で、「印旛放水路(下流部)」から「花見川」に法的名称を変更することが必要になる時が必ず来ると考えます。

なお、2013年当時はその意義について深く理解できていませんでしたが、「印旛放水路」という名称は江戸時代の印旛沼堀割普請や明治期印旛沼開発(印旛沼開鑿)などの系譜を引き継ぐ用語であり、歴史的、土木的意義のある語法です。「印旛放水路(下流部)」が唐突に生まれた用語でないことの意義も理解しておく必要があります。

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注1 花見川の語源

私は、2013年には花見川の語源を縄文語由来の一般自然地名ハナ由来であると考えていました。現在では花見川の語源は「検見川(ケミガワ)」の吉祥表現「花見川(読みはケミガワ)」が転じて「花見川(読みはハナミガワ)」になったと考え、その時期は幕末から明治はじめ頃と推定しています。

2023.02.21記事「花見川(ハナミガワ)は検見川(ケミガワ)



2023年3月15日水曜日

水中考古学切手

 Underwater archeology stamp


I got an underwater archeology stamp. Underwater excavation of a Roman shipwreck off the island of Giraglia, north of Corsica.


水中考古学切手を入手しました。コルシカ島北のジラリア島沖でのローマ帝国時代難破船の水中発掘調査の様子です。


水中考古学切手 フランス 2022年発行

ワイン貿易で使う巨大壺の水中発掘の様子がデザインされています。

考古学切手収集の中ではじめて水中考古学切手を入手しました。また、調査の様子がデザインされた切手もはじめてです。陸上遺跡発掘調査で調査員が活動している様子をデザインした切手はあるようでほとんどありません。


ジラリア島の位置

2023年3月13日月曜日

剥ぎ取り断面における土器破片分布

 Distribution of pottery fragments in stripped cross section


A 3D model was used to create a preliminary study of the distribution of pottery fragments in the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. The pottery fragments are distributed near the riparian environment at the bottom of the shell layer at any time. A relationship between pottery dumping and the waterside environment is suggested.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面における土器破片分布図を3Dモデルから予察的に作成して考察しました。土器破片は、どの時期貝層もその最下部の水辺環境近くに分布しています。土器投棄と水辺環境との関連が示唆されます。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面土器破片分布予察図


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面土器破片分布予察図

3Dモデルで確実に土器破片であることが確認できるモノは赤丸、土器破片の可能性が残るモノを青丸で表示しました。

今後千葉県立中央博物館の展示現場で双眼鏡等を使った観察を行い、精度の高い土器破片分布図を作成することにします。

2 考察


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面土器破片分布予察図 考察

確認した土器破片(赤丸)を対象に考察すると、つぎのようなメモを作成することができます。

ア 土器破片は貝層最下部に集中して分布する

貝層は約30度の傾斜で重なって堆積していますが、どの時期の貝層でも土器破片出土位置はほぼその最下部です。貝層最下部はその当時のガリー水路にあたる場所です。つまり土器破片は水辺環境付近に集中していることになります。

このことから貝の投棄と土器破片投棄は全く別の原理で行われたことがわかります。土器投棄は水辺における祈願活動と関連していると推察できそうです。

また、この断面でみると、古い土器と新しい土器は水平方向に分布し、通常地層でみられる上下方向分布ではありません。

イ 土器破片はほとんが内面を上側方向にして分布している

土器破片はほとんどが内面を上側方向に、外面を下側方向にして分布しています。これは土器破片が人の手で投げられたものだからであると考えます。つまり、人が投げる時、手で持ちやすいように、土器内面を上にしてつかんで(上からみて凹に湾曲した土器をつかんで)いたからであると想像します。


土器破片の様子


2023年3月12日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面3Dモデルの画像解析資料作成

 Creation of image analysis materials for a 3D model of the stripped shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


I created several image analysis materials from the 3D model to support on-site observation of the Ariyoshi Kita shell Mound stripped cross-section. I created images that index cross-sectional unevenness and shell density, and superimposed images with photographs. It can be used as a reference for stratigraphic line drawing.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示)の現場観察(展示観覧)を支援するために3Dモデルから画像解析資料を作成しました。断面凹凸や貝密度を指標する画像やそれらと写真と重ねた画像を作りました。層位線描画の参考になります。

1 剥ぎ取り断面3Dモデルから作成した画像資料

1-1 通常画像


通常画像

3Dモデルのオルソ投影画像です。

1-2 断面凹凸画像


断面凹凸画像

剥ぎ取り断面を水平に置いた時、上下方向をグレーのグラデーションで表現した画像です。展示で言うと黒が奥、白が手前となります。

1-3 断面凹凸等高線表示画像


断面凹凸等高線表示画像

断面凹凸画像をPhotoshopのフィルター→表現手法→輪郭検出で等高線表示に変換した画像です。

等高線の粗密やパターンが貝の大きさや密度などに対応しています。

1-4 断面凹凸カラー表示画像


断面凹凸カラー表示画像(奥→手前を青→白→赤で表示)

グレーではなく色グラデーションで断面凹凸を表現することにより、断面凹凸が判りやすくなっています。断面凹凸は貝の大きさや密度などと関連していると推察できます。

1-5 「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

断面凹凸カラー表示画像と断面凹凸等高線表示画像の乗算ミックス画像です。

この画像から貝の大きさや密度の様子を推察できると考えられます。この画像は3Dモデルを作成してはじめて得ることができます。

1-6 断面凹凸干渉色表示画像


断面凹凸干渉色表示画像

地図アート研究所(所長やまだこーじ)干渉色変換ツールで断面凹凸画像を干渉色表示に変換した画像です。


干渉色変換の様子

断面凹凸を干渉色に変換することにより、通常カラー変換(2~3色の変換)よりも事象をダイナミックに把握することが可能となります。

干渉色変換ツールを公開している地図アート研究所(所長やまだこーじ)に感謝します。

1-7 「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

断面凹凸干渉色表示画像と断面凹凸等高線表示画像の乗算ミックス画像です。

1-5画像と同じ趣旨の画像ですが、事象をよりダイナミックに表現しています。

1-8 「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像

断面凹凸カラー表示画像と通常画像の乗算ミックス画像です。

1-9 「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像

断面凹凸干渉色表示画像と通常写真の乗算ミックス画像です。

1-10 メモ

次の画像を総合的に参考にすることによって、剥ぎ取り断面に層位線を描く活動が容易になると期待できます。

・通常画像

・「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

・「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

・「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像

・「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像

2 参考 拡大画像

2-1 通常画像


通常画像

2-2 「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

2-3 「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

2-4 「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+通常写真」ミックス画像

2-5 「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+通常写真」ミックス画像

3 参考 拡大画像2

3-1 通常画像


通常画像

3-2 「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸カラー表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

3-3 「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像


「断面凹凸干渉色表示+断面凹凸等高線表示」ミックス画像

 

2023年3月10日金曜日

考古学剥ぎ取り断面のコレクション作成

 Creation of a collection of archaeological stripped cross-sections


I have created a collection of archaeological stripped cross-section 3D models that I have created so far on the Sketchfab site.

In the future, I will conduct comparative observations on the computer screen to see if there are any differences in the deposition of shell layers among the shell mounds.


これまで自分が作成した考古学剥ぎ取り断面3DモデルのコレクションをSketchfabサイト内につくりました。

貝塚別に貝層堆積状況の何らかの差異がみられるのか、今後比較観察をパソコン画面内で行うことにします。


剥ぎ取り断面コレクションの画面

2023.03.10現在次の7つの3Dモデルを掲載しています。

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

祇園原貝塚貝層断面(部分) 観察記録3Dモデル

貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)と包含土器観察所見資料 3Dモデル

貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

園生貝塚貝層断面 観察記録3Dモデル

加曽利貝塚南貝塚剥ぎ取り断面(部分) 観察記録3Dモデル

縄文後期「栗林遺跡の貯蔵穴」(中野市栗林遺跡) 観察記録3Dモデル

なお、Sketchfabのarakiminoruサイトのコレクションは次の17項目から構成されています。

剥ぎ取り断面

人面土器

抽象文土器

土版

土偶

阿玉台式

勝坂式

中峠式

加曽利EⅠ式

加曽利EⅡ式

加曽利EⅢ式

加曽利EⅣ式

加曽利EⅤ式

加曽利E式

称名寺式

堀之内式

興味のある3Dモデル


arakiminoruのコレクション画面

2023.03.10現在、arakiminoruのSketchfabサイトに990の3Dモデルを掲載しています。


arakiminoruのサマリー画面

2023年3月9日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の場所推定

 Estimation of the location of the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


I roughly estimated the location of the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound displayed at the Chiba Prefectural Central Museum. It is near section 11, which is described in detail in the excavation report. I get a little excited because I can check the nuances of the words in the cross-section of the excavation report at the site. I feel that my learning is progressing.


千葉県立中央博物館に展示されている有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の場所を略推定しました。発掘調査報告書で詳しく記載されている断面11付近です。発掘調査報告書断面記載の言葉ニュアンスを現場で確認できるのですから、少し興奮します。学習が進展する気配がします。

1 展示剥ぎ取り断面のオルソ投影画像作成

展示剥ぎ取り断面のオルソ投影画像(正面から)を3Dモデルから作成しました。


展示剥ぎ取り断面のオルソ投影画像作成(正面から)

2 展示剥ぎ取り断面の推定位置

展示剥ぎ取り断面の位置を発掘調査報告書掲載貝層断面と照らし合わせ推定しました。発掘調査報告書掲載断面11の近く(断面11の前後各1m範囲内程度)であることを推定できました。


展示剥ぎ取り断面の推定位置

この情報から展示断面観察と発掘調査報告書断面11記載を照らし合わせることにより、発掘調査報告書記載の言葉のニュアンスを理解することが可能となりそうです。発掘調査報告書記載の言葉ニュアンスが判らないので学習に手ごたえがなかった不満足感がこれで解消できるかもしれません。発掘現場に直行できるというタイムマシンを手にしたようで、これからの学習活動が楽しみです。

千葉県立中央博物館には双眼鏡と顕微鏡モード撮影可能デジカメを持参して剥ぎ取り断面観察に通いたいと思います。

3 剥ぎ取り断面は、実は、この3倍あることを知る

千葉県立中央博物館webサイトをみると、平成21年度企画展「縄文の躍動」で有吉北貝塚北斜面貝層の剥ぎ取り断面が現在展示物の約3倍あり、11断面全部がつくられていることを知りました。


有吉北貝塚北斜面貝層の剥ぎ取り断面

千葉県立中央博物館webサイトから引用

いつかこの剥ぎ取り断面全体を詳しく観察したいものです。



2023年3月8日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

 Stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound  Observation record 3D model


At the permanent exhibition of the Chiba Prefectural Central Museum, I carefully observed the Stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, and at the same time created a 3D model so that I could observe the outstators at home. I have a lot of discovery and my excitement will not cool down forever.


千葉県立中央博物館常設展で有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面をじっくり観察し、同時に3Dモデルを作成して自宅でも露頭観察できるようにしました。沢山の発見があり感動がいつまでも冷めません。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

高さ4.3m、幅4.0m

撮影場所:千葉県立中央博物館常設展

撮影月日:2023.03.07


展示の様子

3DF Zephyr v7.003で生成 processing 396 images

Stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound  Observation record 3D model

Height 4.3m, width 4.0m

Location: Chiba Prefectural Central Museum  Permanent Exhibition

Shooting date: 2023.03.07

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v7.003 processing 396 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 メモ

2-1 感想

ふとしたことからこの剥ぎ取り断面存在を知り、即座に千葉県立中央博物館に駆けつけました。2時間ほど露頭観察して、その後約400枚写真撮影して、3Dモデルを作成しました。

有吉北貝塚北斜面貝層の現場を見ることはタイムマシンでもできない限りあり得ないと考えていた自分にとって、天からの惠みたいな幸です。

発掘調査報告書掲載貝層断面図の解読から自分が受ける情報と刺激とくらべて、この剥ぎ取り断面観察から受ける情報と刺激は段違いに多いです。疑似的とはいえないような迫真の現場露頭観察を千葉県立中央博物館でじっくり楽しみました。

3Dモデルの観察及び博物館再訪して双眼鏡を利用した観察を重ね、貝層断面の考察を深めたいと思います。

2-2 第一印象

検討を深めることはこれから進めたいと思いますが、第一印象ではつぎのようなことに気が付きました。

ア 発掘調査報告書では貝殻が集中している部分では土器出土がほとんどないという趣旨の記述がありますが、この断面を観察すると貝殻が集中している部分にも自分が想像して以上に土器が混ざっています。

イ 斜面に対する土器の向きが偏っています。土器外面が下になっている土器片が多くなっています。これは土器片を人が投げたことによる現象であると直観します。

ウ 断面下部に貝殻が混ざった土塊があります。上流の貝層が流水で侵食され流れ着いたと考えられ、貝層堆積当初はガリーに浸食力がある程度存在していたことが判ります。しかし、断面の中上部にはこのような侵食力の痕跡はありません。

エ 断面左下部には貝殻が皆無の砂があり、古いガリー侵食堆積物のようです。

オ 貝殻片がまばらに混じっている土層があります。この付近には貝投棄はないが、ガリー上流側では貝殻投棄があった時期があり、その時期に上流側から流れてきた土層のようです。


2023年3月7日火曜日

有吉北貝塚学習の第3ラウンド開始

 The third round of Ariyoshi Kita Shell Mound study begins


I am starting the third round of Ariyoshi Kita Shell Mound Study. I will enjoy the detailed 3D spatial analysis of pottery and shell layers, and the spatial relationship analysis of various relics to my heart's content. It works in Blender's 3D space.


有吉北貝塚学習の第3ラウンドを開始します。土器と貝層の精緻な3D空間分析や各種遺物の空間関係分析などを思う存分楽しむことにします。Blenderの3D空間の中で活動します。

1 学習経緯

次の発掘情景写真に強く刺激されたことをキッカケにして2020年10月から有吉北貝塚学習をある程度体系的に進めています。


有吉北貝塚発掘情景写真

「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」から引用

学習の第1ランウドは2020年10月~2021年10月に行い、その結果はサイト「有吉北貝塚学習記事集成」にまとめてあります。

学習の第2ラウンドは2022年9月~12月に行い、北斜面貝層を対象に土器3D分布分析をメインとした学習で、Blenderをツールとして駆使しました。学習結果はおゆみ野歴史愛好会で話題提供させていただき、またその結果を千葉市埋蔵文化財調査センター西野雅人さんに見ていただき、とても有用なコメントをいただき、ご指導していただきました。西野雅人さんに感謝申し上げます。

2022.11.15記事「おゆみ野歴史愛好会で話題提供

2022.12.15記事「有吉北貝塚北斜面貝層の土器資料新分類


第2ラウンドの学習の様子(Blender画面)

2 第3ランウド学習の楽しみ方

第3ラウンド学習では北斜面貝層を主な対象として、次のような活動を楽しみたいと考えています。

ア 土器破片と貝層の3D相関の精緻な分析

この分析のために次の活動を行います。

・新土器分類に基づいた土器破片3D分布データ作成

・貝層断面図(18断面図)に基づく貝層3D分布データ作成

・3D空間における土器破片と貝層区分との精緻な対応把握

イ 遺物相互の空間分布分析

発掘調査報告書掲載全遺物アイテムについて空間分布データ(2m×2mメッシュ)を作成し、地形・貝層を考慮した上て遺物アイテム間の関係性を分析します。

遺物アイテム…土器、埋葬人骨、アリソガイ・ハマグリ製磨貝、ハマグリ製貝刃、土器片錘、石鏃、打製石斧、磨製石斧、装飾品(貝類)、装飾品(骨角歯牙)、イヌ埋葬…

ウ 北斜面貝層遺物分布と台地面集落遺物分布との関係

北斜面貝層出土遺物と台地面集落出土遺物との間にどのような関係がみられるのか検討します。

問題意識の例 

・「北斜面貝層に大量投棄された土器型式は、台地面集落からその土器型式の出土はその分少ない」のか「そんなことはない」のか。

・遺物アイテム毎に台地集落出土と斜面貝層出土の構成比はほぼ同じか。異なるのか。

3 3D分析操作技術習得について

第3ランウド学習を進めていく上で、3D分析操作技術の習得がとても大事であると考えます。特にメインソフトであるBlenderの操作技術について意識的にその習得に務めることにします。

4 分析活動のイメージ

第2ラウンドにおける3D分析体験から、技術操作的に精緻になっても基となるデータ(貝層断面図、遺物3D位置データ)に観察限界や誤差があり、貝層移動(動態)については未知の領域となっていることが判明しています。ですから、必ずしも望むような精度で結果が得られるとは限らないことが判っています。そこで、論理的に分析を深めて最終正解を得るという一般研究的活動ではなく、幾つかの異なる作業仮説に基づく複数結果を成果として得ることを目標とし、その複数結果の評価検討を行い、もっともらしさが高い結果の認識に至りたいと思います。


2023年3月5日日曜日

諸磯a式古深鉢(市川市中台貝塚) 観察記録3Dモデル

 Moroiso a-style old deep bowl(Nanadai Shell Mound,Ichikawa City)Observation record 3D model


I created a 3D model of the Moroiso a-style old deep bowl, which is currently being exhibited at the Chiba City Buried Cultural Property Research Center. It is explained that this pottery is a material used as an indicator of the chronology.


千葉市埋蔵文化財調査センターで開催中特別展「遺物から見える…」に展示されている獣面把手の3Dモデルを作成しました。この土器は編年の指標として用いられる資料であると説明されています。

1 諸磯a式古深鉢(市川市中台貝塚) 観察記録3Dモデル

諸磯a式古深鉢(市川市中台貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.27


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.000で生成 processing 234 images

Moroiso a-style old deep bowl(Nanadai Shell Mound,Ichikawa City)Observation record 3D model

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.27

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v7.000 processing 234 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

「諸磯a式古

市立市川考古博物館所蔵

昭和58年度の調査で住居跡から貝層とともに出土。多量の土器が見つかり、全形が分かるものも多いことから、編年の指標として用いられる資料。

出土遺跡 中台(なかだい)遺跡(千葉県市川市中国分)」


東西の土器の変化

4 技術メモ
照明が当たらない部分は暗くなり3Dモデルでは文様を確認できませでした。また、カメラ視線が届かない部分は正常な結像ができませんでした。さらにガラス面反射が薄い白色で残った部分があり、それを取り去る技術は持ち合わせていませんでした。

2023年3月4日土曜日

獣面把手(四街道市木戸先遺跡) 観察記録3Dモデル

 Animal handle(Kidosaki site,Yotsukaido city)Observation record 3D model


I created a 3D model of the Animal handle, which is currently being exhibited at the Chiba City Buried Cultural Property Research Center. It is explained that the Animal handle removed from the pottery was distributed in the latter portion of the Middle stage of the Jomon period.


千葉市埋蔵文化財調査センターで開催中特別展「遺物から見える…」に展示されている獣面把手の3Dモデルを作成しました。土器から外された獣面把手そのものが前期後葉社会で流通していたと説明されています。

1 獣面把手(四街道市木戸先遺跡) 観察記録3Dモデル

獣面把手(四街道市木戸先遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.27


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.000で生成 processing 81 images

Animal handle(Kidosaki site,Yotsukaido city)Observation record 3D model

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.27

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v7.000 processing 81 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 展示説明

「獣面把手

縄文土器の口縁部付近に獣類の顔を表現したものを獣面把手と呼びます。これらは主にイノシシの造形が多く、縄文時代前期後葉の中でも特に諸磯b式期に盛んに製作されるものです。

また、土器に貼り付けられたものだけでなく、タブレット状に加工され、それ自体が意味のあるものとして流通していました(右の写真参照)。これらのことから、縄文人はイノシシに対して特別な気持ちをもっていたことが分かります。」


展示写真