2014年11月18日火曜日

草刈遺跡検討の感想

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.2旧石器時代の移動路>3.2.24旧石器時代遺跡と地形 事例検討その18 草刈遺跡検討の感想

幾つかの偶然が重なり、寄り道として旧石器時代遺跡に興味を持ち、そのまた寄り道でたまたま手に取った草刈遺跡報告書があまりにデータが充実していて、学習としてデータを分析しだしたらそれにはまり込んでしまいました。

こうした自分の興味展開プロセスはそれ自体を興味対象として、近々振り返りたいと思っています。振り返らないと、自分の興味が何が何だか分からなくなってしまいます。

さて、この記事では熱中した草刈遺跡検討に限って、その感想をまとめておきます。

1 遺跡と地形との関係に関する有用情報
このブログの検討で遺跡と地形との関係を分析し、有用情報を引き出せたと考えています。縄文海進前の旧石器時代の深い谷津地形の復元(推定)は必須であり、この地形認識無しに旧石器時代遺跡検討はありえないと考えます。また台地の狭窄部などの位置にかんする情報も大切です。

これらの地形情報と遺物集中地点との関係を分析して有用情報を得ることができたと考えます。

出土物という「確実な情報」を何はともあれ第一義的に重視しようという発想をとるならば、地形情報も「確実な情報」ですから、一緒に扱わないと片手落ちであると考える私の発想の合理性を確認できました。

2 旧石器時代遺跡に関する門外漢的感情の希薄化
これまでの検討では生のデータを自分であれこれいじり廻し、分析し、それなりの解釈をすることができました。

このような体験をしたので、これまでの旧石器時代遺跡に関する門外漢的感情が薄れてきました。
他の場所の旧石器時代遺跡も、石器数規模はどうかとか、地形的位置はどうかとか、文化層はどこかとか、自問(自分に質問)できるようになりました。

それが的確な行為であるかどうか自信はありませんが、草刈遺跡の分析結果と対比しながら別の
場所の旧石器時代遺跡を見れば、その場所のイメージをおぼろげながら持つことができるのではないかと期待しています。

3 石材情報分析から有用情報を引き出せる可能性
このブログでの検討では意識的に石材情報(石材の岩種、産出場所等)を分析対象から外しました。一緒に含めると自分の脳の検討許容量を越えてしまうような感じを持ったためです。また、地形と遺跡との関係とは少し縁が遠い情報のようにも感じました。

いろいろな検討を深めた現在、石材情報を遺物集中地点の規模別分析、文化層別分析等とからめると、旧石器時代人グループの出自(グループ識別)が浮かび上がるような気がしています。石材情報から有用情報を引き出せる可能性を感じます。

4 発掘報告書における考察の欠如
「千原台ニュータウンⅩ-市原市草刈遺跡(東部地区旧石器時代)-」(平成15年、財団法人千葉県文化財センター)を最初に手にしてパラパラめくると、自分が仮説的に考えていた遺跡と地形との関係を浮き彫りにできそうだとすぐにわかりました。

早速借りだし、じっくり読み、肝心の個々データを手作業でパソコンに移し、後はエクセル、Illustrator、地図太郎PLUS、QGISを使って検討を深め、かれこれ20日近くブログ記事を書いてきました。厚さ3.5㎝の報告書はほぼ毎日データの確認等に利用しています。

この報告書の石器に関するデータの充実には心底感心します。ここまで詳細なデータをつくる膨大な作業が完遂されるという長期間にわたる組織的実行性に感服します。

そう感じるので、ますますこの報告書の考察部分の欠如に奇異感をもちます。考古発掘世界の仕組みを知らないから生まれる奇異感だと判っているようには感じるのですが、1市民として感じてしまいます。

報告書に「まとめ」はありますが、作業結果のまとめであり、生まれたデータが意味することを考察しているとは到底考えられません。

恐らく、開発プロジェクトに伴う発掘ではすべてこのようなパターンで報告書がつくられているのだと考えます。

西根遺跡に関する発掘報告書の縄文土器に関する部分についても、同じ感情をもったことを思い出します。(2014.09.28記事「印西市西根遺跡埋蔵文化財調査報告書を学習する」参照)


参考 草刈遺跡遺物集中地点分布とGoogle earth画面(京成千原線ちはら台駅付近)

草刈遺跡遺物集中地点分布とGoogle earth画面(京成千原線ちはら台駅付近)1

草刈遺跡遺物集中地点分布とGoogle earth画面(京成千原線ちはら台駅付近)2

Google earth画面(京成千原線ちはら台駅付近)

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